「育成就労で来てもらった外国人材に、長く働き続けてほしい。どんなキャリアパスがあるの?」
「育成就労は最長3年と聞いているが、その後はどうなるのか」「特定技能1号から2号に上がれる人はどれくらいいるのか」「最終的に永住まで目指せるのか」——こうした疑問を持つ企業担当者は多いと思います。
育成就労→特定技能1号→特定技能2号→永住許可という一本のキャリアパスが整備されたことで、日本で働く外国人材が「一生のキャリア」を描けるようになりました。企業にとっても、優秀な人材を長期にわたって定着させるチャンスです。
・育成就労から特定技能1号への移行に必要な試験と要件
・特定技能1号から2号へのステップアップの条件
・最終的に永住許可を取得するための道筋
本記事では、このキャリアパス全体を図解するとともに、企業が取るべき長期定着支援策を詳しく解説します。
育成就労→特定技能→永住:キャリアパスの全体像

2027年4月に施行予定の育成就労制度は、技能実習制度に代わる新たな外国人材受入制度です。育成就労から始まり、特定技能1号・2号を経て永住許可まで一貫したキャリアパスが設計されています。
| ステージ |
在留期間 |
家族帯同 |
転籍 |
| 育成就労 |
最長3年 |
不可 |
条件付きで可(転籍緩和) |
| 特定技能1号 |
通算最長5年(最長3年単位更新) |
不可 |
同一分野内で可 |
| 特定技能2号 |
無期限更新可 |
可(配偶者・子) |
同一分野内で可 |
| 永住許可 |
無期限 |
可 |
就労制限なし |
最短の想定では、育成就労3年+特定技能1号5年+特定技能2号5年以上=約13年で永住申請が可能です。長期の定着計画を最初から描くことが、企業にとっても外国人材にとっても重要です。
技能実習との大きな違い
技能実習制度では、2号良好修了者は技能試験が免除されて特定技能1号に移行できました。しかし育成就労制度では、特定技能1号に移行する際に必ず技能試験と日本語試験の合格が必要になります。試験合格なしに上のステージへ進むことはできません。
育成就労の概要:制度の基本を押さえる

育成就労制度は、2027年4月1日の施行に向けて準備が進んでいます。2026年4月15日からは監理支援機関の許可申請受付が開始される予定です。
育成就労制度の基本事項
- 在留期間:原則3年(試験不合格の場合は最長+1年の在留継続可)
- 対象分野:17分野(特定技能16分野から「航空」と「自動車運送業」を除外し、「物流倉庫」「リネンサプライ」「資源循環」の3分野を新設)
- 転籍:本人意向での転籍が一定条件下で認められる(技能実習では原則不可)
- 目的:人材育成と国際貢献、人手不足分野における人材確保
入国前から始まる日本語要件
育成就労では、入国前から段階的な日本語要件が課されます。
- 入国前(A1相当):JLPT N5合格、または認定日本語教育機関等によるA1相当の日本語講習受講
- 就労開始1年後:分野ごとに設定された日本語能力(A1〜A2の範囲内)の試験合格
- 特定技能1号移行時(A2相当):JLPT N4合格またはJFT-BasicのA2合格
育成就労→特定技能1号:移行に必要な試験と要件

育成就労から特定技能1号に移行するには、2つの試験に合格する必要があります。
移行要件(2つ必須)
| 要件 |
試験名・合格基準 |
| 日本語試験(A2相当以上) |
JLPT N4合格 または JFT-BasicのA2合格 |
| 技能試験 |
技能検定3級 または 特定技能1号評価試験の合格 |
試験に不合格だった場合、再受験のために最長1年の在留継続が認められます。ただし技能実習2号良好修了者に認められていた試験免除は、育成就労では適用されません。
特定技能1号の在留状況(2025年改正ポイント)
2025年10月の改正により、特定技能1号の在留期間が大幅に変わりました。
- 更新単位:従来の1年更新→最長3年単位での更新が可能に(企業・外国人双方の事務負担が大幅軽減)
- 通算5年から除外できる期間:産前産後・育児休業・病気療養・やむを得ない事情による休業
- 特別措置:特定技能2号試験で8割以上の成績を収めた者は、通算在留を最大6年まで延長可能
特定技能1号→2号:ステップアップの条件と試験

