特定技能ビザと技能実習ビザは、外国人を受け入れる日本の制度としての共通点がありますが、目的や就労範囲、在留期間などに違いが見られます。
また特定技能ビザと技能実習ビザにはそれぞれに魅力的なメリットや注意すべきデメリットなどが存在します。ポイントを押さえることで、企業に適した人材の確保ができるでしょう。
今回は、特定技能ビザと技能実習ビザの違いについて解説します。それぞれのメリットやデメリット、雇用企業が押さえておくべきポイントなどを知りたい方は、参考にしてください。
特定技能ビザや技能実習ビザの取得は、MIRAI行政書士事務所にお任せください。豊富な実績に基づき、申請代行のサポートをいたします。
無料相談も可能なため、お気軽にお問い合わせください。
特定技能ビザと技能実習ビザの5つの違い

特定技能ビザと技能実習ビザでは、目的や就労範囲に違いが見られます。ここでは、特定技能ビザと技能実習ビザの違いを詳しく解説します。
特定技能ビザ | 技能実習ビザ | |
目的 | 日本の人手不足の解消 | 日本国外への国際貢献 |
上限 | 制限なし(建設業や介護分野を除く) | 企業規模ごとに上限あり |
採用対象者 | 海外在住の外国人日本国内の在留外国人 | 海外在住の外国人のみ |
就労範囲 | 制限あり特定技能1号:16分野特定技能2号:11分野 | 制限あり91職種168作業 |
在留期間 | 特定技能1号:通算5年以内特定技能2号:上限なし | 最長5年 |
目的の違い
特定技能ビザは、国内での深刻な人手不足の解消を目的としています。すでに一定の専門知識や技能を持つ外国人労働者の受け入れは即戦力となり、労働力の確保につながります。
特定技能ビザの目的は迅速な労働力の補充に重点が置かれている制度といえるでしょう。
対して技能実習ビザは、日本で先進的な技術や知識を身に付けた外国人が、帰国後に習得内容を母国に活かすことを狙いとしています。日本国外の経済発展や技術向上など、主に国際貢献が目的です。そのため5年以上技能実習の在留資格で日本で就労することはできず、帰国しなければなりません。
外国人を企業で受け入れる点においては同じですが、受け入れの目的には違いが見られます。
参考:https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/fna/ssw/jp/overview/
上限の違い
特定技能ビザでは建設と介護以外の分野で、企業単位での受け入れ人数に制限が設けられていません。
対して技能実習ビザは、企業の規模に応じた受け入れ人数の上限が厳しく定められています。たとえば、受け入れ施設の常勤職員の総数が41人から50人の場合は年間5人まで、受け入れ施設の常勤職員の総数が31人から40人の場合は年間4人まで技能実習生の受け入れが可能です。技能実習ビザで受け入れ人数に制限を設けているのは、十分な技術指導の実施を重視しているためです。
年間の受け入れ人数に上限があることに加え、技能実習生の同時在籍人数については、以下を超えてはならないとされています。
- 1号技能実習生:常勤職員の総数
- 2号技能実習生:常勤職員数の総数の2倍
- 3号技能実習生:常勤職員数の総数の3倍
例えば、常勤職員が10人の会社の場合、技能実習生はそれぞれ以下の合計人数が上限となります。
- 1号技能実習生:10人
- 2号技能実習生:20人
- 3号技能実習生:30人
参考:https://www.moj.go.jp/isa/content/930005177.pdf
採用対象者の違い
特定技能ビザは、海外からの応募者と日本国内の在留外国人が対象となります。技能実習2号の修了や検定の合格などで一定の技術や知識を身に付け、基準をクリアした人が取得できます。
対して技能実習ビザは、海外に住む候補者を対象とした在留資格です。
海外支店の外国人労働者を日本に転勤させる「企業単独型」や、送出機関と監理団体の協力を経て技能実習生を採用する「団体監理型」の採用形態があります。令和6年6月末時点での採用形態の割合は、技能実習ビザの98.3%が団体監理型を選択しています。
実習生には、実際の就労を通じて必要な技術や知識を習得してもらうため、事前に高度なスキルを身に付けておくことは求められません。
つまり、特定技能ビザでは「即戦力」、技能実習ビザでは「学ぶこと」が重視されます。
参考:https://www.moj.go.jp/isa/content/930005177.pdf
就労範囲の違い
特定技能ビザは、日本国内の深刻な人手不足を背景に、即戦力となる労働力の確保を狙いとしています。そのため、人手不足が深刻な全16分野の範囲内であれば、柔軟に働くことができます。
特定技能ビザの主な就労範囲は、以下のとおりです。
特定技能ビザ1号(全16分野) | 特定技能ビザ2号(全11分野) | |
就労可能分野 | 介護 ビルクリーニング 工業製品製造業 建設 造船・船舶工業 自動車整備 航空 宿泊 自動車運送業 鉄道 農業 漁業 飲食料品製造業 外食業 林業 木材産業 | ビルクリーニング 工業製品製造業 建設 造船・船舶工業 自動車整備 航空 宿泊 農業 漁業 飲食料品製造業 外食業 |
特定技能ビザは1号と2号で就労可能な分野数が異なりますが、広範囲の職種で労働が可能です。
特定技能ビザについて、より詳しい内容は以下の記事で解説しています。
特定技能ビザとは?あてはまる業種や取得条件、取得の流れを詳しく解説
対して技能実習ビザの主な就労範囲は、以下のとおりです。(令和7年3月7日時点)
- 農業・林業関係(3職種7作業)
- 漁業関係(2職種10作業)
- 建設関係(22職種33作業)
- 食品製造関係(11職種19作業)
- 繊維・衣服関係(13職種22作業)
- 機械・金属関係(17職種34作業)
- その他(21職種38作業)
- 社内検定型の職種・作業(2職種4作業)
技能実習ビザは特定技能ビザに比べて、活動できる職種や業務に制限が設けられています。
参考:https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/specifiedskilledworker.html
在留期間の違い
特定技能ビザには種類があり、1号か2号かで在留期間が異なります。
特定技能1号では、最長5年間の滞在が可能です。特定技能2号へ移行すれば在留期間の制限がなくなるため、長期的な滞在が認められます。
技能実習ビザの在留期間は、最長でも5年間です。また、1号・2号・3号それぞれに在留期間が設けられています。
- 技能実習1号:1年以内
- 技能実習2号:2年以内(通算3年)
- 技能実習3号:2年以内(通算5年)
2号や3号への移行には、技能評価試験に合格するなど一定の条件を満たす必要があり、在留期間を自由に選べるわけではありません。
参考:https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/fna/ssw/jp/overview/
特定技能ビザと技能実習ビザのメリット・デメリット

