「特定技能の申請が不許可になってしまった…再申請で許可を取れるのだろうか」
特定技能ビザの不許可通知を受けると、企業も外国人本人も大きな不安を感じます。しかし、不許可は必ずしも「もう許可が取れない」ことを意味しません。不許可理由を正確に把握し、適切な対策を講じたうえで再申請すれば、許可を勝ち取れるケースは少なくありません。
- 特定技能ビザでよくある不許可理由7パターンとその原因
- 不許可通知を受けた後の正しい対処法と入管での確認手順
- 行政書士に依頼して再申請で許可を取得するための書類修正ポイント
この記事では、不許可からのリカバリーに必要な知識と具体的なアクションを、実際の事例を交えて解説します。
特定技能ビザでよくある不許可理由7パターン
特定技能ビザの不許可理由は大きく7つのパターンに分類できます。自社のケースがどれに該当するかを正確に把握することが、再申請への第一歩です。
パターン1:技能試験・日本語試験の要件不備
特定技能1号では、分野別の技能評価試験と日本語能力試験(JLPT N4以上またはJFT-Basic)の合格が必須です。
- 試験に合格していない状態で申請した(試験結果待ちでの申請は不可)
- 技能実習2号修了者として試験免除を主張したが、修了の要件を満たしていなかった
- 受験した試験の分野と申請する分野が一致していない
パターン2:報酬額が日本人と同等以上でない
特定技能外国人の報酬は、同じ業務に従事する日本人と同等以上でなければなりません。
- 同一職場の日本人従業員より低い給与設定になっている
- 最低賃金は上回っているが、同等の経験・能力を持つ日本人と比較して低い
- 比較対象となる日本人従業員の賃金台帳を提出していない
パターン3:企業の財務状況に問題がある
受入企業が安定的に外国人を雇用できる財務基盤を有しているかも審査されます。
- 直近の決算が赤字または債務超過
- 債務超過の場合は中小企業診断士等による「改善見通しに係る評価書面」が未提出
- 社会保険料・税金の未納がある
パターン4:書類不備・記載不足
必要書類の未提出や記載ミスは、最も多い不許可理由のひとつです。
- 税証明書の年度が間違っている(最も頻出するミス)
- 雇用契約書の内容と申請書の記載が矛盾している
- 分野別協議会への加入証明が未提出
- 過去に提出した書類との内容の食い違い
パターン5:在留状況に問題がある
留学生からの変更申請で特に多いのが、在留状況に関する不許可です。
- 資格外活動の週28時間上限を超過していた(最大の不許可理由のひとつ)
- 届出義務違反(住所変更届の未提出等)
- 在留カードの携帯義務違反
- 過去の在留資格申請で虚偽の記載があった
パターン6:支援計画・雇用契約の不備
特定技能1号では「1号特定技能外国人支援計画」の作成が義務付けられています。また、雇用契約にも特有の要件があります。
- 義務的支援10項目(事前ガイダンス、生活オリエンテーション等)のいずれかが支援計画に含まれていない
- 自社支援の体制が不十分で、登録支援機関への委託も行っていない
- 支援責任者・支援担当者の選任が不適切
- 所定労働時間がフルタイムの基準(週30時間以上、年間217日以上)を満たしていない
- 派遣形態での雇用(農業・漁業分野以外は原則不可)
- 雇用契約書の内容が入管の基準を満たしていない
不許可通知を受けた後の正しい対処法
不許可通知を受けたら、慌てず以下の手順で対応してください。再申請の成否は、この初動の段階で大きく左右されます。
ステップ1:不許可理由を正確に確認する
不許可通知書には不許可理由が記載されていますが、詳細が不明な場合は入管で説明を聞くことができます。
- 不許可通知書に記載されている理由を精読する
- 不明点があれば、入管の窓口で不許可理由の詳細な説明を求める(申請取次行政書士であれば代理で聴取可能)
- 不許可理由は必ず「すべて」聞き出す:1つだけ改善しても、他に原因があれば再度不許可になる
注意: 入管での不許可理由の確認は1回しかできないケースもあります。初回の面談で不許可理由をすべて正確に聞き出すことが極めて重要です。行政書士に同行を依頼し、漏れなく確認することをお勧めします。
ステップ2:出国準備期間の確認
在留資格の変更申請や更新申請が不許可になった場合、出国準備のための期間が付与されます。この期間の長さが再申請の可否に直結します。
- 31日の出国準備期間:再申請の余地あり。2か月の特例期間が付与され、この間に再申請が可能
- 30日の出国準備期間:再申請は困難。一度帰国し、在留資格認定証明書交付申請からやり直すことが推奨される
出国準備期間が31日か30日かは、不許可の理由や在留状況によって異なります。31日が付与された場合は、速やかに行政書士に相談し、再申請の準備に取りかかってください。
ステップ3:再申請の可否を判断する
