技人国ビザで転職するとき、在留資格の変更は必要?
「技人国ビザで働いているけれど、転職したい」「転職するとビザは取り直しになるの?」と不安に思う方は多いはずです。
先に結論をお伝えしますと、
同じ技人国のままなら変更許可は原則不要
技人国ビザ(在留資格「技術・人文知識・国際業務」)で働く方が、転職後も技人国に当たる仕事を続けるなら、在留資格変更許可申請は原則として必要ありません。たとえば、ITエンジニアが別のIT企業のシステム開発職に移る場合や、海外取引を担当する方が別の会社の貿易業務に移る場合がこれにあたります。
ビザは「会社」ではなく「活動内容」に対して与えられるため、技人国の範囲内の仕事であれば、勤務先が変わっても在留資格はそのまま使えます。
ただし「何もしなくてよい」わけではありません。退職と入社のたびに入管へ届出が必要で、次の更新では転職後の状況が審査されます。
在留資格の変更が必要になるケース
次のような場合は、転職の前に在留資格変更許可申請が必要です。
- 技人国に当たらない仕事に就く(飲食店のホール、工場のライン作業、介護現場など)
- 起業して経営者になる(「経営管理」への変更)
- 特定技能など、別の就労系在留資格に移る
許可を受ける前に新しい活動を始めると、資格外活動や不法就労にあたるおそれがあります。
転職時にやることは「届出・確認・更新」の3つ
- 退職と入社のそれぞれで、14日以内に入管へ届出をする
- 転職先の業務が技人国に当たるか確認する(必要なら就労資格証明書を取る)
- 次の在留期間更新に向けて、書類と納税・社会保険の状況を整える
転職前に確認!技人国ビザで認められる仕事の条件
転職活動の段階で「その仕事は技人国で認められるか」を確かめておくことが大切です。内定後に問題が見つかると、取り返しがつかなくなるおそれがあります。
学歴・職歴と業務内容の関連性
技人国では、大学などで学んだ専攻(または10年以上の実務経験など)と、従事する業務に関連性が求められます。この関連性は取得時だけでなく、転職後の更新審査でも確認されます。
たとえば情報工学を専攻した方がシステム開発職に就く場合は、関連性を説明しやすいでしょう。同じ方が営業職に移る場合は、説明が難しくなります。
国際業務(通訳・翻訳・語学指導・海外取引など)では、原則として3年以上の実務経験も求められます。ただし、大学を卒業した方が翻訳・通訳・語学指導に就く場合は、この実務経験は不要とされています。
技人国で認められない業務に注意
技人国は、専門的・技術的な知識を必要とする仕事のための在留資格です。次のような業務が中心になる転職は、基本的に認められません。
- 飲食店での接客・調理・配膳
- 小売店での品出し、レジ打ち
- 工場でのライン作業、倉庫でのピッキング
「通訳として採用されたが、実際はほとんど店頭の接客」といった場合も問題になります。募集要項の職種名だけで判断せず、入社後の具体的な仕事内容まで確認してください。
給与水準と転職先企業の安定性
報酬は、同じ業務に就く日本人と同等以上であることが求められます。また、転職先の経営の安定性・継続性も審査されます。入管では受入れ企業を、規模や納税額に応じて「カテゴリー1〜4」に分けています。上場企業などはカテゴリー1、前年の源泉徴収税額が1,000万円以上の企業はカテゴリー2、それ未満はカテゴリー3、新設企業などはカテゴリー4が目安で、カテゴリー3・4では提出書類が増える傾向があります。
内定後・入社前のチェックリスト
- 雇用契約書や労働条件通知書に、具体的な職務内容が書かれているか
- その職務内容は、自分の専攻や職歴と関連しているか
- 給与は日本人社員と同等以上か
- 社会保険(健康保険・厚生年金・雇用保険)に加入するか
- 会社の決算状況や事業の継続性に問題はないか
職務内容があいまいな雇用契約書は、更新時に追加資料を求められる原因になります。
技人国ビザの転職手続きの流れ【14日以内の届出が最重要】

退職後14日以内の届出
技人国などの就労系在留資格を持つ中長期在留者は、勤務先との契約が終了したとき、終了した日から14日以内に出入国在留管理庁へ届出をする義務があります。これは「活動機関に関する届出(離脱)」と呼ばれます。
入社後14日以内の届出
新しい会社と契約を結んだときも、その日から14日以内に、新しい勤務先の情報を届け出ます(「活動機関に関する届出(移籍)」)。離脱と移籍は別々の手続きなので、退職と入社の両方で忘れないでください。
届出の方法と、忘れたときの対処
届出は、出入国在留管理庁の電子届出システム(オンライン)、地方出入国在留管理局の窓口、郵送のいずれかでできます。手数料はかかりません。窓口へ行く場合は在留カードを必ず持参してください。
届出を怠ると、罰則の対象になる可能性があります。更新審査でも「法令を守っていない」と見られ、不利に働くおそれがあります。気づいた時点ですぐに届出をしましょう。