特定技能ビザと技能実習ビザのメリットやデメリットは、以下の表のとおりです。
特定技能ビザ | 技能実習ビザ | |
メリット | 日本人と同様に幅広い業務に従事可能 特定技能2号は配偶者や子どもの帯同が可能同じ分野内であれば転職ができる | 人材の定着率が良い企業側の採用活動の手間が省ける |
デメリット | 転職者が増えれば人材不足に陥る企業都合の解雇は雇用側に制限制度が設けられる | 海外からの受け入れに手間がかかる転職や家族の帯同は不可 |
特定技能ビザは一部の分野を除いて受け入れ人数に制限がないことや、一定のスキルを持つ人材の確保により、企業の人手不足の解消に貢献しやすい在留資格です。日本国内の在留外国人も採用できるため、海外から受け入れる技能実習ビザに比べて手続きがスムーズに進められるでしょう。
しかし、転職が自由にできる反面、人材の定着を促すための対策が求められます。企業都合で外国人労働者を解雇した場合、原則1年間の外国人受け入れ制限がかかります。
一方、技能実習ビザは転職が認められていないため、採用後の人材定着率が高いのがメリットです。労働者の入れ替わりが少なく、外国人労働者との信頼関係が構築しやすいでしょう。
技能実習ビザは海外に住む外国人が対象のため、採用から就労開始まで時間や手間がかかります。受け入れ時の手続きや事務作業が複雑でコストが高いなど、特定技能ビザに比べて企業の負担が大きいのがデメリットとなります。
雇用企業のニーズに合わせて適切な制度を選びましょう。
人手不足解消が目的なら「特定技能ビザ」がおすすめ

