「特定技能外国人を雇っているのに、市区町村に協力確認書を出す?聞いたことがない…」
2025年4月1日から、特定技能外国人を受け入れているすべての企業に対し、市区町村への「協力確認書」提出が義務付けられました。入管庁ではなく市区町村への提出という新たなフローに、実務担当者の間では戸惑いの声が相次いでいます。
- 協力確認書とは何か、なぜ義務化されたのか
- どこへ・いつ・どのように提出すればよいのか
- 在留申請書や支援計画書への影響と実務上の注意点
本記事では、2025年4月施行の省令改正によって新設された協力確認書制度を、企業の人事・総務担当者が実務ですぐ動けるよう、具体的な手順とチェックポイントを交えて解説します。
協力確認書とは?義務化の背景と法的根拠
協力確認書の正式な位置付け
「協力確認書」は、特定技能外国人を受け入れる所属機関(受入企業)が、外国人の活動地域や居住地の市区町村に対して提出する書類です。省令上は「地方公共団体の共生施策への協力」を明文化したものとして位置付けられています。
根拠となる省令は2本あります。
- 「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令の一部を改正する省令」
- 「出入国管理及び難民認定法施行規則の一部を改正する省令」
いずれも2025年2月17日公布・同年4月1日施行です。特定技能1号・2号の両方が対象となります。
ポイント: 協力確認書は「入管庁への提出書類」ではありません。提出先は市区町村です。在留申請の添付書類に含めるのではなく、申請前に市区町村へ別途提出する手続きです。この点が多くの担当者が混乱するポイントですので、最初に押さえておきましょう。
義務化された背景:82万人受入見込みと地域共生社会
2024年3月29日の閣議決定によって、特定技能の受入見込数が5年間で最大82万人規模に引き上げられました。これほど多くの外国人材が全国各地で生活・就労することになれば、日々の生活支援・医療・教育・防災といったサービスを担うのは地方自治体です。
しかし従来の制度では、受入企業と市区町村との間に情報共有の仕組みがなく、「誰がどこで働き、どこに住んでいるか」が自治体に伝わらないケースが多発していました。協力確認書はこの情報ギャップを埋め、外国人材の受入機関が地方自治体の共生施策に積極的に協力する義務を法的に明確化したものです。
対象となる受入機関・外国人の範囲
協力確認書の提出義務を負うのは、特定技能外国人を雇用するすべての所属機関です。業種・規模・雇用形態(直接雇用・派遣)を問いません。外国人の国籍も問われません。
- 特定技能1号:対象
- 特定技能2号:対象
- 派遣形態での受入:対象(様式は派遣用を使用)
- 技能実習生・留学生:対象外(特定技能に限定)
誰がどこに・いつ提出するのか?提出先と提出タイミング
提出先:事業所と住居地の市区町村
協力確認書は、以下の2か所の市区町村に提出する必要があります。
- ①外国人が実際に活動する事業所の所在地の市区町村
- ②外国人の住居地の市区町村
事業所所在地と住居地が同一の市区町村であれば、1通の提出で足ります。異なる市区町村の場合は、それぞれの自治体に別々に提出してください。また、複数の事業所に特定技能外国人を配置している場合は、各事業所の所在地の市区町村にそれぞれ提出が必要です。
注意: 事業所所在地と住居地が異なる市区町村にある場合、両方に提出する必要があります。一方だけ提出して「済んだ」とするのは要件を満たしません。在留申請前に両自治体への提出を完了させておきましょう。
提出タイミング:申請の種類別一覧
協力確認書は、在留申請を行う「前」に市区町村へ提出しなければなりません。申請と同時、あるいは申請後の提出では要件を満たしません。各申請の種類と提出タイミングを整理します。
| 申請の種類 | 協力確認書の提出タイミング |
|---|---|
| 新規受入(海外から):在留資格認定証明書交付申請 | 交付申請を行う前 |
