「登録支援機関に委託するといくらかかるの?月額費用以外にも費用が発生するって本当?」
特定技能外国人の受入れを検討する企業にとって、登録支援機関にかかる費用は大きな関心事です。月額委託費の全国平均は28,386円(1人あたり)ですが、実際には人材紹介料・送り出し機関手数料・行政書士報酬など、月額以外の費用が大きなウエイトを占めます。さらに2026年1月の行政書士法改正により、これまで委託費に含まれていた書類作成が別途費用になるなど、コスト構造にも変化が起きています。
この記事では、2026年最新の費用相場をもとに以下のポイントを徹底解説します。
- 月額委託費・初期費用・行政書士報酬の詳細な内訳と相場
- 受入れ人数別の自社支援との年間コスト比較シミュレーション
- 助成金活用・国内採用など実践的なコスト削減テクニック
費用の全体像を正しく把握し、予算計画に反映させることで、安心して外国人材の受入れを進められます。自社に最適な受入れ体制を選びましょう。
特定技能外国人の受入れにかかる費用の全体像
特定技能外国人を受け入れる際の費用は、大きく「初期費用」「月額ランニングコスト」「都度発生する費用」の3つに分けられます。まずは全体像を把握しましょう。
費用の3つのカテゴリ
| カテゴリ | 主な費用項目 | 発生タイミング |
|---|---|---|
| 初期費用 | 人材紹介料、送り出し機関手数料、渡航費、住居初期費用 | 採用時に1回 |
| 月額ランニングコスト | 登録支援機関への月額委託費 | 毎月 |
| 都度発生する費用 | 行政書士報酬(在留資格申請・更新)、通訳・翻訳費用 | 申請・更新のたび |
国内採用 vs 海外採用の総額比較
採用ルートによって初期費用に大きな差が出ます。以下は1名受入れの場合の目安です。
| 費用区分 | 国内在住者の採用 | 海外からの採用 |
|---|---|---|
| 初期費用合計 | 50〜80万円 | 86.5〜198万円 |
| 年間ランニングコスト | 28〜58万円 | 28〜58万円 |
| 初年度総額 | 78〜138万円 | 114.5〜256万円 |
国内在住者の採用なら、送り出し機関手数料や渡航費が不要になり、初期費用を30〜120万円程度削減できます。技能実習2号からの移行であれば、人材紹介手数料も不要になるケースがあります。
なお、2024年末時点で特定技能の在留外国人数は284,466人に達しており、2028年までの受入れ見込数は82万人に設定されています。登録支援機関の数も約11,194件まで増加しており、競争の激化に伴い費用やサービス内容に差が出やすくなっています。複数の機関から見積もりを取り、費用だけでなく支援の質も含めて比較検討することが重要です。
月額委託費の相場と内訳|基本料金に含まれるもの・含まれないもの
登録支援機関への月額委託費は、受入れ企業にとって最も身近な費用です。しかし「月額○万円」の中に何が含まれているかは機関によって大きく異なります。
月額委託費の相場
| 項目 | 金額(1人あたり/月) |
|---|---|
| 全国平均(出入国在留管理庁資料) | 28,386円 |
| 最多価格帯 | 20,000〜25,000円 |
| 一般的な相場レンジ | 15,000〜30,000円 |
全体の約9割が月額30,000円以下に収まっています。採用人数が多い場合はボリュームディスカウントを適用する機関もあるため、5名以上の受入れを予定している場合は交渉してみましょう。なお、月額1万円以下の極端に安い機関は、支援の質が低い可能性があるため注意が必要です。定期面談の形骸化や緊急時の対応不備など、支援の質に問題がある機関を選んでしまうと、外国人の離職・失踪リスクが高まり、結果的に再採用コストが発生して高くつくケースが少なくありません。
基本料金に含まれる支援項目
月額委託費には、法律で定められた義務的支援10項目の実施費用が含まれます。
- 3か月に1回以上の定期面談の実施(2025年4月からオンラインも可能に)
- 相談・苦情への母国語対応
- 日本語学習の機会提供(教室・教材の情報提供)
- 日本人との交流促進(地域行事等の案内)
- 転職支援(企業都合の離職時)
- 行政機関への届出・通報
基本料金に含まれないことが多い項目
以下の費用は月額委託費とは別に請求されるケースが多いため、契約前に必ず確認しましょう。
- 事前ガイダンス実施費:20,000〜50,000円(入国前に1回)
- 生活オリエンテーション実施費:30,000〜50,000円(入国後に1回、8時間以上)
- 出入国時の送迎交通費:実費精算が一般的
- 定期面談時の出張交通費・日当:遠隔地の場合に追加
- 通訳・翻訳の追加費用:少数言語の場合は特に高額
- 行政書士報酬:在留資格の申請・更新にかかる書類作成費用
注意: 契約方式には「月額一括型」と「項目別個別支払型」の2種類があります。月額一括型は費用の見通しが立てやすい反面、使わないサービスも含まれる場合があります。自社の状況に合った契約方式を選びましょう。
初期費用の詳細|人材紹介料・送り出し機関・住居費用
初期費用は、月額委託費と比べて金額が大きく、採用ルート(国内 vs 海外)によって大幅に変動します。各項目の内訳を確認しましょう。
