「特定技能の届出って、いつまでに何を提出すればいいの?」
特定技能外国人を受け入れている企業の担当者から、届出義務に関するこのような相談が多く寄せられています。2025年4月の制度改正により定期届出の頻度が大幅に変更されるなど、届出制度は複雑化しています。届出遅延や記載ミスは重大な罰則につながるため、正確な知識が不可欠です。本記事では以下のポイントを徹底解説します。
- 随時届出・定期届出の種類と期限一覧(2025年改正対応)
- 届出遅延・虚偽届出による罰則と最悪のシナリオ
- 行政書士に届出を委託すべき3つの理由と費用対効果
届出管理を確実に行い、コンプライアンスリスクをゼロにするためのヒントをお届けします。
特定技能の届出制度とは?随時届出と定期届出の違い
特定技能外国人を受け入れる企業(所属機関)と登録支援機関には、出入国在留管理庁に対して定期的な届出義務が課されています。届出は大きく「随時届出」と「定期届出」の2種類に分かれており、それぞれ提出タイミングと内容が異なります。
届出義務者と2種類の届出の概要
特定技能の届出義務者は以下の2者です。
- 所属機関(受入企業):特定技能外国人を雇用している企業が届出義務を負う
- 登録支援機関:所属機関から支援を委託されている場合、支援状況を届け出る義務がある
2種類の届出の違いは以下の通りです。
| 届出の種類 | 提出タイミング | 提出期限 |
|---|---|---|
| 随時届出 | 特定の事由が発生したとき | 事由発生後14日以内 |
| 定期届出(年次) | 年1回(2025年4月改正後) | 翌年4月1日〜5月31日 |
2025年改正で定期届出が年4回→年1回に大幅変更
2025年4月の制度改正により、定期届出の頻度が大きく変わりました。企業にとって重要な変更点です。
- 改正前:四半期ごと(年4回)の定期報告
- 改正後:年1回(対象期間:4月1日〜翌年3月31日分)に統一
- 提出期限:対象年度終了翌年の4月1日〜5月31日
- 初回適用:新制度での最初の届出は2026年4月1日〜5月31日
年4回から年1回への変更は企業の事務負担を大幅に軽減します。一方で、年1回の届出に漏れや遅延があった場合の影響が大きくなるため、確実な管理体制の整備が求められます。
電子届出システムでオンライン提出も可能
出入国在留管理庁の電子届出システムを利用することで、随時届出・定期届出ともにオンラインで提出できます。2026年1月5日にシステム仕様が改修され、操作性が向上しました。ただし利用にはユーザー登録が必要です。窓口訪問が不要になる一方、操作ミスや書類不備が発生しやすいため、行政書士によるチェックとの組み合わせが推奨されます。
随時届出の種類と14日以内の提出期限
随時届出は、特定技能外国人の雇用・支援に関する変化が生じたとき、事由発生後14日以内に提出しなければなりません。届出が遅れると罰則の対象となるため、事由発生を即座に把握できる社内体制の整備が欠かせません。
従来からの随時届出の主な事由
以下の事由が発生した場合は、14日以内に所轄の地方出入国在留管理局へ届出が必要です。
- 特定技能外国人が退職・解雇した場合
- 労働条件の変更(賃金の減額、職種の変更、配置転換など)
- 事業所の移転・変更
- 所属機関または登録支援機関の名称・所在地の変更
- 所属機関が基準を満たさなくなった場合
- 登録支援機関との支援委託契約の終了・解除
- 支援の実施が困難になった場合
- 不正行為が発生した場合
注意:郵送で届出を行う場合は、事由発生日から14日以内に入管局に「到着」していなければなりません。投函日ではなく到着日が基準となるため、余裕を持って送付してください。
2025年新設の随時届出(就労開始遅延・長期離脱・基準不適合)
2025年4月の制度改正により、以下の事由が随時届出の対象として新たに追加されました。これらは多くの企業が見落としやすい新設義務です。
