「外国人を採用したいが就労ビザの条件が複雑で分からない」と悩む人事担当者は少なくありません。就労ビザは技人国や特定技能など十数種類に分かれ、学歴、報酬水準、企業の安定性など厳格な審査基準があります。
本記事では取得が難しいと言われる理由をデータで検証し、各ビザ共通の条件や手順、審査通過のポイントを体系的に解説します。これから採用を進める企業の実務に役立つ情報をお届けします。
日本の就労ビザの取得は難しいのか

日本の就労ビザの取得は難しいのかという問いへの答えは、制度を正しく理解すれば「想像より難しくない」が実態です。
主要な就労ビザは技術・人文知識・国際業務と特定技能など十数種類に及び、審査は学歴・職歴、報酬水準、日本企業側の財務安定性、提出書類の整合性を総合評価します。入管統計では許可率は8〜9割程度で、不許可の多くは書類不備や要件齟齬です。
なお、在留資格認定証明書(COE)を取得し大使館で査証を発給してもらう王道ルートを使えば、実務的なリードタイムはCOE審査1〜3カ月+領事査証5営業日が目安です。
日本の就労ビザの条件とは
日本で就労ビザを取得するためには、いくつかの重要な条件を満たす必要があります。これから解説する条件をクリアすることで、ビザ取得の可能性が高まります。
ビザの種類に適合するような業務に就く
日本の就労ビザを取得するためには、まずそのビザの種類に適合する業務に従事する必要があります。例えば、技術者や専門職向けのビザであれば、応募者はその職務に関連する学歴や職歴を持っていることが求められます。
特定技能ビザの場合も、特定の業種において必要な技能を証明することが重要です。これにより、外国人が日本の労働市場で適切に機能できることが確認され、ビザの取得がスムーズになります。
日本人と同等以上の報酬を得られる
日本で就労ビザを取得するためには、外国人が日本人と同等以上の報酬を得ることが求められます。この条件は、外国人労働者が日本の労働市場において適正な評価を受けるための重要な要素です。
具体的には、業種や職種に応じた最低賃金が設定されており、これを下回る報酬ではビザの取得が難しくなります。
また、報酬の水準は、企業の規模や業種、地域によっても異なるため、事前に市場調査を行い、適切な給与設定を行うことが重要です。企業が外国人を雇用する際には、報酬が日本人と同等であることを証明するための書類を整える必要があります。
就労先の企業に継続性や安定性がある
就労ビザを取得するためには、外国人が就職する企業が継続性や安定性を持っていることが重要な要件となります。
具体的には、企業の設立年数や業績、財務状況などが審査の対象となります。新設企業や経営が不安定な企業では、ビザの取得が難しくなる可能性があります。
また、企業が提供する雇用条件や労働環境も評価されます。例えば、労働契約が明確であり、適切な労働条件が整っていることが求められます。これにより、外国人労働者が安心して働ける環境が整っていることが示され、ビザ取得の可能性が高まります。
日本で就労ビザを取得する手順とは

