非行政書士行為の罰則強化と両罰規定|外国人雇用に関わる法人が問われる刑事責任リスク

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「登録支援機関や人材紹介会社の職員が書類を作成した場合、会社自体も処罰されるって本当?」 2026年1月1日施行の改正行政書士法では、非行政書士行為に対する罰則が大幅に強化されました。特に注目すべきは、第23条の3に新設された両罰規定です。職員が法人の業務として書類作成を行った場合、行為者個人だけでなく所属法人にも最大100万円の罰金刑が科されます。本記事では、外国人雇用に関わる法人が問われる刑事責任リスクの全容と、具体的な防止策を専門家向けに解説します。
  • 両罰規定の法的な仕組みと法人処罰の要件を条文レベルで解説
  • 「いかなる名目によるかを問わず」の射程と具体的な違法パターン
  • 刑事罰→登録取消→再登録不可の連鎖リスクと実務上の防止策
法人の刑事責任リスクを正しく理解し、適切なコンプライアンス体制を構築しましょう。

改正行政書士法の両罰規定とは|第23条の3の法的構造

両罰規定の法的構造を表す個人罰と法人罰の書類 2026年1月1日に施行された改正行政書士法の最大のポイントが、第23条の3に新設された両罰規定です。これにより、非行政書士行為の処罰対象が個人から法人にまで拡大されました。

両罰規定の条文構造

行政書士法第23条の3は、以下の構造を持ちます。法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第21条の2(第19条第1項違反の罰則)の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して100万円以下の罰金刑を科するとされています。 つまり、登録支援機関の職員が業務として書類作成を行った場合、職員個人に1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金が科された上で、所属法人にも別途100万円以下の罰金が科される二重処罰の構造です。

両罰規定が適用される要件

  • 行為者の要件:法人の代表者・代理人・使用人・その他の従業者であること
  • 業務関連性:違反行為がその法人の「業務に関して」行われたものであること
  • 違反行為:行政書士法第19条第1項違反(非行政書士行為)に該当すること
ここで重要なのは、法人が職員に対して「書類を作成しろ」と明示的に指示していなくても、業務として慣行的に行われていた場合は「法人の業務に関して」の要件を満たす可能性が高いという点です。組織的な業務フローの中で書類作成が行われていた場合、法人の管理責任が問われます。

改正前との比較

項目 改正前 改正後(2026年1月〜)
処罰対象 違反した個人のみ 個人+所属法人
個人への罰則 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金
法人への罰則 なし 100万円以下の罰金(新設)
報酬の要件 「報酬を得て」 「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」

「いかなる名目によるかを問わず」の射程|違法となる報酬形態の全パターン

さまざまな名目の請求書が否定されるイメージ 改正行政書士法第19条第1項に追加された「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言は、従来のグレーゾーンを一掃する極めて広い射程を持っています。

違法となる報酬名目の具体例

  • 支援委託費への内包:月額支援委託料(2〜3万円/人)に書類作成費を含める「込み込み」方式
  • コンサルティング料:「入管コンサルティング」「申請コンサルティング」名目での書類作成代行
  • サポート料・事務手数料:「申請サポート料」「事務手数料」としての対価受領
  • 会費・入会金:協会や団体の「年会費」「入会金」を原資とした書類作成サービス
  • 成功報酬:在留資格の許可が下りた場合に受け取る「成功報酬」
  • 顧問料:月額顧問契約の中で書類作成を行う形態
  • 無償を装った実質有償:書類作成は「無料」として他の名目で対価を受領する行為
日本行政書士会連合会の会長談話(2025年11月1日付)では、これらすべての名目が改正法の規制対象となることが確認されています。コロナ禍で横行した「コンサルタント料」「手数料」名目での給付金申請代行が改正の直接的な契機であり、外国人雇用分野の書類作成も同様の射程に含まれています。

改正の影響を受ける主な業種

業種 従来の実態 改正後のリスク
登録支援機関 支援委託費に書類作成を含む一括パッケージ 両罰規定により法人にも罰金刑
人材紹介会社 紹介先の外国人の在留資格申請を代行 紹介手数料に書類作成対価が含まれると違法
補助金コンサルタント 補助金申請書の作成代行 官公署提出書類の作成は行政書士の独占業務
自動車販売・整備業 車庫証明・登録手続きの代行 有償の車庫証明作成は行政書士法違反

登録支援機関・人材紹介会社が特に注意すべき違法パターン

適法な支援業務と違法な書類作成業務の対比 外国人雇用に関わる法人の中でも、登録支援機関と人材紹介会社は特に行政書士法違反のリスクが高い業種です。

登録支援機関の違法パターン

  • 在留資格認定証明書交付申請書の作成を支援委託費に含めて実施
  • 在留期間更新許可申請書を「無料サービス」として作成
  • 定期届出・随時届出書類を受入企業に代わって作成
  • 支援計画書(1号特定技能外国人支援計画書)の作成
  • 在留申請オンラインシステムへの入力代行
  • 入管から指摘された書類の不備修正(内容判断を伴う加除訂正)

