物流倉庫は、2026年1月23日の閣議決定(国の会議で正式に決めること)で、特定技能と育成就労の新しい対象分野に加わりました。 倉庫業者などは、倉庫内の作業を担う外国人を、直接雇用できるようになります。
ただし、2026年11月4日時点で、特定技能の技能評価試験(本試験)の開始時期と、受入れに必須の「協議会」の加入受付は、まだ決まっていません。 「2027年4月から、すぐに雇える」と言い切れる状況ではない点に注意してください。
この記事は、外国人採用が初めての物流倉庫の経営者・人事担当者の方に向けて、次の疑問に順番にお答えします。
- 自社は受入れの対象になるのか(派遣は使えるのか)
- どんな外国人材が来るのか(試験・日本語・フォークリフト)
- 育成就労と特定技能は、どちらから始めるべきか
- 費用はいくらか。登録支援機関に頼むべきか
- 結論が出ていない今、何から準備すればよいか
初めての外国人採用なら育成就労ではなく「まず特定技能から」をおすすめします。 理由は第1章で、支援体制の考え方は第4章で、詳しく説明します。
※本記事は2026年11月4日時点の情報です。試験・協議会・開始時期は、今後の発表で変わる可能性があります。申請前に、国土交通省・出入国在留管理庁の最新情報をご確認ください。
特定技能「物流倉庫」とは?結論と全体像
結論|新分野に追加された。ただし開始時期はまだ確定していない
物流倉庫は、特定技能1号と育成就労の両方の対象に追加されました。 一方で、いつから雇えるかは、試験と協議会の準備しだいです。
決まっていることと、まだ決まっていないことを、表で整理します。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 決定済み | 2026年1月23日の閣議決定で、特定技能・育成就労の対象に追加 |
| 決定済み | 受入れ見込数(国全体の上限の目安)は、特定技能1号が11,400人、育成就労が6,900人 |
| 決定済み | 育成就労制度の運用開始は2027年4月1日(施行日前の申請受付は2026年9月1日から) |
| 決定済み | 人材派遣による受入れは不可。直接雇用・フルタイムが前提 |
| 未決定 | 技能評価試験(本試験)の開始時期。国土交通省のページでは「調整中」(2026年10月時点) |
| 未決定 | 分野別協議会の設置と、加入受付の時期 |
| 未決定 | 特定技能での受入れ開始日。民間の解説には「2027年4月予定」とするものもあるが、公式資料で明記されているのは育成就労の日付 |
つまり、「2027年4月」は育成就労の運用開始日であり、特定技能の開始日と同じとは限りません。情報を見るときは、どちらの制度の日付なのかを必ず確認しましょう。
新制度の全体像|特定技能と育成就労の違い
育成就労は、技能実習に代わる新しい制度です。 未経験の人を、原則3年かけて育て、特定技能1号の水準に引き上げることを目的としています。その後、特定技能1号に移ることで、さらに通算5年まで働けます。
2つの制度を比べると、次のとおりです。
| 項目 | 育成就労 | 特定技能1号 |
|---|---|---|
| 目的 | 未経験者を3年かけて育てる | 試験に合格した人を、即戦力として受け入れる |
| 在留期間 | 原則3年 | 通算5年まで |
| 運用開始 | 2027年4月1日 | 試験・協議会の準備中(開始日は未定) |
| 物流倉庫の受入れ見込数 | 6,900人 | 11,400人 |
| 入国時の日本語 | 制度の細目は今後の発表で確認 | JLPT N4(基本的な日本語を理解できるレベル)またはJFT-Basic A2以上 |
【専門家の見解】初めての外国人採用なら、まず特定技能から始めることをおすすめします。 理由は2つです。
