特定技能の受け入れ停止とは?外食業の事例から学ぶ背景・影響と企業が取るべき代替策

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深刻な人手不足に悩む企業にとって重要な活用策となっている特定技能制度ですが、2026年4月、外食業分野で初の「受け入れ停止」が発動されました。内定を出していた留学生が帰国を余儀なくされたり、新規店舗のオープン延期や営業縮小に追い込まれたりと、多くの企業が大きな影響を受けています。この事態は、製造・建設・介護などの他業界にとっても対岸の火事ではありません。

特定技能制度には、分野ごとに政府が設定した「受入見込数(上限値)」があり、この上限に達すると新規受け入れが停止される仕組みです。

本記事では、外食業の事例をもとに受け入れ停止の仕組みと影響を解説します。また、上限充足率が70%を超えた段階で警戒すべき理由や、書類不備による不受理・手続の遅延といった実務上の注意点、さらに停止下でも取れる代替の採用戦略や「特定技能2号」への移行手順まで、企業が取るべき現実的な防衛策をわかりやすくまとめています。

特定技能の「受け入れ停止」が起こる仕組みと背景

特定技能制度は人手不足に対応するための資格ですが、外国人を無制限に受け入れる制度ではありません。制度の根幹には、産業分野ごとに5年間の受け入れ上限(受入れ見込数)が閣議決定で設定されています。これは、外国人材への過度な依存を防ぎ、国内の労働市場を適正に管理するための枠組みです。

上限値が設定されている主な理由は、日本人の雇用機会を守るためです。オフィスワーク中心の「技術・人文知識・国際業務」等とは異なり、特定技能は現場実務を直接担います。企業が賃金改善などの経営努力を怠り、安易な人材確保に頼り続けると、業界全体の賃金水準に悪影響を及ぼしかねません。そのため政府は、分野ごとに必要な人数を試算して厳密に管理しています。

在留外国人の総数が上限に達する、または達する見込みとなった段階で関係省庁が協議し、告示によって新規申請の受付を停止します。

実務上、人事担当者が注意すべきは、公表される「充足率」が70%〜75%に達したタイミングです。統計データには審査中や申請準備中の人数が反映されずタイムラグが生じるため、表示が「70%」であっても、実質的にはすでに上限付近へ達しているケースが多いためです。

この仕組みを理解し、自社の業界で同様の措置が取られる前に対策を講じることが欠かせません。外食業の事例が示す通り、正式発表後の対応では書類提出が間に合わず、採用計画の変更を余儀なくされるからです。

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事例から見る受け入れ停止:外食業分野で起きたケース

特定技能制度において、初めて上限到達による新規受け入れ停止となったのが外食業分野です。2026年4月13日、出入国在留管理庁は農林水産大臣からの要請に基づき、外食業における特定技能1号の新規受け入れを原則停止する告示を発表しました。これにより、多くの企業が活用していた採用ルートが受付停止となりました。

この事態は他分野の事業者にとっても他人事ではありません。活用していた採用ルートが予告なく停止し得るという実例を示したからです。

外食業が急速に上限枠を消費した理由

外食業分野で上限枠の消費が急速に進んだ背景には、3つの要因があります。第一に、飲食店でアルバイトをしていた留学生が、卒業後にそのまま自店舗で特定技能1号へ切り替えるルートが定着していた点です。企業側にとっても、現場経験のある留学生の正社員化は未経験者の採用や海外からの呼び出しよりスムーズでした。第二に、国内外での技能測定試験の実施頻度が高く、合格者が十分に存在した点です。第三に、インバウンド需要の回復です。深夜営業や訪日客対応で人手不足が生じた飲食店が一斉に特定技能の活用を進めたため、申請数が急増しました。

停止告示の実施による現場への影響

停止の発表から効力発生日までの猶予期間は、わずか約2週間でした。

この短期間での実施により、現場では大きな混乱が生じました。進行中だった採用計画は見直しとなり、内定を得ていた留学生が在留資格を変更できず帰国するケースも発生しました。渡航費や日本語講習費を負担していた企業が採用を断念せざるを得なくなったほか、新規店舗のオープン延期や営業時間の短縮を余儀なくされた企業も相次ぎました。

