「製造業で特定技能の外国人を採用したいけど、工業製品製造業って具体的にどんな仕事ができるの?」
2024年の制度改正で、旧「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」の3分野が「工業製品製造業」に統合され、業務区分も大幅に再編されました。2026年1月の閣議決定では受入見込数が199,500人に上方修正され、さらに育成就労制度でも119,700人が追加されるなど、製造分野は全産業中最大規模の外国人材受入を進めています。
- 工業製品製造業の制度概要と2026年最新の受入見込数
- 10業務区分の具体的な仕事内容と求められるスキル
- 技能評価試験(CBT)の最新合格率・受験対策
- JAIMの役割と受入企業が知っておくべき手続き・上乗せ要件
- 給与水準・キャリアパスと特定技能2号への道
この記事では、工業製品製造業で特定技能外国人を採用・雇用するために必要な情報を、2026年3月時点の最新データとともに徹底解説します。
工業製品製造業の特定技能とは?2026年最新の制度概要
工業製品製造業は、2024年3月の閣議決定により、それまで別々だった「素形材産業」「産業機械製造業」「電気電子情報関連製造業」の3分野が統合されて誕生した特定技能の分野です。日本の製造業は深刻な人手不足に直面しており、特に中小企業では技能を持つ労働力の確保が最重要課題となっています。
3分野統合の経緯と背景
従来の3分野は、実際の製造現場では業務が重複することが多く、企業にとっては「どの分野で申請すればよいか分からない」という課題がありました。たとえば、自動車部品メーカーでは金属加工と電気機器組立ての両方を行うケースが一般的ですが、旧制度では分野ごとに別々の申請が必要でした。統合により以下のメリットが生まれました。
- 企業の申請手続きが簡素化され、1つの分野で幅広い製造業務に従事可能に
- 業務区分が19区分から10区分に再編され、より実態に即した分類に
- 転職時の分野変更が不要になり、外国人材のキャリア形成が容易に
受入見込数と在留者数の最新データ
2026年1月の閣議決定で、工業製品製造業の受入見込数は当初の173,300人から199,500人に上方修正されました。これは全14分野のなかで最大の受入規模です。
| 項目 | 数値 | 時点 |
|---|---|---|
| 特定技能1号 在留者数 | 51,063人 | 2025年6月末 |
| 特定技能2号 在留者数 | 410人 | 2025年6月末 |
| 受入見込数(5年間上限) | 199,500人 | 2026年1月閣議決定 |
| 育成就労 受入見込数 | 119,700人 | 2026年1月閣議決定 |
ポイント:育成就労制度(2027年度開始予定)では、工業製品製造業に119,700人の受入見込数が設定されており、特定技能と合わせると合計319,200人という全分野最大の規模になります。
対象となる日本標準産業分類
工業製品製造業の対象となる産業分類は非常に幅広く、以下の業種が含まれます。
- 鋳造・鍛造・金属プレス製品製造業
- 金属熱処理・粉末冶金・工場板金
- 電子デバイス・電気機械器具製造業
- はん用機械・生産用機械・業務用機械器具製造業
- 輸送用機械器具製造業(自動車部品含む)
- プラスチック製品・ゴム製品・パルプ紙製造業
- 印刷・同関連業、繊維工業、窯業・土石製品製造業 など
このように、金属加工から電子機器、化学製品、繊維まで日本の製造業の幅広い分野が対象となっており、多くの製造企業が特定技能制度を活用できる可能性があります。
10業務区分の仕事内容を徹底解説
2024年の再編により、工業製品製造業の業務区分は以下の10区分に整理されました。各区分の具体的な仕事内容を解説します。
従来3区分(機械金属加工・電気電子機器組立て・金属表面処理)
旧3分野から引き継がれた主要3区分は、在留者数の大部分を占めています。
| 業務区分 | 主な業務内容 | 在留者数(2025年6月末) |
|---|---|---|