| 国内転換(留学・技能実習等から):在留資格変更許可申請 | 変更申請を行う前 |
| 在留期間更新:在留期間更新許可申請 | 更新申請を行う前 |
| 2025年4月1日時点で既に受け入れ中の外国人 | 初回の在留資格変更・更新申請を行う前 |
提出方法:窓口・郵送・メール
提出方法は自治体によって異なります。多くの市区町村では窓口持参または郵送を受け付けていますが、メール提出や専用Webフォームを設けている自治体もあります。提出前に必ず提出先自治体の担当窓口に確認することをお勧めします。
- 窓口持参:受付窓口(外国人相談窓口・住民課など)に確認
- 郵送:担当部署あてに送付(普通郵便・簡易書留など自治体の指示に従う)
- メール・Webフォーム:一部の自治体が対応(事前確認が必要)
なお、協力確認書の市区町村への提出に際し、委任状は原則不要です。行政書士・登録支援機関・弁護士が代理提出を行う場合も同様です。
協力確認書の記載事項と様式の取得方法
様式の取得と種類
協力確認書の様式は、出入国在留管理庁(入管庁)の公式Webサイトからダウンロードできます。様式はWord形式で提供されており、以下の2種類があります。
- 直接雇用用:所属機関が直接雇用する場合
- 派遣形態用:派遣元・派遣先が分かれる場合
雇用形態に応じた様式を選択して使用してください。なお、様式は令和7年7月30日および令和8年3月23日に改訂が行われています。古い様式を使用すると受理されない場合があるため、必ず最新版を入管庁サイトからダウンロードして使用してください。
注意: 一部の自治体では、入管庁の標準様式ではなく独自の様式やWebフォームを使用するよう求めています。提出先自治体に様式について事前に確認することを強くお勧めします。標準様式のまま持参して受け付けてもらえないケースが報告されています。
主な記載事項
協力確認書に記載する主な項目は以下のとおりです。直接雇用用と派遣形態用では一部異なりますが、基本的な構成は共通しています。
| 記載項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 所属機関名称 | 法人・個人事業主の正式名称 |
| 事業所所在地 | 特定技能外国人が活動する事業所の住所 |
| 担当者情報 | 部署名・氏名・電話番号・メールアドレス |
| 雇用形態 | 直接雇用または派遣(派遣の場合は派遣元・派遣先の双方を記載) |
| 特定技能外国人の住居地 | 外国人本人の住所(住民登録地) |
| 提出年月日・提出先自治体名 | 提出する日付と市区町村名 |
記載時の実務ポイント
協力確認書の記載にあたっては、以下の点に注意が必要です。
- 外国人本人の住居地は、住民票の記載と一致させること
- 派遣形態では、派遣元・派遣先それぞれの情報を漏れなく記載すること
- 提出年月日は実際に提出する日付を記入すること(前日・後日の記載は避ける)
- 担当者の連絡先は、自治体からの照会に速やかに対応できる窓口を記載すること
在留申請書・支援計画書への影響(項番32の新設)
申請書「所属機関等作成用3 V」への新設項目
2025年4月の省令改正に伴い、在留申請書(所属機関等作成用3 V)に「項番(32)」が新設されました。この欄には、協力確認書の提出状況を記載します。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 地域共生施策協力の有無 | 「有」または「無」を記載 |
| 提出先自治体名 | 協力確認書を提出した市区町村名(複数ある場合は全て記載) |
| 提出日 | 協力確認書の提出年月日 |
オンライン申請での対応方法
在留申請オンラインシステムを利用して申請する場合、画面上に「項番(32)」の入力欄が表示されていないことがあります。その場合は、フリー入力欄(備考欄等)に以下の形式で記載することが求められています。
- 記載例:「(32)有 提出先:○○市、△△町 提出日:2025年◯月◯日」
- 複数自治体に提出した場合は、すべての自治体名と提出日を記載する
