「外国人を採用したいけど、何から始めればいいかわからない」
「求人を出しても日本人が集まらない」「外国人を雇いたいけど、ビザの手続きが複雑そうで不安」「法律違反にならないか心配」——従業員50人以下の中小企業の経営者や総務担当者からこうした声をよく聞きます。
外国人の採用は、在留資格の選定から入社後の届出まで、日本人採用にはない手続きが伴います。しかし正しいステップを踏めば、中小企業でも問題なく外国人材を活用できます。
・外国人採用の流れを「5ステップ」で完全整理
・在留資格の選び方と行政書士に依頼すべき手続きの範囲
・助成金を活用して採用コストを抑える方法
本記事では、初めて外国人を雇用する中小企業向けに、採用から入社後の管理まで行政書士の視点から詳しく解説します。
外国人採用の5ステップ全体像

外国人採用の流れを整理すると、以下の5ステップになります。
| ステップ |
内容 |
目安期間 |
| ステップ1 |
在留資格の選定・行政書士への相談 |
採用計画段階(3〜6か月前) |
| ステップ2 |
求人・面接・内定 |
入社3〜4か月前 |
| ステップ3 |
在留資格申請(行政書士が代行) |
入社2〜3か月前 |
| ステップ4 |
入社手続き(社会保険・契約書等) |
入社当日〜1週間以内 |
| ステップ5 |
入社後の届出・在留期限管理 |
入社翌月末まで・継続的に |
**最大のポイントは「3〜6か月前から動き始めること」**です。在留資格の申請には審査期間(1〜3か月)が必要なため、採用を決めてから動いていては入社日に間に合いません。
ステップ1:在留資格の選定——どのビザで採用するか

在留資格の選定は外国人採用の最初の関門です。職種・業種・採用する外国人の経歴によって、最適な在留資格が異なります。
中小企業でよく使われる在留資格の種類
| 在留資格 |
主な対象職種 |
主な要件 |
| 技術・人文知識・国際業務(技人国) |
IT・会計・営業・翻訳・通訳・デザイン等 |
大卒以上(専攻と職務の関連性)または10年以上の実務経験 |
| 特定技能1号 |
製造・介護・建設・外食・農業など19分野の現場業務 |
技能評価試験+日本語試験合格(技能実習2号修了者は免除) |
| 技能 |
外国料理の調理師、建築工匠等 |
10年以上の熟練技能(料理人は中国料理・タイ料理等) |
| 在留資格変更(留学生採用) |
日本の大学・専門学校卒業の外国人 |
技人国相当の職務内容であること |
技術・人文知識・国際業務ビザの要件を詳しく確認
中小企業での採用で最も多いのが「技術・人文知識・国際業務(技人国)」ビザです。このビザを取得するには以下の3点の整合性が必要です。
- 学歴要件:日本または外国の大学・大学院・専門学校の専攻内容
- 職務内容:採用後に従事させる業務の具体的な内容
- 関連性:学んだ専攻・実務経験と職務内容の専門的な関連性
たとえば「情報工学専攻の卒業生をシステムエンジニアとして採用」は典型的な許可例です。一方、「経営学部卒業生を工場の製造ラインに配置する」ケースは関連性が認められず、不許可になります。
特定技能1号との使い分け
製造・飲食・農業など現場業務に従事させる場合は、技人国ではなく特定技能1号が適切です。技人国は「専門的・技術的活動」が前提であり、マニュアル的な単純作業への従事は認められません。採用予定の職務内容を行政書士に事前確認することで、申請前に適切な在留資格を特定できます。
ステップ2:求人・面接——採用活動の進め方

