農業法人の特定技能採用|繁忙期の季節労働と派遣形態での活用法を徹底解説

  • 特定技能ビザ申請
  • 企業向け外国人雇用

「収穫の季節だけ人手が欲しい。でも冬は閑散期だから通年雇用は難しい——」そんな農業経営者の声をよく耳にします。この悩みを解決する手段として注目されているのが、特定技能外国人の派遣形態による採用繁忙期限定の季節労働です。

特定技能16分野の中で、派遣形態での受け入れが認められているのは農業と漁業の2分野のみ。この特別な制度をうまく活用すれば、繁忙期に即戦力の外国人を確保しながら、閑散期のコスト負担を最小限に抑えることができます。

本記事では、農業法人が知るべき特定技能の派遣形態の仕組み、繁忙期の季節労働への対応法、そして複数農家での労働者シェアリングの具体的な活用方法を解説します。

この記事でわかること
・特定技能「農業」で派遣形態が認められている理由と要件
・繁忙期だけの季節雇用(半年雇用)の仕組みと在留期間の関係
・複数農家での労働者シェアリングの3つのモデル
・農業特定技能協議会への加入手順と採用の流れ
・受け入れにかかる費用の目安

特定技能「農業」の基本と受入れ実態

特定技能制度は2019年4月に創設されました。農業分野は当初から対象分野に含まれており、2023年8月には特定技能2号も農業に追加されました。

2024年末時点の受入れ状況

2024年12月末時点で農業分野の特定技能外国人は29,331人(前年同期比約5,470人増)。農業全体の外国人労働者数は58,139人と過去最多を記録しています(日本農業新聞)。特定技能制度全12分野284,466人のうち、農業は約10%を占める主要分野に成長しています。

特定技能1号と2号の違い

項目 特定技能1号 特定技能2号
在留期間上限通算5年(実質最大10年)上限なし(無制限更新)
家族帯同不可条件付きで可
永住への道原則不可開かれる
試験要件農業技能測定試験1号+日本語試験農業技能測定試験2号(合格率36.8%)
支援義務10項目の支援計画が必要支援義務なし

農業のみ許可される「派遣形態」とは

農業の派遣形態・労働者シェアリングのイメージ

なぜ農業だけ派遣が認められるのか

特定技能16分野のうち、派遣形態での受け入れが許可されているのは農業と漁業の2分野のみです。その理由を農林水産省は次のように説明しています。

  • 農業には天候や季節によって業務量が大きく変動する繁閑差がある
  • 同一地域内でも作目によって収穫・定植等のピーク時期が異なる
  • 複数産地間での労働力の融通という農業現場固有のニーズがある
  • 閑散期と繁忙期で必要な労働力が数倍単位で変動するため、通年の直接雇用では経営負担が大きい

派遣元になれる事業者の要件

農業特定技能の派遣形態では、派遣元(外国人を雇用して農家に派遣する会社)になれる事業者が限定されています。一般の人材派遣会社は原則として派遣元になれません。

派遣元として認められるのは以下のいずれかです。

  1. 農業または農業関連業務を行っている事業者
  2. 上記事業者または地方公共団体が資本金の過半数を出資している事業者
  3. 上記事業者または地方公共団体が業務執行に実質的に関与していると認められる事業者
  4. 国家戦略特別区域法の特定機関

具体的にはJA(農業協同組合)・農業協同組合連合会・農業者が組織する事業協同組合などが主な派遣元として想定されています。ただしJAの場合、信用事業(貯金)規模が大きいと派遣業許可が取れないケースがある点に注意が必要です。

派遣先(受入農業法人)の要件

農業法人が派遣を受け入れるには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 農業特定技能協議会への加入(在留申請前に必須)
  • 雇用経験要件:過去5年以内に同一労働者を6か月以上継続雇用した経験がある、または派遣先責任者講習を受講した担当者を選任している
外国人雇用が初めての農業法人でも受け入れ可能です
雇用経験がない場合でも、派遣先責任者講習を受講した担当者を1名選任すれば受け入れが可能です。2022年10月以降は「労務管理業務6か月以上の経験者」でも代替できます。

複数農家での「労働者シェアリング」3つのモデル

農業特定技能の最大の魅力のひとつが、同じ外国人労働者を複数農家で季節に応じてシェアできる「労働者シェアリング」です。活用形態は主に3つあります。

モデル①:直接雇用

農業法人と外国人が直接雇用契約を結ぶ最もシンプルな形態です。雇用する法人は1社のみとなります。繁忙期・閑散期ともに雇用し続けることが前提になるため、通年雇用が可能な規模の農業法人に向いています。

モデル②:派遣形態での農家シェア

JAや農業者組合などが外国人を雇用し、複数の農業法人・農家に季節に応じて派遣します。外国人は同一の雇用契約を保ちながら、各地の農家の繁忙期に合わせて巡ることができます。

例えば、春の定植期はA農家(野菜)→夏の収穫期はB農家(トマト)→秋の収穫期はC農家(果樹)という形で、1人の外国人が1年を通じて就労し続けられます。

モデル③:JA請負型

JAが複数の農家から農作業を請け負い、特定技能外国人がJAの指揮命令のもとでその請負業務に従事する形態です。外国人はJAの従業員として雇用され、複数農家の圃場で作業します。農家側から見れば「JAに農作業を外注している」形になるため、労務管理の負担が大幅に軽減されます。