【行政書士の体験談】14日以内の届出を守ることの重要さ
◆技人国から永住申請をしたお客様に、過去の転職回数がかなり多い方がいました。ただ、その方は転職のたびに毎回14日以内に入管へ届出をきちんとされていました。そのため、こちらもスムーズに申請準備を進められ、とても助かりました。
転職の回数が多いと、審査では「なぜ転職を繰り返したのか」「在留状況に問題はないか」が気になるところです。届出が毎回きちんとされていれば、法令を守ってきた事実を示す材料になります。結果として、更新などの場面で追加資料や理由書を求められる手間も減らせます。
転職自体は悪いことではありません。大切なのは、転職のたびに必要な手続きを欠かさないことです。届出は手数料もかからず、オンラインで数分で済みます。転職が決まったら、スマートフォンのカレンダーに「退職日+14日」「入社日+14日」の期限を入れておくと安心です。
就労資格証明書とは
就労資格証明書は、「この外国人は、現在の勤務先で、現在の在留資格に基づく就労活動ができる」ということを、入管が公的に証明する書類です。取得は任意ですが、転職の場面では次のような利点があります。
- 転職先の仕事が技人国の範囲内かを、更新前に確認できる
- 次の更新で、審査がスムーズになりやすい
- 新しい勤務先も、安心して雇用を続けられる
専攻と業務の関連性に不安がある場合や、在留期限まで期間が長く残っている場合に検討する価値があります。審査には1〜2か月程度かかることもあるため、在留期限が近いときは更新申請を優先したほうがよい場合もあります。手数料は制度改正で変わる可能性があるため、申請前に入管庁の公式サイトで最新の金額を確認してください。
転職後のビザ更新と費用【2026年10月の手数料改定に対応】
更新のタイミングと必要書類
在留期間更新許可申請は、在留期限の3か月前から行えます。転職した場合も、次の期限が来る前に更新が必要です。一般的に次のような書類を準備します。
- 在留期間更新許可申請書
- パスポート、在留カード
- 転職先の雇用契約書(労働条件通知書)の写し
- 転職先の会社の登記事項証明書、決算書の写し、会社案内など(カテゴリーにより異なる)
- 住民税の課税証明書・納税証明書
- 転職理由書(転職直後は、あわせて提出することが望ましい)
在留手数料の改定内容
在留手続の手数料は、2026年10月1日から変わっています。これまで在留資格の変更・期間更新は一律6千円でしたが、許可される在留期間に応じて変わり、1年なら3万3千円、5年以上は7万5千円などとなります。
入管庁が示した金額案では、在留期間3か月以下が1万円、1年が3万3,000円、3年以上5年未満が6万4,000円、5年以上が7万5,000円です。2026年9月30日までに受付が完了した申請には、許可日や納付日が10月以降になっても改定前の手数料が適用されます。すでに10月に入っているため、これから更新する方は新しい手数料が基本になります。
オンライン申請なら、在留期間「3か月以下」を除いて最大1万円が割り引かれる仕組みも示されています。納付方法も変わっているため、申請前に出入国在留管理庁の公式サイトで最新情報を確認してください。手数料が上がった分、不許可による再申請は費用面でも負担が大きくなります。最初から準備を整えて申請することが、結果的に近道です。
参照元:在留許可手数料の額の改定について
転職直後の更新で見られるポイント
- 転職先の業務が技人国に該当し、学歴・職歴と関連しているか
- 給与が日本人と同等以上か
- 転職先の経営が安定しているか
- 転職の際の届出を、きちんと行っているか
- 税金や社会保険料を、きちんと納めているか
とくに税金・社会保険は近年重視される傾向があります。転職時に国民健康保険や国民年金へ切り替えた期間がある方は、納付状況を確認しておきましょう。
【行政書士の現場から】転職理由書は「一貫性」と「ビジョン」で書く
転職理由書に決まった書式はありません。行政書士として理由書を書くとき、私たちが大切にしているのは次の2点です。
① 将来のビジョンが固まっていて、そのために転職したいという思いがあること
② これまで学んできたこと・働いてきたことが、一貫していること
この2つを軸にすると、読み手の入管職員に「場当たり的な転職ではない」と伝わります。たとえば、次の流れで書くと整理しやすくなります。
- 大学などで学んだ内容と、前職で身につけたこと
- 転職を決めた理由(不満ではなく、キャリアの方向性として)
- 転職先で担当する業務と、これまでの学びとのつながり
- 今後どのように成長し、日本で働き続けたいか
「給料が低かった」「人間関係が合わなかった」といった理由も、事実を曲げずに「より専門性を活かせる環境を求めた」と前向きに整理できます。ただし、事実と異なることを書くのは絶対にやめてください。内容に一貫性があれば、転職回数が多い場合でも納得してもらいやすくなります。