| 機械金属加工 | 鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス、溶接 など | 約36,067人(79.6%) |
| 電気電子機器組立て | 電子機器の組立て、基板実装、電気配線、検査・調整 など | 約8,094人(17.9%) |
| 金属表面処理 | めっき、アルマイト処理、塗装、研磨、溶射 など | 約1,022人(2.3%) |
機械金属加工が全体の約8割を占めており、日本の製造業の中核を担う分野であることがわかります。ベトナム、インドネシア、フィリピン、中国からの在留者が多く、特にベトナム国籍の方が最多です。
新設7区分の仕事内容
2024年の再編で新たに追加された7区分は以下のとおりです。
- プラスチック成形:射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形など。プラスチック原料の加熱・成形・仕上げ作業
- 塗装:自動車・家電・建材等の塗装工程。下地処理、スプレー塗装、焼付乾燥、品質検査
- 溶接:アーク溶接、半自動溶接、TIG溶接など。構造物・機械部品の接合作業
- 工業包装:工業製品の梱包・出荷作業。防錆処理、緩衝材設置、コンテナ積付け
- 印刷・製本:オフセット印刷、デジタル印刷、製本加工。印刷機操作、色調管理、後加工
- RPF製造:廃プラスチック・古紙を原料とした固形燃料(RPF)の製造。選別・破砕・成形工程
- 陶磁器製造:衛生陶器・食器・タイル等の製造。原料調合、成形、焼成、絵付け
注意:新設7区分の技能評価試験は2025年2月から順次開始されましたが、まだ受験者数が少なく、合格実績データが限られています。最新の試験実施状況はJAIMの公式サイトで確認してください。
技能評価試験(CBT)の内容と最新合格率
工業製品製造業で特定技能1号を取得するには、技能評価試験と日本語試験の両方に合格する必要があります。技能実習2号を良好に修了した方は両方の試験が免除されるため、現在の在留者の多くはこの試験免除経路で特定技能に移行しています。
試験の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験形式 | CBT(コンピュータ・ベースド・テスティング) |
| 出題数 | 30問(学科試験のみ、または学科+実技の複合) |
| 合格基準 | 正答率65%以上 |
| 受験料 | 国内:4,300円(非課税)/海外:国により異なる |
| 試験実施国 | 日本国内のほか、インドネシア、フィリピン、ベトナム、タイ、ミャンマー等 |
| 試験言語 | 日本語(ふりがな付き)、英語、その他現地言語 |
業務区分別の最新合格率(2025年7月時点)
従来3区分の合格率は以下のとおりです。
- 機械金属加工:合格率 約49.3%(受験者が最も多い区分)
- 電気電子機器組立て:合格率 約51.6%
- 金属表面処理:受験者数が極めて少なく、安定した合格率データなし
新設7区分については、2025年2月に第1回試験が実施されましたが、受験者数がまだ少なく、安定した合格率データは蓄積されていません。今後試験回数が増えるにつれ、データが充実していく見込みです。
日本語試験の要件と試験免除
技能評価試験に加えて、以下のいずれかの日本語試験にも合格が必要です。
- 日本語能力試験(JLPT):N4以上
- 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic):200点以上
ただし、技能実習2号を良好に修了した方は、関連する業務区分の技能評価試験と日本語試験の両方が免除されます。現在の工業製品製造業の在留者の大半は、この技能実習からの移行者です。海外から新規で受験する場合は、現地のテストセンターで受験可能ですが、申込みが集中する時期は予約が取りにくいため、早めの準備をおすすめします。
JAIM(工業製品製造技能人材機構)の役割と受入企業の義務