- 育成就労は、まったく新しく始まる制度だからです。 特定技能は2019年4月から運用されており、届出・支援・更新の実務の経験が、行政書士や支援会社に蓄積されています。一方、育成就労は2027年4月が1年目です。実際に運用して初めて分かる点が多く、受入れ企業が手探りになりやすい制度です。
- 特定技能は、試験に合格した人を採用できるからです。 未経験者を3年かけて育てる育成就労に比べ、教育の負担を軽くできます。
ただし、物流倉庫の特定技能も、試験と協議会の準備待ちです。そのため、「特定技能を軸に準備を進めつつ、開始日の発表を待つ」という進め方が現実的です。
特定技能1号のみ|2号はない
物流倉庫には、特定技能2号がありません。 特定技能1号は、通算5年が上限です。
このため、現時点で、同じ物流倉庫の仕事を5年を超えて続けられる制度上のルートは確認できていません。今後の運用で変わる可能性があるため、公式の発表をこまめに確認してください。
採用計画を立てるときは、次の点を頭に入れておきましょう。
- 「5年で入れ替わる前提」で、教育・引き継ぎの仕組みを作る
- 永住の申請に必要な「就労資格での在留5年」には、特定技能1号の期間が数えられない
- 家族の帯同は、1号では原則できない
対象業務と受入れ企業の要件|自社は対象か

できる業務・できない業務
物流倉庫分野で任せられるのは、倉庫の中での作業です。 配送(運転)や、事務・清掃だけの仕事は対象外です。
| 区分 | 具体例 |
|---|---|
| できる業務 | 入庫(荷物を受け入れる)、保管(ピッキング・仕分け・梱包)、出庫(出荷する) |
| できる業務 | ハンディターミナルを使った、WMS(倉庫管理システム)の操作や在庫データの入力 |
| できる業務 | フォークリフトの操作(別途、技能講習の修了が必要) |
| できない業務 | 事務や清掃だけの仕事 |
| できない業務 | 配送ドライバーの業務(運転は「自動車運送業」分野の対象) |
| できない業務 | 小売店のバックヤードだけでの作業 |
| できない業務 | 包装されていない食品に、直接触れる作業 |
採用前に、「この人に任せる仕事の大半が、上の『できる業務』に入るか」を確認しましょう。たとえば、「午前は仕分け、午後は配送トラックの運転」という働き方は、運転の部分が対象外になります。
受入れできる企業の3つのタイプ
受入れができるのは、次の3タイプのいずれかに当てはまる企業です。
| タイプ | 具体例 | 注意点 |
|---|---|---|
| ① 倉庫業者 | 倉庫業の登録を受けた企業が、自社の倉庫で作業する | 登録を受けていることが前提 |
| ② 荷役請負事業者 | 倉庫業者から委託を受けて、倉庫内の作業を請け負う企業 | 委託元との協定書が必要(次の項目で説明) |
| ③ 貨物自動車運送事業者 | 運送の許可を持ち、運賃とは別に料金を受けて、倉庫作業も行う企業 | 運賃とは別に、倉庫作業の料金を受けていること |
この3タイプのどれにも当てはまらない場合は、対象外になる可能性があります。 たとえば、メーカーや小売店が、自社の物流センターを自社で運営しているケースです。該当するか迷う場合は、国土交通省の運用要領や、行政書士に確認してください。
派遣は不可|直接雇用・フルタイムが前提
特定技能「物流倉庫」では、人材派遣での受入れは認められません。 外国人を、自社(受入れ企業)が直接雇い、フルタイムで働いてもらうことが前提です。
押さえておきたいポイントは、次の4つです。
- 派遣会社から、外国人スタッフを1人ずつ受け入れることはできない
- 日本人と同じ業務をする場合、報酬は日本人と同等以上にする
- 社会保険に加入させ、労働時間を適切に管理する
- 倉庫業者から委託を受けて作業する場合は、委託元と「雇用の継続性に関する協定書」を結ぶ(委託契約が終わっても、外国人の雇用が続くよう、共同で責任を持つ約束)