在留資格の方針が決まったら、採用活動を進めます。外国人採用には日本人採用と異なる注意点があります。
外国人採用に使える主な求人媒体
- ハローワーク:無料。外国人向けに「外国人雇用サービスセンター」も設置
- 外国人専門求人サイト:Guidable Jobs・Daijob・Jobs in Japan等(有料)
- 大学・専門学校のキャリアセンター:留学生採用に有効、費用を抑えやすい
- 人材紹介会社:外国人採用専門のエージェント。成功報酬型(年収の20〜35%が目安)
- SNS・自社採用サイト:コストを抑えたい場合に有効
面接時に必ず確認すべき事項
外国人候補者の面接では、以下の点を必ず確認してください。
- パスポート・在留カードの現物確認:偽造防止のため現物を目視確認
- 在留資格の種類:就労可能な資格か、資格外活動許可の範囲はどこまでか
- 在留期限:採用予定日時点で在留期限が切れていないか
- 就労制限の有無:在留カード裏面の「就労制限の有無」欄を確認
- 現在の在留資格変更の要否:採用後に変更申請が必要か
注意:「留学」ビザの外国人は、原則として週28時間以内のアルバイトのみ就労可能です。正社員・フルタイム採用には在留資格変更申請が必要です。内定後、入社前に必ず変更申請を完了させてください。
内定後の在留資格申請タイミング
内定が決まったら、できるだけ早く行政書士に相談し、在留資格申請の手続きを開始してください。審査には通常1〜3か月かかります。入社予定日の2〜3か月前が申請の目安です。
ステップ3:行政書士への依頼——何を任せるか、費用はいくらか

在留資格の申請書類の作成・提出代理は、申請取次行政書士の独占業務です。書類の不備は不許可・追加審査の原因となるため、専門家への依頼が確実です。
行政書士に依頼できる手続きの範囲
- 在留資格認定証明書交付申請:海外在住者を日本に呼び寄せる場合
- 在留資格変更許可申請:留学生・技能実習修了者を就労ビザに変更する場合
- 在留期間更新許可申請:在留期限が来たときの更新
- 就労資格証明書交付申請:転職・配置転換時の就労適法性証明
- 在留期限管理・届出サポート:継続的な在留資格管理の委託
費用相場(技術・人文知識・国際業務ビザの場合)
| 申請の種類 |
行政書士報酬の目安 |
入管手数料 |
| 在留資格認定証明書交付申請(新規・海外) |
5〜12万円 |
無料 |
| 在留資格変更許可申請(留学→就労等) |
5〜12万円 |
4,000円 |
| 在留期間更新許可申請 |
3〜8万円 |
4,000円 |
| 特定技能1号の申請 |
10〜15万円 |
4,000円 |
書類準備で企業側が用意するもの
行政書士に依頼する場合でも、企業側が準備が必要な書類があります。
- 登記事項証明書(法務局で取得、有効期限3か月)
- 決算書(直近2〜3年分)
- 採用理由書・雇用契約書の草案
- 会社概要・事業内容の説明資料
- 候補者の最終学歴証明書・成績証明書
ステップ4:入社手続き——外国人採用特有の注意点

在留資格が取得できたら、入社手続きに移ります。外国人採用には日本人採用と異なる手続きがあります。
在留資格・在留カードの最終確認
入社当日に、以下を必ず確認してください。
- 新しい在留カードの有効期限と在留資格の種類
- 「就労制限の有無」欄:「就労不可」の場合は採用不可
- 「就労活動に制限あり」の場合は資格外活動許可の内容を確認
社会保険・雇用保険の加入義務
外国人労働者も日本人と同様、法定の社会保険・労働保険に加入させる義務があります。
- 健康保険・厚生年金:週30時間以上の勤務で加入義務(規模問わず)
- 雇用保険:週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みで加入義務
- 労災保険:全従業員が対象(加入手続きは事業主の義務)
なお、日本と社会保障協定を締結している国(ドイツ・アメリカ・中国等)からの派遣者については、保険料の二重払いを避けるための特例があります。
雇用契約書の注意点
- 母国語版も用意することで、内容の理解齟齬を防止
- 職務内容を具体的に記載する(在留資格の範囲外の業務を含めない)
- 配置転換・異動の可能性がある場合は記載し、その際の在留資格確認手続きを明示
マイナンバーの収集
外国人従業員もマイナンバーが付番されている場合は収集義務があります。住民登録をしている在留外国人には原則マイナンバーが付番されています。取得方法や提示方法は日本人と同様です。
ステップ5:入社後の届出——義務を守って法令違反を防ぐ

