「登録支援機関に書類作成も任せていたけど、2026年の法改正で違法になるって本当?」
2026年1月1日に施行された改正行政書士法は、外国人を雇用する企業や登録支援機関に大きな影響を及ぼしています。「コンサル料」「サポート料」などの名目で書類作成を代行する行為が明確に違法化され、違反した場合は個人だけでなく法人にも罰金が科される両罰規定が整備されました。本記事では、改正の5つの変更点を企業視点でわかりやすく解説し、今すぐ取るべき実務対策を紹介します。
- 改正行政書士法の5つの変更点と改正前後の条文比較
- 非行政書士行為の禁止が明確化された背景と罰則の詳細
- 外国人雇用企業・登録支援機関それぞれが取るべき具体的対策
施行から約3か月が経過した今、未対応の企業は早急な体制整備が必要です。ぜひ最後までお読みください。
改正行政書士法の全体像|なぜ今回の改正が行われたのか
「行政書士法の一部を改正する法律」(令和7年法律第65号)は、2025年5月30日に衆議院、同年6月6日に参議院で可決・成立し、6月13日に公布、2026年1月1日に施行されました。約70年ぶりとなる大規模改正の背景には、社会環境の急激な変化がありました。
改正の背景|「闇コンサル」と非行政書士行為の横行
コロナ禍以降、事業復活支援金や事業再構築補助金など大規模な補助金制度が相次いで公募されました。これに伴い、行政書士資格を持たない業者が「コンサルティング料」「手数料」「会費」などの名目で、実質的に官公署提出書類を作成する行為が横行しました。いわゆる「闇コンサル」の問題です。
特に外国人雇用の分野では、登録支援機関が「支援委託費」の一環として在留資格申請書類を作成するケースが多く見られ、行政書士の独占業務との境界線が曖昧な状態が続いていました。日本行政書士会連合会は長年にわたりこの問題の解消を訴え、複数の与野党議員連盟および総務省への要望活動を続けてきました。今回の改正は、その長年の活動がようやく実を結んだものです。
改正の5つの柱
今回の改正は、以下の5つを柱として構成されています。
| 改正の柱 | 概要 |
|---|---|
| 1. 使命の明確化 | 「国民の権利利益の実現に資する」使命を法定化 |
| 2. 職責規定の新設 | 品位保持・誠実義務+デジタル対応の努力義務 |
| 3. 業務制限規定の明確化 | 「いかなる名目の報酬」でも無資格代行を禁止 |
| 4. 特定行政書士の業務拡大 | 不服申立て代理の範囲を大幅拡大 |
| 5. 両罰規定の整備 | 違反した個人だけでなく法人にも罰金 |
変更点1・2|使命の法定化と職責・デジタル対応義務
改正の第1・第2の柱は、行政書士という専門職の社会的位置づけを高めるものです。企業が直接影響を受ける規定ではありませんが、行政書士サービスの質向上につながる重要な改正です。
「目的」から「使命」への格上げ(第1条の改正)
改正前の第1条は行政書士制度の「目的」を定めていましたが、改正後は「使命」に格上げされました。新条文では「行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もって国民の権利利益の実現に資することを使命とする」と規定されています。弁護士法や司法書士法と同様の使命規定が設けられたことで、専門職としての公共性が法的に明確になりました。
デジタル対応の努力義務(第1条の2の新設)
新設された第1条の2第2項では、「デジタル社会の進展を踏まえ、情報通信技術の活用その他の取組を通じて、国民の利便の向上及び当該業務の改善進歩を図るよう努めなければならない」と定められました。士業法として初めてデジタル対応が法定された画期的な規定です。
折しも2026年1月5日には出入国在留管理庁の在留申請オンラインシステムが大幅リニューアルされ、複数ファイルの添付や一時保存機能、利用者ID有効期間の3年への延長など大幅な改善が行われました。行政書士のデジタル対応義務と入管手続きのオンライン化が同時に進むことで、在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請など、主要な手続きがオンラインで完結できるようになり、申請の効率化が大きく進んでいます。企業にとっては、デジタル対応に積極的な行政書士を選ぶことで、手続きのスピードアップが期待できるでしょう。
変更点3|非行政書士行為の禁止規定の明確化(第19条改正)
今回の改正で最も実務に大きな影響を与えるのが、第19条の業務制限規定の明確化です。EY Japan(アーンスト・アンド・ヤング)も2026年1月にこの改正を「外国人雇用企業が直面する非行政書士行為リスク」として注意喚起しており、大手コンサルティングファームも注目する重要な改正です。外国人雇用に関わるすべての企業・団体が理解しておくべき内容です。
改正前後の条文比較
| 区分 | 条文内容 |
|---|---|
| 改正前 | 行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができない |
| 改正後 | 行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない |
「いかなる名目によるかを問わず」の意味
改正前は「報酬」の定義が曖昧であったため、以下のような手法で規制を回避するケースが横行していました。
- 書類作成の対価を「コンサルティング料」「顧問料」と偽装する
- 書類作成は「無料」とし、別途高額なコンサル契約で対価を回収する
- 「会費」「サポート料」「事務手数料」など名目を変えて実質的に報酬を得る
改正後は、名目がいかなるものであっても、書類作成の実態があり対価を受領していれば違法と判断されます。帳簿上の科目名や請求書の名目は一切問われません。たとえば、月額管理費に書類作成サービスを含めるパッケージ型の料金体系や、「成功報酬」として補助金の一定割合を受け取る形態も、改正後は明確に第19条違反となります。
行政書士の独占業務とは何か
そもそも行政書士法が保護する「独占業務」とは何かを正確に理解しておく必要があります。行政書士の独占業務は、他人の依頼を受け報酬を得て行う以下の3類型の書類作成です。なお、弁護士・税理士・社会保険労務士など、他の法律で認められている業務は除外されます。
- 官公署に提出する書類:在留資格申請書、建設業許可申請書、補助金申請書など
- 権利義務に関する書類:各種契約書、遺産分割協議書、示談書など
- 事実証明に関する書類:各種議事録、実地調査報告書、会計帳簿など
ポイント: 総務省は2022年2月の「グレーゾーン解消制度」回答で、「補助金申請に係る書類のうち官公署に提出する文書は、報酬を得て業として行うには行政書士である必要がある」との見解を示しており、今回の法改正でこの見解が条文上明文化されました。
変更点4・5|両罰規定の整備と特定行政書士の業務拡大
今回の改正では、罰則面でも大きな変更がありました。個人だけでなく法人も処罰対象となる「両罰規定」の整備と、特定行政書士の権限拡大です。
両罰規定とは|法人にも最大100万円の罰金
改正前は、非行政書士行為(第19条違反)の罰則は違反行為を行った個人にのみ科されていました。そのため、会社の指示で従業員が無資格で書類作成を行っていても、法人自体は処罰の対象外でした。改正後は、第23条の3に両罰規定が整備され、違反行為者個人に加えてその所属法人にも罰金が科されるようになりました。個人事業主の場合も、使用人が業務に関して違反すれば事業主本人が罰金刑の対象となります。
| 対象 | 罰則 |
|---|---|
| 無資格で独占業務を行った個人 | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 違反者の所属法人 | 100万円以下の罰金(両罰規定) |
| 「行政書士」と名乗った無資格者 | 100万円以下の罰金+法人にも同額 |
注意: 「懲役」は2025年6月の刑法改正により「拘禁刑」に名称変更されています。罰金額自体は改正前後で変わりませんが、両罰規定の追加により法人を含む組織的な違反行為への抑止力が格段に強化されました。
特定行政書士の業務範囲が大幅拡大
特定行政書士が不服申立ての代理を行える範囲も拡大されました。
- 改正前:行政書士が「作成した」書類に係る処分のみ代理可能(=自分が関与した案件のみ)
- 改正後:行政書士が「作成することができる」書類に係る処分まで代理可能(=事前関与不要)
これにより、たとえば在留資格申請が不許可になった後に初めて行政書士に相談した場合でも、特定行政書士が不服申立ての代理を行えるようになりました。過去に他の事務所が扱った案件や、申請者本人が自ら申請して不許可となった案件についても対応可能です。外国人雇用企業にとっては、不許可時の救済手段が大きく広がった形であり、「不許可を受けてしまったら、まず特定行政書士に相談」という新たな選択肢が生まれました。
外国人雇用企業が今すぐ取るべき5つの実務対策
改正行政書士法の施行を受けて、外国人を雇用する企業は以下の5つの対策を早急に実施する必要があります。
対策1:委託先の資格確認
在留資格申請書類の作成を外部に委託している場合、その委託先が行政書士(または弁護士)の資格を持っているかを確認しましょう。人材紹介会社やコンサルタントが書類作成を行っている場合、改正後は明確な違法行為となります。行政書士資格の有無は、日本行政書士会連合会のウェブサイトで検索して確認できます。
対策2:登録支援機関との契約書の見直し
登録支援機関との支援委託契約書を確認し、「官公署提出書類の作成」が業務範囲に含まれていないかチェックしてください。含まれている場合は当該条項を削除し、書類作成は行政書士との別途契約に切り替える必要があります。契約書の変更に際しては、両者の合意のもとで覚書を交わし、変更後の業務範囲を明確に文書化しておくことが重要です。
対策3:費用構造の透明化