人手が足りないときの、「とりあえず派遣で」という使い方ができない点は、日本人の採用と大きく違います。繁忙期の波は、日本人スタッフや他の仕組みで調整する計画を、先に立てておきましょう。
WMSの利活用と、協議会への報告義務
物流倉庫分野では、WMSを活用していることが、受入れの条件になっています。 WMS(Warehouse Management System)とは、荷物の入出庫や在庫を、システムで管理する仕組みです。
条件になっているのは、次の3つの機能をすべて備えたWMSの利活用です。
- 入庫管理:荷物がいつ、いくつ入ったかを記録する
- 在庫管理:どこに、何がいくつあるかを把握する
- 出庫管理:何をいつ、どこへ出したかを記録する
さらに、協議会に加入してから1年以内に、WMSの利活用の状況を協議会へ報告し、確認を受ける義務があります。
紙やExcelで管理している倉庫は、次の順番で確認しましょう。
- 現在の管理方法で、上の3つの機能が揃っているかを確認する
- 足りない場合は、システム会社に、導入や機能の追加にかかる期間と費用を問い合わせる
- 協議会の加入から1年以内に、報告できるスケジュールを組む
外国人材の要件|試験・日本語・フォークリフト

取得ルート|試験合格ルートと、育成就労からの移行ルート
物流倉庫の特定技能1号には、大きく2つのルートがあります。
| ルート | 内容 | 採用側のイメージ |
|---|---|---|
| ルートA:試験合格 | 物流倉庫分野の技能評価試験と、日本語の試験に合格した人 | 人材紹介会社を通して、合格者を探す |
| ルートB:育成就労からの移行 | 育成就労で働いた後、特定技能1号に切り替える人 | 自社で育てた人を、そのまま特定技能へ移す |
ルートBでも、技能評価試験と日本語試験の合格が必要とされています(民間の解説による。制度の細目は、今後の公式発表で確認してください)。「育成就労になれば、自動的に特定技能に進める」わけではありません。
技能評価試験と日本語要件
日本語は、JLPT N4またはJFT-Basic A2以上が目安です。
- JLPT N4:基本的な日本語を理解できるレベル。ゆっくりな日常会話や、簡単な指示がわかる程度
- JFT-Basic A2以上:国際交流基金が実施する、生活・仕事で使う基礎的な日本語を測る試験
技能評価試験は、2026年2月末までに試行(テスト実施)が終わりました。しかし、本試験の開始時期は、「調整中」で未定です。
これは採用スケジュールに直接影響します。本試験が始まって合格者が出るまで、人材紹介会社も特定技能の物流倉庫人材を紹介しにくいからです。さらに、合格後も、在留資格認定証明書の審査(一般的に1〜3か月程度)や、ビザの取得、渡航の準備に数か月かかります。「試験開始の発表から、実際に働くまでは、半年前後を見ておく」というつもりで、余裕を持った計画にしましょう。
フォークリフトは別途「技能講習」が必要
フォークリフトを運転するには、日本の法令に基づく講習の修了が必要です。 母国の資格は使えません。
- 最大荷重1トン以上のフォークリフト:「技能講習」を修了する。未経験者の場合、学科・実技で合計31時間(4〜5日程度)が目安(講習機関によって異なります)
- 最大荷重1トン未満のもの(電動パレットトラックなど):「特別教育」で操作できる場合がある
注意したいのは、学科試験が日本語で行われる点です。日常会話ができても、「最大荷重」「揚高」「荷重中心」のような専門用語でつまずき、不合格になる例があります。
企業としては、次の準備をしておくと安心です。
- 講習機関に、外国人向けのルビ付きテキストや、通訳・サポートの有無を問い合わせる
- 講習の費用を、どちらが負担するかを決める
- 講習の日を、勤務扱いにするかを決める
- これらを、雇用契約書や支援計画に書面で残す
費用負担や勤務扱いをあいまいにしないことが、後のトラブルを防ぎます。
受入れ手続き・スケジュール・支援体制
