外国人が日本の会社で働くためには、就労ビザが必要です。就労ビザは職種や外国人の経歴によって取得するものが異なり、技能ビザは特定の職種で外国人を雇うためには必要不可欠な資格です。本記事では、技能ビザの人材を雇用する時のルールや他のビザとの違いを解説します。申請に必要な書類も一覧でまとめているので、技能ビザの人材を雇用したい会社は参考にしてみてください。
技能ビザに関する悩みがある場合は、MIRAI行政書士事務所へ相談してみてはいかがでしょうか。
技能ビザとは

技能ビザは、日本における在留資格の1つで、外国人が日本国内で特定の専門技術・技能を必要とする仕事に従事するための在留資格です。技能ビザの基本的な概要は以下の通りです。
在留目的 | 職人技や経験が必要な特別な技能を生かす。料理人、菓子職人など現場仕事中心 |
必要条件 | 該当分野での実務経験や国家資格などが求められる |
在留期間 | 3か月、1年、3年、5年(更新可能) |
家族の帯同 | 配偶者と子は「家族滞在ビザ」で可能 |
ここでは、技能ビザをより深く理解するためにも、該当する職種や他の就労ビザとの違いについて解説します。
技能ビザに該当する職種
技能ビザに該当する職種は以下の9種類です。
- 調理師・菓子職人
- 建築技術者
- 宝石、貴金属または毛皮を加工する職人
- 外国特有の製品の製造・修理する職人
- 動物の調教師
- 石油・地熱等掘削調査の技術者
- 航空機操縦士
- スポーツ指導者
- ソムリエ
どの職業も取得するには、国家資格か実績豊富な実務経験が必要になります。職種ごとに必要な条件が異なるので、該当する職種を念入りにチェックすることが大切です。
参考:https://www.moj.go.jp/isa/content/001367795.pdf
技術・人文知識・国際業務ビザとの違い
技術・人文知識・国際業務ビザは、技能ビザと同じく日本における在留資格の1つで、大卒以上の学歴や専門的な知識を有する外国人が、日本で特定のスキルを活かした業務に従事するために与えられる在留資格です。技術・人文知識・国際業務ビザの基本的な概要は以下の通りです。
在留目的 | 専門的な学術知識や技術を活かして企画・管理・開発などオフィスワーク中心の業務に従事 |
必要条件 | 該当分野での実務経験や学歴などが求められる |
在留期間 | 3か月、1年、3年、5年(更新可能) |
家族の帯同 | 配偶者と子は「家族滞在ビザ」で可能 |
技術・人文知識・国際業務ビザに該当する職種は以下の通りです。
- ITエンジニア、システム開発者
- 会計、経理、総務
- 貿易事務、海外営業、通訳翻訳
- デザイナー
- 語学講師 など
技術・人文知識・国際業務ビザについて詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」で可能な仕事一覧と審査基準を徹底解説!
特定技能ビザとの違い
特定技能ビザは、日本における深刻な人手不足を補うために創設された在留資格で、外国人が一定の技能と日本語能力を持っていれば、特定の産業分野で従事できます。技能ビザとの違いは以下の通りです。
技能ビザ | 特定技能ビザ | |
対象職種 | 外国料理の調理師、家具職人、パイロットなど限定的で専門的な職種 | 人手不足が深刻な16分野 |
必要条件 | 該当分野での実務経験や国家資格などが求められる | 一定の技能(試験合格もしくは技能実習修了)と日本語能力が求められる |
在留期間 | 3か月、1年、3年、5年(更新可能) | 1号:最長5年2号:無期限(更新は必要) |
家族の帯同 | 配偶者と子は「家族滞在ビザ」で可能 | 1号:不可能2号:特定の条件を満たせば可能 |
技能ビザは熟練した技術が求められる職種に限定されており、誰でも取得できるわけではなく、専門性の高い職人・技術者向けです。一方で特定技能ビザは人手不足への対策が目的であり、試験や日本語能力があれば取得できる傾向があります。特定技能ビザについて詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。
特定技能ビザとは?あてはまる業種や取得条件、取得の流れを詳しく解説
技能ビザの取得には実務経験が必要

技能ビザの取得には、該当分野での実務経験や国家資格を有している必要があります。ただし、職種ごとに必要な条件は異なるので注意が必要です。ここでは、職種ごとに必要な実務経験の条件を解説します。
調理師・菓子職人
海外の調理師・菓子職人が技能ビザを取得するためには、10年以上の実務経験が必要です。タイ料理のみ以下のような条件が必要になるので注意しましょう。
- 5年以上の実績があること
- 初級以上のタイ料理人としての技術水準に関する証明書の取得すること
- 直前の1年間、タイで料理人として適正な報酬を得ていること
建築技術者
海外特有の建築技術を持っている外国人が技能ビザを取得するためには、10年以上の実務経験が必要です。ただし、教育機関における該当する専門分野を学習している期間も含まれます。
宝石、貴金属または毛皮の加工
宝石、貴金属または毛皮を加工する海外の職人が技能ビザを取得するためには、10年以上の実務経験が必要です。ただし、教育機関における該当する専門分野を学習している期間も含まれます。
外国特有の製品の製造・修理
ペルシア絨毯など、外国特有の製品の製造・修理をする海外の職人が技能ビザを取得するためには、10年以上の実務経験が必要です。ただし、教育機関における該当する専門分野を学習している期間も含まれます。
動物の調教師
海外の動物調教師が技能ビザを取得するためには、10年以上の実務経験が必要です。ただし、教育機関において動物に関わる専門分野を学習している期間も含まれます。
石油・地熱等掘削調査
石油・地熱等掘削調査の外国人技術者が技能ビザを取得するためには、10年以上の実務経験が必要です。実務経験には以下の作業が該当します。
- 石油探査を目的とした海底掘削作業
- 地熱開発を目的とした採掘作業
- 鉱物探査を目的とした海底地質調査
また、教育機関における該当する専門分野を学習している期間も含まれます。
航空機操縦士
海外の航空機操縦士が技能ビザを取得するためには、1,000時間以上のフライト経験を有している必要があります。
スポーツ指導者
海外のスポーツ指導者が技能ビザを取得するためには、いずれかのような以下の条件を満たしている必要があります。
- スポーツ指導における3年以上の実務経験(教育機関における該当する専門分野を学習している期間も含む)
- オリンピックや世界大会など、国際的な大会に出場したことある選手
ソムリエ
海外のソムリエが技能ビザを取得するためには、いずれかのような以下の条件を満たしている必要があります。
- ワイン鑑定など、ワインの評価に関する業務を3年以上従事している(教育機関における該当する専門分野を学習している期間も含む)
- 国際ソムリエコンクールの出場経験者
- 公共団体が認定しているワインに関する資格を有している人
技能ビザの実務経験を証明する方法

