「外国人を採用したとき、ハローワークへの届出ってどうやって出すんでしたっけ?」
外国人労働者を初めて雇用する企業の担当者から、このような質問を受けることが増えています。外国人雇用状況届出は法律で義務付けられた手続きですが、2025年現在、オンライン申請が標準化されており、e-GovやハローワークのWEBシステムを活用することでデスクから完結できるようになっています。本記事では以下のポイントを詳しく解説します。
- 外国人雇用状況届出の法的根拠と罰則リスク
- 雇用保険の被保険者か否かによる2種類の電子申請ルート
- 企業担当者が陥りやすい落とし穴と実務上の注意点
外国人労働者数が257万人を超えた今、届出ミスによる法的リスクを回避するためにも、ぜひ最後までご確認ください。
外国人雇用状況届出とは|法的義務の全体像と2025年の最新状況
届出制度の根拠法と義務化の経緯
外国人雇用状況届出は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(旧・雇用対策法)第28条に基づく義務です。2007年(平成19年)の改正により全事業主に届出が義務付けられ、それ以来すべての事業所が外国人労働者を雇い入れる際・離職させる際に届出を行う必要があります。
制度の目的は、厚生労働省が外国人の就労状況を正確に把握し、雇用管理の改善や適切な職業紹介に役立てることにあります。2025年現在、届出対象者の範囲や手続き方法については大きな制度変更はありませんが、オンライン申請の利便性が飛躍的に向上し、電子化が事実上の標準となっています。
届出の対象・届出事項
届出が必要な情報は、採用した外国人1人ひとりについて以下の事項です。
- 氏名(在留カード記載のローマ字・本名)
- 在留資格・在留期間(在留期間満了日)
- 生年月日・性別・国籍または地域
- 在留カード番号(2020年3月以降雇用分から必須)
- 資格外活動許可の有無(留学生アルバイト等)
- 雇い入れ年月日または離職年月日
在留カードに記載された情報をもとに正確に記入することが求められます。本人から在留カードを提示してもらい、記載内容と照合するのが基本です。
2025年現在の外国人労働者数と届出の重要性
厚生労働省の発表(令和8年1月)によると、令和7年10月末時点の外国人労働者数は257万1,037人で、前年比11.7%増の過去最多を更新しています。雇用事業所数も37万1,215所に達し、外国人雇用が企業にとって身近な選択肢となっていることがわかります。
外国人労働者の増加に伴い、届出漏れや誤記入のリスクも高まっています。未届・虚偽届出に対しては罰則が設けられており、コンプライアンス管理の観点からも届出の正確な運用が不可欠です。
届出対象となる外国人の範囲|在留資格と確認すべき書類
届出が必要な在留資格の範囲
外国人雇用状況届出が必要な外国人は、在留資格「外交」「公用」および「特別永住者」を除くすべての外国人労働者です。雇用形態(正社員・アルバイト・パート・派遣・請負など)を問わず、1日でも雇用した場合は届出義務が発生します。
| 区分 | 届出の要否 |
|---|---|
| 就労系在留資格(技術・人文知識・国際業務、特定技能、技能実習等) | 必要 |
| 身分系在留資格(永住者、定住者、日本人の配偶者等) | 必要 |
| 資格外活動許可あり(留学生アルバイト等) | 必要 |
| 特別永住者(在日韓国・朝鮮籍等) | 不要 |
| 在留資格「外交」「公用」の者 | 不要 |
| 日本国籍取得者(帰化済み) | 不要 |
「永住者」と「特別永住者」を混同しないこと
実務上、最も多い誤解が「永住者」と「特別永住者」の混同です。在日韓国・朝鮮籍の方など戦後の経緯で日本に在留し続けた方々が持つ「特別永住者」は届出不要ですが、通常の在留資格審査を経て取得した「永住者」は届出が必要です。在留カードの在留資格欄を必ず確認し、「特別永住者証明書」と「在留カード(永住者)」を区別してください。
雇用時に確認すべき書類
採用時には本人から以下の書類を提示してもらい、内容を確認します。写しの添付は原則不要ですが、記録として保管することを推奨します。
- 在留カード:表面で在留資格・在留期間・在留カード番号を、裏面で資格外活動許可の有無を確認
- 在留カードを持たない場合は旅券(パスポート):上陸許可スタンプや在留資格認定証明書で確認
- 特定活動(46号等)の場合は指定書(パスポート貼付)も確認
注意:資格外活動許可がある留学生については、週28時間以内の就労制限があります。在留カード裏面の許可欄を確認し、超過労働が起きないよう管理してください。
電子申請2ルートの使い分け|雇用保険の被保険者区分が分岐点
ルート選択の基本:雇用保険の加入状況で決まる
外国人雇用状況届出の電子申請ルートは、雇用した外国人が雇用保険の被保険者かどうかによって異なります。週20時間以上勤務で31日以上雇用見込みがある場合は雇用保険の被保険者となります(例外あり)。