受入れの流れ
受入れの基本の流れは、次の7ステップです。
- 自社が対象か確認する(第2章の3タイプ、直接雇用、WMS)
- 協議会に加入する(在留申請の前に加入する必要。この協議会は、まだ設置前)
- 人材を募集・選考する(試験合格者、または育成就労からの移行者)
- 雇用契約を結び、支援計画を作る(報酬は日本人と同等以上)
- 在留資格を申請する(海外から呼ぶ場合は「在留資格認定証明書」、日本にいる人は「在留資格変更」)
- 入国・就労を開始する(空港送迎や生活オリエンテーションを行う)
- 就労後の届出を続ける(定期的な届出と、変更があったときの届出。頻度は運用要領で確認)
スケジュールの目安|いつ何が起こるか
| 時期 | 出来事 | 状況 |
|---|---|---|
| 2026年1月23日 | 閣議決定で物流倉庫が追加 | 決定済み |
| 2026年9月1日 | 育成就労の、施行日前の申請受付が開始 | 開始済み(申請前に協議会への加入が必要) |
| 2026年9月18日 | 運用要領別冊(特定技能)が公表されたとする解説あり | 解説記事による。最新の掲載状況は公式で確認 |
| 2026年度中 | 協議会の設置 | 予定(加入受付の時期は未定) |
| 未定 | 特定技能の技能評価試験(本試験) | 調整中 |
| 2027年4月1日 | 育成就労制度の運用開始 | 決定済み |
支援体制|自社支援か、登録支援機関への委託か
特定技能1号を受け入れる企業は、「義務的支援 10項目」を行う必要があります。 義務的支援とは、外国人が日本で安心して働くために、法律で定められた10種類のサポートです。主な内容は、次のとおりです。
- 入国前のガイダンス、空港への送迎
- 住居の確保と、生活の契約(銀行口座、携帯電話など)の支援
- 生活オリエンテーション、役所の手続きの同行
- 日本語を学ぶ機会の提供
- 相談・苦情への対応、日本人との交流の促進
- 3か月に1回以上の定期面談
この支援を、自社で行うか、「登録支援機関」に委託するかを選びます。登録支援機関とは、受入れ企業に代わって支援を行う、国に登録された事業者です。
【現場のリアルなアドバイス】登録支援機関への支援料は、年間で見ると多額になるため、自社支援をおすすめします。
自社支援と登録支援機関への委託を、年間コストで比較した詳しいシミュレーションは、次の記事でも解説しています。
▶ 自社支援vs登録支援機関委託|特定技能の支援体制を年間コストで徹底比較シミュレーション
具体的な金額で確認しましょう。委託料の目安は、出入国在留管理庁の調査による平均で、1人あたり月約28,386円と紹介されています。年間にすると、次の金額です。
| 受入れ人数 | 委託料の年間目安(月額28,386円×12か月) |
|---|---|
| 1人 | 約34万円 |
| 5人 | 約170万円 |
| 10人 | 約340万円 |
| 20人 | 約680万円 |
さらに、入社時の初期費用として1人10〜20万円が別途かかる場合があります。この料金は、2027年4月以降に値上がりすると予測されています。月額3〜5万円になるとすると、1人あたり年間約36〜60万円、つまり10人で360〜600万円になります。
一方、自社支援の費用は、人数に比例しにくいのが特徴です。目安は次のとおりです。
- 総務・人事が兼任する場合の追加人件費:年間120〜180万円
- 専任の担当者(正社員)を置く場合:年間300〜360万円
- 通訳費用:オンライン通訳なら月数千円〜数万円
- 多言語資料の作成(初期):10〜30万円
これらは、ご紹介する解説記事(下記リンク)の目安です。この解説記事のシミュレーションでは、10人前後を境に自社支援が有利になるとされています。物流倉庫は、一度に複数人を受け入れるケースが多いため、自社支援を前提に計画する価値があります。