すべての不許可がリカバリー可能とは限りません。以下のケースは再申請が困難です。
- 虚偽申請が発覚した場合(5年以下の懲役・退去強制の可能性)
- 根本的な要件(試験不合格等)を満たしていない場合(要件充足後に改めて申請)
- 出国準備期間が30日の場合(国内での再申請は原則不可)
不許可理由別の具体的な対応策と書類修正ポイント
不許可理由が明確になったら、具体的な改善策を講じて再申請の準備に入ります。理由別の対応策を解説します。
報酬額が低い場合の対応策
- 雇用契約書の報酬額を是正し、日本人と同等以上の水準に引き上げる
- 比較対象となる日本人従業員の賃金台帳を提出し、同等性を立証する
- 賃金規程を整備し、外国人と日本人の報酬決定基準が同一であることを説明する
企業が赤字・債務超過の場合の対応策
- 中小企業診断士等に依頼し、「改善見通しに係る評価書面」を作成する(費用目安:5万〜20万円)
- 受注残高の提示、外注費削減計画の数値化など、具体的な改善策を盛り込む
- 直近の月次試算表で改善傾向を示す資料を追加提出する
- 成功事例:2期連続赤字・債務超過の建設会社が、受注残高と外注費削減計画を数値化した評価書面で5名の許可を取得
支援計画の不備への対応策
特定技能1号では義務的支援10項目すべてを支援計画に盛り込む必要があります。不備があった場合は以下のように対応してください。
- 義務的支援10項目(事前ガイダンス、出入国時の送迎、住居確保・生活に必要な契約支援、生活オリエンテーション、公的手続きへの同行、日本語学習機会の提供、相談・苦情への対応、日本人との交流促進、転職支援、定期的な面談・行政機関への通報)を改めて点検し、欠落項目を追加する
- 自社支援の体制に不安がある場合は、登録支援機関への委託に切り替える
- 支援責任者・支援担当者の経験・能力が要件を満たすか再確認する
- 支援計画は外国人が理解できる言語での作成が求められるため、翻訳体制も確認する
書類不備・在留状況の問題への対応策
書類不備が原因の場合は比較的対処しやすいですが、在留状況に問題がある場合は慎重な対応が必要です。
- 税証明書の年度間違い:正しい年度の証明書を再取得して提出
- 雇用契約書と申請書の矛盾:整合性を取った新しい雇用契約書を作成
- 資格外活動の超過(週28時間違反):超過の事実を認めたうえで、今後の雇用形態がフルタイムであることを強調する理由書を作成。ただし悪質な超過の場合は不許可が覆らないケースもある
- 届出義務違反:未届出だった届出を速やかに行い、今後の遵守を誓約する
再申請の理由書の書き方
再申請で最も重要な書類が「理由書(説明書)」です。行政書士が作成する場合、以下の構成が効果的です。
- 不許可理由の明示:前回の申請で不許可となった理由を正確に記述する。入管で確認した内容をそのまま記載する
- 改善内容の説明:不許可理由に対してどのような改善策を講じたかを具体的に記述する。数値や日付を入れて客観的に説明する
- 裏付け証拠の提示:改善を証明する資料(是正後の雇用契約書、賃金台帳、評価書面等)を添付する
- 企業の受入れ体制の説明:外国人を安定的に雇用できる体制が整っていることを補足説明する
理由書は一般的にA4用紙2〜3枚程度の分量で作成します。簡潔かつ論理的な構成が重要であり、感情的な文章や過度に長い説明は逆効果です。
注意: 前回の申請内容と矛盾する記載は絶対に避けてください。矛盾が発覚すると、入管は虚偽申請を疑い、今回の再申請だけでなく将来のビザ取得にも重大な悪影響を及ぼします。
再申請で許可を勝ち取った成功事例
実際に不許可から再申請で許可を取得した事例を紹介します。自社の状況に近いケースを参考にしてください。
事例1:債務超過の建設会社が5名の許可を取得
2期連続で赤字・債務超過だった建設会社のケースです。初回申請では企業の財務状況を理由に不許可となりましたが、以下の対応で再申請が許可されました。
- 中小企業診断士に依頼し、受注残高と外注費削減計画を数値化した「改善見通しに係る評価書面」を作成
- 直近3か月の月次試算表で改善傾向を示す資料を追加提出
- 今後の事業計画と外国人雇用の必要性を具体的に説明する理由書を添付
事例2:業務内容の立証不足で不許可→業務説明書の追加で許可
食品製造業の企業が特定技能外国人の申請で不許可になったケースです。雇用契約書に記載された業務内容が抽象的で、特定技能の対象業務に該当するか判断できないとされました。
- 具体的な業務説明書を新たに作成し、1日のタイムスケジュールとともに提出
- 工場内での作業写真を添付し、業務の実態を視覚的に説明
- 同じ業務に従事する日本人従業員の存在を賃金台帳とともに立証
事例3:再申請でも不許可になったケース
一方で、再申請でも不許可となるケースもあります。以下のような場合は許可が困難です。