- 就労開始遅延:在留資格の許可後1ヶ月経過しても就労が開始されない場合
- 長期離脱:就労中に1ヶ月以上にわたって就労不可能な状態が続いた場合(病気療養・事業停止等)
- 基準不適合(新設):所属機関が以下の基準を満たさなくなった場合
- 税金・社会保険料の未納が発生した
- 外国人労働者との雇用契約違反が生じた
- 労働基準法等の法令に違反した
- 不正行為・暴力等の非違行為が発生した
特に「基準不適合届」は、企業の内部状況の変化を届け出る義務であり、自社のコンプライアンス状況を常時点検する体制が求められます。
提出方法と遅延時の対処
随時届出の提出方法は以下の3通りです。
- オンライン:出入国在留管理庁電子届出システムから提出
- 郵送:管轄の地方出入国在留管理局・支局宛てに送付
- 持参:対応窓口に直接提出
やむを得ない事情で14日以内に提出できない場合は、遅延理由を記載した文書を届出書に添付して提出することが求められます。ただし遅延自体は罰則の対象となるため、添付文書は免責を保証するものではありません。
定期届出(年次届出)の詳細と2025年改正の変更点
定期届出は、特定技能外国人の受入状況と支援実施状況を報告する届出です。2025年4月の制度改正により、年4回から年1回の提出に変更され、様式も1種類に統一されました。
改正前後の比較(年4回→年1回)
| 項目 | 改正前 | 改正後(2025年4月〜) |
|---|---|---|
| 提出頻度 | 年4回(四半期ごと) | 年1回 |
| 対象期間 | 各四半期(3ヶ月ごと) | 4月1日〜翌年3月31日 |
| 提出時期 | 各四半期終了翌月 | 翌年4月1日〜5月31日 |
| 届出様式 | 2種類 | 1種類(参考様式第3-6号) |
参考様式第3-6号の主な記載項目
統一された「参考様式第3-6号(受入れ・活動・支援実施状況に係る届出書)」には、以下の内容を記載します。
- 特定技能外国人の基本情報:氏名・生年月日・性別・国籍・住居地・在留カード番号
- 所属機関情報:企業名・住所・役員情報
- 労働条件:平均労働日数・時間数、年間給与総支給額、昇給の有無・割合、日本人労働者との給与比較
- 支援実施状況:オリエンテーション実施状況、日本語学習支援の内容・頻度、生活支援の具体的内容、月1回以上の定期面談の実施記録
- 相談対応状況:受けた相談の内容と対応結果、労働基準監督署・ハローワークへの相談状況
これらの項目を正確・漏れなく記載するためには、日常的な記録管理が欠かせません。年度末に慌てて集計しようとすると、記載漏れや数値の不一致が生じやすくなります。
初回年次届出は2026年4月1日〜5月31日
新制度による最初の年次定期届出の提出期限は2026年4月1日〜5月31日です。対象期間は2025年4月1日〜2026年3月31日の1年間です。すでに受入中の企業は、この期限に向けた準備を今から始めることが重要です。
ポイント:年1回への変更で提出回数は減りましたが、1回分の届出に含まれる情報量は大幅に増えています。1年分の実績データを正確にまとめるためには、日常的な記録管理システムの構築と、行政書士への早めの相談が有効です。
届出遅延・虚偽届出のリスクと罰則
特定技能の届出義務に違反した場合、企業(所属機関)と登録支援機関の双方に深刻な罰則が科されます。届出の遅延・漏れ・虚偽記載はいずれも罰則の対象であり、その内容は企業の経営に重大な影響を与えます。
所属機関(企業)への罰則
受入企業が届出義務に違反した場合、以下の罰則が段階的に適用されます。
- 過料(行政罰):届出遅延・虚偽届出に対して20万円以下の過料(入管法第71条の2・第77条の2)
- 報告徴収・立入調査:入管による調査が入り、是正を求められる
- 改善命令:再発防止策の提出を求められる
- 企業名の公表:重大違反の場合、出入国在留管理庁のWebサイトで企業名が公表される
