2027年特定技能と技能実習の社会保険適用拡大|企業負担増への対応

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「社会保険の適用拡大が進んでいるけど、うちで雇っている特定技能外国人には具体的にどんな影響があるの?」 2024年10月の51人以上企業への拡大に続き、2026年10月には「106万円の壁」が撤廃され、週20時間以上働く短時間労働者は企業規模・年収に関わらず原則加入が必要になります。さらに2027年10月以降は企業規模要件の段階的廃止が始まり、2035年には全事業所が対象となります。 外国人雇用企業が対応すべき変化を整理すると、 ・特定技能・育成就労外国人への社会保険加入義務の確実な履行 ・2027年6月以降、保険料滞納者のビザ更新が原則不許可となる新ルールへの備え ・外国人への多言語での説明責任と継続的な保険料納付管理 が急務となっています。 本記事では、社会保険適用拡大の2035年までの全スケジュール、特定技能・育成就労外国人への適用実務、企業負担のシミュレーション、社会保障協定の活用法まで、行政書士の視点から専門的に解説します。

社会保険適用拡大が外国人雇用に与える影響の全体像

外国人労働者に社会保険の加入手続きを説明する人事担当者

なぜ今、外国人雇用企業が特に注意すべきか

社会保険の適用拡大は日本人・外国人を問わず全労働者に適用されますが、外国人労働者については特有のリスクがあります。それは「社会保険未加入・保険料滞納がビザ更新の不許可に直結する」という点です。

2027年6月以降、国民健康保険料・国民年金保険料を長期間滞納し、納付を求めても応じない外国人に対して、在留資格の変更・更新を原則認めない仕組みが導入される予定です。これにより、企業が加入手続きを怠った結果として外国人の保険料が未納となった場合、その外国人はビザが更新できなくなる事態が生じます。

特定技能制度における社会保険の位置づけ

特定技能の受入れ機関が満たすべき基準の一つとして、「社会保険に関する法令を遵守していること」が明示されています。社会保険に未加入の機関は、特定技能外国人を受け入れることができません。これは制度開始当初から変わらない基本要件です。

2027年4月に開始する育成就労制度でも同様に、受入れ機関・監理支援機関に対して「労働、社会保険及び租税に関する法令を遵守していること」が要件として定められています。

企業に求められる3つの対応

2027年に向けて、外国人を雇用する企業が準備すべき対応は以下の3点です。

  • 加入手続きの確実な実施:採用時の社会保険加入手続きを漏れなく行い、記録を保管する
  • 保険料納付状況の継続確認:特に外国人は帰国時の手続きや本国への送金との兼ね合いで滞納が生じやすいため、定期的な確認が必要
  • 外国人への多言語説明:制度の意味・保険料控除の仕組み・ビザ更新との関係を分かりやすく伝える

2024〜2035年の段階的適用拡大スケジュール

社会保険適用拡大の段階的スケジュールイメージ

2024年10月(施行済み):51人以上企業への拡大

2024年10月から、特定適用事業所の要件が「被保険者数101人以上」から「51人以上」に引き下げられました。これにより、51〜100人規模の企業でも短時間労働者の社会保険加入義務が生じています。

短時間労働者の加入要件は以下の4要件です(現行)。

  • 週所定労働時間が20時間以上
  • 賃金月額が88,000円以上(所定内賃金)
  • 2か月を超えて使用される見込みがある
  • 学生でないこと

2026年10月(予定):年収要件(106万円の壁)の撤廃

2026年10月以降、週所定労働時間が20時間以上であれば、年収(月額賃金)に関係なく社会保険加入が原則化される予定です。「106万円の壁」として知られる月額88,000円以上という賃金要件が廃止されます。

これにより、現在は賃金要件未満で加入を免れていた低賃金の短時間労働者も加入対象となります。外国人の場合、試用期間中や研修期間中の低賃金契約でも週20時間以上であれば加入が必要になります。

2027年10月〜2035年10月:企業規模要件の段階的廃止

2027年10月から、企業規模要件の段階的廃止が開始されます。

時期 対象拡大の内容
2024年10月(施行済み) 51人以上の企業に適用
2026年10月(予定) 21人以上の企業に適用+年収要件廃止
2027年10月(予定) 個人事業所の常時5人以上に適用拡大
2035年10月(予定) 全事業所に適用(規模要件完全廃止)

外国人を雇用する農業・飲食業・サービス業などの小規模事業者も順次対象となります。特定技能の受入れ機関である限り、企業規模に関わらず社会保険遵守は要件ですが、2027年以降は対象事業所の範囲がさらに明確に規定されます。

週20時間要件は維持される

一連の改正でも、「週所定労働時間20時間以上」という加入要件は変更されません。特定技能外国人は基本的にフルタイム(週40時間程度)での就労が一般的なため、短時間労働者の加入要件拡大の影響より、むしろ全事業所への適用拡大(2035年まで)の流れが重要です。