全業界へ向けた教訓

この事例は外食業に限らず、製造・建設・介護・食品製造など、外国人材を活用する全業界共通の課題です。今後の受け入れ再開時期は未定であり、対応が遅れるほど影響は長期化します。他分野の事業者が得るべき教訓は、政府による告示が発表されてからの対応では間に合わないという点です。

受け入れ停止で「制限される手続き」と「通常通り継続できる手続き」

受け入れ停止措置が発動された場合、行政の目的は「これ以上、日本国内におけるその分野の特定技能外国人の総数を増やさないこと」に絞られます。そのため、上限枠をさらに圧迫するような「新しい人」の流入に関わる手続きは、例外なくすべてストップ(不交付・不許可)となります。一方で、「すでに日本国内のその分野の枠(カウント)に含まれている人材」を維持し、企業の既存の現場を崩壊させないための手続きは、通常通り継続され審査の対象となります。この明確な線引きを正確に理解していないと、無用な恐怖を感じる一方で、本来やってはいけない違法な採用に手を染めてしまう危険があります。

制限される手続き

新規の呼び寄せや流入に該当する以下の手続きは一律でストップします。

  • 海外からの新規呼び寄せ(COE): 在留資格認定証明書交付申請
  • 国内の初回の切り替え: 留学生や他の就労ビザから、該当分野の特定技能1号へ変更する申請
  • 他分野からのスライドや移行準備: 移行を目的とした特定活動ビザへの切り替え

通常通り審査される手続き

国内ですでにカウントされている人材に関する以下の手続きは通常通り進行します。

  • 在留期間更新許可申請: 現在自社で就労しているスタッフの更新は、事業継続の観点から制限対象外となります。
  • 同分野内の転職組の採用(変更申請): すでに同分野の1号資格を持つ他社の人材を転職者として受け入れる場合、国内の総数が増えないため許可されます。
  • 特定技能2号への変更: 1号の上限枠とは別管理のため、ストップの対象外となります。

実務上の重要な注意点

同分野の転職組を採用する際、「内定の翌日からすぐに働かせられる」という誤解が多く見られます。特定技能ビザは指定書に会社名が明記されるため、転職であっても入管へ変更申請を出し、新しい会社名が記載された許可が下りるまでの約1〜2ヶ月間は新会社で就労させることができません。違反すると不法就労助長罪の対象となります。

【対策】 内定後は前職の退職日と自社での入社日の間に必ず1〜2ヶ月の空白期間を設け、新しい在留カードまたは指定書が交付されてから業務を開始させてください。

手続きの種類制限継続備考
海外からの新規呼び寄せ(COE)○新規流入が完全に遮断される
国内留学生からの変更申請○新規ビザ切り替えが停止
他分野からの変更申請○スライド切り替えが不可
既存スタッフの在留期間更新○現場維持のため継続
同分野内の転職(変更申請)○要:変更許可までは就労不可
特定技能2号への変更○上限枠が別管理

協議会加入の実務的課題

停止措置下での転職採用を検討する場合、もう一つの大きな実務的ハードルが存在します。初めてその分野の特定技能外国人を受け入れる企業は、管轄省庁の「協議会」への事前加入が必須となります。停止発動後は他社も一斉に転職組の採用へ動くため、協議会への加入申請が殺到し、証明書発行までに数ヶ月待ちが発生して在留期限切れを引き起こす実務上の大きな障壁が存在するのです。

制限と継続の境界線を正確に理解することが、現場でのパニックを回避し、法令遵守のもとで適切な採用判断を下すための最初の一歩となります。

実務担当者が注意すべき「申請受理日」と書類不備のリスク

受け入れ停止のデッドラインにおいて、採用可否を分ける基準は書類の「発送日」ではなく、入管側に「受理された日」です。この誤解により手遅れとなるケースが少なくありません。