なお、自社支援を行うには、次の4つの要件を満たす必要があります。
- 受入れ実績:過去2年間に、就労系の在留資格(技能実習、特定技能、技術・人文知識・国際業務など)の外国人を、適正に受け入れ・管理した実績がある
- 支援責任者と支援担当者の選任:各、1名以上(兼任可)。支援担当者は、外国人の直接の上司ではいけない
- 外国語での対応体制:母国語などで、面談・相談に対応できる
- 支援記録の作成と保管:雇用契約の終了から1年間保存する
初めて外国人を雇う企業は、この1つ目の「受入れ実績」でつまずくことがあります。 その場合は、最初は一部だけを委託する(一部委託)や、実績ができるまで一時的に委託し、後に自社支援へ切り替える道もあります。自社が要件を満たせるかどうかは、専門家に相談して確認するのがおすすめです。
費用・人数上限・採用戦略

採用にかかる費用の内訳(目安)
費用は、「採用時」「毎年」「入社後の教育」の3つに分けて考えると、抜け漏れが防げます。
| 区分 | 項目 | 目安 |
|---|---|---|
| 採用時 | 人材紹介料・送出し関連費用 | 紹介会社・出身国で異なる(見積りで確認) |
| 採用時 | 在留資格の申請(海外から呼ぶ場合) | 在留資格認定証明書の手数料はかからない。行政書士への報酬は1人10〜20万円 |
| 採用時 | 住居・生活の立ち上げ | 社宅や借り上げ社宅の初期費用(物件により異なる) |
| 毎年 | 在留期間の更新手数料 | 在留期間1年の場合、窓口33,000円・オンライン27,000円(2026年10月1日〜) |
| 毎年 | 更新手続きを行政書士に頼む場合の報酬 | 1人5〜15万円 |
| 毎年 | 支援費用 | 自社支援なら人件費。委託なら月約28,386円/人 |
| 入社後 | フォークリフトの技能講習・特別教育 | 講習機関によって異なる(見積りで確認) |
金額を記載していない項目は、紹介会社や講習機関によって大きく変わるためです。紹介会社は3社以上から見積りを取り、「何が費用に含まれるか(渡航費、日本語教育、返金規定など)」を比べましょう。
なお、金額は2026年11月時点の目安です。在留手数料は、在留期間や減額の対象かどうかで変わります。申請前に、出入国在留管理庁の案内で確認してください。
受入れ上限と、他社との人材獲得競争
物流倉庫の受入れ見込数は、特定技能1号11,400人、育成就労6,900人です。 この見込数は、上限として運用されると報じられています。特定技能の数字は、2026年度からの3年間の上限です。
この数字は、日本全体の結果です。物流倉庫を持つ企業は、全国に数多くあります。多くの企業が一気に動くと、採用競争が激しくなる可能性があります。見込数に達すると、受入れが止まる可能性もあるため、次のように、早めにできることを進めましょう。
- 協議会の加入受付が始まったら、すぐに手続きをとる
- 紹介会社に、早い段階で「物流倉庫の候補者」の紹介を相談しておく
- 自社支援の体制や、社宅の確保を先に進めておく
特定技能・育成就労・自動車運送業・既存の在留資格の使い分け
初めてなら、この表で自社に合う選択肢を確認してください。
| 選択肢 | 向いている企業 | 注意点 |
|---|---|---|
| 特定技能1号(物流倉庫) | 初めて外国人を雇う企業。試験合格済みの人を、早めに戦力にしたい企業 | 試験・協議会を待つ必要。通算5年が上限で、2号はない |
| 育成就労(物流倉庫) | 未経験者を長期的に育てる体力があり、制度の運用を見ながら検討できる企業 | まったく新しい制度。実務の前例が少ない。のちに特定技能へ移るには、試験合格が必要 |
| 特定技能1号(自動車運送業) | 配送ドライバーを確保したい企業 | 倉庫内の作業は対象外。別の分野の要件を確認 |
| 永住者・定住者などの在留資格の人 | 今すぐ人手が必要な企業 | 就労の制限はない。在留カードで確認し、ハローワークへ届出 |