日本で就労ビザを取得するためには、いくつかのステップを踏む必要があります。まず、就労ビザの取得条件を満たしているか確認し、その後、雇用契約を締結します。次に、在留資格認定証明書を申請し、最後に住民登録などの必要な手続きを行います。これらの手順を正確に進めることで、スムーズなビザ取得が可能となります。
就労ビザの取得条件を満たす確認する
就労ビザの取得条件を満たすか確認するプロセスは採用活動の初期に行うほど効率的です。まず候補者の学位・専攻・職歴をヒアリングシートで詳細に把握し、希望在留資格の告示要件と照合します。
次に、報酬水準を求人票で提示し、同種同等の日本人と同額であるか人事データで検証します。企業側の安定性は最新決算と納税証明で確認し、赤字がある場合は資金調達実績や受注残高を一覧化します。
特定技能では技能試験合格証とJFT-BasicまたはJLPT N4以上の語学証明の有効期限も忘れずに確認する必要があります。要件をチェックリストで可視化し、全項目が「YES」になってからCOE書類を作成すれば、追加資料請求を大幅に減らせます。
雇用契約の締結を行う
雇用契約の締結を行う段階では、就労ビザ審査で求められる情報を余さず反映することが合格率を左右します。
契約書には職務内容、勤務地、勤務時間、報酬総額、賞与有無、更新有無、解約予告期間などを日本語と英語(または母語)で明記し、双方署名する必要があります。
報酬欄は基本給・手当・社会保険料控除後の手取りも記載すると審査官が日本人との同等性を判断しやすくなります。
また、試用期間やみなし残業の扱いが労基法に適合しているか確認し、ブラック企業的条項を排除することも重要です。外国語版を付すことで候補者が内容を理解している事実を示せるため、入管から「一方的契約」との指摘を避けられます。
在留資格認定証明書の申請を行う
在留資格認定証明書の申請を行う際は、雇用主が所在地管轄の出入国在留管理局に申請書と添付資料一式を提出します。必要書類は雇用契約書、会社概要、決算書、納税証明、履歴書、学位証明、職歴証明、写真などで、資料不足や形式不備が最大の却下理由です。
標準処理期間は1〜3カ月ですが、設立間もない企業や特殊職務では追加照会により4カ月超となる例もあります。行政書士へ依頼する場合の手数料相場は10万〜20万円で、早期化より不許可リスク低減が主目的です。
COE発行後は原本またはPDFを候補者へ送り、領事査証申請に進みます。有効期限は発行日から3カ月で、この期間内に日本へ入国しなければ効力を失う点に注意が必要です。
住民登録などの必要な諸手続を行う
住民登録などの必要な諸手続を行うことは、就労ビザで来日した外国人が日本社会で生活基盤を整える最終ステップです。入国後14日以内に市区町村役場で転入届を提出し、在留カードを提示して住民票を取得します。
同時に国民健康保険と厚生年金の加入手続き、マイナンバー通知の受領が行われ、これらが完了すると銀行口座開設やクレジットカード申請が容易になります。
また、住居賃貸では在留期間が1年以上かが審査基準となるため、3カ月許可の場合は更新証明書を家主へ提示すると円滑です。
日本で就労ビザで不許可になるケースとは

日本で就労ビザを取得する際には、いくつかの理由から不許可となるケースがあります。これから説明するパターンを回避するために、あらかじめ準備を怠らないようにしましょう。
外国人が卒業した学校の専攻と職務内容が合っていない
就労ビザの申請において、外国人が卒業した学校の専攻と就く職務内容が一致していない場合、ビザの取得が難しくなることがあります。
日本の就労ビザ制度では、特に技術者や専門職に関して、学歴や専攻が求められる職務に関連していることが重要視されます。例えば、情報技術の分野で働く場合、コンピュータサイエンスや情報工学の学位を持っていることが求められます。
このような条件が設けられている理由は、外国人が日本の労働市場において適切なスキルを持っていることを確認するためです。
専攻と職務内容が合致していない場合、企業側はその外国人が必要な知識や技術を持っていないと判断され、ビザ申請が不許可となるリスクが高まります。
外国人の素行に問題がある
就労ビザの申請において、外国人の素行は非常に重要な要素です。日本の入国管理局は、申請者が日本での生活に適応できるかどうかを慎重に審査します。
具体的には、過去の犯罪歴や不正行為、社会的なトラブルの有無がチェックされます。これらの情報は、申請者の信頼性や日本社会への適応能力を判断する材料となります。
もし申請者に問題がある場合、ビザの取得が不許可となる可能性が高まります。特に、重大な犯罪歴や不正行為がある場合は、審査を通過することが極めて難しくなります。
必要書類に不備がある
就労ビザの申請において、必要書類の不備は最も一般的な不許可の理由の一つです。申請者は、ビザの種類に応じた書類を正確に準備する必要があります。
例えば、雇用契約書や在留資格認定証明書、学歴証明書などが求められますが、これらの書類に誤りや不足があると、審査が進まないことがあります。
特に、書類の記載内容が不正確であったり、必要な署名が欠けていたりすると、申請は却下される可能性が高まります。したがって、提出前に書類を十分に確認し、必要に応じて専門家の助言を受けることが重要です。
まとめ
日本の就労ビザの取得は、確かに複雑で厳格な条件が求められますが、正しい情報と手順を理解することで、スムーズに進めることが可能です。
ビザの種類や条件をしっかり把握し、企業の安定性や報酬水準を確保することが重要です。これから外国人を採用する企業にとって、この記事が役立つ情報源となり、成功に繋がることを願っています。