特定技能・育成就労外国人への加入義務の実務

外国人社員の社会保険加入手続きを支援するスタッフ

5種類の社会保険への加入義務

特定技能外国人は日本人と全く同様に、以下の5種類の社会保険への加入義務があります。

  • 健康保険:業務外の傷病・出産・死亡に対する給付。保険料は労使折半
  • 厚生年金保険:老齢・障害・死亡に対する年金。保険料率18.3%の労使折半
  • 雇用保険:失業・育児・介護休業に対する給付。企業負担0.85〜1.55%
  • 労災保険:業務上・通勤途上の傷病に対する給付。保険料は全額企業負担
  • 介護保険:40歳以上の場合に加入。保険料は労使折半

なお、外国人の場合「帰国後に年金を受け取れないのでは」という誤解があります。日本の厚生年金は脱退一時金として帰国後2年以内に請求できるため、加入期間中の保険料は将来に活用できます。この点を外国人本人に丁寧に説明することが重要です。

採用時の加入手続きフロー

外国人を採用した際の社会保険加入手続きは以下の順序で行います。

  • Step 1:在留カードとマイナンバー(特定在留カードまたは通知カード)を確認
  • Step 2:「被保険者資格取得届」を年金事務所(協会けんぽ加入の場合)または健保組合に提出。マイナンバーの記載が必要
  • Step 3:「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークに提出
  • Step 4:健康保険証(または資格確認書)を受け取り、外国人本人に交付
  • Step 5:給与明細に控除額を明示し、外国人本人に説明
マイナンバーがない場合の対応
短期在留者や来日直後でまだ住民票が作成されていない場合は、マイナンバーの記載が不要です。パスポート等の本人確認書類の写しを添付して届出を行います。

育成就労制度(2027年4月〜)の社会保険上の変化

2027年4月施行の育成就労制度では、技能実習制度と異なり一定条件下での転籍(受入れ機関の変更)が認められます。転籍が発生した際には、旧機関での社会保険喪失手続きと新機関での取得手続きを速やかに行う必要があります。転籍が増加する新制度では、社会保険の切れ目なき継続加入の管理がより複雑になります。

企業負担増のシミュレーションと対策

社会保険コスト試算の書類と計算機

企業の社会保険料負担額の目安

社会保険料の企業負担は、給与総額の約15〜16%が目安です。特定技能外国人の典型的な給与水準を例に試算します。

月給 企業負担(月額) 企業負担(年額)
200,000円 約28,000〜30,000円 約336,000〜360,000円
250,000円 約35,000〜38,000円 約420,000〜456,000円
300,000円 約45,000円以上 約540,000円以上

特定技能外国人1人あたりの年間総コスト(給与300万円の場合)は300〜400万円が目安とされており、そのうち社会保険料の企業負担は30〜50万円程度を占めます。

適用拡大による追加負担のシナリオ

これまで規模要件で社会保険加入が不要だった外国人が新たに加入対象となる場合、企業には1人あたり月額15,000〜38,000円程度の新規負担が発生します。外国人労働者を多く雇用する企業では、この負担増が経営計画に影響します。

対策としては以下が考えられます。

  • 雇用形態の見直し(週20時間未満の短時間契約への変更)は業務実態との兼ね合いで慎重に判断
  • 給与体系の見直し(基本給と各種手当の最適化)
  • 社会保険コストを織り込んだ採用計画の策定
  • 外国人採用専門の助成金(雇用調整助成金等)の活用確認

保険料計算の実務:表準報酬月額の決定

社会保険料の計算の基礎となる「標準報酬月額」は、毎年4月〜6月の3ヶ月の報酬の平均に基づいて9月に改定(定時決定)されます。外国人の場合、本国への送金額や日本での生活費計画に影響するため、標準報酬月額の仕組みを本人に分かりやすく説明することが求められます。

外国人への説明責任と多言語対応

外国人との二国間社会保障協定を象徴する外交的握手の場面

企業に課される説明義務の根拠

特定技能・育成就労の受入れ機関は、義務的支援の一環として「社会保障制度の情報提供」を行うことが義務付けられています。これは単に書類を渡すだけでなく、本人が理解できる言語で説明することが求められます。

説明すべき主な内容は以下のとおりです。

  • 社会保険5種類の概要と給付内容
  • 保険料の計算方法(標準報酬月額の仕組み)と給与明細での確認方法
  • 企業と本人の負担割合(原則として折半)
  • 保険料滞納時のペナルティ(特に2027年6月以降のビザ更新不許可リスク)
  • 帰国時の脱退一時金制度(厚生年金の返還請求)

厚生労働省の15言語対応資料の活用

厚生労働省は外国人向けに15言語対応の社会保険説明資料を無料提供しています。対応言語は日本語・英語・韓国語・中国語(簡体字・繁体字)・タガログ語・ベトナム語・ネパール語・ポルトガル語・スペイン語・インドネシア語・カンボジア語・タイ語・ミャンマー語・モンゴル語・ロシア語です。

また、「外国人向け労働関係・社会保険用語集(約420語)」もやさしい日本語+9言語で提供されており、給与明細の用語説明などに活用できます。これらの公式資料を活用することで、説明義務を果たしたという記録にもなります。