外国人を雇用した後、企業には複数の届出義務があります。これを怠ると罰則が科せられます。
外国人雇用状況の届出(ハローワーク)
外国人を採用・退職させた場合、ハローワークへの届出が必要です(雇用対策法)。期限は雇用形態によって異なります。
- 雇用保険被保険者(週20時間以上・31日以上雇用見込み):雇入れ日の翌月10日まで(雇用保険被保険者資格取得届と同時提出)
- 雇用保険非被保険者(パート・短時間等):雇入れ日または離職日の翌月末日まで
- 届出方法:ハローワークインターネットサービスのオンライン届出が推奨
- 対象:特別永住者・外交・公用を除くすべての外国人従業員
- 罰則:届出を怠った場合は30万円以下の罰金
所属機関届出(入管への届出)
外国人従業員自身が、入管に「所属機関に関する届出」を提出する義務があります(採用・退職から14日以内)。企業はこの手続きを行うよう従業員に案内・サポートする必要があります。
- 届出漏れがあると、次回の在留期間更新が「1年」に短縮されるペナルティあり
- 入管オンライン申請システムから電子申請が可能
在留期限管理の仕組みを作る
外国人従業員の在留期限が切れると、その時点から不法就労となり、企業も不法就労助長罪の対象になります。
- 在留カードのコピーを人事ファイルに保管し、期限をカレンダーに登録
- 更新申請は期限の3か月前から可能——2か月前には行政書士に依頼開始
- 複数の外国人従業員を雇用する場合は、行政書士に在留管理を委託するとリスクが激減
費用の目安と助成金の活用法
初期費用の総額目安
- 採用コスト:人材紹介会社経由の場合 年収の20〜35%(例:年収350万円の場合 70〜120万円)
- 在留資格申請費用:行政書士報酬5〜12万円+入管手数料4,000円
- 入社準備コスト:社宅・生活支援・日本語研修など(任意)
- 初年度合計目安:採用経路によって異なりますが、50〜120万円程度
活用できる主な助成金
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人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
外国人特有の事情に配慮した就労環境整備(相談員の配置、雇用契約書・就業規則の多言語翻訳等)を行った場合に支給。最大80万円。
・賃金要件を満たす場合:経費の2/3(上限72万円)+賃金助成
・賃金要件を満たさない場合:経費の1/2(上限57万円)
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トライアル雇用助成金
就職困難者(一定の外国人を含む)を試行雇用した場合に月額4万円×3か月支給
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キャリアアップ助成金(正社員化コース)
有期雇用の外国人を正社員に転換した場合に1人あたり80万円(中小)支給
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人材開発支援助成金(人材育成コース)
外国人従業員向けの職業訓練に対し、訓練費用の45%(中小)+訓練中の賃金助成
助成金申請の注意点
助成金は「先に実施して、後から申請する」後払い方式です。実施前に計画書の提出が必要な場合があります。申請漏れを防ぐために、採用と同時に社労士・行政書士に相談することをおすすめします。
よくある失敗パターンと事前に防ぐための対策
中小企業での外国人採用では、知識不足から生じる法令違反が多く見られます。以下の5つの失敗パターンを事前に把握しておくことが重要です。
失敗①:在留資格を確認せずに就労させた
在留カードを確認せずに「外国人だから働けるだろう」と思い込んで採用した場合、不法就労助長罪(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)が問われます。採用面接の時点で必ず現物確認を行ってください。
失敗②:職務内容と在留資格の範囲が合っていない
技人国ビザで採用した外国人を、ビザの許可範囲外の業務(単純作業・製造ライン等)に従事させると不法就労になります。業務内容が変わる際は事前に行政書士に確認が必要です。
失敗③:在留期限切れを見落とした
在留期限が切れた外国人をそのまま雇い続けると、企業は不法就労助長罪の対象になります。在留カードの期限をシステムやカレンダーで管理し、更新申請のリマインダーを設定してください。
失敗④:外国人雇用状況届出・所属機関届出を怠った
雇用後の届出を忘れると罰則の対象になるだけでなく、外国人従業員の在留更新にも影響します。入社手続きのチェックリストに必ず届出項目を加えてください。
失敗⑤:技人国ビザの外国人を現場業務に派遣した
製造・小売等の現場業務に技人国ビザの外国人を単純作業として派遣することは不法就労です。2026年以降、派遣元・派遣先に業務適法性の誓約書提出を義務化する動きもあり、違反が発覚すると以後5年間の派遣受入禁止処分となります。
外国人採用は適切なステップを踏めば中小企業でも決して難しくありません。初めての採用だからこそ、在留資格の選定から届出管理まで、入管業務専門の行政書士に相談しながら進めることをおすすめします。