実務上の「受理」とは、単に書類が窓口に届いた状態ではなく、形式的要件を満たしてシステム上に受け入れられ、申請番号(受領印)が発行された状態を指します。郵送申請の場合、締切当日の消印は無効となり、現物が到着して確認された日が受理日です。オンライン申請でもアクセス集中によるトラブルのリスクがあるため、受付完了通知メールが発行された日時が基準となります。

申請方法別の受理日の定義と実務上の注意点

申請方法受理日の定義実務上の注意点
郵送申請現物が入管に到着し、開封・確認された日当日消印は無効。数日の遅延が致命傷に
オンライン申請受付完了通知メールが発行された日時サーバー重負荷時にエラー発生。完了画面を確認必須
窓口持参その場で形式要件確認後、受領印が押された日直前の殺到で窓口に列ができ、開庁時間内に間に合わない可能性

受け入れ停止の発表から完全ストップまでの「駆け込み期」においては、通常時の入管窓口の常識は通用しません。通常であれば、提出書類に軽微な記載漏れや証明書の不足があっても、後から提出を求める「補正通知」が出され、審査を継続してくれます。しかし、停止直前の逼迫した状況下では、少しでも書類に不備や矛盾(例えば、雇用契約書の金額齟齬や協議会証明書の期限切れなど)があれば、窓口で即座に「不受理」として書類一式を突き返されます。

修正して再提出する際にすでに停止期日を過ぎていれば、受付は認められません。結果として内定者の採用断念を余儀なくされます。

自社作成はもちろん、実務ノウハウの浅い支援機関や業者へ依頼していた場合でも、準備不足による不備で不受理となり、採用計画が見直しとなった事例が見られました。「提出したから安心」と油断するのは禁物です。

対応策としては、受付停止日の2週間〜1ヶ月前には不備のない書類を揃えて申請を完了させることが重要です。業界の充足率が70%を超えた段階で書類準備を進め、必要に応じて実績のある行政書士などの専門家へ早期に確認・依頼することをお勧めします。

受け入れ停止措置における「例外ルート」の条件

新規の呼び寄せが停止した場合でも、合法的に人材を確保できるルートが存在します。行政の目的は「国内における対象分野の総数を増やさないこと」にあるため、すでに特定技能のカウントに含まれている人材の移動や、あらかじめ試算に組み込まれていたルートは例外的に認められます。

国内の既存特定技能外国人からの転職採用

国内の既存特定技能外国人からの転職採用がその筆頭です。すでに日本国内でその分野の特定技能1号として在留している外国人が、他社から自社へ転職する場合、「国内の特定技能1号の総数(カウント)」は1人も増えません。単なるA社からB社への枠内の移動に過ぎないため、受入停止措置の対象外となります。

ただし、この例外ルートを選択する場合、初めてその分野の特定技能外国人を受け入れる新規企業は、管轄省庁の「協議会」への事前加入が必須となります。停止発動後は他社も一斉に転職組の採用へ動くため、協議会への加入申請が殺到し、証明書発行までに2~3ヶ月待ちが発生します。その間に候補者の在留期限が切れてしまうリスクが存在するのです。同時に、新規が止まることで国内にいる転職組の価値が暴騰し、人材紹介会社への手数料が従来の1.5~2倍に跳ね上がるという「採用コスト高騰」という現実的な障壁も発生します。

特定の技能実習修了者からの移行

試験免除での移行が認められている技能実習修了者からの移行も例外ルートとして認められます。上限枠の設定段階で「技能実習からの移行者数」があらかじめ試算に組み込まれているため、職種・作業の関連性が認められる場合は変更申請が許可されます。

ただし実務上の注意点として、実習時の職種・作業と移行先の業務内容に指定された関連性が認められることが必須条件です。作業内容が合致しない場合は試験免除が適用されず、新規申請扱いとなって不許可となります。また、技能実習の満了日までに移行申請を受理させる必要があり、前職の監理団体からの書類回収に時間がかかると、申請前に実習期間が満了して帰国せざるを得なくなるケースもあります。

