「製造業でも特定技能が使えると聞いたが、業務区分が複雑すぎてよくわからない」
「以前は素形材・産業機械・電気電子情報関連の3分野に分かれていたのに、制度が変わって区分名もすべて変わったと聞いた」「どの区分に該当するのか判断できない」という製造業の担当者の声は多くあります。
工業製品製造業の特定技能制度は、2024年4月の大幅改正で業務区分の名称・体系が一新されました。旧来の区分名で申請書類を作成してしまうと受理されないリスクがあります。
・2024年改正後の10業務区分の一覧と旧制度との対応関係
・JAIM(工業製品製造技能人材機構)への加入義務と手続きの流れ
・申請時に間違えやすい落とし穴と行政書士に依頼するメリット
本記事では、製造業で特定技能外国人を受け入れたい企業が必ず押さえておくべきポイントを、最新情報をもとに詳しく解説します。
2024年改正で大きく変わった「工業製品製造業」制度の全体像

2024年3月の閣議決定により、それまで「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」として3分野に分かれていた製造業分野が「工業製品製造業」に統合・改称されました。
改正前後の主な変化
| 項目 |
改正前(〜2024年3月) |
改正後(2024年4月〜) |
| 分野名 |
素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業(3分野) |
工業製品製造業(1分野) |
| 1号業務区分数 |
3区分(素形材・産業機械・電気電子) |
10区分に拡大 |
| 5年間受入れ見込数 |
約5万人 |
約17万3,300人 |
| 協議会 |
製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会(経産省主導) |
JAIM(民間一般社団法人) |
この改正で旧来の区分名(「溶接」「塗装」「工業包装」「プラスチック成形」など)はすべて廃止され、新しい10区分体系に統合されました。**旧区分名で申請してしまうことが誤申請の最大原因**となっています。
特定技能1号の10業務区分一覧
| 業務区分 |
含まれる主な職種・作業 |
| 機械金属加工 |
鋳造・鍛造・ダイカスト・機械加工・金属プレス・鉄工・工場板金・塗装・溶接・工業包装・プラスチック成形・強化プラスチック成形など17作業を統合 |
| 電気電子機器組立て |
電子・電気機器組立て、プリント配線板製造、機械保全など |
| 金属表面処理 |
めっき、アルミニウム陽極酸化処理(アルマイト) |
| 紙器・段ボール箱製造 |
紙器・段ボール箱の製造工程全般 |
| コンクリート製品製造 |
コンクリート製品の製造工程全般 |
| RPF製造 |
廃棄物由来の固形燃料(RPF)の破砕・成形等 |
| 陶磁器製品製造 |
陶磁器製品の製造工程全般 |
| 印刷・製本 |
オフセット印刷・グラビア印刷・製本工程 |
| 紡織製品製造 |
紡織製品の製造工程全般 |
| 縫製 |
縫製工程全般(上乗せ要件あり) |
注意:旧制度で独立した区分だった「溶接」「塗装」「工業包装」「プラスチック成形」「鉄工」「工場板金」「プリント配線板製造」はすべて廃止され、主に「機械金属加工」区分または「電気電子機器組立て」区分に統合されています。旧区分名での申請は受理されません。
技能評価試験の概要:区分ごとの試験に合格が必要

工業製品製造業の特定技能1号・2号を取得するには、業務区分に対応する技能評価試験への合格が必要です。
特定技能1号評価試験
- 実施機関:プロメトリック株式会社(経産省が選定)
- 試験方式:CBT方式(コンピューター・ベースド・テスティング)
- 科目:学科試験+実技試験(両方コンピューター上で実施)
- 合格基準:学科65%以上、実技60%以上
- 実施場所:国内全47都道府県のテストセンター、海外(インド・インドネシア・フィリピン・ミャンマー・ベトナム)
- 試験区分:10業務区分それぞれに対応する試験が存在
特定技能2号評価試験(3区分のみ)
特定技能2号が設定されているのは**機械金属加工・電気電子機器組立て・金属表面処理の3区分のみ**です(2024年追加の7区分は2号対象外)。
- 試験方式:CBT方式(実技試験のみ、80分)
- 合格基準:60%以上
- 受験資格:国内製造業現場での3年以上実務経験(受験申込時点)
- 試験言語:日本語のみ
2号取得の2ルート
- 評価試験ルート:2号評価試験合格+ビジネス・キャリア検定3級(生産管理)合格+3年以上の実務経験
- 技能検定ルート:技能検定1級合格(鋳造・機械加工・溶接・めっきなど対象職種)+3年以上の実務経験
JAIM加入義務:2025年12月以降は未加入では受入れ不可

2025年4月に設立されたJAIM(一般社団法人工業製品製造技能人材機構)は、工業製品製造業分野の協議会として機能する民間団体です。
JAIM加入の重要ポイント
2025年12月26日以降は、JAIM名簿に未掲載の企業は新規受入れおよび在留資格更新ができません。審査には2〜3か月かかるため、採用計画が決まった時点で早急に手続きを開始することが必須です。
加入手続きの流れ
- JAIM Webフォームより申請書類(様式2〜5)を提出
- 審査完了後(2〜3か月)、請求書に従い年会費を銀行振込
- 会費納付後、JAIM賛助会員名簿に掲載
年会費(2026年度以降)
| 企業規模 |
正会員団体加入あり |
正会員団体加入なし |
| 中小企業 |
約60,000円 |
約61,500円 |
| 大企業 |
約80,000円 |
約83,000円 |
また、JAIM会員資格の維持には**賃上げ要件**があります(大企業:前年比3.0%以上、中小企業:1.5%以上)。未達の場合は設備投資や定着支援等による代替認定が必要です。
OJT計画の策定:申請書類の重要な構成要素