転職でビザに影響が出る・不許可になりやすいケース
無職期間が3か月を超える場合
技人国ビザの方が、正当な理由なく3か月以上、在留資格に基づく就労活動をしていないと、在留資格の取消し対象になる可能性があります。退職から次の就職までが長引いているときは、できるだけ早く転職先を決めてください。病気や会社都合の退職後の就職活動など、正当な理由があれば考慮されることもありますが、判断は個別の事情によります。応募履歴や面接の記録は残しておきましょう。
専攻・経歴と業務内容がかけ離れている場合
更新で不許可になりやすい典型例が、専攻・経歴と業務のミスマッチです。たとえば文学部卒で、転職先の仕事が機械設計というケースでは、関連性の説明が難しくなります。事前に就労資格証明書を検討するか、専門家に相談してください。
届出漏れ、納税・社会保険の未納
退職や入社の届出漏れ、住民税の滞納、社会保険の未加入は、更新審査でマイナスです。転職時は、住民税の納付が給与天引きから自分で納める方法に変わるなど、手続きが増える時期です。納付書が届いたらすぐに支払いましょう。
転職回数が多い場合と、永住申請への影響
転職回数そのものを理由に、直ちに不許可になるわけではありません。ただし、短期間の転職を繰り返すと、就労の安定性や継続性を気にされることがあります。そのため、次の3つを心がけてください。
- 転職のたびに、14日以内の届出を欠かさない
- 税金・社会保険を滞りなく納める
- 転職の理由に一貫性を持たせ、説明できるようにしておく
永住申請を考えている方は、転職のタイミングも含めて、早めに専門家へ相談することをおすすめします。永住許可の手数料も大幅に上がっているため、申請の時期は慎重に検討してください。
【企業の方へ】技人国の外国人を中途採用するときの確認事項
この記事は転職する外国人の方向けですが、受け入れる企業側にも押さえてほしいポイントがあります。
採用前に確認する在留カードと就労資格
中途採用では、まず在留カードで在留資格と在留期限を確認します。在留資格が技人国であっても、採用後に任せる業務が技人国の範囲外であれば、不法就労にあたるおそれがあります。不法就労と知らずに雇用した場合でも、企業側の責任を問われる可能性があるため注意してください。
職務内容は、雇用契約書にできるだけ具体的に記載しましょう。応募者の学歴・職歴と業務の関連性が不安なときは、就労資格証明書の取得を提案するのも一つの方法です。
採用後の届出と、更新を見据えた準備
外国人本人が入管に届出をするのと同時に、企業側も「中長期在留者の受入れに関する届出」を行うことができます(努力義務)。採用後は、本人の届出が済んでいるかを確認してあげると親切です。更新時期には、決算書や会社案内など、企業側で用意する書類もあります。ほとんどの場合、更新の準備は在留期限の3か月前から始められます。
技人国ビザの転職に関するよくある質問
在留期限が近いときに転職してもよい?
在留期限が迫っていても転職は可能です。ただし、転職してから更新するか、更新してから転職するかを慎重に考える必要があります。転職直後の更新は、転職先での実績が少ないぶん、会社の状況や雇用契約書が審査の中心になります。期限まで3か月を切っているなら、早めに専門家へ相談してください。
派遣会社への転職は可能?
派遣会社への転職も、技人国に当たる業務であれば可能です。ただし、実際に働く派遣先での業務が技人国の範囲内であることが条件です。派遣先で単純作業に従事する場合は認められません。契約の際は、派遣先での具体的な職務内容を書面で確認しましょう。
家族滞在ビザの家族はどうなる?
配偶者や子どもが「家族滞在」で在留している場合、転職しても家族の在留資格はそのまま続きます。ただし、ご本人の在留資格が取り消されたり、更新が不許可になったりすると、家族の在留にも影響が及びます。
行政書士に相談したほうがよいケース
次のような場合は、転職の前または直後に、申請取次行政書士へ相談することをおすすめします。
- 転職先の業務が、技人国の範囲内かわからない
- 専攻と仕事内容の関連性に自信がない
- 退職から次の就職まで、期間が空きそうだ
- 在留期限が近い
- 転職回数が多く、永住申請も考えている
- 過去に届出漏れや納税の遅れがある
まとめ
技人国ビザの転職は、同じ分野の仕事を続ける限り、在留資格の変更は原則不要です。ただし、次の3点は必ず押さえてください。
- 退職・入社のたびに、14日以内に入管へ届出をする
- 転職先の業務が技人国に当たるか、入社前に確認する
- 更新に向けて、転職理由書・納税・社会保険を整えておく
転職は、キャリアを広げる大きなチャンスです。手続きを正しく行えば、ビザの心配をせずに、新しい職場で力を発揮できます。