| 区分 | 電子申請の方法 | 採用時の届出期限 | 離職時の届出期限 |
|---|---|---|---|
| 雇用保険被保険者 | e-Gov電子申請(資格取得届) | 雇入れ翌月10日まで | 離職翌日から10日以内 |
| 雇用保険非被保険者 | 外国人雇用状況届出システム | 雇入れ翌月末日まで | 離職翌月末日まで |
2つのルートの様式と届出方法の違い
雇用保険被保険者の場合は「雇用保険被保険者資格取得届(様式第2号)」に外国人情報(在留カード番号・在留資格等)を記入するだけで届出を兼ねられます。別途の届出書類は不要です。一方、雇用保険非被保険者(留学生アルバイト・短期雇用等)については「外国人雇用状況届出書(様式第3号)」を使用し、ハローワーク窓口・郵送またはハローワーク専用のオンラインシステムから届出します。
e-Gov電子申請の手順|GビズIDで完全ペーパーレス化を実現する
GビズIDとは|3種類の違いと取得方法
e-Govで電子申請を行うには、法人向けの認証サービス「GビズID」が必要です。GビズIDには3種類あり、利用できる行政サービスの範囲が異なります。
| 種別 | 特徴 | 取得期間 | e-Gov利用 |
|---|---|---|---|
| プライム | 印鑑証明書+SMS認証。最多の行政サービスが利用可能 | 約2週間 | 可 |
| メンバー | プライム利用者が従業員用に作成 | 即日 | 可 |
| エントリー | 即日発行。限定的なサービスのみ | 即日 | 不可 |
e-Govで雇用保険の手続き(外国人雇用状況届出を含む)を行うには、GビズIDプライムまたはメンバーが必要です。エントリーでは利用できませんのでご注意ください。GビズIDを取得していない場合は、約2週間の申請期間を見越して早めに準備しましょう。
e-Govでの申請ステップと在留資格コードの注意点
GビズIDプライムを取得後、以下の手順でe-Govから申請を行います。
- e-Govポータルにアクセスし、GビズIDでログイン
- 「手続き検索」で「雇用保険被保険者資格取得届」または「資格喪失届」を検索
- 申請書画面の外国人情報欄(17〜23欄)に在留カード番号・在留資格等を入力
- 内容確認→送信→受付完了通知を確認して終了
なお、2024年9月30日から「育成就労」等の新在留資格が追加されましたが、e-Gov申請画面では当面の間、旧表示のままとなっています。厚生労働省の通知に従った暫定コードを使用してください。
外国人雇用状況届出システムの使い方|非被保険者の届出手順
初めて利用する場合のユーザーID登録方法
外国人雇用状況届出システムは、厚生労働省が提供するハローワーク向けのWEBシステムです。初回利用時には以下の手順でユーザーIDを登録します。
- ハローワークインターネットサービスから「外国人雇用状況届出システム」へアクセス
- 「ユーザーID新規登録」をクリックし、雇用保険適用/非適用を選択
- 事業所情報と担当者メールアドレスを入力して仮登録
- 受信したメール内のURLにアクセスして本登録を完了(URL有効期限は24時間)
注意:登録確認メールのURLには24時間の有効期限があります。期限を過ぎると再度申請が必要になりますので、メール受信後は速やかに本登録を完了させてください。
雇い入れ・離職の届出入力フロー
ユーザーID取得後のログインから届出完了までの流れは次の通りです。
- 採用時:「外国人雇用情報新規登録」を選択 → 在留資格・在留カード番号・雇用開始日等を入力 → 既登録データとの重複確認 → 送信・受理通知を確認
- 離職時:「外国人離職情報登録」を選択 → 該当する外国人を検索 → 離職日・離職理由を入力 → 送信・受理通知を確認
入力後は必ず受理通知を確認してください。送信途中で終了した場合、届出が完了していない可能性があります。
過去に紙届出をしていた場合の切替手続き
以前ハローワーク窓口で紙届出を行っていた事業所は、オンラインシステムの「新規登録」ボタンからIDを取得できません。次の手順で切替手続きを行う必要があります。
- 管轄ハローワークに「外国人雇用状況届出電子届出切替・変更申請書」を提出
- 審査後、指定のメールアドレスに「本登録用URL」が届く(有効期限は24時間)
- 期限内にURLにアクセスして本登録を完了
ポイント:紙届出からオンラインに切り替える際はハローワークへの申請が必要です。「なぜ新規登録できないのか」というトラブルが多発していますので、該当する場合は管轄ハローワークへ事前に相談してください。
届出期限と罰則リスク|遅延・漏れが引き起こす法的問題
採用時・離職時の届出期限一覧
届出には採用(雇い入れ)時と離職時の2段階があります。どちらも期限を守ることが重要です。
- 雇用保険被保険者の採用時:雇入れ日の翌月10日まで
- 雇用保険被保険者の離職時:離職日の翌日から10日以内
- 雇用保険非被保険者の採用時:雇入れ日の翌月末日まで
- 雇用保険非被保険者の離職時:離職日の翌月末日まで
