インターン、ワーキングホリデー、外交官や家事使用人など多様な目的で発給される特定活動ビザは、活動内容によって就労可否や時間制限が大きく変わります。誤った認識で雇用すると不法就労助長罪や信用失墜のリスクを負うため、採用前の確認が不可欠です。
本記事では法定・告示・告示外の各特定活動を整理し、就労制限の見極め方と実務上の注意点をわかりやすく解説します。
特別活動ビザに就労制限はあるのか

特別活動ビザは法務大臣が個々に指定する多目的の在留資格で、指定書面に書かれた活動以外は行えないため、原則として就労可否も活動ごとに異なります。
ワーキング・ホリデーやインターンシップは「旅行資金補填の範囲で付随的就労可」と明記され、風俗営業や長期フルタイムは禁じられています。
一方、外交官等の家事使用人、就職活動継続、研究招へいなどは許可された環境外の労務が一切認められず、週28時間制限の資格外活動許可も取得できません。
特別活動にはどのようなものがあるのか

特別活動ビザには、さまざまな種類が存在し、それぞれ異なる目的や条件が設定されています。これから解説する活動は、就労の可否や制限が異なるため、具体的な内容を理解することが重要です。
外交官等の家事使用人
外交官等の家事使用人ビザは、特別活動ビザ類型の中でも就労範囲が最も限定される在留資格です。
対象者は大使館や総領事館に勤務する外交官、国際機関職員、その家族が雇用する家事使用人として、掃除、洗濯、料理、育児など日常家事に専従することが義務付けられています。
さらに、他世帯の家事代行やレストランの手伝いといった副業は固く禁止され、週時間制限ではなく「雇用主家庭のみに従事」という絶対的限定が掛かります。
報酬額は、日給又は月給で日本人同等以上が要件とされ、労基法・社保適用除外の可否も外交特権との関係で個別確認が必要です。
ワーキング・ホリデー
ワーキング・ホリデーは、特定活動ビザの中でも特に人気のある制度で、若者が異国での生活を体験しながら就労できる機会を提供します。
このビザは、主に18歳から30歳(国によっては35歳まで)の外国人が対象で、一定の期間、日本での滞在と就労が認められています。
ワーキング・ホリデーの最大の特徴は、旅行と仕事を両立できる点であり、参加者は観光地を訪れたり、文化交流を行ったりしながら、生活費を稼ぐことが可能です。
ただし、ワーキング・ホリデーには就労に関する制限も存在します。例えば、特定の職種や業種においては就労が禁止されている場合があり、また、就労時間にも制限が設けられることがあります。
経済連携協定に基づく外国人看護師
経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師は、日本国内での看護業務に従事するための特定活動ビザの一つです。このビザは、特定の国との間で結ばれた協定に基づき、看護師としての資格を持つ外国人が日本で働くことを可能にします。
EPAに基づく外国人看護師は、通常、就労に関する制限が少なく、フルタイムでの勤務が認められています。
ただし、ビザの取得には、看護師資格の確認や日本語能力の証明が求められるため、事前の準備が重要です。また、雇用主は、外国人看護師が適切な資格を持っているかどうかを確認する必要があります。
就職活動中の外国人
就職活動中の外国人に対する特定活動ビザは、主に日本での就職を目指す留学生や外国人労働者に発給されます。このビザを持つ外国人は、就職活動を行うことが認められていますが、就労に関しては厳しい制限があります。
具体的には、就職活動中の外国人は、アルバイトやフルタイムの仕事を行うことができず、あくまで就職活動に専念する必要があります。
また、就職活動中の外国人は、ビザの有効期限内に内定を得ることが求められます。内定を得られなかった場合、ビザの更新や変更が難しくなるため、早めの行動が重要です。
特定活動の種類とは