JAIM(一般社団法人 工業製品製造技能人材機構)は、2025年4月7日に設立され、同年6月25日に分野別協議会の事務局として正式に登録された、工業製品製造業分野の制度運用を担う中核機関です。
JAIMの主な役割
- 特定技能外国人の受入れに関する制度運用の中核機関
- 技能評価試験の実施・管理(CBT試験の運営)
- 受入企業・登録支援機関の登録管理
- 合格証明書の発行(2026年度より無償化予定)
- 転職支援の仕組み構築と情報提供
受入企業に必要な手続きと費用
工業製品製造業で特定技能外国人を受け入れる企業は、以下の手続きが必要です。
- 協議会への加入:JAIMが運営する「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」に加入(初回受入後4か月以内)
- 会費の納入:2026年度から有料化。中小企業60,000円/年、大企業80,000円/年
- 年次報告の提出:受入状況に関する定期報告(オンラインで提出)
従来、合格証明書の発行には15,000円の手数料がかかっていましたが、2026年度以降はJAIMが無償で発行する予定です。在留資格認定証明書・変更許可の申請時に必要となるため、この変更は受入企業にとって大きなコスト削減になります。
ポイント:旧ポータルサイト「sswm.go.jp」は2026年3月31日をもって廃止されます。今後の情報はJAIM公式サイト(https://www.jaim-skill.or.jp/)で確認してください。
業務区分別の上乗せ要件
一部の業務区分には、通常の要件に加えて上乗せ要件(追加条件)が設けられています。受入企業は自社の業務区分に該当する要件を必ず確認してください。
- 繊維業(縫製含む):JASTI監査制度への対応が必要(2025年4月運用開始)。第三者機関による受入企業の監査で、労働環境・賃金水準の適正性を定期的にチェックされます。過去に技能実習生の失踪等の問題が多かった分野のため、厳格な管理体制が求められます
- 印刷・製本:受入企業が業界団体(全日本印刷工業組合連合会等)に所属していることが必須。業界内相互監視の仕組みにより適正な受入体制を確保します
製造現場での具体的な仕事内容と求められるスキル
特定技能外国人が実際の製造現場でどのような業務に従事するのか、主要な業務区分ごとに具体的に解説します。
機械金属加工の現場
最も在留者数が多い機械金属加工では、以下のような業務に従事します。
- 鋳造:溶融金属を型に流し込み、部品を製造。自動車エンジン部品や産業機械部品が主な製品
- 鍛造:金属材料に圧力を加えて成形。航空機部品、自動車クランクシャフト等
- 機械加工:旋盤・フライス盤・CNC加工機を操作して金属部品を精密加工。図面の読解力やNC操作スキルが求められる
- 溶接:金属部品を接合。建設機械、プラント設備、自動車フレーム等の製造。JIS溶接技能者資格の取得が推奨される
- 金属プレス:プレス機で金属板を打ち抜き・曲げ加工。家電・自動車のパネル部品等
電気電子機器組立ての現場
精密な作業が求められる分野です。最近では半導体関連の需要増加に伴い、クリーンルーム内での作業ニーズも高まっています。
- プリント基板への部品実装(SMT・手はんだ)
- 電気配線・ハーネス組立て
- 完成品の動作検査・品質検査
- 半導体製造装置のクリーンルーム内作業
- 電気計測器を使用した検査・調整
関連業務(付随的業務)と安全管理
特定技能外国人は、主たる業務に加えて以下の関連業務にも従事できます。
- 原材料・部品の受入検査、在庫管理
- 製品の梱包・出荷作業
- 作業場の清掃・整理整頓(5S活動)
- 設備の日常点検・簡易メンテナンス
また、すべての業務区分で安全衛生教育の実施が義務付けられています。受入企業は母国語または本人が理解可能な言語で安全教育を行い、保護具の正しい使用方法や緊急時の対応手順を徹底する必要があります。
給与水準・待遇と地域別の求人動向
工業製品製造業における特定技能外国人の給与・待遇について、最新データをもとに解説します。
給与水準の目安
| 項目 | 金額(目安) |
|---|---|