登録支援機関を通じた説明義務の委託

支援業務を登録支援機関に委託している場合、社会保険の生活オリエンテーション説明を登録支援機関が行うことが多いです。ただし、委託契約の内容によって説明範囲が異なるため、社会保険説明が委託範囲に含まれているかを確認することが重要です。

社会保障協定の基礎知識と外国人への活用

多言語の社会保険説明パンフレットが並ぶ様子

社会保障協定とは何か

日本と社会保障協定を締結している国から来日した労働者は、条件によって日本の社会保険加入が免除される場合があります。これは日本と相手国の両方で保険料を二重に支払う問題を解決するための国際協定です。

2025年末時点で24カ国と協定が発効または署名されており、主な対象国にはアメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・韓国・中国・タイ・ベトナム・フィリピン・インドネシアなどが含まれます。

特定技能外国人への適用の実態

社会保障協定は主に企業内転勤(赴任)者を対象としており、日本の企業に直接雇用される特定技能外国人はほとんどが対象外です。ただし、以下の点は確認が必要です。

  • 協定対象国の外国人でも、赴任形態(企業間転籍など)でない限り原則として日本の制度に加入
  • 協定非対象国(ミャンマー・カンボジア・ネパール等)の外国人は完全に日本の制度のみ適用
  • 帰国後の年金通算(協定国間):在日中の厚生年金加入期間を本国の年金受給要件に通算できる場合がある

登録支援機関が行う社会保険関連支援業務

登録支援機関は以下の社会保険関連支援を実施します。

  • 入国・採用時の生活オリエンテーションにおける社会保険説明(多言語対応資料を活用)
  • 社会保険加入手続きへの同行支援(年金事務所・区市町村窓口)
  • 保険料納付状況の定期確認と滞納時の相談対応
  • ビザ更新時の社会保険納付証明書等の取得支援
  • 帰国時の脱退一時金請求手続きの案内

社会保険未加入のリスクと2027年ビザ更新新ルール

社会保険未加入の法的リスクについて相談する企業担当者と行政書士

企業への罰則

社会保険の加入義務に違反した場合の罰則は以下のとおりです。

違反内容 罰則
健康保険・厚生年金の加入義務違反 6か月以下の懲役または50万円以下の罰金
雇用保険・労災保険の加入手続き怠慢 6か月以下の懲役または30万円以下の罰金
指導後も未加入のまま労災事故発生 給付額の100%を企業から徴収
建設業・医療業等での未加入 事業停止・許可取消処分の可能性

2027年6月以降の厳格化:保険料滞納でビザ更新が不許可に

2027年6月以降、社会保険料・税金を長期滞納し、催告に応じない外国人に対して、在留資格の変更・更新を原則認めない制度が導入される予定です。これは外国人本人の問題ですが、企業側が加入手続きを怠った結果として保険料が未納になった場合、最終的に外国人がビザを失う事態につながります。

重要警告
社会保険未加入・保険料滞納は外国人本人の「素行不良」と判定され、ビザ更新が不許可になります。企業は加入手続きの確実な実施と保険料納付の継続確認を、採用後の必須業務として位置づけてください。

特定技能受入れ資格の喪失リスク

社会保険の加入義務違反が判明した場合、特定技能の受入れ機関として適格性を失う可能性があります。これは既に雇用している特定技能外国人の在留資格の基盤が失われることを意味し、企業経営に深刻な打撃を与えます。定期的な届出時の確認項目にも社会保険加入状況が含まれているため、違反の発覚リスクは常に存在します。

まとめ:行政書士が統合サポートできること

社会保険と在留管理のコンプライアンスチェックリストと確認書類

社会保険の適用拡大と外国人雇用管理は、本来別々の専門領域ですが、外国人労働者においては「ビザの継続」という点で不可分に結びついています。行政書士は在留資格手続きを通じて外国人の就労状況を継続的に把握しており、社会保険コンプライアンスの専門家(社会保険労務士)との連携も含めた統合サポートが可能です。

今後の対応スケジュールを整理します。

時期 企業が対応すべきこと
今すぐ 全外国人社員の社会保険加入状況を確認・未加入者の手続き実施
2026年10月まで 短時間労働者の新加入対象者の洗い出しと年収要件廃止後の対応準備
2027年4月まで 育成就労制度対応・転籍時の社会保険切り替え手続きフローの整備
2027年6月まで 全外国人の保険料納付状況の確認体制を整備(ビザ更新不許可ルール施行前)

当事務所では、特定技能・育成就労の在留資格申請から社会保険手続きのサポート(提携社労士との連携)まで、外国人雇用の法令遵守を一括してサポートしております。2027年の制度変更に向けた早めの準備をご検討の方は、お気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

西脇 清訓

MIRAI行政書士事務所

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代表行政書士

西脇 清訓

プロフィール

2020年行政書士事務所開業以来、国際業務、相続業務、補助金申請・法人設立など、人生と事業の節目に寄り添う専門家として、実務経験と豊富な知識を活かし、多くのお客様の課題解決に貢献してまいりました。

近年増え続けている外国人採用企業様への支援体制を強化し、中国人スタッフや多言語対応スタッフと共に、各種VISA申請をサポートしております。

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