人材紹介料の計算方法と相場
人材紹介料の設定方式は機関によって異なります。
| 料金方式 | 金額目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 固定費型 | 10万〜30万円/人 | 年収に関係なく定額。費用を予測しやすい |
| 年収連動型 | 年収の20〜30% | 年収250万円なら50〜75万円。高年収ほど高額 |
技能実習2号から特定技能への移行の場合は、すでに日本で就労している人材のため、人材紹介手数料が不要になるケースもあります。移行を前提とした採用戦略はコスト面で大きなメリットがあります。固定費型と年収連動型のどちらが有利かは、採用する人材の年収水準によって異なるため、事前に試算してから契約方式を選びましょう。
送り出し機関への手数料(国別比較)
海外から特定技能外国人を採用する場合、二国間取決め(BA)に基づく認定送り出し機関を通す必要がある国があります。手数料は国によって大きく異なります。
| 国名 | 手数料目安 | 備考 |
|---|---|---|
| ベトナム | 約66万円 | 政府規定は3,600ドル以下だが実態は上回る傾向 |
| 中国 | 約58万円 | 地域差あり |
| ミャンマー | 約29万円 | 比較的安価 |
| インドネシア | 約23万円 | 政府間取決めにより安定 |
| フィリピン | 約9万円 | 最も低額 |
住居関連の初期費用
外国人労働者の住居確保にかかる初期費用は以下の通りです。
- 敷金・礼金・前家賃等:20〜40万円
- 家電・家具・生活用品:数万円〜(中古・リサイクル品の活用で削減可能)
- 航空券(片道):5〜10万円(海外採用の場合)
- 健康診断費用:8,000〜10,000円/人
住居関連費用は外国人本人の負担とすることも可能ですが、事前に合意を得ておく必要があります。企業が負担することで人材の定着率が向上する傾向にあるため、福利厚生の一環として検討する価値があります。なお、社宅や寮を用意している企業であれば、敷金・礼金等の費用を大幅に抑えられます。複数名の受入れを予定している場合は、ルームシェア型の社宅を用意することで1人あたりの住居コストを半分以下に削減できるケースもあります。
行政書士報酬の相場|2026年法改正で何が変わったか
2026年1月の行政書士法改正により、登録支援機関が報酬を得て申請書類を作成することが明確に違法化されました。この影響で、行政書士報酬は以前よりも見えやすい費用項目になっています。
申請種類別の報酬相場
| 申請種類 | 報酬相場 | 発生タイミング |
|---|---|---|
| 在留資格認定証明書交付申請 | 10〜20万円 | 海外から新規採用時 |
| 在留資格変更許可申請 | 9〜20万円 | 国内在住者の在留資格変更時 |
| 在留期間更新許可申請 | 4〜10万円 | 在留期間の更新ごと |
特定技能は提出書類が多く複雑なため、一般的な就労ビザの申請よりも報酬が高くなる傾向があります。行政書士が在籍する登録支援機関を選べば、支援と申請をワンストップで対応でき、連携コストを抑えられます。
2026年法改正による実質コスト増の影響
改正前は、登録支援機関が月額委託費の中で書類作成を行うケースがありました。しかし改正後は、たとえ「無償」を謳っていても、月額支援委託料を受け取りながら書類を作成する行為は違法リスクが極めて高いとされています。
注意: 改正行政書士法では「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」書類を作成する行為が禁止されています。違反した場合は個人に1年以下の懲役または100万円以下の罰金、法人にも両罰規定で罰金刑が適用されます。受入れ企業は、書類作成を行政書士・弁護士に直接依頼するか、自社で行う体制を整備する必要があります。
この法改正により、年1回の在留期間更新で4〜10万円の行政書士報酬が新たに「見える費用」として発生するようになりました。10名を受け入れている企業の場合、年間で40〜100万円の追加コストになる計算です。この費用を抑えるためには、行政書士が在籍する登録支援機関を選び、支援と申請をセットで依頼する方法が最も効率的です。支援委託と申請業務を別々の機関に分けると、情報の二重入力や連携の手間が発生し、結果的にコストが膨らむ傾向があります。
自社支援との年間コスト比較シミュレーション
登録支援機関への委託と自社支援では、年間コストにどの程度の差が出るのでしょうか。受入れ人数別にシミュレーションしてみましょう。
受入れ人数別の年間コスト比較
| 受入れ人数 | 委託の年間費用 | 自社支援の年間費用 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 1名 | 約30万円 | 約15〜25万円 | 5〜15万円 |
| 5名 | 約150万円 | 約30〜60万円 | 90〜120万円 |
| 10名 | 約300万円 | 約50〜100万円 | 200〜250万円 |
| 20名 | 約600万円 | 約80〜150万円 | 450〜520万円 |
