人手不足が深刻な介護施設では外国人材の採用を視野に入れることも欠かせません。
外国人材の採用には特定技能または技能実習制度の利用がおすすめです。この記事ではそれぞれの制度の仕組み、費用や人材定着のコツについて比較解説していきます。 介護職で外国人材の採用をお考えの方は、本記事を参考にしてください。
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特定技能「介護」と技能実習「介護」、そもそも何が違う?
まずは介護分野で外国人材を採用する場合の、特定技能と技能実習の制度的な違いについて解説していきます。外国人を企業で受け入れる点においては同じですが、受け入れの目的には違いが見られます。
制度上の目的の違い
特定技能「介護」
特定技能「介護」のビザは、介護現場での深刻な人手不足の解消を目的としています。すでに一定の介護に関する専門知識や用語について理解を持つ外国人労働者の受け入れは即戦力となり、労働力の確保につながります。
介護では2025年現在のところ、特定技能2号の制度はありません。5年の在留期間中、または満了後に特定活動ビザで介護福祉士の国家資格に合格し、介護ビザへ切り替えることで在留期間の制限はなくなります。特定技能「介護」についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
→特定技能「介護」とは?取得条件や注意点・企業側の必要要件などを解説
技能実習「介護」
技能実習「介護」のビザは、日本で先進的な介護技術や知識を身に付けた外国人が、帰国後に習得内容を母国で活かすことを狙いとしています。
日本国外の経済発展や技術向上など、主に国際貢献が目的です。技能実習1年目は「技能実習1号」2~3年目は「技能実習2号」、4~5年目は「技能実習3号」の在留資格で就労できます。
技能実習の在留資格では5年以上日本で就労することはできず、帰国しなければなりません。
介護施設での受け入れ人数の上限の違い
特定技能「介護」と技能実習「介護」では1つの介護施設で受け入れることができる外国人材の人数に制限があります。
特定技能「介護」
特定技能「介護」では常勤している日本人の人数と同数以下である必要があります。例えば常勤職員が10人いる場合、特定技能「介護」の外国人材は同時在籍で10人までしか採用できません。
技能実習「介護」
技能実習「介護」では、十分な技術指導の実施を重視しているためより厳しい人数制限が設けられています。受け入れ施設の常勤職員の数が30人以下の場合は年間3人まで、31人から40人の場合は年間4人までと定められています(優良認定されている場合はこの2倍)。
同時在籍人数については、以下を超えてはならないとされています。
- 1号技能実習生:常勤職員の総数
- 2号技能実習生:常勤職員数の総数の2倍
- 3号技能実習生:常勤職員数の総数の3倍
介護における特定技能と技能実習の制度比較
まとめると以下のようになります。
特定技能ビザ | 技能実習ビザ | |
目的 | 人手不足の解消 | 日本の技術を学ぶこと |
上限 | 同時在籍人数に制限あり | 年間採用人数と同時在籍人数に制限あり |
在留期間 | 特定技能1号:通算5年以内 特定技能2号:制度なし 介護福祉士取得すれば、 介護ビザへ移行可能。 | 技能実習1号:1年 技能実習2号:2年 技能実習3号:2年 通算5年が上限 |
介護現場で採用前にチェック!気になるポイントで見る違い
それぞれの制度内容や目的に違いがあることはわかりましたが、実際に採用してみて、特定技能と技能実習、どちらが介護現場としてはよいのか気になるのではないでしょうか。実態について詳しく解説してきます。
採用までの流れと雇用のしやすさ
特定技能は海外にいる外国人を日本に呼び寄せるほかに、すでに日本にいる外国人を雇用することが可能です。
人材の募集は日本人社員と同様、人材紹介会社や送り出し機関から紹介してもらいます。
それに対し技能実習は海外から呼び寄せるしか採用の方法はありません。
人材の確保は「団体管理型」とよばれる監理団体へ加入し、そこを通じて採用します。「企業単独型」という直接受け入れる方法もありますが、98%の企業が「団体管理型」方式で受け入れを行っています。
参考:中小規模に特化した人材採用支援企業 | 株式会社アルフォース・ワン
特定技能と技能実習、採用コストと支援体制の負担感
介護職員の採用コスト
渡航費、生活準備費用、月額管理費(2万~4万)などはそれぞれに共通する費用ですが、それに加えて特定技能の採用で人材紹介会社を利用した場合は紹介料が発生し、相場は30万ほどです。
技能実習は監理団体と送出機関の利用が必須のため、監理団体への入会費など含めて40万~60万ほどかかります。
求人方法や入会する監理団体によって費用は変わりますが、特定技能だとトータルで50万~80万、技能実習だと60万~100万ほどになっています。決して安くはありませんが、定着してくれることを考えるとコストに見合うのではないでしょうか。
特定技能と技能実習、外国人材の支援体制について
特定技能1号には受け入れ企業に生活オリエンテーション、空港への送迎、公的手続きのサポート、母国語での面談など義務づけられている支援があります(外部委託可能)。企業で体制が整っていれば大丈夫ですが、特定技能を採用して初めの数年は登録支援機関へ委託することをおすすめします。
対し、技能実習は監理団体が支援をしてくれますので、企業の負担は特定技能と比較して少ないと言えるでしょう。
実際の介護現場での即戦力性の差
特定技能「介護」は、決められた試験に合格することで取得が可能です。合格が必要な試験は、以下の3つです。
- 介護技能評価試験
- 国際交流基金日本語基礎テスト(もしくは日本語能力試験N4以上)
- 介護日本語評価試験
特定技能「介護」では、ほかの分野にはない「介護日本語評価試験」の合格も必須となります。介護日本語評価試験は、介護現場での業務を遂行する際に必要な日本語能力を持ち合わせているかを評価する試験です。
技能実習「介護」では送り出し機関より2~3か月の日本語教育と、高齢者への接し方・簡単な介助方法についての研修が実施されていますが、即実践レベルではないことがほとんどです。介護施設ではゼロから教えるつもりで受け入れる準備が必要です。
採用事例から見る介護現場での実態と今後の展望
それでは実際に特定技能と技能実習、それぞれ介護現場でどのように活躍しているのでしょうか?安定して長期的に働いてもらうためのポイントも併せて解説していきます。
どちらの制度が現場で評価されている?