「申請サポート料」「事務手数料」など曖昧な費用項目がある契約は見直しが必要です。支援委託費と行政書士への書類作成報酬を明確に分離し、請求書上でも区別できるようにしましょう。具体的には、登録支援機関への支援委託費からは書類作成に相当する金額を除外し、行政書士への報酬は企業と行政書士の直接契約に基づいて支払う形に切り替えることが推奨されます。
対策4:社内体制の整備
自社で書類作成を行う場合は、担当者を明確化し、必要に応じて「申請取次者」の承認を取得しましょう。なお、自社の従業員のために自社で在留資格申請書類を作成すること自体は行政書士法上の問題はありません。ただし、グループ会社間で書類作成を請け負う場合は「他人の依頼」に該当する可能性があるため注意が必要です。また、外国人雇用に関わる全部署に改正内容を周知し、経営層も含めた社内コンプライアンス体制を構築しましょう。
対策5:行政書士との顧問契約の検討
継続的に外国人を雇用する企業は、行政書士との顧問契約が費用対効果の面で有利な場合があります。顧問契約を結ぶことで、在留資格申請の都度の手続きだけでなく、法改正情報の提供や在留期限管理のアドバイスなど、日常的なサポートを受けられるメリットがあります。在留資格申請を個別に依頼する場合の費用相場は以下の通りです。
| 申請種別 | 費用相場 |
|---|---|
| 特定技能 在留資格認定証明書交付申請 | 12万〜20万円/1名 |
| 特定技能 在留期間更新許可申請 | 6万〜10万円/1名 |
| 技術・人文知識・国際業務 認定申請 | 10万〜15万円/1名 |
| 永住許可申請 | 12万〜15万円/1名 |
登録支援機関が対応すべきこと|「取次」と「作成」の違い
改正行政書士法の施行により、登録支援機関の業務範囲がより厳密に問われるようになりました。登録支援機関の法定業務は「1号特定技能外国人支援計画の実施」であり、生活支援と申請の取次が中心です。「取次」と「作成」の違いを正しく理解し、違法リスクを排除することが急務です。違反した場合は行政書士法の罰則に加え、出入国管理及び難民認定法に基づく登録支援機関の登録取消事由に該当する可能性もあるため、リスクは非常に大きいといえます。
登録支援機関に認められる業務と禁止される業務
| 業務内容 | 適法/違法 |
|---|---|
| 完成した書類を入管窓口に提出する(取次) | 適法 |
| 生活支援(送迎・住居確保・生活オリエンテーション等) | 適法 |
| 制度説明・必要書類の案内 | 適法 |
| 在留資格申請書類の作成 | 違法 |
| 支援計画書など官公署提出書類の作成 | 違法 |
| 申請書類の加除訂正(内容判断を伴う修正) | 違法 |
登録支援機関が今すぐ実施すべき対策
- 社内マニュアルから申請書類の作成・加除訂正に関する業務手順を全て削除
- 受入企業との支援委託契約書を見直し、書類作成業務を明確に除外
- 営業資料・ウェブサイトから「申請書類作成」「申請代行」等の文言を削除
- 提携行政書士のリストを作成し、受入企業に紹介できる体制を構築
- 全職員に改正内容と「取次」「作成」の違いを研修で徹底
ポイント: 登録支援機関が行政書士と連携するメリットは大きく、書類の品質向上による許可率の向上、不備による手戻りの削減、不許可時の不服申立て対応(特定行政書士による代理)など、受入企業に対するサービス品質の向上にもつながります。コスト面でも、不許可によるやり直しコストを考慮すれば、最初から行政書士に依頼する方が結果的に経済的です。
まとめ|改正行政書士法を踏まえた外国人雇用体制の再構築
2026年1月施行の改正行政書士法は、外国人雇用の実務に大きな変革をもたらしています。これまでグレーゾーンとされていた「登録支援機関による書類作成」「コンサル名目での代行」などの行為が明確に整理され、コンプライアンス上のリスクが可視化されました。改正のポイントを改めて確認しておきましょう。
改正のポイント再確認
- 「いかなる名目によるかを問わず」の文言追加で、名目を変えた有償代行が明確に違法化
- 両罰規定により、違反した個人だけでなく法人も最大100万円の罰金
- 特定行政書士の業務拡大で、不許可処分後の救済手段が充実
- デジタル対応の努力義務化で、オンライン申請の効率化が加速
企業・登録支援機関に求められる行動
改正から3か月が経過した現在、未対応の企業・登録支援機関は早急に以下の対応を行うべきです。
- 委託先の行政書士資格の有無を確認し、必要に応じて契約を切り替え
- 登録支援機関との契約書から書類作成に関する条項を除外
- 行政書士との連携体制を構築し、書類作成は専門家に一任
- 経営層を含む全社的なコンプライアンス研修の実施
行政書士法の改正は、外国人雇用における「書類作成」の適正化を図るものです。正しい知識を持ち、適切な専門家と連携することで、安心して外国人材の受入れを進めることができます。改正法の施行後も制度の運用状況に応じて解釈が精緻化される可能性があるため、最新動向を継続的にチェックすることも重要です。ビザ申請や在留資格に関するお悩みは、ぜひ当事務所にご相談ください。