※委託費用は月額25,000円/人で試算。自社支援費用は支援担当者の人件費(兼任前提)、管理ツール、通訳費用等を含む概算です。
損益分岐点の目安と判断のポイント
コスト面だけで見ると、10名前後が損益分岐の目安と言われています。ただし、自社支援を選ぶ場合は以下の要件を満たす必要があります。
- 過去2年以内に中長期在留者の受入れ・管理の実績があること
- 生活相談業務の経験がある支援責任者を選任すること
- 外国人が理解できる言語で対応できる体制を整備すること
ポイント: 初めて外国人を受け入れる企業は「過去2年以内の受入れ実績」がないため自社支援の要件を満たせません。まずは登録支援機関に委託してノウハウを蓄積し、実績を作ってから段階的に自社支援へ移行するのが現実的な戦略です。
コスト削減の実務テクニック|助成金・国内採用・段階的移行
特定技能外国人の受入れコストを適正に抑えるための実践的なテクニックを紹介します。
助成金の活用|人材確保等支援助成金
外国人労働者の就労環境整備に取り組む企業は「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」を活用できます。
- 支給額:1制度導入につき20万円(上限80万円)の定額支給
- 必須要件:雇用労務責任者の選任、就業規則等の多言語化
- 選択要件:苦情・相談体制の整備、一時帰国休暇制度、社内マニュアルの多言語化のいずれか
- 離職率要件:措置実施後6か月間の外国人労働者の離職率が15%以下
- 申請先:管轄の都道府県労働局
このほか、自治体独自の補助金(採用活動費補助、住宅支援、日本語教育支援など)も各地域で設けられています。地元のハローワークや商工会議所に相談して、利用可能な制度を確認しましょう。
国内在住者の採用で初期費用を大幅削減
国内にすでに在住している外国人(留学生や技能実習修了者)を採用すれば、海外採用と比べて30〜120万円/人の初期費用を削減できます。
- 送り出し機関手数料(9〜66万円)が不要
- 渡航費(5〜20万円)が不要
- 住居が確保済みの場合は住居初期費用も不要
特に技能実習2号を修了した外国人は、同じ分野であれば特定技能の技能試験が免除されるため、即戦力として採用できるメリットもあります。すでに日本での生活に慣れており、日本語能力も一定レベルに達していることが多いため、生活オリエンテーションや日本語学習支援の負担も軽減されます。国内在住の留学生も同様で、日本の大学や専門学校を卒業している場合は、日本文化への理解や日本語コミュニケーション能力が高い傾向にあります。
特定技能2号への移行で月額委託費をゼロに
特定技能2号に移行すると義務的支援が不要になるため、登録支援機関への月額委託費が発生しなくなります。2号への移行は分野ごとの技能試験に合格する必要がありますが、長期的なコスト削減効果は非常に大きいです。
企業としては、外国人労働者の2号取得を支援する体制(試験対策の研修、日本語学習の機会提供など)を整えることが、人材定着とコスト削減の両面で有効な投資です。現在、特定技能2号の対象分野は介護を除く全分野に拡大されており、多くの分野で2号への移行が可能になっています。月額2〜3万円の委託費が0円になるインパクトは、5名受入れなら年間120〜180万円の削減に相当します。
隠れコスト・追加費用の注意点|契約前に必ず確認すべきポイント
登録支援機関との契約で後悔しないために、見落としがちな費用項目と契約時の確認ポイントを押さえておきましょう。
契約書で確認すべき費用項目チェックリスト
- 事前ガイダンス・生活オリエンテーションの費用:月額に含まれるか、別途請求か
- 送迎の交通費:実費精算か、月額に含まれるか
- 定期面談の出張費:遠隔地の場合の追加費用の有無
- 通訳・翻訳費用:対応言語と追加費用の有無
- 行政書士報酬:機関に行政書士が在籍しているか、別途手配が必要か
- 最低契約期間と解約条件:中途解約の違約金の有無
- 外国人が離職・失踪した場合の対応と費用:追加費用が発生するか
在留資格更新のたびに発生する費用
特定技能1号の在留期間は1年・6か月・4か月のいずれかです。在留期間の更新のたびに以下の費用が発生します。
- 行政書士報酬:4〜10万円/回
- 収入印紙代:4,000円
- 各種証明書の取得実費:数百円〜数千円
在留期間が4か月の場合は年3回の更新が必要になり、行政書士報酬だけで年間12〜30万円の負担になる可能性があります。在留期間1年を取得できれば更新回数を減らしてコストを抑えられるため、更新時の申請内容の充実が重要です。在留期間の長さは、受入れ企業の受入れ体制や支援実績、外国人本人の就労状況などを総合的に審査して決定されます。適切な支援体制を整備し、定期届出を遅滞なく提出するなど、コンプライアンスを徹底している企業ほど、長い在留期間が認められやすい傾向にあります。
ポイント: 費用の安さだけで登録支援機関を選ぶと、支援の質が低く外国人の離職・失踪につながるリスクがあります。再採用には人材紹介料(30〜100万円)が再度発生するため、結果的に高くつきます。費用の内訳を透明に開示している機関を選び、適正な費用で質の高い支援を受けることが、長期的なコスト最適化の鍵です。