人材紹介会社の違法パターン

  • 紹介した外国人の在留資格変更許可申請書の作成を「紹介サービス」の一環として実施
  • 紹介手数料に書類作成費用を内包した料金体系
  • 「入社後サポート」として在留期間更新の書類作成を実施
  • 採用代行サービスの中で在留資格申請書類を作成
EY Japanの税務アラート(2027年1月27日付)でも、改正行政書士法による企業の非行政書士行為リスクについて注意喚起が行われており、大手コンサルティングファームも重大なコンプライアンスリスクとして認識しています。

受入企業が間接的に関与するリスク

受入企業自身は書類作成を行っていなくても、委託先の登録支援機関が違法な書類作成を行っている場合、受入企業にもリスクが波及する可能性があります。具体的には、登録支援機関が登録取消処分を受けた場合、委託中の全ての支援業務が突然中断し、受入企業は代替の支援体制を緊急に構築する必要が生じます。また、違法な書類に基づいて取得された在留資格の有効性が問題になる可能性もあります。

刑事罰から事業終了までの連鎖リスク|5つのステップ

段階的に深刻化する法的リスクを象徴する階段 非行政書士行為が発覚した場合のリスクは、罰金刑だけにとどまりません。以下の5段階で連鎖的にエスカレートし、最終的には事業の存続そのものを脅かします。

ステップ1:刑事罰の確定

行政書士法第21条の2に基づき、違反行為者個人に1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金、両罰規定(第23条の3)により所属法人にも100万円以下の罰金が科されます。法人が罰金刑を受けることは、単なる金銭的制裁を超えた深刻な影響をもたらします。

ステップ2:入管法上の欠格事由への該当

法人又はその役員が行政書士法違反で刑事罰を受けた場合、入管法第19条の26に定める登録拒否事由に該当する可能性があります。禁錮以上の刑に処せられた場合は刑の執行終了後5年間、出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をした場合は行為の日から5年間が対象です。

ステップ3:登録支援機関の登録取消

入管法第19条の32に基づき、出入国在留管理庁長官は登録拒否事由に該当した登録支援機関の登録を取り消すことができます。登録取消になると、委託を受けている全受入企業の支援業務が即座に中断します。

ステップ4・5:再登録不可から事業終了への波及

登録取消を受けた法人は、取消日から5年間は再登録不可です。さらに、取消を受けた法人の役員であった者(取消日前60日以内に在任していた者)も同様に5年間は登録拒否事由に該当します。別法人を設立しても、同じ役員では登録ができません。そして、この再登録不可の期間中に以下のような波及的影響が事業全体に広がります。
  • 取引先への影響:委託企業の支援業務が中断し、損害賠償請求を受けるリスク
  • 社会的信用の失墜:刑事罰の事実が公表され、新規取引の獲得が困難に
  • 金融機関への影響:融資審査や既存融資の条件見直しの可能性
  • 他の許認可への影響:有料職業紹介事業許可等の他の許認可に影響する可能性
  • 従業員の離職:事業継続の見通しが不透明になり、人材流出が加速

過去の摘発事例に学ぶ|非行政書士行為の実態

コンプライアンス研修を行う企業の担当者たち 非行政書士行為の摘発は、外国人雇用分野に限らず複数の業種で行われています。過去の事例から教訓を学びましょう。

事例1:不正申請と闇ブローカーの関与(2024〜2026年)

栃木県では行政書士の豊田近弘容疑者が会社役員と共謀し、実在する18社の名前を使って約350人の外国人の在留資格を不正取得していた事例が発覚しました(2024年逮捕)。約5年間で受け取った報酬は1億円以上です。仙台市でも2026年1月に行政書士の工藤武志容疑者が、ブローカーからの指示で就業先企業を偽った書類を作成し、ベトナム人約50人分の虚偽申請に関与した事例が摘発されています。いずれも闇ブローカーが介在しており、書類作成の違法性を認識しながら報酬を優先した構図が共通しています。

事例3:登録支援機関初の登録取消(名古屋市・2020年)

グランウェイ株式会社が、外国人の本人署名欄に無断で代筆し、虚偽の書類を複数回入管に提出していたことで、特定技能制度における初の登録取消処分を受けました。関連会社2社も業務廃止届を自主提出しています。この事例は書類の「作成」のみならず「偽造」に至ったケースですが、当時は両罰規定がなく法人処罰の規定が存在しませんでした。改正後の現行法では、同様の行為が発覚した場合、登録取消に加えて法人自体にも100万円以下の罰金刑が科されることになります。