- 特定技能外国人の受入停止:最長5年間、新規の受入が禁止される
特に受入停止処分は、外国人労働力に依存している企業にとって事業継続に関わる重大なリスクです。5年間の新規受入禁止は、事業計画の根本的な見直しを迫られる可能性があります。
登録支援機関への罰則(登録取消・業務停止)
登録支援機関が届出義務に違反した場合や、義務的支援を適切に実施しない場合は、以下の罰則が適用されます。
- 業務停止命令:重大違反があった場合、支援業務の停止が命じられる
- 登録取消:虚偽届出・届出義務違反・義務的支援の不履行により、登録支援機関としての登録が取り消される
- 刑事罰:悪質な違反の場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性がある
登録取消となった場合、支援委託を受けている企業も影響を受け、新たな登録支援機関を探す必要が生じます。企業は委託先の登録支援機関のコンプライアンス状況も把握しておくことが重要です。
罰則が重なる最悪のシナリオ
届出違反が重なると、罰則が複合的に適用される最悪のシナリオが生じます。
- 随時届出の遅延 → 過料20万円
- 虚偽記載が発覚 → 追加の過料 + 在留資格取消手続きの開始
- 調査の結果、雇用実態に問題が発覚 → 受入停止処分(5年間)
- 刑事罰が科された場合 → 不法就労助長罪として3年以下の懲役または300万円以下の罰金
このような複合リスクを防ぐためには、届出を確実・正確に行う体制を構築することが不可欠です。
行政書士に届出を委託すべき3つの理由
特定技能の届出業務は複雑で、制度改正への対応も継続的に必要です。行政書士に届出業務を委託することで、リスクを大幅に低減しながら業務効率を向上できます。以下、委託すべき3つの理由を解説します。
理由1 届出遅延・遺漏のリスクを完全排除できる
特定技能の随時届出は14日以内という厳しい期限があります。人事異動・退職・病気療養など、事由が発生した瞬間から時計が動き始めます。社内担当者が届出義務を知らなかった、あるいは担当者の異動で引き継ぎが漏れたといったケースで、遅延が発生します。
行政書士に委託した場合、企業は事由発生時に連絡するだけで届出手続きを完結できます。提出期限の管理は行政書士が行うため、遅延・遺漏のリスクをほぼゼロにすることができます。特に2025年新設の「基準不適合届」など、新しい届出義務への対応も迅速に行えます。
理由2 様式の記載ミス・虚偽申告リスクを防げる
特定技能の届出様式は記載項目が多く、複数の書類間での整合性確保が求められます。社内担当者が独自に作成すると、以下のようなミスが発生しやすくなります。
- 氏名・在留カード番号の転記ミス
- 給与額・労働時間の集計誤り
- 支援実施状況の記載漏れ
- 複数の届出書間での数値不一致
こうした記載ミスが「虚偽届出」と判断されるリスクがあります。行政書士は公式様式への正確な記載と、複数資料間の整合性確認を専門的に行うため、このリスクを防ぐことができます。
理由3 2025〜2026年の制度改正に即座に対応できる
特定技能制度は毎年のように制度改正が行われています。2025年4月の定期届出の年1回化、2025年新設の随時届出事由、2026年の行政書士法改正など、企業の担当者がすべての改正内容を把握・対応することは容易ではありません。行政書士は最新の制度情報を常にアップデートしており、改正があった場合でも企業への告知と対応を速やかに行うことができます。
委託費用と費用対効果の試算
行政書士への届出委託を検討する際、費用面での懸念を持つ企業も多いです。しかし、届出違反による罰則コストと比較すると、委託費用は圧倒的に低いことがわかります。
行政書士への委託費用の目安
| 業務内容 | 費用の目安 |
|---|---|
| 年次定期届出の代行(1名あたり) | 3〜5万円/回 |