【専門家の見解】 育成就労そのものが2027年から新しくスタートする制度です。制度が固まるまで様子を見て、特定技能で経験を積んだあとに検討するのが、安全な進め方です。
定着率を高める工夫(待遇・日本語・キャリアパス)
特定技能は、同じ分野の中であれば転職できます。 そのため、定着は待遇と職場環境で決まります。具体的には、次のような工夫があります。
- 報酬を見直す:同じ作業をする日本人の時給・昇給の表と比べ、差がつかないようにする(これは、受入れの条件でもあります)
- 職場をわかりやすくする:多言語のマニュアルや、ピクトグラム(絵文字の案内)を使う
- 日本語を学べる時間を用意する:週に1回、勤務時間内に学習の時間をとる
- 5年間のキャリアパスを示す:例として、1年目はピッキング、2年目はWMS操作とフォークリフト、3年目以降は班長・リーダー候補、といった昇進の道筋を、入社時に示す
企業が今から準備すること
準備チェックリスト
試験と協議会が未定でも、今できる準備はたくさんあります。 次のチェックリストを、上から順に確認してください。
- 自社が、倉庫業者・荷役請負事業者・貨物自動車運送事業者のどれに当たるか、確認した
- 外国人に任せたい作業を書き出し、「できる業務」に収まるか確認した(運転・事務・清掃だけは対象外)
- 派遣ではなく、直接雇用・フルタイムで雇える体制か確認した
- WMSに、「入庫・在庫・出庫」の3機能がそろっているか確認した
- 同じ業務をする日本人の賃金表を出し、同等以上の報酬を設定できるか確認した
- 支援責任者と、直接の上司ではない支援担当者の候補を決めた
- 母国語や通訳で対応できる体制(通訳・翻訳ツール)を考えた
- 自社支援・一部委託・全部委託の方針と、年間の予算を決めた
- 社宅・住居の確保方法を検討した
- フォークリフト講習の費用負担と、勤務扱いのルールを決めた
- 国土交通省・出入国在留管理庁の発表を確認する担当者を決めた
- 行政書士や紹介会社に、一度相談した
情報収集の方法(国土交通省・出入国在留管理庁・協議会)
試験と協議会は未定のため、公式の発表を定期的に確認することが、最も確実な準備です。 確認先は、次の3つです。
- 国土交通省:物流倉庫分野を所管し、技能評価試験や協議会のお知らせを出します
- 出入国在留管理庁:特定技能の運用要領、在留手続き、手数料を掲載します
- 分野別協議会:設置されたあと、加入の案内が出ます
発表があったときは、この記事の「2026年11月4日時点」と見比べて、何が変わったかを確認してください。
待つ間にできる採用活動
特定技能を待つ間も、外国人の採用はできます。 大事なのは、在留資格で就労できるかどうかを確認することです。
- 在留カードを確認する:永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者のような、身分・地位に基づく在留資格の人は、仕事の制限がなく働けます
- 働けない在留資格に注意する:「短期滞在」などは就労できません。採用の前に必ず確認します
- ハローワークへ届出する:外国人を雇い入れたときは、「外国人雇用状況の届出」が必要です(雇用保険に加入する場合は、雇い入れの翻月の10日まで)
- 求人票を準備する:仕事内容は、倉庫作業(入庫・保管・出庫)を基に、具体的に書きます
よくある質問(FAQ)
特定技能の物流倉庫は、いつから始まりますか?
特定技能での受入れ開始日は、まだ確定していません。 育成就労制度の運用開始は、2027年4月1日です。一方、特定技能は、技能評価試験(本試験)の開始時期と、協議会の加入受付が未定です(2026年11月時点)。民間の解説には「2027年4月予定」と書くものもありますが、公式資料で明記されているのは育成就労の日付です。
物流倉庫で、特定技能2号はありますか?