- 不許可理由を1つしか確認せず、他の問題点が残ったまま再申請した
- 前回の申請書類と矛盾する内容で再申請し、信用性を失った
- 過去に虚偽申告の履歴があり、入管の信頼を回復できなかった
行政書士に再申請を依頼するメリットと費用
不許可後の再申請は、初回申請以上に専門的な知識が求められます。入管業務に精通した行政書士に依頼するメリットと費用感を解説します。
行政書士に依頼する4つのメリット
- 不許可理由の正確な把握:入管での説明聴取に同行し、不許可理由を漏れなく確認できる
- 的確な改善策の提案:豊富な経験に基づき、不許可理由に対する最適な対応策を提案
- 理由書・補足資料の作成:審査官を説得する論理的な理由書と、許可の可能性を高める補足資料を作成
- 再申請のスケジュール管理:出国準備期間の特例を活用した最適なスケジュールで再申請
再申請の費用相場
| 項目 | 費用目安 |
|---|---|
| 行政書士への再申請依頼(変更・更新) | 10万〜16.5万円 |
| 不許可理由確認の入管同行 | 1.5万〜3万円 |
| 改善見通しに係る評価書面(中小企業診断士) | 5万〜20万円 |
| 収入印紙(変更・更新) | 6,000円 |
費用はかかりますが、再度不許可になった場合の損失を考えれば、専門家への投資は合理的です。外国人が帰国すれば、採用活動のやり直し、入社までのブランク、事業計画への影響と、その損失は行政書士報酬の何倍にもなります。不許可案件を専門に扱う行政書士事務所もありますので、積極的に相談してください。
なお、初回申請を自分で行って不許可になり、再申請から行政書士に依頼するケースも多く見られます。行政書士側も不許可案件の受任に慣れていますので、「自分でやって失敗した」ことを気にする必要はありません。重要なのは、不許可が確定した時点で速やかに専門家に相談することです。
ポイント: 2025年9月に特定技能1号の在留期間が最長3年に延長されました。また19分野への拡大や年次定期届出の簡素化など、制度が大きく変わっています。再申請の際はこうした最新の制度変更も踏まえた申請が重要です。行政書士に依頼すれば、これらの最新情報を反映した申請が可能です。
再申請のスケジュールと在留期限への対応
再申請は時間との闘いです。出国準備期間の期限内に確実に再申請を完了するために、スケジュールを逆算して計画してください。
出国準備期間31日の場合の再申請スケジュール
| 時期 | やるべきこと |
|---|---|
| 不許可当日〜3日以内 | 行政書士に連絡、入管での不許可理由の確認予約 |
| 3日〜7日 | 入管で不許可理由をすべて確認、再申請の方針決定 |
| 7日〜21日 | 改善策の実施(雇用契約修正、評価書面取得等)、理由書・書類作成 |
| 21日〜31日 | 再申請を入管に提出(特例期間の申請を含む) |
| 再申請後 | 2か月の特例期間中に審査、結果通知を待つ |
在留期間が切れた場合の対応
出国準備期間が30日の場合、または期間内に再申請ができなかった場合は、以下の対応が必要です。
- 外国人は一度帰国する
- 企業が日本側から在留資格認定証明書交付申請を行う
- 認定証明書が交付されたら、外国人が母国の日本大使館・領事館でビザを取得して再入国
- 認定証明書の審査期間は通常1〜3か月程度
ポイント: 在留期限が迫っている場合は、不許可が確定する前に更新申請を行っておくことで、審査中は在留資格が維持される「みなし在留」の制度を活用できます。事前の計画が重要です。
まとめ|不許可は終わりではない、適切な対応で許可を勝ち取る
特定技能ビザの不許可は確かにショックですが、正しい対処をすれば再申請で許可を取得できるケースは少なくありません。
再申請成功の3つの鍵と今すぐやるべきこと
再申請で許可を勝ち取るために、以下の3点を必ず押さえてください。
- 不許可理由の完全な把握:入管で不許可理由を「すべて」聞き出す。1つでも見落とすと再度不許可のリスク
- 根本的な改善の実施:表面的な書類修正ではなく、報酬額の是正や財務改善など実質的な改善を行う
- 専門家のサポート:不許可案件のリカバリーは高度な専門知識が必要。入管業務に精通した行政書士に依頼する
不許可通知を受けたら、以下のアクションを速やかに実行してください。
- 当日中:入管業務に強い行政書士に電話で相談予約を入れる
- 3日以内:行政書士と入管で不許可理由を確認する
- 1週間以内:再申請の方針と改善策を決定し、書類準備に着手する
出国準備期間は限られています。迷っている時間はありません。不許可通知を受けた瞬間から、再申請に向けた行動を開始してください。入管業務に精通した行政書士のサポートを受けることで、不許可からの確実なリカバリーが可能になります。諦めずに、まずは専門家に相談することから始めましょう。



