深刻な人手不足が続く日本では、即戦力となる外国人材への期待が高まっています。2019年に創設された在留資格「特定技能」は十四分野で就労を認め、介護・建設・飲食など幅広い現場で活躍が可能です。
本記事では対象職種を網羅的に整理し、雇用メリットや受入れ手続きの勘所をわかりやすく解説します。導入を検討する企業が押さえるべきポイントも合わせてご紹介します。
特定技能に含まれる職種とは

特定技能に含まれる職種は、介護、建設、製造、整備、交通、運輸、農林水産業、サービス、飲食など多岐にわたります。これにより、さまざまな業界で即戦力となる外国人材を受け入れることが可能です。
介護関連
介護分野における特定技能は、要介護高齢者の増加に伴い慢性的な人手不足が続く現場を支える制度として導入されました。
対象業務は、食事、入浴、排せつなどの身体介護から、レクリエーション運営や生活相談まで幅広く、外国人材には一定水準の日本語能力試験(N4相当)合格と介護技能評価試験合格が義務付けられています。
したがって、利用者との対話や記録業務に必要なコミュニケーションを確保しつつ即戦力として配置できる点が強みです。
また、介護現場は職員同士のチームワークが不可欠であるため、雇用側が新人研修やメンター制度を通じて職場定着を支援することで、業務の質と離職率の低減を同時に実現できます。
建設・製造・整備関連
建設、製造、整備の三分野は、日本の経済活動を物理的に支える基盤産業であり、人口減少に伴う技能労働者不足が深刻です。
特定技能制度は、このギャップを埋めるために導入され、左官、大工、鉄筋工、機械加工オペレーター、溶接工、自動車整備士など合計およそ20種の職種をカバーしています。
採用時には技能試験と日本語試験を通過した人材のみが就労可能なため、安全管理や製造ラインでの指示伝達が円滑に行える体制が整います。
また、現場リーダーによるOJTを通じてCAD操作や品質管理等の上位スキルを習得させれば、生産性向上とリーダー層の負担軽減を同時に達成できる点も利点です。
交通・運輸関連
交通・運輸分野では、ドライバー不足が物流コストを押し上げ、地域公共交通の維持にも影響を与えています。特定技能制度は、トラック、バス、タクシーの運転業務に従事する外国人材を受け入れることで、この課題を緩和します。
応募者は運転免許の切り替えや技能試験を経て採用されるため、道路交通法や安全運行管理に関する基礎知識を備えています。
さらに、日本語試験合格により配送指示や乗客対応もスムーズに行えます。導入企業は、デジタコやドラレコを活用した運転指導を行うことで事故リスクを抑制し、外国人乗務員の業務定着を後押しできます。
農林水産業関連
農林水産業は、山間部や離島を含む地域経済の屋台骨ですが、高齢化と若者流出により慢性的な労働力不足に直面しています。特定技能制度の活用により、外国人材は野菜や果樹の栽培・収穫、漁船での操業、林木の伐採・育成などに即戦力として参画できます。
技能試験では、農機操作や選果基準、漁具取り扱い、安全衛生管理を確認するため、現場教育コストを抑えつつ導入可能です。
さらに、季節変動の大きい作業工程に合わせて雇用計画を組めば、閑散期の寮費削減や繁忙期の収穫遅延回避に寄与します。
受入側は地域の生活インフラ情報や防寒対策などを多言語で提供し、文化摩擦を未然に防ぐと定着率が向上します。
サービス・飲食関連
サービス・飲食分野はインバウンド需要が急速に回復し、ホールスタッフや調理補助人員の確保が重要課題となっています。特定技能制度を活用すれば、外国人材は接客、レジ業務、調理、客室清掃など多様なロールで即戦力として活躍できます。
応募者には日本語能力試験N4以上に加え、衛生管理や顧客対応の技能試験が課されるため、基礎的なホスピタリティ水準を確保できます。
さらに、多言語接客によって訪日客の満足度を高めつつ、スタッフの文化的多様性が新しいメニュー開発やサービスアイデアの源泉となる点も魅力です。
一方、ピークタイムが不規則で離職率が高い業界特性を踏まえ、企業はシフト管理の柔軟性向上やキャリア形成支援を行うことで定着率を高められます。
特定技能外国人を受け入れるメリット