ありません。 物流倉庫分野は、特定技能1号のみです、1号は通算5年が上限です。家族の帯同も、原則としてできません。
派遣会社から、特定技能外国人を受け入れられますか?
受け入れられません。 物流倉庫分野では、人材派遣での受入れは認められておらず、直接雇用・フルタイムが前提です。
配送ドライバーも、物流倉庫の分野で雇えますか?
雇えません。 物流倉庫分野の対象は、倉庫内の作業です。ドライバーの運転業務は、「自動車運送業」分野の対象です。
育成就労と特定技能、どちらから始めるべきですか?
初めての外国人採用なら、まず特定技能から始めることをおすすめします。 育成就労は、まったく新しく始まる制度です。実務の前例が少ないため、まずは運用の実績がある特定技能で経験を積むのが安全です。ただし、物流倉庫の特定技能も試験・協議会を待つ状況です。第1章の比較表もあわせてご確認ください。
フォークリフトの資格は、母国のものでも使えますか?
使えません。 日本の法令に基づく技能講習(最大荷重1トン以上)や特別教育(1トン未満)を、日本で受ける必要があります。学科は日本語で行われるため、ルビ付き教材や、講習機関への相談をおすすめします。
協議会への加入は、いつ・どうやってするのですか?
協議会は、まだ設置前で、加入受付の時期も未定です。 2026年度中に設置される予定とされています。在留申請の前に加入しておく必要があるため、国土交通省の発表をこまめに確認してください。
すでに雇っている外国人を、物流倉庫の特定技能に切り替えられますか?
在留資格を変更することで、切り替えられる可能性はあります。 ただし、物流倉庫分野の技能評価試験と、日本語要件の合格が必要です。また、「技術・人文知識・国際業務」のように、専門的な業務が前提の在留資格では、単純作業だけの仕事は認められないのが原則です。現在の在留資格で、どこまでの作業が認められるかは、在留資格ごとに異なるため、行政書士に確認してください。
登録支援機関に、必ず委託しないといけませんか?
いいえ、自社で支援を行うこともできます。 現場のアドバイスとしては、年間の委託料が多額になるため、自社支援をおすすめします。ただし、「過去2年間の受入れ実績」などの要件があります。初めての企業は、一部委託から始める道もあります。詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
▶ 自社支援vs登録支援機関委託|特定技能の支援体制を年間コストで徹底比較シミュレーション
まとめ|2027年に向けて、今から確認すべきこと
物流倉庫は、特定技能・育成就労の新分野ですが、特定技能の開始時期はまだ確定していません。 だからこそ、「決まっていること」を基に、今から準備を進めておくことが重要です。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 決まっていること | 対象業務、受入れ企業の3タイプ、派遣不可、WMSの利活用、日本語要件の目安、受入れ見込数、育成就労の開始日2027年4月1日 |
| まだ決まっていないこと | 技能評価試験の本試験、協議会の設置と加入受付、特定技能の受入れ開始日 |
今すぐできる次のアクションを、優先順に紹介します。
- 自社が対象かを確認する(第2章の3タイプ、WMS、直接雇用)
- 支援体制の方針を決める(専門家のアドバイスとしては、自社支援を前提に検討)
- 特定技能を軸に準備する(育成就労は、制度が固まるのを見てから検討)
- 国土交通省・出入国在留管理庁の発表を定期的に確認する
専門家(行政書士・登録支援機関)に相談するタイミング
相談のタイミングは、「自社が対象か迷ったとき」と「支援体制を決める前」です。 特に、次のような場合は、早めに相談しましょう。
- 倉庫業の登録や、委託・請負の関係が複雑で、自社が対象か判断しにくい
- 自社支援の要件(受入れ実績など)を満たせるかわからない