介護の現場では、人手不足の補充という観点からすると特定技能「介護」が圧倒的に評価されています。ある程度の技能と日本語力を身に着けた上で就労開始するので、即戦力となってくれることに期待ができます。
だからといって技能実習の活用が難しいというわけではありません。
技能実習「介護」の場合は監理団体が間に入ってくれるので、企業と実習生とのトラブルが発生しにくい、というメリットがあります。
技能実習期間終了後も本人が日本での就労を希望する場合には特定技能「介護」へ移行することもできます。介護現場から見ると育成してから長期雇用へつなげるという道も開けます。
特定技能「介護」の訪問介護解禁について
2025年4月より特定技能「介護」で訪問介護サービスに従事することが可能になりました。
日本人ヘルパー希望者が減少している中、特定技能「介護」の外国人を訪問介護に配置できるようになった意義はや期待は非常に大きいです。
制度上、技能実習でも訪問介護サービスに従事することが可能にはなりましたが、労働内容の制限を考慮したり、満たすべき要件を考えると技能実習「介護」で訪問介護サービスに従事するというのはハードルが高いのが現状です。外国人ヘルパーによる訪問介護についてはこちらの記事でさらに詳しく解説しています。
【2025年改正】訪問介護事業者(ヘルパー)必見!特定技能制度活用ガイド
技能実習「介護」の廃止と育成就労制度への移行
技能実習の本来の目的は母国への技術の転移ですが、実際には労働力確保の手段として制度が利用されているケースも少なくはありません。技能習得とはいえない単純作業に従事させていることが多く、目的と実態が乖離しているという点が問題視されていました。
転職が認められないとという構造を利用した事業者も存在し、人権・労働環境面での問題も深刻視されています。
このような問題を受け、外国人にとって魅力的であり、選ばれる国になるよう技能実習制度は廃止され、2027年6月までに育成就労制度という新制度が導入される予定です。
技能実習制度が日本で学んだ技術を母国の発展に活かすことが目的だったのに対し、育成就労制度では外国人材が日本で就労しながらキャリアアップできるような制度となっています。
まだ情報が少ない状態ですが、今後の動向に注目しましょう。
参考:https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001301676.pdf
結局どっちがいいの?介護事業所のタイプ別戦略
特定技能「介護」、技能実習「介護」それぞれの違いや制度改正について見ていきましたが、採用するのであればどちらがいいのでしょうか。タイプ別におすすめの採用方法を見ていきましょう。
即戦力が欲しいなら特定技能
介護事業者のほとんどの方が外国人採用に踏み出す理由としてあげられるのは人手不足の解消です。限られた人員と時間の中、ゼロの状態から教育を始める体制や余裕がない状況の介護事業者もあるでしょう。業務理解が早く、即戦力として人手不足の解消を担ってくれるのは特定技能「介護」の人材です。
育成・送り出し国との関係重視なら技能実習
教育体制がすでに整っている場合や従業員の育成に力を入れている事業所であれば技能実習「介護」の外国人材が適しているのではないでしょうか。送り出し機関との継続的な関係を構築することにより、育成就労制度へのスムーズな移行も期待できます。
今は制度が形骸化して評価されにくい技能実習制度ですが、制度改正により、今後はより実効性のある制度として再評価されるのではないでしょうか。
制度改革を見据えた“ハイブリッド戦略”
特定技能「介護」と技能実習「介護」両方の制度を組み合わせることで「人手不足への応急措置」と「長期雇用を目指した人材育成」の両立が可能になり、採用の間口も広がります。
介護分野にはそれぞれの制度に受け入れ人数の上限があります。
特定技能と技能実習両方の制度で採用をすることで、トータルの在籍可能人数を増やすこができます。
安定した人材確保と、人手不足を根本から解消するためには、現場の状況や採用ニーズに応じて、制度を柔軟に使い分ける判断が重要です。
まとめ

外国人採用は制度理解と外国人材とのコミュニケーションかカギです。迷ったら専門家へ相談するのも手です。MIRAI行政書士事務所はビザ申請のプロなだけでなく、外国人材の採用に関する包括的なサポートを提供しております。外国人材の雇用に踏み出したいけれど不安がある方、忙しくてご自身で様々な手続きを行う時間が取れない方はぜひ、ご検討ください。