「日本にも電子渡航認証ができるって聞いたけど、JESTAって一体なに?企業のビジネス渡航にも影響あるの?」
2026年3月10日、政府は米国のESTAをモデルにした日本独自の電子渡航認証制度「JESTA(ジェスタ)」の導入に向けた入管法改正案を閣議決定しました。ビザ免除対象の74カ国・地域からの訪日外国人に対し、渡航前のオンライン事前認証を義務化する制度で、2028年度中の運用開始を目指しています。2025年の訪日外国人数は4,268万人と過去最高を更新し続けるなか、不法滞在防止とセキュリティ強化の切り札として注目されています。
- JESTAの制度概要と導入の背景・目的
- 2028年度運用開始までのスケジュール
- 申請手続き・必要情報・想定される手数料
- 米国ESTA・欧州ETIAS・韓国K-ETAなど各国制度との比較
- 企業のビジネス渡航・インバウンド受入への影響と今からできる準備
この記事では、2026年3月時点の最新情報をもとに、JESTAの全体像を徹底解説します。行政書士の視点から、企業や在留外国人への影響についても詳しくお伝えします。
JESTAとは?日本版ESTAの制度概要と導入の目的
JESTA(Japan Electronic System for Travel Authorization)は、日本への短期滞在でビザが免除されている国・地域の外国人に対し、渡航前にオンラインで事前認証を受けることを義務付ける制度です。米国のESTA(Electronic System for Travel Authorization)をモデルにしており、日本版ESTAとも呼ばれています。
JESTAの3つの目的
JESTAは、出入国在留管理庁が2025年5月に公表した「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」の第1の柱として位置づけられています。
- 不法滞在の防止:渡航前に申請者の情報をスクリーニングし、不法残留のリスクが高い者の入国を事前に阻止する。2024年1月時点の不法残留者は約79,113人(前年比+12.2%)で、うち約63%にあたる49,801人が「短期滞在」からのオーバーステイ。ビザ免除国からの不法残留者だけで約28,000人に達している
- テロ対策・治安維持:犯罪歴やテロ関連情報との照合を渡航前に実施し、危険人物の入国を水際で防止する
- 入国審査の効率化:認証済み旅行者はウォークスルー型ゲートを利用でき、空港での入国審査時間を現在の平均25分から10分以下に短縮することを目標としている
制度の基本的な仕組み(5段階フロー)
JESTAは以下の流れで運用されます。
- Step 1 外国人が渡航前にオンラインで事前認証を申請
- Step 2 航空会社・船会社が予約者情報を出入国在留管理庁に報告
- Step 3 出入国在留管理庁長官が運送業者に搭乗・乗船の可否を通知
- Step 4 認証済みの者のみ搭乗・乗船が許可される(未認証者は搭乗拒否)
- Step 5 認証済み旅行者はウォークスルー型ゲートで入国手続きを迅速化
ポイント:JESTAは「ビザ(査証)の代わり」ではなく、ビザ免除制度を維持したまま「追加の事前チェック」を行う制度です。既存の在留資格制度を変更するものではありません。
2028年度の導入に向けたスケジュールと入管法改正の経緯
JESTAの導入は、数年にわたる議論と法整備を経て実現に向かっています。ここでは閣議決定までの経緯と今後のスケジュールを時系列で解説します。
入管法改正までの主な経緯
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2020年頃〜 | 出入国在留管理庁が米国ESTA等の先行事例を調査研究 |
| 2024年6月 | 政府が「日本版ESTA」導入方針を発表(当初2030年頃の目標) |
| 2025年2月 | 石破首相が衆院予算委員会で「できる限り早期の導入」に言及。2030年目標から前倒しへ |
| 2025年5月 | 法務省・入管庁が「不法滞在者ゼロプラン」を公表。JESTAを第1の柱に位置づけ |
| 2025年春 | 正式略称「JESTA」が決定 |
| 2026年2月 | 高市首相がJESTA法案の今国会提出を確認。法務大臣が「2028年度末までにあらゆる措置を講じる」と表明 |
| 2026年3月3日 | 自民党法務部会が入管法改正案を了承 |
| 2026年3月10日 | 閣議決定。入管法改正案を衆議院に提出 |
今後の導入スケジュール
- 2026年 国会会期中:国会審議・採決(今国会での成立を目標)
- 法案成立後:関連政令の整備、システム開発・構築
- 2027年3月31日まで:在留手数料引き上げ部分の先行施行
- 2028年度中(2028年4月〜2029年3月):JESTA運用開始
成田・羽田・関西・福岡の各主要空港では、統合キオスクのパイロット運用が先行して進行中です。また、Visit Japan Web(訪日外国人向けの入国手続きオンラインサービス)とJESTAの連携・統合の可能性も今後の検討課題とされています。
JESTA申請の手続き・必要情報・想定手数料