- フリー欄の書き方は地方出入国在留管理局に事前確認することを推奨
ポイント: 申請書への記載は「提出後」に行います。在留申請よりも先に市区町村へ協力確認書を提出し、そこで得た提出先・提出日の情報を申請書の項番32に転記する流れになります。順番を間違えないよう注意しましょう。
一号特定技能外国人支援計画書への追加記載
特定技能1号外国人の受入にあたっては、支援計画書の作成が義務付けられています。2025年4月の改正により、この支援計画書にも「地方公共団体の共生施策を確認・踏まえた支援計画の作成」に関する欄が新設されました。
具体的には、外国人が住居地や事業所所在地の市区町村が実施している共生施策(日本語教室・生活相談・医療通訳等)を把握した上で、それを踏まえた支援計画を作成することが求められます。受入企業は支援計画の策定段階から、地域の外国人支援施策を調査・把握しておく必要があります。
未提出・不備があった場合のリスク
在留申請への直接的な影響
協力確認書を市区町村に提出せずに在留申請を行った場合、申請書の項番32が未記載・不備となります。これは申請書類の不備とみなされ、以下のリスクが生じます。
- 審査の遅延:補正を求められ、審査が長期化する
- 申請の取り下げ・再申請:不備が重大と判断された場合、申請自体を取り下げて再申請が必要になる
- 在留期限を超過するリスク:更新申請で遅延した場合、外国人の在留期限管理に深刻な影響が及ぶ
行政上のペナルティ
協力確認書の未提出や不備に対して、現時点では直接的な刑事罰の規定はありません。しかし、省令に基づく義務であるため、行政上の対応が取られます。
| 対応の種類 | 内容 |
|---|---|
| 行政指導・助言 | 地方出入国在留管理局が指導・改善を求める |
| 改善命令 | 協力要請に応じない場合、省令に基づく改善命令が発出される |
| 受入停止処分 | 虚偽記載が発覚した場合、5年間の特定技能受入停止処分が科される |
注意: 協力確認書に虚偽の内容を記載して提出した場合、単なる不備とは異なり、受入停止という重大な処分につながるリスクがあります。記載内容は事実に即した正確な情報を記載してください。事業所の住所や担当者の連絡先が変わった際は速やかに更新手続きを行うことが重要です。
コンプライアンス上のリスク管理
特定技能外国人の受入企業にとって、協力確認書の未提出は単なる手続き漏れにとどまらず、企業全体のコンプライアンス体制に対する評価にも影響します。入管当局からの信頼を損なうことは、将来の申請審査にも悪影響を及ぼす可能性があります。
複数の外国人材を受け入れている企業では、個別の在留期限管理と連動した協力確認書の提出管理を、社内の管理台帳として一元化することをお勧めします。
再提出が必要なケース・不要なケース
再提出が必要なケース
一度提出した協力確認書であっても、以下の事情が生じた場合は再提出が必要です。
- 別の市区町村に事業所が移転した場合(新たな所在地の市区町村に提出)
- 外国人の住居地が別の市区町村に変わった場合(新しい住居地の市区町村に提出)
- 法人名称が変更された場合
- 担当者の連絡先(電話番号・メールアドレス等)が変更された場合
- 法人形態が変更された場合(株式会社から合同会社への変更等)
- 自治体が様式を改訂し、最新版への変更が求められた場合
再提出が不要なケース
次のような場合は、改めて協力確認書を提出する必要はありません。
- 同一事業所(同一市区町村内)に追加で特定技能外国人を受け入れる場合
- 政令指定都市内での区をまたぐ転居(例:同一市内での大阪市西区→大阪市北区)
- 外国人が転職・帰国する場合
- 在留申請が不許可となった場合
ポイント: 政令指定都市(大阪市・名古屋市・横浜市など)の場合、同一市内での区をまたぐ転居は「同一市区町村内」とみなされ、再提出不要です。一方、例えば大阪市から堺市への転居であれば別市区町村への変更となり、再提出が必要です。実務では政令指定都市かどうかを確認した上で判断してください。
