家族滞在ビザは扶養を目的とした在留資格のため原則就労不可ですが、「包括許可」や「個別許可」を得ることで週二十八時間まで働くことが可能です。制度を誤解したまま雇用すると不法就労助長罪に問われ、企業・本人双方に大きなリスクが生じます。
本記事では就労可否の判断基準、許可取得手順、契約時に押さえるべき労務管理のポイントを具体例を交えながら解説します。
家族滞在ビザで就労できるのか

家族滞在ビザで就労できるのか。家族滞在ビザは扶養を目的とした在留資格で、原則として就労は認められていませんが、出入国在留管理庁の資格外活動許可を得れば週二十八時間以内のアルバイトが合法となります。
許可には、すべてのパートタイム勤務を包括的に認める「包括許可」と、特定事業所や職務を個別に承認する「個別許可」の二種類があり、いずれも在留カード裏面に許可印が押されてから就労可能です。
無許可で働くと本人と雇用主が不法就労助長罪に問われ、三年以下の懲役または三百万円以下の罰金が科される恐れがあるため、手続き前の就労は厳禁です。
家族滞在ビザを持つ外国人が就労するための条件とは

家族滞在ビザを持つ外国人が就労するためには、特定の条件を満たす必要があります。主に「包括許可」と「個別許可」の2つの許可形態があり、これらを取得することで合法的に働くことが可能です。
包括許可
包括許可は、家族滞在ビザ保持者が週28時間以内でアルバイトなど収入活動を行う場合に最も利用される資格外活動許可です。
申請は、在留カード・パスポート・扶養者の収入証明などを添えて管轄入管へ提出し、許可が下りると在留カード裏面に「原則週28時間以内包括許可」と明示されます。
パートタイム先を追加するたびの再申請が不要なため利便性が高い一方、業種は風俗営業や風俗関連サービス、深夜帯の接客業を除くなど法令で禁止される範囲が存在します。
週28時間の上限は複数事業所勤務の合計で計算され、祝日や大学休暇中でも拡張されないため、勤務シフトの合算管理が不可欠です。
個別許可
個別許可は、家族滞在ビザ保持者が資格外活動のうち週28時間制限を超える短期イベント出演や特定技能を要する単発業務など、限定的な就労を行う際に必要となる手続きです。
申請時には雇用契約書、業務内容説明書、就労期間計画表、応募者の履歴書・資格証明など詳細資料を提出し、入管が活動の公益性や本人技能との関連性を審査します。
また、許可が下りれば在留カード裏面に活動先名称と期間が刻印され、その範囲内でのみ就労可能となります。
さらに、28時間制限が適用除外となる場合でも、深夜労働や風俗営業は依然として禁止され、期間終了後は自動で効力が失われるため継続勤務を望む場合は再申請が必要です。
家族滞在ビザを取得するための必要書類とは

家族滞在ビザを取得するための必要書類とは、在留資格認定証明書交付申請書、4×3センチ写真、パスポート写し、扶養者との身分関係を示す戸籍謄本・婚姻証明書・出生証明書、扶養者の課税証明書と納税証明書、在職証明書、住民票、賃貸借契約書写し、預金残高証明など多岐にわたります。
海外から呼び寄せる場合には返信用封筒と切手を同封し、国内在留中の変更申請では在留カード原本を提示します。書類は発行後3か月以内が原則有効で、外国語書面には日本語訳の添付が必須です。
家族滞在ビザを取得するための条件とは

家族滞在ビザを取得するためには、いくつかの重要な条件を満たす必要があります。これから解説する条件をクリアすることで、家族滞在ビザの取得が可能となります。
配偶者や子が実際に扶養を受けていること
配偶者や子が実際に扶養を受けていることが家族滞在ビザ審査の核心です。扶養実態は原則として同居と生活費負担の事実で評価され、別居婚や遠隔仕送りのみでは認められにくいとされています。
審査では住民票で同住所に登録されているか、銀行送金記録、家計費を負担するクレジット利用明細などが証拠となり、扶養者が収入の大半を支出していることを示す必要があります。
また、成人子女の場合でも大学在学中など経済的自立が難しい状況なら扶養関係を立証できますが、被扶養者が就労やアルバイトで一定以上の収入を得ている場合は家族滞在から定住者や技人国等への資格変更を指導されることがあります。
日本で一緒に暮らせるだけの経済力があること
家族滞在ビザを取得するためには、申請者が日本で家族と共に生活するための十分な経済力を持っていることが求められます。具体的には、生活費や住居費、教育費などを賄えるだけの安定した収入が必要です。
この経済力は、扶養者の収入証明書や納税証明書、預金残高証明書などを通じて証明されます。特に、扶養者が日本での生活を支えるために必要な金額は、地域や家族構成によって異なるため、事前にしっかりと調査しておくことが重要です。
家族関係の証明ができること
家族関係の証明ができることは、家族滞在ビザの要件の中でも書類準備の正確性が問われる部分です。
提出書類は戸籍謄本、婚姻証明書、出生証明書など原本または公証翻訳付きコピーが基本で、外国発行書面は外務省のアポスティーユまたは在外公館の認証が必要とされます。
また、離婚歴や再婚、養子縁組がある場合は関連する離婚判決書、養子縁組証書を併せて提出し、書面間の矛盾をなくすことが重要です。住民票に旧姓が残っている場合は改姓届やパスポート氏名変更記載を添付し、一貫性を示すと審査が円滑になります。
家族滞在ビザに関する注意点とは