特定活動ビザは、さまざまな目的に応じて発給されるため、その種類も多岐にわたります。主に法定特定活動、告示特定活動、告示外特定活動の3つに分類され、それぞれに異なる就労条件や制限があります。
法定特定活動
法定特定活動ビザは、入管法別表二で明示された活動を行う外国人に与えられる在留資格で、活動内容と就労可否が法律で直接規定されている点が特徴です。
代表例は、留学生が学費補填のために行う週二十八時間以内のアルバイト、高度専門職が転職準備期間に行う就職活動、技能実習修了者の特定技能移行待機などです。
これらは、告示類型と異なり、法改正までは活動範囲が固定され、個別裁量での緩和は行われません。就労制限は指定書にも記載され、違反すると資格外活動違反となり即時退去強制事由になります。
告示特定活動
告示特定活動ビザは、法務省告示であらかじめ活動内容と要件が公開された在留資格で、現在四十六類型が設定されています。
スタートアップ創業者、日英エンジニアのインターン、デジタルノマド、文化芸術交流、アニメ制作プロジェクトなど多分野に拡大中で、就労可否は各告示により「制限なし」「付随的就労可」「一切就労不可」の三段階に分かれます。
類型ごとに在留期間上限も異なり、創業準備は一年×二回、芸術家招聘は三年、デジタルノマドは六か月など細分化されています。申請時は活動計画書、資金計画、雇用契約、成果物見本を提出し、審査官は社会的意義と経済波及効果を重視します。
告示外特定活動
告示外特定活動は、既存の告示類型に該当しない特殊ケースを個別指定でカバーする仕組みで、新たな研究開発プロジェクト、国際的大規模イベント参画、災害復旧支援など、政策的に柔軟な受入れが必要な場合に活用されます。
また、就労可否や在留期間は個別審査で決定されるため、フルタイム就労が許可される例もあれば、視察や短期技術指導のみに限定される例もあります。
さらに、申請には受入れ機関の推薦状、事業計画、予算書、成果指標、帰国保証書など詳細な証拠資料が求められ、審査期間も三か月以上と長期化する傾向にあります。
企業が特定活動ビザを持つ外国人を雇用する際の注意点

特定活動ビザを持つ外国人を雇用する際には、いくつかの重要な注意点があります。これから説明するポイントを押さえることで、スムーズな雇用が実現できます。
就労許可がおりない場合がある
特定活動ビザを持つ外国人が日本で就労する際、必ずしも就労許可が得られるわけではありません。特に、ビザの種類や活動内容によっては、就労が制限されることがあります。
例えば、外交官の家事使用人や特定のインターンシッププログラムに参加する場合、就労が認められないケースが多いです。
また、就労許可を申請する際には、必要な書類や手続きが整っていないと、許可が下りないこともあります。したがって、特定活動ビザを持つ外国人を雇用する際には、事前にそのビザの条件を十分に確認し、就労許可が得られるかどうかを慎重に見極めることが重要です。
許可が出るまでに時間がかかることがある
特定活動ビザを取得する際、許可が下りるまでに時間がかかることがあります。特に、申請内容が複雑であったり、必要書類が不十分な場合、審査が長引くことが一般的です。
例えば、外交官の家事使用人や経済連携協定に基づく外国人看護師など、特定の条件を満たす必要があるケースでは、追加の情報提供を求められることもあります。
また、申請が混雑する時期や、特定の地域における審査の遅延も影響します。したがって、企業が特定活動ビザを持つ外国人を雇用する際には、事前に十分な時間を確保し、計画的に進めることが重要です。
特定活動の種類と指定書を確認を怠らない
特定活動ビザを持つ外国人を雇用する際には、その種類と指定書の確認が非常に重要です。特定活動ビザには、法定特定活動、告示特定活動、告示外特定活動といった異なるカテゴリーが存在し、それぞれに就労に関する条件や制限が設けられています。
雇用主は、外国人がどの特定活動ビザを持っているのかを確認し、そのビザに基づく就労の可否を理解する必要があります。
また、指定書には具体的な活動内容や就労時間が記載されているため、これを怠ると不法就労のリスクを抱えることになります。特に、告示外特定活動の場合は、就労条件が不明瞭なことが多いため、慎重な確認が求められます。
在留カードを持っているか確認する
特定活動ビザを持つ外国人を雇用する際には、在留カードの確認が不可欠です。在留カードは、外国人が日本に滞在するための重要な証明書であり、ビザの種類や在留期間、就労の可否などが記載されています。
雇用主は、在留カードを確認することで、対象者が合法的に就労できるかどうかを判断できます。
特に、特定活動ビザはその内容によって就労条件が異なるため、在留カードの情報をしっかりと確認することが重要です。
万が一、就労が許可されていない場合に雇用を行うと、不法就労助長罪に問われるリスクがあるため、注意が必要です。
まとめ
特定活動ビザは、その種類や目的によって就労制限が大きく異なるため、雇用主や外国人自身が正確な情報を把握することが重要です。
特に、法定特定活動や告示特定活動、告示外特定活動の違いを理解し、適切な手続きを踏むことで、不法就労のリスクを回避できます。
今後、特定活動ビザを持つ外国人を雇用する際は、事前に必要な確認を行い、安心して働ける環境を整えることが求められます。