外国人社員が退職すると、その就労ビザは職を失った日から原則三か月以内に新たな就労先を確保するか在留資格を変更しなければ失効します。
十四日以内の退職報告を怠れば企業にも罰則が及び、本人が再就職できないまま滞在すると不法残留となる恐れがあります。
本記事では退職後の手続きフロー、電子申請や郵送の方法、再就職が難航した場合の選択肢を網羅的に解説します。
退職後3ヶ月以上経ったら就労ビザはどうなるのか

退職後3ヶ月以上経ったら就労ビザはどうなるのか、在留資格取消制度の視点から解説します。技術・人文知識・国際業務などの就労ビザは、有効期間内でも「正当な理由なく3か月以上就労活動を行わない場合」は取消対象になると入管法22条の4が規定しています。
求職中のハローワーク記録や面接証明があれば正当な理由として扱われるものの、全く活動が無いと聴聞後に取り消し・退去強制のリスクが高まります。
取り消されると以後5年間は上陸拒否にも繋がり得るため、退職後は早期に再就職か資格変更(特定活動・短期滞在・帰国)を検討し、在留カード裏面に変更許可が入るまで就労しないことが肝要です。
退職後に行うべき就労ビザの手続きとは

退職後、外国人社員は就労ビザの手続きを迅速に行う必要があります。これから解説する手続きを適切に行うことで、ビザの失効を防ぎ、合法的に日本に滞在することが可能になります。
14日以内に退職報告をする
14日以内に退職報告をする義務は入管法19条の16に規定されており、外国人本人だけでなく受入企業にも適用されます。
また、届出様式「所属機関等に関する届出」はウェブ・郵送・窓口のいずれかで提出可能で、届出を怠ると本人・法人それぞれ20万円以下の罰金、更新審査での減点、在留期間短縮の行政処分を受ける恐れがあります。
さらに、記載内容は退職日・理由・旧勤務先所在地などで、誤記があると訂正通知が来るため在留カードと雇用契約書で照合してから送信します。
退職後3か月以内に再就職する
退職後、外国人社員は原則として3か月以内に新たな就労先を見つける必要があります。この期間内に再就職が決まらない場合、就労ビザは失効し、不法残留のリスクが高まります。再就職を目指す際は、求人情報を積極的に探し、面接を受けるなどの行動が求められます。
また、再就職先が決まった場合は、速やかに入国管理局に届出を行うことが重要です。これにより、ビザの更新や変更手続きがスムーズに進むため、余裕を持った行動が推奨されます。
再就職先が決まったら入国管理局に届出を出す
再就職先が決まったら入国管理局に届出を出す手続きは、在留資格を維持する最後のステップです。
新勤務先が元の就労ビザの活動範囲に合致する場合は「所属機関等変更届」を14日以内に提出し、同時に就労資格証明書を申請すれば、人事労務が在留資格該当性を迅速に確認できます。
また、業務内容が異なる場合は在留資格変更許可が必要で、変更申請を出してから許可が下りるまでの間は旧ビザで就労できないため、内定先と調整して雇用開始日を決めることが重要です。
さらに、電子届出システムを利用すれば夜間でも申請でき、受理メールが到着した時点で届出義務は履行されたと見なされます。
退職時に行う届出を出す方法とは