JESTAの具体的な申請手続きについて、現時点で判明している情報をまとめます。手数料や有効期間など一部は未確定のため、各国の類似制度から推定される内容も含めて解説します。
申請に必要な情報
閣議決定された入管法改正案と報道から、以下の情報が申請時に求められる見込みです。
- パスポート情報(氏名、生年月日、国籍、パスポート番号)
- 渡航目的(観光、商用、親族訪問等)
- 滞在先情報(ホテル名、知人宅住所等)
- 職業情報
- 渡航履歴
- 犯罪歴・過去の不法滞在歴の有無
手数料・審査期間・有効期間(推定)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請方法 | 公式ウェブサイトおよびアプリ(詳細未発表) |
| 手数料 | 未定(政令で決定。1,500〜3,000円程度と推定) |
| 審査期間 | 未定(各国の類似制度から即時〜72時間と推定) |
| 有効期間 | 未定(2〜5年と推定。パスポート有効期限までの可能性あり) |
| 手数料徴収の特徴 | 「認証申請時」と「認証取得時」の2段階で徴収 |
注意:手数料の金額、審査期間、有効期間は2026年3月時点で未確定です。今後の政令・省令の制定を経て正式に決定されます。また、出国税(国際観光旅客税)も2026年7月に1,000円から3,000円に引き上げが予定されており、JESTA手数料と合わせて渡航コストが増加する見込みです。
認証が拒否された場合の対応
JESTAの認証が得られなかった場合は、以下の対応が必要です。
- 航空会社・船会社は搭乗を拒否する義務がある
- 入力ミスが原因の場合は、正しい情報で再申請が可能(米国ESTAと同様の運用を想定)
- 認証が拒否された場合は、在外日本大使館・領事館で通常のビザ(査証)を申請する必要がある
ESTA・ETIAS・K-ETAなど各国の電子渡航認証と徹底比較
JESTAは世界的に広がる電子渡航認証制度の流れに沿ったものです。主要国の制度と比較してみましょう。
各国電子渡航認証の比較一覧
| 制度 | 手数料 | 有効期間 | 対象国数 | 開始年 |
|---|---|---|---|---|
| 米国ESTA | 40.27ドル(約6,300円) | 2年 | 42カ国 | 2008年 |
| 欧州ETIAS | 20ユーロ(約3,300円) | 3年 | 約60カ国 | 2026年Q4予定 |
| 英国ETA | 16ポンド(約3,100円) | 2年 | 約85カ国 | 2024年 |
| カナダeTA | 7カナダドル(約750円) | 5年 | ビザ免除国 | 2016年 |
| 韓国K-ETA | 10,000ウォン(約1,100円) | 3年 | 約67カ国 | 2021年 |
| 豪州ETA | 20豪ドル(約2,000円) | 1年 | 約15カ国 | 1996年 |
| 日本JESTA | 未定(1,500〜3,000円推定) | 未定(2〜5年推定) | 74カ国・地域 | 2028年度予定 |
欧州ETIASの延期から学ぶ教訓
欧州のETIASは当初2021年導入予定でしたが、前提となるEES(出入国管理システム)の準備遅れなどにより計5回延期され、2026年第4四半期にようやく運用開始の見込みです。また、手数料も当初の7ユーロから20ユーロに引き上げられました。JESTAは後発であるがゆえに、こうした先行事例の教訓を活かした制度設計が期待されます。一方で、74カ国・地域という対象国の多さは、システムの処理能力として大きな負荷が想定される点にも注意が必要です。
JESTAの日本独自の特徴
各国の制度と比較したJESTAの特徴的なポイントは以下のとおりです。
- 後発ゆえの優位性:ESTA(2008年)、eTA(2016年)、K-ETA(2021年)、UK ETA(2024年)の運用実績を参考にできる。特にETIASの度重なる延期の教訓を活かした確実な準備が期待される
- 不法滞在対策が主目的:他国のETAがテロ対策を主目的とするのに対し、JESTAはオーバーステイ防止という入管管理の文脈が強い
- 手数料の2段階徴収:「認証申請時」と「認証取得時」の2段階で手数料を徴収する仕組みは他国にない独特の構造
- 対象国数の多さ:74カ国・地域はESTAの42カ国や豪州ETAの約15カ国と比較して非常に多く、年間3,000万人以上の渡航者を処理するシステムの構築が求められる
ポイント:韓国のK-ETAは、日本を含む22カ国・地域に対して2026年12月31日まで申請免除の措置が取られています(観光促進目的)。各国とも制度の柔軟な運用を行っており、JESTAでも同様の免除措置が検討される可能性があります。
JESTAの対象者と対象外(例外ケース)
JESTAが必要な人と不要な人の区分は、在留資格制度と密接に関連しています。正確に理解しておきましょう。
JESTAが必要な人
- ビザ免除対象の74カ国・地域からの短期滞在者(観光・商用・会議出席・親族訪問等)
- クルーズ船旅客(指定旅客船に乗船し、観光目的で上陸する外国人)
- 乗り継ぎで一時的に日本に入国する外国人の一部
- 未成年者を含む全員が個別に取得が必要
JESTAが不要な人