| 月給(総支給) | 20万〜28万円 |
| 年収 | 280万〜400万円(残業・賞与含む) |
| 時給(派遣の場合) | 1,200〜1,600円 |
業務区分や経験年数によっても差があり、溶接や機械加工など高い技能が求められる業務では、月給25万円以上の求人も珍しくありません。また、夜勤手当や残業手当を含めると、年収350万円を超えるケースも多く見られます。
注意:特定技能外国人の報酬は、「日本人が従事する場合の報酬と同等以上」でなければなりません。これは法令上の要件であり、違反した場合は受入れが認められません。地域の最低賃金をクリアしているだけでは不十分で、同じ職種・経験年数の日本人従業員との比較が求められます。
地域別の求人傾向
製造業が盛んな地域ほど求人が多い傾向にあります。
- 愛知県・三重県・静岡県:自動車関連の機械金属加工が中心。月給22〜28万円の求人が多い
- 群馬県・栃木県・茨城県:北関東の工業地帯。金属加工・プラスチック成形の需要が高い
- 大阪府・兵庫県:中小製造業が多く、幅広い業務区分の求人あり
- 広島県・岡山県:造船・自動車関連で溶接・機械加工の需要
福利厚生と生活支援
多くの受入企業では、以下の生活支援を提供しています。外国人材の定着率を高めるために、手厚い支援体制を整える企業が増えています。
- 社宅・寮の提供(家賃補助付きの場合も多い。月額2〜3万円が相場)
- 渡航費の一部または全額負担
- 日本語学習支援(オンラインレッスン、教材提供、社内日本語教室)
- 社会保険完備(健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険)
- 生活オリエンテーション(銀行口座開設、ごみの出し方、公共交通機関の利用方法等)
特定技能2号への道と育成就労制度の展望
工業製品製造業では、長期的なキャリア形成の道が開かれています。特定技能2号や今後始まる育成就労制度について解説します。
特定技能2号の取得要件と最新合格率
2号に移行するには、以下の要件を満たす必要があります。
- 2号技能評価試験の合格:1号より高度な専門知識・技能を問う試験(CBT形式)
- 実務経験:製造業で3年以上の実務経験(1号在留期間を含む)
- 班長・リーダー経験:現場での管理・指導経験があること
2025年7月時点の2号試験合格率は、機械金属加工が約49.3%、電気電子機器組立てが約51.6%です。2号に合格すると、在留期間の上限がなくなり(更新制)、家族(配偶者・子)の帯同も認められます。2025年6月末時点で410人が2号として在留しており、今後さらに増加が見込まれます。
育成就労制度(2027年度開始予定)
2024年に成立した改正入管法に基づき、技能実習制度に代わる新たな育成就労制度が2027年度に開始予定です。
- 3年間の育成期間を経て特定技能1号への移行を目指す制度
- 工業製品製造業の受入見込数は119,700人(全分野最大)
- 1〜2年目の試験合格による転籍(転職)が可能に(技能実習では原則不可だった)
- 監理団体に代わる「監理支援機関」が外部監査を実施
ポイント:育成就労→特定技能1号→特定技能2号という一貫したキャリアパスが確立されることで、外国人材が日本の製造業で長期的に活躍できる環境が整います。受入企業にとっても、計画的な人材育成が可能になります。
受入企業が今から準備すべきこと
2027年度の育成就労制度開始に向けて、以下の準備を進めることをおすすめします。
- JAIMへの会員登録と最新情報の定期確認
- 社内の受入体制(生活支援・日本語教育・安全教育)の整備
- キャリアアッププラン(1号→2号への育成計画)の策定
- 登録支援機関との連携体制の構築
工業製品製造業は対象産業が非常に幅広いため、自社の事業がどの業務区分に該当するか判断が難しい場合があります。また、上乗せ要件や協議会加入手続きなど、企業側が対応すべき事項も多岐にわたります。行政書士等の専門家に相談することで、適切な区分の特定と申請手続きをスムーズに進められます。まずはお気軽にご相談ください。