特定技能外国人を受け入れることには多くのメリットがあります。これから説明するメリットを踏まえて、特定技能外国人を受け入れることを検討しましょう
即戦力を確保できる
特定技能外国人を雇用する最大のメリットは、即戦力としての活躍が期待できる点です。特定技能制度は、特定の職種において必要な技能や知識を持つ外国人材を受け入れることを目的としており、これにより企業は即座に業務に貢献できる人材を確保できます。
特に、介護や建設、製造業などの分野では、専門的な技術や経験を持つ外国人が多く、短期間での戦力化が可能です。
また、特定技能外国人は日本での就労経験があるため、文化や業務の流れにも早く適応できる傾向があります。このように、特定技能外国人の雇用は、企業の人手不足解消に大きく寄与することが期待されています。
転職リスクが少ない
特定技能外国人を雇用する際の大きなメリットの一つは、転職リスクが少ないことです。特定技能制度では、外国人労働者が特定の職種に特化して働くことが求められます。
このため、彼らは自分の専門分野において安定した職を持つことができ、簡単に転職することは難しいのです。企業側にとっては、長期的に安定した人材を確保できるため、業務の継続性が高まります。
また、特定技能外国人は日本での生活に慣れ、職場環境にも適応しやすくなるため、離職率が低くなる傾向があります。
フルタイム雇用ができる
特定技能外国人を受け入れる大きなメリットの一つは、フルタイムでの雇用が可能である点です。特定技能制度では、外国人が日本の企業でフルタイムで働くことが認められており、これにより企業は安定した人材を確保することができます。
特に、人手不足が深刻な業界においては、フルタイムで働ける外国人材の存在は、業務の効率化や生産性向上に寄与します。
また、フルタイム雇用により、企業は長期的な視点で人材育成を行うことができ、業務のノウハウをしっかりと伝えることが可能になります。
特定技能外国人を受け入れるデメリット

特定技能外国人を受け入れる際には、いくつかのデメリットも考慮する必要があります。メリットだけではなく、デメリットも踏まえた上で受け入れを検討しましょう。
言語の壁が大きい
特定技能外国人を受け入れる際の大きな課題の一つが、言語の壁です。日本語が堪能でない外国人材は、業務の指示やコミュニケーションにおいて困難を感じることが多く、これが業務の効率や安全性に影響を及ぼす可能性があります。
特に、介護や建設などの現場では、正確な指示や情報の伝達が求められるため、言語の理解度が業務の質に直結します。
また、言語の壁はチーム内のコミュニケーションにも影響を与え、職場の雰囲気や協力体制を損なう要因となることがあります。企業は、外国人材がスムーズに業務を行えるよう、言語教育やサポート体制を整える必要があります。
特定技能外国人を集めにくい
特定技能外国人を十分に集められない要因として、まず送出国側の認定機関や技能試験会場が限定されていることが挙げられます。そのため、受験機会が不足し、応募者プールが地域的にも職種的にも偏ります。
さらに、隣国と比べて日本の賃金水準が伸び悩んでいる分野では、求職者がより高い報酬を期待できる他国へ流れる現象が顕著です。加えて、日本語学習コストが高いことも参入障壁となり、学習支援がない企業は候補者から敬遠されがちです。
また、地方企業の場合、公共交通や住居環境が整っていないと生活利便性が低く評価されるため、採用広報で魅力を十分に伝えきれないケースがあります。
特定技能1号の雇用期間は最長5年の縛りがある
特定技能1号の在留期間は通算5年が上限であり、このタイムリミットは企業の人材戦略に大きな影響を与えます。まず、技能向上に伴うリーダー候補の育成が5年以内に完結しない場合、戦力が安定する前に退職を余儀なくされるリスクがあります。
したがって、採用直後から段階的な技能移管計画を策定し、3年目までに主要ポジションを担える体制を整えることが重要です。
また、本人が特定技能2号への移行要件を満たせば在留継続が可能ですが、現時点で移行可能な分野は限定されており、業種によっては抜本的な対応が困難です。
まとめ
特定技能制度は、日本の深刻な人手不足を解消するための重要な施策です。介護や建設、飲食など多岐にわたる職種で外国人材を受け入れることで、企業は即戦力を確保し、業務の効率化を図ることができます。
また、特定技能外国人を雇用することで、労働力の安定性を高めることができるため、今後ますます注目される制度となるでしょう。企業がこの制度を活用する際には、受入れ手続きなどをしっかりと理解し、適切な対応を行うことが求められます。