| 区分 | 理由 |
|---|---|
| 在留資格保持者(就労ビザ・配偶者ビザ・永住者等) | ビザ免除制度を利用しないため対象外 |
| 査証(ビザ)を取得して入国する外国人 | JESTAはビザ免除者向けの制度 |
| 外交旅券・公用旅券保持者(推定) | 米国ESTA等でも外交官は免除 |
| 在留カード保持者 | 既に入管の管理下にあるため対象外 |
ビザ免除の滞在日数は国によって異なる
ビザ免除の短期滞在期間は、すべての国が90日というわけではありません。
- 90日:大半の国・地域(米国、EU各国、韓国、豪州、カナダ等)
- 30日:ブルネイ、カタール、UAE(アラブ首長国連邦)
- 15日:インドネシア、タイ
いずれの滞在期間であっても、ビザ免除国からの入国にはJESTAの事前認証が必要になります。なお、2025年の訪日外国人数は4,268万人と過去最高を更新しており、このうち約80%がビザ免除国からの入国者です。インバウンドの拡大に伴い、JESTAが対象とする渡航者数は年間3,000万人を超える規模となることが見込まれます。
企業のビジネス渡航・インバウンド受入への影響
JESTA導入は、海外出張者の受入やインバウンド関連ビジネスに直接的な影響を与えます。企業が把握しておくべきポイントを整理します。
海外からの出張者・ビジターの受入
- 事前案内の必要性:ビザ免除国からの出張者に対し、JESTA申請が必要であることを事前に周知する仕組みが必要
- スケジュール管理の見直し:認証取得に最大72時間を要する可能性があるため、直前の出張手配が困難に。少なくとも渡航1週間前までの申請が推奨される
- 展示会・カンファレンス:招待状発行時にJESTA関連情報を明記し、参加者への早期告知を組み込む必要あり
- 採用面接での短期来日:ビザ免除国出身の候補者が面接のために短期来日する際も、JESTA認証が前提条件に。採用プロセスにJESTA申請の案内を組み込む
航空会社・運送事業者への法的義務
入管法改正案では、航空会社や船舶会社に以下の法的義務が課されます。
- 搭乗前のJESTA確認義務:チェックイン時に乗客情報を出入国在留管理庁に報告し、認証の有無を確認
- 未認証者の搭乗拒否義務:JESTA認証のない旅客は搭乗させてはならない
- 罰則:義務違反に対し50万円以下の過料
在留手数料の大幅引き上げにも注意
JESTA導入と同じ入管法改正案には、在留関連手数料の約40年ぶりの大幅改定も含まれています。
| 手続き | 現行上限 | 改正後上限 |
|---|---|---|
| 在留資格変更・更新許可 | 1万円 | 10万円 |
| 永住許可 | 1万円 | 30万円 |
注意:在留手数料の引き上げは2027年3月31日までに施行予定です。外国人社員の在留資格更新・変更にかかるコストが大幅に増加する可能性があるため、企業は早めにコスト試算を行うことをおすすめします。なお、経済的困難時の減額・免除制度も設けられる予定です。
JESTA導入前に企業と外国人が今すぐできる準備
2028年度の運用開始までまだ時間がありますが、今から準備できることは多くあります。企業担当者と外国人それぞれの視点で、具体的な準備事項を整理します。
企業が準備すべきこと
- 社内体制の整備:海外からの出張者・ビジターに対するJESTA申請案内のフローを構築。招待状テンプレートにJESTA関連情報を追加
- コスト試算:在留手数料引き上げ(2027年3月施行予定)とJESTA導入によるコスト増を事前に試算し、予算に反映
- 法改正の動向モニタリング:国会での審議状況、政令の制定スケジュールを継続的に確認
- 登録支援機関・行政書士との連携:外国人雇用に関する制度変更への対応を専門家と相談
在留外国人・渡航予定者が知っておくべきこと
- 在留資格保持者はJESTA不要:就労ビザや配偶者ビザで日本に在留している方は、JESTAの対象外。ただし、在留手数料の引き上げには注意が必要
- 短期帰国・再入国の場合:在留資格を保持したまま一時出国し再入国する場合は、再入国許可があればJESTAは不要
- 家族の訪日:ビザ免除国からの家族が短期滞在で訪日する場合はJESTAが必要になるため、事前に案内しておくとスムーズ
訪日外国人の医療保険加入との連動
政府はJESTAの申請プロセスに民間医療保険の加入確認を組み込む方向で検討しています。2024年9月の調査では、訪日外国人による医療費未払い総額が月間約6,135万円(年間7億円超)に達しており、訪日外国人の約3割が旅行保険未加入という実態があります。
JESTA申請時に保険加入証明の提出を求めることで、未保険での入国を事前に制限する仕組みが導入される可能性があります。この仕組みが実現すれば、医療費未払い問題の根本的な解決策となることが期待されています。
ポイント:JESTA導入は2028年度ですが、在留手数料の引き上げは2027年3月までに先行施行される予定です。外国人材を雇用する企業は、まず手数料引き上げへの対応を優先しつつ、JESTA導入に向けた準備も並行して進めましょう。制度の詳細が不明な点も多いため、行政書士等の専門家に相談しながら最新情報をキャッチアップすることをおすすめします。