特定技能2号への移行は、1号より難しい試験と実務経験要件が求められます。しかし2号に移行できれば、在留期間が無期限更新可能になり、家族帯同も認められます。
特定技能2号の移行要件(共通)
| 要件 |
内容 |
| 技能試験 |
各分野の特定技能2号評価試験、または技能検定1級(一部2級) |
| 実務経験 |
多くの分野で管理・監督者として2年以上の経験が必要 |
| 日本語試験 |
漁業・外食業のみJLPT N3以上必須(他分野は免除) |
対象分野(11分野:2025年時点)
建設・造船舶用工業・工業製品製造業・自動車整備・航空・宿泊・農業・漁業・飲食料品製造業・外食業・ビルクリーニングの11分野が2号の対象です。介護・自動車運送業・鉄道・林業・木材産業は現時点で2号対象外です。
試験の難易度
多くの分野で合格率は30〜60%程度であり、技能検定1級の場合は最大7年の実務経験が必要なケースもあります。試験問題はN2相当の日本語で出題されることが多く、計画的な準備が不可欠です。
特定技能2号の生活:家族と日本に根を張る

特定技能2号に移行することで、外国人材の生活は大きく安定します。
特定技能2号で変わること
- 在留期間:3年・1年・6か月ごとの更新で、事実上無期限に日本に滞在できる
- 家族帯同:配偶者・子を日本に呼び寄せることが可能になる
- 支援義務の軽減:1号で課されていた義務的支援10項目の実施義務がなくなる
- キャリアアップ:管理・監督職への登用が正式に認められる
企業にとっても、2号人材は即戦力の管理職候補として位置づけられます。後輩の育成就労・特定技能1号人材のリーダーとして活躍してもらうことができます。
永住許可への道筋:2号から永住者へ

特定技能2号からの永住許可取得は、一定の条件を満たせば現実的に可能です。
永住許可の主な要件
- 日本在留期間:連続して10年以上の日本在留
- 就労資格での在留:10年のうち5年以上が「技能実習」「特定技能1号」以外の就労資格または居住資格での在留
- 生計要件:独立の生計を営むに足りる資産または技能
- 素行要件:素行が善良であること
現実的なキャリアパスのモデルケース
育成就労(3年)→特定技能1号(5年)→特定技能2号(5年以上)
特定技能2号として5年以上在留し、かつ日本在留通算10年以上になった時点で永住申請が可能です。最短でも約13年が目安になります。
なお、育成就労と特定技能1号の期間は永住許可の10年カウントに含まれますが、「就労資格での5年以上」のカウントには含まれません。特定技能2号に移行してからの在留期間が5年以上あることが重要なポイントです。
企業が取るべき長期定着支援策

優秀な外国人材を長期定着させるためには、各ステージに応じた計画的な支援が必要です。
育成就労期間中の支援(監理支援機関と連携)
- 日本語教育支援:A1→A2達成を目標とした語学学習サポート(授業費用補助など)
- 技能試験対策:特定技能1号移行を見据えた技能試験の受験支援・費用補助
- 転籍リスク軽減:賃金・待遇の改善により、本人意向転籍を防止
- 住居支援:社宅提供や住居費補助で生活基盤を安定させる
特定技能1号期間中の支援(登録支援機関と連携)
- 義務的支援10項目の確実な実施(生活オリエンテーション・日本語学習・定期面談など)
- 2号試験の受験支援:スキマ学習支援・受験費用補助・模擬試験の実施
- キャリアアッププランの明示:2号移行後の処遇・役職を入社時から提示する
特定技能2号移行後の支援
- 家族呼び寄せ支援:家族の住居・子どもの就学手続きのサポート
- 管理職登用:班長・主任・副店長など正式な管理職ポストへの登用
- 永住申請サポート:行政書士への申請委任の斡旋・費用補助
行政書士・登録支援機関と連携した一貫支援体制の構築
- 育成就労から永住まで、各在留資格変更申請を一元的に管理できる行政書士の活用
- 登録支援機関による義務的支援10項目の代行(自社支援が難しい中小企業に特に有効)
- 在留期限の一括管理サービスを活用し、更新漏れを防止
外国人材の長期定着は、一時的な採用コストを超えた長期的な投資です。育成就労→特定技能→永住という明確なキャリアパスを企業が示すことで、外国人材の定着率と意欲を大きく高めることができます。早い段階から専門の行政書士や登録支援機関と連携し、計画的な体制を整えることをおすすめします。