「採用時に届け出たから大丈夫」と思い込んで離職時の届出を忘れるケースが非常に多く見られます。採用・離職の両方で届出義務が発生することを社内ルールとして徹底してください。
30万円以下の罰金|罰則の実態
外国人雇用状況の届出を行わなかった場合や虚偽の届出をした場合、法第40条に基づき30万円以下の罰金が科される可能性があります。単純な手続き漏れであっても適用対象となります。
また、罰金以外にも以下のリスクが生じます。
- ハローワークからの是正指導・勧告
- 不法就労助長罪(在留資格を持たない外国人を雇用した場合)との連鎖リスク
- 特定技能の定期届出との関係で、入管庁からの不利益処分への影響
- 行政処分が公開された場合の企業ブランドへのダメージ
複数の届出制度を正しく管理する
特定技能や育成就労の外国人を雇用している場合、ハローワークへの「外国人雇用状況届出」とは別に、出入国在留管理庁への「定期届出・随時届出」も存在します。これらを混同すると管理が煩雑になるため、制度ごとに担当者と管理システムを整備することが重要です。
整理ポイント:「外国人雇用状況届出(ハローワーク)」は全外国人対象の雇用開始・終了時の届出。「特定技能定期届出(出入国在留管理庁)」は特定技能外国人に限定された定期的な状況報告。両者は全く別の手続きです。
企業担当者がつまずく7つの落とし穴と対策
書類・確認の落とし穴|在留カード番号と在留資格区分の誤り
2020年3月1日以降に雇用した外国人については、在留カード番号(12桁)の記入が必須です。記入漏れが多いため、採用時のチェックリストに必ず組み込んでください。また「永住者なので届出不要」という誤解も多いですが、届出不要なのは「特別永住者」のみです。通常の在留資格審査を経た「永住者」は届出対象です。在留カードと特別永住者証明書は異なる書類ですので、採用時に証明書の種類を必ず確認してください。
管理体制の落とし穴|離職時の届出漏れと複数事業所の管轄
採用時に届出を行っても、離職時の届出を忘れるケースが非常に多く見られます。退職手続きのフローに届出を組み込む仕組みが必要です。また、届出は外国人が実際に勤務する事業所を管轄するハローワークへ行う必要があります。本社と勤務地が異なる場合、勤務地管轄のハローワークへの届出が正解です。本社でまとめて届け出ることはできませんので注意してください。
手続きの落とし穴|アルバイト対象・URL有効期限・在留資格コード
「アルバイトや短期雇用は届出不要」という誤解があります。留学生の資格外活動(アルバイト)であっても届出は必要です。また、外国人雇用状況届出システムの本登録URLは24時間しか有効ではないため、メール受信後は速やかに本登録を完了させてください。さらに2024年10月以降、育成就労等の新在留資格が追加されましたが、e-Gov申請画面では旧表示が残っているケースがあります。厚生労働省の案内する暫定コードを使用し、不明な場合は管轄ハローワークへ問い合わせてください。
行政書士に相談すべきケースと依頼できる業務範囲
届出ミスが発覚した場合の対応
過去の届出に誤記や漏れがあったことが発覚した場合、自社での修正対応が難しいケースもあります。行政書士は外国人雇用手続きの専門家として、届出の修正対応やハローワークとのやり取りをサポートします。また、万一ハローワークから是正指導があった場合の対応策についても助言が可能です。
多数の外国人を雇用する企業の届出管理代行
外国人労働者が多い製造業・建設業・介護施設等では、入退社のたびに届出が発生し、担当者の負担が増大します。行政書士事務所と顧問契約を締結することで、外国人雇用状況届出を含む在留資格関連の事務手続きをまとめて委託できます。コンプライアンスリスクの低減と業務効率化を同時に実現できます。
在留資格申請との一体的なサポート
外国人雇用状況届出は採用・離職時の届出手続きですが、それ以外にも在留資格の新規申請・更新・変更など、入管庁への申請手続きが発生します。行政書士(とりわけ出入国在留管理業務に強い「申請取次行政書士」)に依頼することで、
- 在留資格変更・更新申請の代行
- 必要書類の収集・作成サポート
- 複数の届出制度(ハローワーク・入管庁)の一元管理
- 外国人雇用に関するコンプライアンス相談
をまとめてサポートしてもらえます。初めて外国人を採用する企業や、届出手続きの整備を検討している企業は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
外国人雇用状況届出は義務であると同時に、外国人労働者の適正な就労環境を守るための制度でもあります。届出を通じて国が外国人の就労実態を把握することで、不法就労や搾取的な労働環境の排除にもつながります。企業としても、届出を正確に行うことは法令遵守の証明となり、信頼性の高い雇用主としての評価につながります。外国人労働者との長期的な関係構築のためにも、コンプライアンスの基盤として届出管理を確実に行いましょう。