特定技能1号の申請では、受入れ機関が外国人に業務を行わせる前に適切な訓練・研修を実施することが義務です。この訓練内容を示す**OJT計画**を在留資格申請書類の一部として入管に提出します。
OJT計画に含むべき主な内容
- OJTのゴール(達成すべき技能水準)の明確化
- 訓練期間・具体的な業務内容
- 使用する機材・材料
- 担当指導員の氏名と経験年数(同一業務区分の実務経験者)
- 評価・振り返りの仕組み
計画内容が不明確・不十分な場合、申請が差し戻される原因になります。「どのレベルまで訓練するか」「誰が指導するか」を具体的に記載することが重要です。
多能工化:複数業務区分への従事条件

2024年の制度改正で業務区分が統合されたことにより、多能工化の取り扱いが整理されました。
同一区分内の多能工化
「機械金属加工」区分の中には溶接・塗装・工業包装・プラスチック成形・鉄工・工場板金など多数の作業が統合されています。そのため、**「機械金属加工」区分の試験に1つ合格すれば、区分内の複数作業に従事できます**。これが2024年改正の大きなメリットです。
複数区分にまたがる多能工化
異なる業務区分(例:機械金属加工+電気電子機器組立て)にまたがって従事する場合は、それぞれの区分の技能評価試験合格が必要です。在留資格申請においても複数区分を明記する必要があります。
活動範囲外業務への従事は厳禁
- 許可された業務区分以外の作業をさせると不法就労となり、雇用主も不法就労助長罪の対象
- 対象産業分類外の製品製造ラインへの従事は、同一工場内であっても不可
- 関連業務への付随的従事は認められるが、労働時間のすべてを関連業務にあてることは不可
申請時に間違えやすい5つの落とし穴

製造業の特定技能申請では、制度の複雑さゆえに特有の誤りが発生しやすいです。
落とし穴①:旧区分名での申請
「溶接」「塗装」「工業包装」「プラスチック成形」「プリント配線板製造」などの旧区分名は廃止されています。現在はすべて「機械金属加工」または「電気電子機器組立て」区分に統合されています。
落とし穴②:産業分類の判定ミス
特定技能の対象かどうかは「日本標準産業分類」による事業所の分類に基づきます。複合的な製造を行う事業所では分類の判定が複雑で、専門家の確認なしに進めると誤申請のリスクがあります。
落とし穴③:JAIM加入前の就労開始
JAIM名簿への掲載が完了していない段階で特定技能外国人を就労させることは認められません。審査に2〜3か月かかるため、採用から逆算して早期に手続きを開始する必要があります。
落とし穴④:派遣形態での受入れ
工業製品製造業分野は派遣就労が禁止されています。派遣形態で受け入れた場合、以後5年間は特定技能外国人の受入れが禁止されます。
落とし穴⑤:縫製・紡織区分の上乗せ要件の見落とし
縫製区分には月給制の採用・パートナーシップ構築宣言・勤怠管理の電子化・国際的人権基準への適合(GOTS認証等)などの上乗せ要件があります。これらを満たさないと申請できません。
行政書士に依頼する6つのメリット

工業製品製造業の特定技能申請は、複雑な制度体系のために専門家のサポートが特に有効です。
①産業分類・業務区分の正確な判定
「事業所がいずれの産業分類に属するかの判定は容易ではない」(経産省ガイドライン)とされており、複合的な製造業では特に複雑です。行政書士が正確に分類を特定し、誤申請を防ぎます。
②2024年改正への的確な対応
区分名・区分数・受入れ対象がすべて変わった2024年改正。さらにJAIMへの移行など運用も変化し続けています。行政書士は制度変更に即対応した最新の書類で申請できます。
③JAIM加入手続きのサポート
JAIM入会には製造品の画像・説明文など複雑な添付書類が必要で差し戻しリスクが高いです。行政書士が書類を整備することで審査をスムーズに進めます。
④不許可リスクの大幅低減
在留資格申請の書類作成・提出代理は行政書士(申請取次行政書士)の独占業務です。登録支援機関が無資格で書類作成を行うことは、2026年施行の行政書士法改正で罰則強化の対象です。
⑤OJT計画書の適切な作成
入管に提出するOJT計画書の記載が不十分だと申請が差し戻されます。行政書士が計画書の内容チェック・整備を行い、審査をスムーズに進めます。
⑥更新・2号移行の継続管理
在留期間更新申請・特定技能2号への移行申請・転籍手続きなど、継続的な在留資格管理も一括して依頼できます。費用目安は外国人1人あたり10万円以上が相場です。
製造業で特定技能外国人の受入れを検討している場合は、制度変更の影響が大きい現時点だからこそ、入管業務専門の行政書士に早期相談することをおすすめします。