家族滞在ビザを取得する際には、いくつかの注意点があります。これから説明する注意点をしっかり理解して、家族滞在ビザを取得することが重要です。
父母を呼び寄せることはできない
父母を呼び寄せることができない理由は、入管法上の家族滞在ビザが扶養を受ける配偶者・未成年子のみを対象に設計されているためです。
親を長期同居させるには「老親扶養ビザ」に相当する特定活動や長期滞在の特例申請が必要ですが、疾病や人道上の特別事情を証明しない限り許可されず、実務上は観光ビザでの短期滞在が現実的とされています。
また、特定活動でも全額扶養できる預金残高、診断書、身元保証書など膨大な資料が求められ、審査期間も6か月超かかる事例が多いです。
配偶者と離婚すると在留資格が無くなる
配偶者と離婚すると在留資格が無くなる点にも注意が必要です。家族滞在ビザは扶養関係を前提とするため、離婚が成立した瞬間に扶養実態が失われ資格取消しの対象となります。
また、離婚届を提出したら14日以内に届出を行い、6か月以内に就労系資格や定住者、日本人配偶者等に変更しなければ不法残留となります。
さらに、未就学児の親権を得た場合でも扶養者変更を伴う新たな在留資格が必要で、生活費や住居契約を裏付ける資料が求められます。
DV被害で住民票移動が難しいときは調停調書や保護命令を添付すると例外的に在留が認められる場合もあるため、専門家に早期相談し生活基盤と資格を同時に整えることが肝要です。
子が成人すると認められないこともある
子が成人すると認められないこともある理由は、家族滞在ビザが「扶養を受ける子」を対象とし、成人後に自立が期待されると扶養実態が無いと判断されるためです。
18歳を超えると更新審査で学費・生活費を親が負担している証拠や在学証明が厳格に求められ、アルバイト収入が多い場合や結婚・就職した場合は資格変更が指導されます。
また、22歳で大学院進学中の場合は預金残高証明や学費領収書、仕送り記録で扶養継続を立証すれば延長の余地がありますが、許可期間は一年程度に短縮されがちです。
さらに、扶養者が転職や帰国をすると子の滞在資格も連動して取り消されるリスクがあるため、親子双方で計画を共有し早期に就労系資格への切替えを検討することが重要でしょう。
留学ビザを持つ外国人の扶養者を呼び寄せる場合は条件が厳しい
留学ビザを持つ外国人の扶養者を呼び寄せる場合は条件が厳しいことを理解しましょう。審査では在籍校が家族帯同を認める課程か、留学生が学費と生活費に加え扶養者の生活費を賄えるかが確認されます。
具体的には、年間収入250万円前後以上、預金残高が学費・生活費の一年分超であること、出席率と成績が良好であることを通帳や成績証明で示す必要があります。日本語学校や専門学校在籍者は帯同申請が事実上認められず、大学以上が対象です。
さらに、審査期間は3か月以上かかり、不備があると不許可になります。呼び寄せる家族の関係証明書や住居契約書を含め綿密に準備し、経済状況や学業成績を改善した再申請計画も並行して立てると成功率が高まります。
まとめ
家族滞在ビザは、扶養を目的とした在留資格であり、原則として就労は認められていません。しかし、包括許可や個別許可を取得することで、一定の条件下で働くことが可能です。
就労を希望する場合は、許可の取得手続きや労務管理のポイントをしっかりと理解し、誤解を避けることが重要です。家族滞在ビザに関する注意点を把握し、適切な手続きを行うことで、安心して生活を送ることができるでしょう。