企業の人材不足の解消が第一条件であれば、技能実習ビザよりも特定技能ビザの外国人を採用しましょう。
技能実習ビザの外国人は、日本の技術や知識を習得し母国で活かすために在留し実習を重ねます。最長でも5年の在留となるため、5年以上の長期的な採用は難しいかもしれません。
対して特定技能ビザは、人手不足の解消を目的とした在留資格です。専門的な知識を持った外国人の採用が可能なため企業への貢献度が高く、技能実習ビザよりも成果が得られやすいでしょう。
特定技能ビザの取得する具体的な流れについて、より知りたい方は以下の記事をご確認ください。
特定技能ビザの取得方法は?具体的な申請フローやあてはまる業種などを解説
特定技能ビザは技能実習ビザから移行することもできる
外国人が技能実習修了後も日本での就労を希望する場合は、特定技能ビザへの移行が可能です。特定技能ビザに移行すれば、帰国せずに最長5年間働けます。
ただし、技能実習ビザから特定技能ビザ1号へ移行するには、以下の要件を満たさなくてはいけません。
- 技能実習ビザ2号を良好に修了している(技能実習計画に従い2年10か月以上適切に実習を修了)
- 技能実習ビザの職種や作業内容と特定技能ビザ1号の対象職種に関連性がある
特定技能ビザの取得には「日本語能力試験」と「技能試験」に合格する必要がありますが、技能実習ビザ2号を良好に修了している場合、免除措置が適用されます。
また、技能実習ビザ3号修了後でも、技能実習計画を満了していれば特定技能ビザ1号への移行が可能です。なお、技能実習1号から特定技能ビザへの移行は認められていません。
技能実習ビザから特定技能ビザへの移行には、外国人本人と雇用企業側それぞれで書類を準備し、在留資格変更の申請をします。申請に必要な書類は、主に以下のとおりです。
- 在留資格変更許可申請書
- 特定技能外国人支援計画書
- 技能実習の修了証明書 など
提出書類は複雑で不備が認められないため、出入国在留管理庁の公式情報を確認しましょう。
技能実習ビザから特定技能ビザへの移行時に必要な書類作成や申請は、行政書士の申請代行サービスをご活用ください。不備のない書類作成で、申請をスピーディーに進めます。
外国人労働者を受け入れる企業が押さえておくべきポイント

外国人労働者を受け入れる企業が押さえておくべきポイントは、主に以下の3つです。
- 特定技能ビザと技能実習ビザでは採用の流れが異なる
- 外国人労働者の在留資格をしっかりと確認する
- 技能実習制度は2030年に廃止が予定されている
特定技能ビザと技能実習ビザでは採用の流れが異なる
特定技能ビザと技能実習ビザの採用の流れには、それぞれに違いが見られます。特定技能ビザは、以下の流れで採用を進めます。
- 海外の送出会社や日本の人材紹介会社へ依頼
- 採用・特定技能雇用契約の締結
- 特定技能支援計画の申請
- 在留資格の申請・認定
- 入国・雇用企業での就労開始
団体監理型に基づく技能実習ビザの採用の流れは、以下のとおりです。
- 監理団体へ加入
- 監理団体を通じた紹介・採用
- 技能実習計画の申請
- 在留資格の申請・認定
- 入国・技能実習開始
特定技能ビザと技能実習ビザでは、人材紹介を求める場所や申請時の提出書類が異なるため注意しましょう。
また、提出書類に不備があると再提出を求められます。必要な書類は早めに揃えておき、間違いのないよう提出しましょう。
書類作成や手続きには時間や手間がかかります。申請の代行は行政書士へご依頼ください。
外国人労働者の在留資格をしっかりと確認する
外国人労働者を受け入れる際は、在留資格の有無や資格内容をチェックしましょう。在留資格のない外国人を雇って働かせるのは、違法行為です。
また、外国人労働者を働かせる際は「業務内容に適した在留資格か」をよく確認するのも大切です。
特定技能ビザは就労を目的とした在留資格である一方、技能実習生は国際貢献を目的とした制度です。就労が目的ではなく、職種や業務内容が非常に細かく限定されているのが特徴です。在留資格に認められていない業務の就労を許可した場合、雇用企業側は「不法就労助長罪」に問われます。不法就労助長罪では、最大3年の懲役または300万円以下の罰金、もしくはその両方が科されます。
外国人を受け入れる際は、在留資格の内容を確認し、法令に基づいた運用を徹底しましょう。
参考:https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/000513844.pdf
技能実習制度は2030年までに廃止が予定されている
2027年頃から「育成就労制度」の法改正が始まり、2030年には技能実習制度の廃止が予定されています。育成就労制度は、人材確保と人材育成を目的とする新たな制度です。
現在の技能実習ビザは通算5年の在留が可能ですが、育成就労制度では3年の在留期間に変更となります。3年の在留期間中に日本語能力の向上を図り、特定技能1号の取得を目指すのが狙いです。
育成就労制度へ移行後は、技能実習生ではなく労働者として外国人を採用します。やむを得ない事情や本人の意向によっては転職が認められるなど変更点が多いため、今後の発表に注目しましょう。
参考:https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001301676.pdf
まとめ

特定技能ビザと技能実習ビザは、外国人を受け入れる日本の制度としての共通点がありますが、目的や就労範囲、在留期間などに違いが見られます。
特定技能ビザと技能実習ビザにはメリットやデメリットが存在するため、採用する際は企業の方針に合う制度を選びましょう。
そのため「申請をスムーズに進めたい」とお考えの方は、行政書士の申請代行サービスをご活用ください。
行政書士は、特定技能ビザや技能実習ビザなどの申請経験が豊富です。申請経験の少ない方が業務をこなすよりも、安心して申請が進められるでしょう。
無料相談も承っているため、お気軽にご相談ください。