コロナ禍での給付金不正と法改正の契機

2020年以降のコロナ禍において、無資格者が「コンサルタント料」「手数料」等の名目で持続化給付金や各種補助金の申請代行を行い多額の報酬を得る事例が全国で多発しました。持続化給付金関連だけで2,500件以上の詐欺事件が起訴されています。これらの不正が行政書士法改正の直接的な契機となり、「いかなる名目によるかを問わず」の文言追加につながりました。外国人雇用分野における登録支援機関の書類作成問題も同時に規制強化の対象となっています。

法人が取るべきコンプライアンス対策|7つのチェックリスト

コンプライアンスチェックリストと確認資料が並ぶデスク 両罰規定の適用リスクを回避するために、外国人雇用に関わる法人が今すぐ実施すべきコンプライアンス対策を7つのチェックリストにまとめました。

チェック1・2:委託先の資格確認と契約書の精査

書類作成を委託している相手が行政書士又は行政書士法人であることを、日本行政書士会連合会の検索システムで確認してください。登録支援機関や人材紹介会社に書類作成を含む業務を委託している場合、その機関に行政書士の資格者がいるかどうかが重要です。資格者がいない場合、書類作成部分は別途行政書士に委託する必要があります。あわせて、登録支援機関との支援委託契約書を精査し、業務範囲に「書類作成」「申請代行」「申請サポート」等の文言が含まれていないか確認してください。含まれている場合は、速やかに契約書を改定して書類作成業務を除外する必要があります。

チェック3:料金体系の適正性確認

支援委託費に書類作成費用が含まれていないかを確認してください。「書類作成込みで月額3万円」という料金体系は、改正後は明確に違法です。支援委託費と行政書士への書類作成報酬は別々の契約・別々の請求書で管理する必要があります。

チェック4:社内教育の実施

外国人雇用に関わる全ての部署の職員に対して、改正行政書士法の内容と両罰規定のリスクを周知する研修を実施してください。特に人事部門・総務部門・現場管理者への教育が重要です。

チェック5・6:業務フローの見直しと行政書士との直接契約

在留資格申請に関する業務フローを見直し、「書類の作成→行政書士」「書類の提出→取次承認を受けた者」「生活支援→登録支援機関」という三層構造を明確にしてください。その上で、入管業務に精通した行政書士又は行政書士法人と受入企業として直接契約を締結しましょう。登録支援機関を経由して行政書士に間接的に委託する形態よりも、直接契約の方が法的リスクが低く、費用の透明性も高くなります。受入企業が行政書士に直接報酬を支払う体制を構築することが、両罰規定リスクを回避する最も確実な方法です。

チェック7:定期的なコンプライアンス監査

年に1回以上、外国人雇用に関する業務フローが改正法に適合しているかを監査する体制を構築してください。委託先の登録支援機関が適法に業務を行っているかの確認も含め、契約書の内容・料金体系・実際の業務実態をチェックリストに沿って検証することが重要です。2027年4月に予定されている登録支援機関の要件厳格化では、職員の研修受講義務や財務基準の強化が見込まれており、委託先の継続性・適格性についても早期に検証しておくべきです。

まとめ|両罰規定時代の外国人雇用コンプライアンス

適正な運営体制を構築したビジネスチーム 改正行政書士法の両罰規定は、非行政書士行為に対する法人の責任を明確化した画期的な制度変更です。罰金100万円という金額は一見少額に見えるかもしれませんが、その本質は金銭的制裁ではなく、刑事罰の前科がもたらす連鎖的な事業リスクにあります。

法人が認識すべき3つの重要ポイント

  • 名目の変更は無意味:「いかなる名目によるかを問わず」の文言により、どのような名目でも有償の書類作成は違法
  • 法人も処罰される:両罰規定により、行為者個人だけでなく所属法人にも罰金刑が科される
  • 連鎖リスクが深刻:刑事罰→欠格事由→登録取消→5年間再登録不可→事業終了の連鎖

今すぐ確認すべきこと

  • 委託先の登録支援機関・人材紹介会社が行政書士法に違反していないか確認
  • 契約書の業務範囲と料金体系から書類作成関連を完全に分離
  • 行政書士との直接契約を締結し、書類作成は専門家に一任する体制を構築
  • 社内の関係者に改正法の内容を周知し、コンプライアンス体制を整備
適法なコンプライアンス体制の構築は、法的リスクの回避だけでなく、取引先や外国人労働者からの信頼獲得にもつながります。2027年4月の登録支援機関要件厳格化を見据え、今のうちに業務委託体制を見直すことが経営判断として求められています。ビザ申請や在留資格に関する法改正対応でお困りの際は、ぜひ当事務所にご相談ください。専門の行政書士が、貴社の外国人雇用コンプライアンス体制の構築を全力でサポートいたします。

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この記事の監修者

西脇 清訓

MIRAI行政書士事務所

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代表行政書士

西脇 清訓

プロフィール

2020年行政書士事務所開業以来、国際業務、相続業務、補助金申請・法人設立など、人生と事業の節目に寄り添う専門家として、実務経験と豊富な知識を活かし、多くのお客様の課題解決に貢献してまいりました。

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