管理台帳の活用で再提出漏れを防ぐ
再提出が必要なケースを見落とさないためには、特定技能外国人ごとに以下の情報を一元管理する台帳を整備することが有効です。
- 氏名・国籍・在留カード番号
- 在留期限
- 事業所所在地・住居地(市区町村)
- 協力確認書の提出先・提出日
- 次回在留申請予定日
- 担当行政書士・登録支援機関の連絡先
在留期限の3か月前から逆算して協力確認書の提出準備を開始するスケジュールを組むことで、余裕を持った申請が可能になります。
行政書士に依頼するメリットと費用の目安
行政書士・登録支援機関・弁護士の役割分担
協力確認書に関する業務は、資格によって担当できる範囲が異なります。この点は実務上の大きなポイントです。
| 業務 | 行政書士 | 登録支援機関 | 弁護士 |
|---|---|---|---|
| 協力確認書の作成(書類代理作成) | ○ | × | ○ |
| 市区町村への提出(代理提出) | ○ | ○ | ○ |
| 在留申請書(項番32含む)の作成 | ○ | × | ○ |
| 支援計画書の作成支援 | ○ | ○(実施代行) | ○ |
登録支援機関は外国人への生活支援や義務的支援業務を担うことができますが、書類の代理作成は行政書士法上の制限から認められていません。このため、実務では「協力確認書の作成は行政書士・提出は登録支援機関」という役割分担が定着しつつあります。
行政書士に依頼するメリット
行政書士に依頼することで、以下のメリットが得られます。
- 協力確認書の作成ミス・記載漏れのリスクを低減できる
- 在留申請書(項番32の記載含む)と協力確認書の整合性を担保できる
- 各市区町村の様式・提出方法の違いに対応した手続きが可能
- ベトナム籍(推薦状)・フィリピン籍(MWO承認書類)など国籍別の追加書類にも対応
- 在留期限管理から申請スケジュール全体を一括してサポートしてもらえる
費用の目安
行政書士への依頼費用は、業務の範囲や事務所によって異なりますが、特定技能に関する在留申請の一般的な目安は以下のとおりです。
| 業務内容 | 費用目安 |
|---|---|
| 新規受入(在留資格認定証明書交付申請)※協力確認書含む | 10万円〜25万円程度 |
| 更新申請※協力確認書含む | 3万円〜6万円程度 |
| 協力確認書の作成のみ(単体依頼) | 事務所により異なる(要見積) |
協力確認書の提出は2025年4月から義務化された新制度であり、今後の在留申請では必須の工程となります。手続きの漏れや記載ミスが在留許可に影響するリスクを考えると、初めての対応は行政書士に相談することが安心です。
ポイント: 特定技能外国人の受入に慣れた事務所では、協力確認書の作成・市区町村への提出スケジュール管理・在留申請書の項番32記載・在留期限管理まで一貫してサポートするパッケージサービスを提供しています。担当者の業務負担を大幅に軽減できるため、複数名の外国人を受け入れている企業は特に活用を検討してみましょう。
まとめ:協力確認書対応のチェックリスト
最後に、担当者がすぐ使える実務チェックリストをまとめます。
- 入管庁サイトから最新の協力確認書様式(直接雇用用または派遣形態用)をダウンロードしたか
- 提出先市区町村(事業所所在地・住居地)を特定し、独自様式の有無を確認したか
- 協力確認書を在留申請「前」に提出したか(申請後では要件を満たさない)
- 事業所所在地と住居地が別市区町村の場合、両方に提出したか
- 在留申請書の項番32に「有」・提出先自治体名・提出日を記載したか
- 支援計画書に地方公共団体の共生施策を踏まえた記載を追加したか
- 社内管理台帳に協力確認書の提出先・提出日を記録したか
協力確認書は2025年4月に義務化されたばかりの制度です。まだ自治体側の対応が整っていない部分もあり、提出方法や様式について自治体ごとに確認が必要な場面が多くあります。手続きに不安がある場合は、特定技能に精通した行政書士に早めに相談することをお勧めします。