退職後の手続きにおいて、就労ビザに関する届出は非常に重要です。これには主に三つの方法があります。これから説明する方法を理解し、適切に手続きを進めることが大切です。
インターネットを利用した電子申請を利用する
退職後の就労ビザに関する手続きは、インターネットを利用した電子申請を通じて行うことができます。この方法は、時間や場所を選ばずに手続きを進められるため、非常に便利です。
まず、入国管理局の公式ウェブサイトにアクセスし、必要な書類をダウンロードします。次に、必要事項を記入し、必要書類を添付してオンラインで提出します。電子申請の利点は、申請状況をリアルタイムで確認できる点や、書類の提出が簡単に行える点です。
ただし、提出期限を守ることが重要であり、退職後3か月以内に手続きを完了させるよう心掛けましょう。
出入国在留管理局の窓口に届出書を直接持参する
退職後の手続きとして、出入国在留管理局の窓口に届出書を直接持参する方法があります。この方法は、書類の提出を確実に行いたい方や、疑問点をその場で解消したい方にとって非常に有効です。
窓口では、担当者が直接対応してくれるため、必要な書類や手続きについてのアドバイスを受けることができます。
持参する際は、事前に必要な書類を確認し、漏れがないように準備しておくことが重要です。また、混雑状況によっては待ち時間が発生することもあるため、余裕を持った時間に訪れることをおすすめします。
届出書を郵送で提出する
退職後の就労ビザに関する届出書を郵送で提出する際は、いくつかの注意点があります。まず、必要な書類をすべて揃え、正確に記入することが重要です。届出書には、退職日や新たな就労先の情報など、必要な情報を漏れなく記載しましょう。
郵送する際は、信頼性の高い郵便サービスを利用し、追跡可能な方法で送付することをお勧めします。これにより、届出書が無事に到着したかどうかを確認でき、万が一のトラブルを避けることができます。また、郵送後は、入国管理局からの通知を待つことになりますが、何か問題が発生した場合には、早めに問い合わせを行うことが大切です。
退職後に帰国する場合に見るべきポイントとは

退職後に帰国を考える際には、いくつかの重要なポイントを確認する必要があります。これから説明する手続きをしっかりと行うことで、スムーズな帰国が実現します。
税金や社会保険の未納がないか
退職後に帰国を考える際、税金や社会保険の未納がないかを確認することは非常に重要です。未納がある場合、帰国後に問題が発生する可能性があります。
特に、日本では所得税や住民税、健康保険や年金などの社会保険料が未納の場合、追徴課税や罰金が科されることがあります。
退職時に会社から発行される源泉徴収票や社会保険の加入証明書を基に、自身の納税状況を確認しましょう。また、税務署や社会保険事務所に直接問い合わせることで、未納の有無を正確に把握することができます。
銀行預金口座の解約をおこなったか
退職後に帰国する際、銀行預金口座の解約は重要な手続きの一つです。
日本に滞在している間に開設した口座は、退職後もそのまま残しておくことができますが、帰国する場合は解約を検討する必要があります。解約手続きは、銀行の窓口で行うことが一般的で、本人確認書類や印鑑が必要です。
また、残高がある場合は、現金で受け取るか、他の口座に振り込む手続きを行うことになります。解約を怠ると、口座維持手数料が発生することもあるため、早めに手続きを済ませることをお勧めします。
賃貸マンションの家賃の解約を行なったか
退職後に日本を離れる場合、賃貸マンションの家賃の解約は非常に重要な手続きの一つです。まず、契約書に記載されている解約通知の期限を確認しましょう。多くの場合、解約の通知は1ヶ月前までに行う必要があります。これを怠ると、次の月の家賃を支払わなければならない可能性があります。
解約手続きは、賃貸契約を結んだ不動産会社や管理会社に直接連絡を取り、必要な書類を提出することで進めます。
また、退去時には部屋の状態を確認されるため、清掃や修理が必要な場合もあります。これらの手続きをスムーズに行うことで、退去後のトラブルを避けることができます。
水道光熱費や携帯電話などの通信費の未納はないか
退職後に帰国を考える際、特に注意が必要なのが水道光熱費や携帯電話などの通信費の未納です。これらの未納があると、帰国後にトラブルが発生する可能性があります。
例えば、未納の料金が残っていると、後日請求書が送られてきたり、信用情報に影響を及ぼすことも考えられます。
退職前に、これらの費用が全て支払われているかを確認することが重要です。特に、契約しているサービスの解約手続きも忘れずに行いましょう。解約を怠ると、引き続き料金が発生し続けることになります。
まとめ
退職後の就労ビザに関する手続きは、外国人社員にとって非常に重要です。退職から3ヶ月以内に新たな就労先を見つけるか、在留資格を変更しなければビザが失効してしまいます。
また、14日以内に退職報告を行わないと企業にも罰則が及ぶため、注意が必要です。再就職が難航した場合の選択肢も考慮しつつ、適切な手続きを行うことが求められます。この記事を参考に、スムーズな手続きを進めてください。