技能ビザには、各職種に応じた実務経験の証明が必要不可欠です。実務経験には客観的な証明が重要なため、申請書や経歴書に「実務経験10年」の旨を記載しても、申請が通ることはありません。
そのため、技能ビザにおいて実務経験を証明する方法として、在籍証明書などかつての勤め先で働いていた実績となる書類を提示することが必要です。在籍証明書は、特定の会社や学校などに正式に在籍していることを証明する書類です。会社に勤めていた場合は、勤務先の人事部や総務部に在籍証明書を発行してもらえます。
複数の会社に属していた場合、それぞれの会社での在籍証明書を提出しても、問題ありません。重要なポイントは実務経験が何年以上あるかを、客観的な目線で証明できることです。
技能ビザ申請に必要な書類一覧

技能ビザ申請に必要な書類は以下の通りです。
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 写真(4cm×3cm)
- 封筒(宛名を明記し、簡易書留用の切手を貼ったもの)
- 雇用理由書など従事する業務の内容を証明する文書
- 履歴書
- 労働条件通知書など勤務先での活動内容を明記した書類
ただし、務める会社の規模によって、追加で必要な書類が異なってくるので注意しましょう。株式を上場している会社や公官庁の場合は、以下の資料が必要です。
- 四季報の写し又は日本の証券取引所に上場していることを証明する書類の写し
- 主務官庁から設立の許可を受けたことを証明する書類の写し
源泉徴収税額が1,000万円以上ある会社や、源泉徴収票等の法定調書合計表を提出した会社の場合は、以下の資料が必要です。
- 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の写し
さらに、源泉徴収票等の法定調書合計表を提出した会社と上記の条件に当てはまらない会社は、以下の資料が必要です。
- 在籍証明書など、申請人の職歴が証明できる書類
参考:https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/skilledlabor02.html
技能ビザを申請する流れ

技能ビザを申請する流れは、大きく分けて以下の3パターンがあります。
- 新規で申請するパターン
- 勤務先を変更するパターン(在留期間更新許可申請)
- 在留資格を変更するパターン(在留資格変更申請)
技能ビザは日本における実務経験が認められにくい性質上、新規で申請するパターンが多いです。新規で技能ビザを申請する場合の手順は以下の通りです。
- 入国管理局に在留資格認定証明書交付を申請する
- 在留資格認定証明書交付を受け取る
- 在留資格認定証明書を外国人労働者本人に送付する
- 外国人労働者本人が在留資格認定証明書を在外日本公館で提示し、ビザを申請する
- 在外日本公館にてビザ発給する
手続きが完了するまでに、1〜3か月ほどの期間が必要になるので、早い段階からスケジュール調整することをおすすめします。ビザを申請する手順に関する詳細な情報は、以下の記事でまとめているので、気になる方はぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
就労ビザの取得方法は?具体的な流れと必要な書類までをわかりやすく紹介
技能ビザ人材を受け入れる際の注意点

技能ビザを有している外国人の働き方には、さまざまな制限が設けられています。そのため、技能ビザ人材を受け入れる際には、トラブルを起こさないためにも、いくつかの注意点を守らなくてはなりません。ここでは、技能ビザで人材を受け入れる際に注意したいポイントを3つ解説します。
日本人と同等以上の労働条件の設定が必要
外国人を雇うには、日本人と同等以上の労働条件の設定が必要です。給料や所定労働時間など、外国人だからといって日本人よりも劣っている条件で労働させると、同一労働同一賃金制度など行政のルールに違反する可能性が高いので注意しましょう。
参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html
アルバイトや副業には範囲が定められている
技能ビザの場合、「在留資格で認められている活動許可の範囲内」であれば、アルバイトや副業が可能です。ただし、活動許可の範囲外の業務内容であっても、「資格外活動許可」が認可されれば、アルバイトや副業で働けます。
在留中の素行に注意が必要
在留期間中に犯罪行為に手を染めてしまったり、税金の支払いを滞納していると、資格を取り消されることがあるので注意が必要です。外国人を雇っている会社は、外国人労働者の業務面だけでなく生活面も十分にサポートすることで、トラブルを未然に防ぐことが可能です。
まとめ

本記事では、技能ビザの人材を雇用する時のルールや他のビザとの違いを解説しました。技能ビザは、日本にはない技術に精通した外国人を雇うために有効な就労ビザです。技能ビザを取得するには、実績の証明が必要など、さまざまなルールが定められているため、事前に専門知識を把握しておく必要があります。
技能ビザに関する悩みがある場合は、MIRAI行政書士事務所へ相談してみてはいかがでしょうか。