前職の企業や監理団体による評価調書の問題への対処

他社で実習を終えた人材を採用する際、前職の企業や監理団体から必須書類である「評価調書」の発行が得られないトラブルが生じることがあります。

この場合、前職へ書面で作成依頼を行った履歴を添えて「事情説明書」を入管へ提出することで、評価調書なしで審査を進めることが可能です。また、監理団体に対して「OTIT(外国人技能実習機構)へ相談・届出を行う」旨を伝えることで対応がスムーズになる場合もあります。なお、対象者が実習中に「技能検定3級(実技)」等に合格していれば、合格証の提出により評価調書自体を省略することも可能です。

今すぐ取り組むべき予防策

停止が起きる前に、「協議会への加入」と「自社実習生の特定技能化ルート」を確保しておくことが、経営者が今すぐ取り組むべき予防策なのです。

受け入れ停止が企業経営と採用計画に与える影響

受け入れ停止が発動されると、それまで企業が時間と資金を投じて進めていた採用計画が一瞬にして崩壊します。海外現地での面接、紹介会社への着手金、内定者への日本語教育費用、渡航手配にかかった実費などはすべて水泡に帰し、サンクコスト(埋没費用)化します。1人当たり数十万~数百万円の採用投資が、ビザが不許可・受付停止になった瞬間に全額損失となるのです。

採用計画の崩壊と長期的な経営への影響

最も悲劇的なのは、自社店舗で長年アルバイトとして貢献し、卒業後の正社員登用を前提に店長候補として育成していた留学生のビザ変更が間に合わなかった場合です。4月からの現場のシフトが致命的に瓦解し、既存の日本人スタッフへの過重労働という連鎖的な悪影響をもたらします。人事計画は根本から崩れ、新規店舗のオープンが延期に追い込まれた企業も相次ぎました。

市場の人材争奪戦と給与体系の逆転現象

新規呼び寄せが止まることで、国内に滞在する特定技能人材の希少価値が高まり、企業間での人材獲得競争が激化します。人材紹介会社への手数料相場が上昇するだけでなく、他社からの引き抜き防止や採用強化のため「月給の増額」や「手当の拡充」といった条件面での競争が生じやすくなります。その結果、中途採用の外国人の給与が生え抜きの日本人社員を上回る現象が発生し、社内の公平性やモチベーションに影響を及ぼす懸念があります。

資金力のある企業が好条件で人材を確保する一方、条件面の変更が難しい中小企業や地方店舗では、人材流入の停滞や流出による人手不足が深刻化しやすくなります。

営業縮小と経営危機への道

人材の補充が難しくなると、店舗や工場の運営維持に支障が生じます。現場の要員不足から「深夜営業の取りやめ」「定休日の追加」「稼働ラインの縮小」など、売り上げに直結する営業規模の縮小を余儀なくされます。人員不足によるオペレーションの乱れは、サービス品質の低下や顧客満足度の低下にもつながります。

さらに状況が悪化すると、需要や案件が存在していても現場を動かす要員が足りず、事業縮小や休廃業に追い込まれる「人手不足倒産」のリスクが高まります。

ビザの分散投資による経営基盤の防御戦略

外食業の事例が教えてくれた教訓は、「特定技能1号だけに自社の事業継続(人手確保)を全依存させることの恐ろしさ」です。1つのビザ制度に頼り切っていた企業は、受け入れ停止の告示が出た瞬間に「採用の選択肢」をすべて失い、高額な引き抜き合戦に巻き込まれて財務を痛めました。製造・建設・介護・食品製造などの他分野の経営者が打つべき経営判断は、「特定技能1号以外の別ルート(特定技能2号への引き上げ、技人国ルートの併設、身分系ビザの活用)」をあらかじめ社内に組み込んでおくことです。ビザの分散投資こそが、経営基盤を守る防御策となるのです。

停止期間中に企業が取るべき3つの代替的な採用戦略

1.隣接分野への人材配置転換

特定の分野で受け入れ停止となった場合でも、業務領域が重なる別の特定技能分野に枠の余裕があれば、そちらの資格で採用して事業を維持する手法が考えられます。

例えば、セントラルキッチンや仕込み工場を持つ飲食チェーンのケースです。外食業の受け入れが止まった際、人材を「飲食料品製造業」の特定技能1号として工場側に配属します。工場側での製造や加工業務を担わせることで、店舗スタッフの仕込み負担を大幅に減らし、間接的に人手不足を解消できます。ただし、工場枠で採用した外国人をそのまま店舗での接客やレジ打ちに従事させると資格外活動違反となるため、業務の切り分けは厳格に行う必要があります。