| 随時届出の代行(1件あたり) | 1〜3万円/件 |
| 届出管理顧問契約(月額) | 2〜5万円/月 |
| 在留期間更新申請の代行 | 6〜10万円/名 |
複数名の特定技能外国人を受け入れている場合、顧問契約を締結することでまとめた費用設定が可能です。また、届出管理だけでなく在留資格の更新申請も含めたパッケージサービスを提供している行政書士事務所も多くあります。
罰則リスクとの費用対効果
届出を適切に行わなかった場合のコストと、行政書士委託費用を比較すると以下のようになります。
- 過料:1件20万円以下。年間複数件の遅延が重なれば、委託費用の数倍になる
- 受入停止(5年間):受入停止による採用コスト・人材確保への影響は数百万円規模になり得る
- 対外的な信用失墜:企業名公表による採用・取引への悪影響は金銭換算が困難なほど大きい
ポイント:年次定期届出の委託費用が3〜5万円であるのに対し、届出遅延1件の過料は最大20万円です。罰則リスクを考えれば、行政書士への委託は費用対効果が非常に高い選択といえます。
2026年行政書士法改正と登録支援機関の役割変化
2026年1月1日に施行された行政書士法改正により、特定技能の書類作成業務をめぐる役割分担に重要な変化が生じています。受入企業と登録支援機関は、この改正内容を正確に把握しておく必要があります。
登録支援機関の書類作成が違法となるケース
2026年の行政書士法改正により、「いかなる名目によるかを問わず」報酬を得て他人のための書類作成を行うことは、行政書士資格を持たない者には禁止されています。具体的に以下のような行為が問題となります。
- 登録支援機関が月額支援料に「申請書類作成費」を含めて徴収する行為
- 登録支援機関のスタッフが報酬目的で在留資格申請書類を作成する行為
- 企業内担当者以外の者が報酬を得て届出書類を作成する行為
これらの行為が発覚した場合、違反者には1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科されます。また、両罰規定により、法人(会社)も罰せられる可能性があります。
行政書士と登録支援機関の役割分担の整理
改正法のもとでは、特定技能に関する業務の役割分担を明確化することが重要です。
| 業務内容 | 担当者 |
|---|---|
| 在留資格申請・更新書類の作成 | 行政書士(独占業務) |
| 随時届出・定期届出書類の作成代行 | 行政書士(推奨) |
| 10項目義務的支援の実施 | 登録支援機関 |
| 定期面談・生活相談の実施 | 登録支援機関 |
| 届出書類の自社作成(担当者が行う場合) | 受入企業の担当者(報酬なし) |
受入企業は、登録支援機関と行政書士それぞれの役割を正確に理解し、適法な体制を構築することが求められます。法改正に不安がある場合は、早めに行政書士に相談することをお勧めします。
まとめ:届出管理の確実な体制構築が特定技能受入の土台
特定技能の届出制度は、2025年の制度改正により定期届出の年1回化や随時届出の対象事由拡大など、大きな変化を迎えています。届出違反は20万円以下の過料にとどまらず、最悪の場合は5年間の受入停止という深刻な影響をもたらします。
- 随時届出は事由発生後14日以内が期限
- 定期届出は2025年改正で年4回→年1回に変更(初回は2026年4月〜5月31日)
- 届出遅延・虚偽届出には20万円以下の過料+最長5年間の受入停止のリスク
- 行政書士への委託は遅延・遺漏・記載ミスの三大リスクを排除できる
特定技能外国人の受入を安定・継続させるためには、届出管理の確実な体制構築が欠かせません。届出業務を行政書士に委託することで、リスクを最小化しながら本業に集中できる環境を整えてください。当事務所では特定技能の届出代行・顧問サービスについてのご相談を随時受け付けております。お気軽にお問い合わせください。