2.上限枠のない在留資格へのターゲットシフト

受け入れ停止の影響を受けないルートとして、「上限枠のない在留資格」へ採用ターゲットを広げるのも有効です。身分系の在留資格(永住者、定住者、日本人の配偶者等)は就労制限がなく、日本人と同様に多様な職種で雇用可能です。特定技能のような複雑な支援や報告義務も発生しません。

また、「特定活動46号」は日本の4年制大学等を卒業した高い日本語能力を持つ人材が対象で、接客や現場リーダー業務であれば特定技能の枠外で採用できます。「技術・人文知識・国際業務(技人国)」は単純作業こそできませんが、店舗マネジメントや商品開発などの総合職として留学生を採用し、将来の幹部候補として育成できます。これらのビザは制度変更による受け入れ停止の影響を受けません。

3.既存スタッフの定着強化と国内労働力の構造的組み込み

新規の流入が限られる以上、今現場で働いているスタッフの定着率を高めることが確実な防衛策となります。他社からの引き抜きに対抗するため、福利厚生の拡充や「特定技能2号」へのキャリアパスを提示し、長期勤続を促します。定期的な面談や将来の見通しを示すことが、エンゲージメントの向上につながります。

同時に、正社員採用だけに頼らず、短時間のスポットワークやシニア層・主婦層を組み合わせる「タスクの再設計」を進めることも重要です。特定技能だけに依存せず、国内の多様な人材を組み合わせて現場の負担を分散する組織づくりへ立ち返る必要があります。

これら3つの代替戦略は単なる場当たり的な対応ではなく、採用体制を見直す絶好の機会となり得ます。外国人採用においても「特定技能1号」「身分系・技人国」「日本人・パート」といった複数のルートを組み合わせる「採用ポートフォリオの分散」を進めることが、制度変更にも揺らがない経営基盤をつくります。

中長期的な安定確保に向けた「特定技能2号」への育成・移行

特定技能1号の受け入れ停止リスクに対する効果的な対策が、「特定技能2号」への移行です。最も大きな違いは、特定技能2号には政府が設定する受入見込数(上限値)の制限がないという点です。

受入枠の制限がない2号のメリット

1号は全体の枠が埋まると新規受け入れが停止します。しかし2号は熟練した技能を持つ人材として別枠管理されているため、業界全体で1号の新規停止措置が発動していても、自社スタッフの2号への変更申請は通常通り審査・許可されます。優秀な人材を2号へ引き上げることで、上限枠による制度的リスクを回避できます。

在留期間の撤廃と家族滞在の許可

特定技能1号には「通算で最長5年までしか日本に在留できない」という、企業・労働者の双方にとって致命的な期限の壁があります。しかし2号へ移行することでこの制限が完全に撤廃され、実質的に「無期限」での長期雇用が可能となります。さらに労働者側にとっては悲願である「配偶者や子供の帯同(家族滞在ビザ)」が国から許可されるようになります。家族を日本へ呼び寄せて一緒に暮らせるようになることで、生活基盤が日本に定着し、他社や他国へ移籍する離職リスクが激減します。

永住権取得と支援委託費の削減

また将来的な「永住権」の取得要件となる就労資格の期間にもカウントされるため、優秀な人材を永久的に社内に囲い込む強力なインセンティブとなります。加えて、2号では登録支援機関への「支援委託費」が原則不要になり、企業のコスト削減にも直結するのです。

2号取得に必要な技能と実務経験

特定技能2号の資格を取得するためには、難易度の高い技能試験への合格に加え、現場での「班長・現場監督レベルの実務経験(指導・管理能力)」の証明が必要です。これは、外国人材を単なる「指示されて動く人手不足の穴埋め労働力」として扱うのをやめ、自社の理念とオペレーションを熟知した「現場のミドルマネジメント層(リーダー)」として育成することを意味します。

計画的な準備とキャリアパス提示の重要性

「2号は難しいから5年目になってから考えればいい」という後回しの姿勢はリスクを伴います。2号の試験は年間の実施回数が限られており、直前で不合格になれば、1号の期限(5年)を迎えて帰国せざるを得なくなります。

経営者が取り組むべき具体策は以下の通りです。

  • 受検計画の策定: 試験スケジュールを把握し、入社3〜4年目の段階から計画的に受検させる。
  • 実務経験の付与: 現場でリーダー格としての経験を計画的に積ませ、証明書類を準備しておく。
  • 評価制度の明示: 「2号合格による昇給」や「家族呼び出しのサポート」など、明確なキャリアパスを提示する。

1号の受け入れ停止という外部リスクに左右されない体制を作るためにも、早い段階から2号への移行を見据えた育成を進めることが重要です。

受け入れ再開への見通しと今後の外国人雇用のあり方

受け入れ停止となった場合、すぐに受け入れ枠が拡大されるわけではありません。行政手続きの構造上、一度上限に達した受入見込数を改定し、新規受け入れを再開するまでには、最短でも半年から1年近くの期間を要します。

受け入れ再開までの4つの重いプロセス

上限到達から審査の再開までには、以下のステップを経る必要があります。

  1. 実勢調査・分析: 関係省庁や業界団体による現場の人手不足の実態調査とデータ分析。
  2. 省庁間協議: 法務省・出入国在留管理庁・関係省庁による「上限引き上げの必要性」や「国内人材確保の取り組み」に関する協議。
  3. 閣議決定・告示改定: 政府全体としての受入見込数(上限値)の正式な引き上げ手続。
  4. 現場運用の再開: 告示改定を受け、出入国在留管理庁の審査現場で運用を再開。

現場で人手不足が生じてから実際のビザ審査が再開されるまでには、どうしてもタイムラグが生じます。

特例的な救済措置とその落とし穴

受け入れ停止や改定待ちの期間中、出入国在留管理庁によって特例的な措置が講じられることがあります。すでに内定を出している留学生や技能実習生に対し、特定技能の許可が出るまでの就労を認める「特定活動」ビザが発給された事例もあります。国内にとどまって一定の就労を開始できるため、内定者の帰国や他社への流出を防げる点がメリットです。

ただし、注意点もあります。これはあくまで一時的な措置であり、全員に自動付与されるわけではありません。また「特定技能」としての在留期間にはカウントされず、制度上の不安定さが残ります。さらに、海外からの「新規呼び寄せ」には適用されないケースが多く、来日の延期や取り消しが生じる可能性があります。救済措置を前提とした採用計画はリスクを伴います。

持続可能な雇用のあり方を実現する3つの要素

今後、制度変更の影響を抑えて外国人雇用を継続するために重要な要素は以下の3点です。

情報収集と専門家との連携: 上限の達し具合や制度の動きを把握し、停止前に迅速な判断ができるよう専門家と連携しておく。

採用ルートの分散化: 特定技能1号のみに依存せず、「特定技能1号・2号」「技人国」「身分系ビザ」「日本人パート・シニア層」を柔軟に組み合わせた採用体制を整える。

長期雇用に向けた育成と定着: 短期的な労働力の確保にとどまらず、自社の理念の共有や長期的なキャリアパスの提示により定着率を高める。

経営者に求められる視点

外国人材の活用を単なる一時的な人員補充と捉えず、事業を継続・成長させるための人材育成やリスク管理の一環として捉え直すことが重要です。制度の変更に左右されない体制を整えることが、安定した現場の維持につながります。

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この記事の監修者

西脇 清訓

MIRAI行政書士事務所

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代表行政書士

西脇 清訓

プロフィール

2020年行政書士事務所開業以来、国際業務、相続業務、補助金申請・法人設立など、人生と事業の節目に寄り添う専門家として、実務経験と豊富な知識を活かし、多くのお客様の課題解決に貢献してまいりました。

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外国人を雇用する際の注意事項は?
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