繁忙期の季節労働への対応

JAと農業法人の連携による外国人材活用イメージ

農繁期だけの「半年雇用」は可能か

結論から言うと、可能です。農業特定技能には「繁忙期の半年間に就労し、閑散期は一時帰国する」という働き方が認められています。

在留資格の期間は「4か月・6か月・1年」から選択でき、農繁期に合わせた期間設定ができます。収穫が多い秋を中心に6か月間就労し、冬の農閑期に帰国する——そのような繰り返しが制度上認められています。

農閑期の帰国と在留期間の関係

農業特定技能1号の在留期間の上限は通算5年ですが、帰国期間は在留期間にカウントされません。このため、

  • 毎年6か月就労・6か月帰国 → 実質10年間にわたって就労継続が可能
  • 繁忙期のみの採用でありながら、長期的な戦力として確保できる

外国人にとっても、農閑期に母国で過ごしながら継続的に日本で就労できるため、安定した生活設計が立てやすいというメリットがあります。

⚠️ 業務範囲に注意
農業特定技能の対象業務は「栽培管理または飼養管理を主とした農作業」です。農産物の製造・加工・販売・除雪作業等は付随的な業務として認められますが、これらのみを主業務として雇用することはできません。職務記述書と実態が一致していることを必ず確認してください。

受入れの要件・手続きと費用の目安

農業特定技能協議会への加入手順

特定技能外国人を農業分野で受け入れるには、在留申請前に「農業特定技能協議会」への加入が必須です。

  • 農林水産省のWEB申請フォームから申請(入会費・年会費とも無料)
  • 申請から約2週間で加入通知書がメールで届く
  • 受入れ後4か月以内に協議会システムへ外国人情報を登録

採用の流れ(海外からの場合)

  1. 農業特定技能協議会への加入(在留申請前に必須)
  2. 人材の選考・雇用契約の締結
  3. 支援計画の策定(直接雇用の場合。派遣の場合は派遣元が行う)
  4. 在留資格認定証明書(COE)の申請(入管への申請、審査1〜3か月)
  5. 外国人が査証(ビザ)取得・来日
  6. 就労開始・協議会への外国人情報登録(就労後4か月以内)

海外からの採用は全体で6〜10か月が目安です。国内在留者を採用する場合は在留資格変更申請のみとなり、3か月程度に短縮されます。

費用の目安

費用項目 海外採用 国内採用
初期費用(採用・申請)50〜100万円程度30〜60万円程度
登録支援機関委託費(月額)2〜3万円2〜3万円
在留更新費用(1回)5〜15万円程度5〜15万円程度
協議会加入無料無料

よくある質問(Q&A)

Q. 農業特定技能は受入れ人数に上限がありますか?

A. 農業分野には国全体の受入れ上限枠がありますが、事業所単位の人数制限はありません(介護のような日本人等常勤職員数に基づく上限はない)。農繁期のニーズに応じた柔軟な採用が可能です。

Q. 技能実習から特定技能へ移行できますか?

A. できます。農業分野の技能実習2号を修了した方は、農業技能測定試験・日本語試験が免除されます。すでに実習生を受け入れている農業法人にとって、修了後のスムーズな移行は戦力維持に有効な手段です。

Q. 農業特定技能の外国人に労働時間の規制はありますか?

A. 農業は労働基準法の労働時間規制(週40時間・1日8時間)の適用除外分野です。繁忙期に長時間の農作業が必要な場合でも、法定労働時間の制約は受けません。ただし最低賃金法・労働安全衛生法は適用されます。

Q. 2027年の育成就労制度施行で何が変わりますか?

A. 2027年4月1日施行予定の育成就労制度(技能実習の後継)では、農業分野も対象となります。育成就労→特定技能1号→特定技能2号というキャリアパスが整備され、長期的に外国人人材を確保・育成しやすい制度体系になります。今から受け入れ体制を整えておくことが重要です。

Q. 複数の作業(例:農作業+農産物加工)を担当させることはできますか?

A. 農作業(栽培管理・飼養管理)を主業務とした上で、農産物の製造・加工・運搬・販売等の関連業務を付随的に担当させることは可能です。ただし関連業務のみでの雇用は認められません。

まとめ

農業法人における特定技能外国人の活用ポイントをまとめました。

  • 農業は特定技能16分野のうち派遣形態が認められる2分野のひとつ
  • 派遣元はJA・農業者組合など限定的だが、農家シェアリングで繁閑差に対応できる
  • 繁忙期の半年雇用も可能。帰国期間は在留期間にカウントされず、実質10年の活用が可能
  • 農業特定技能協議会への加入は在留申請前に必須・費用無料
  • 2027年施行の育成就労制度を見据え、今から外国人人材の受け入れ体制を整えることが競争優位につながる

農業分野の特定技能採用は制度の仕組みが複雑で、申請のタイミングや要件の確認が重要です。MIRAI行政書士では農業法人向けの特定技能ビザ申請を専門的にサポートしております。ぜひお気軽に無料相談をご利用ください。

この記事の監修者

西脇 清訓

MIRAI行政書士事務所

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代表行政書士

西脇 清訓

プロフィール

2020年行政書士事務所開業以来、国際業務、相続業務、補助金申請・法人設立など、人生と事業の節目に寄り添う専門家として、実務経験と豊富な知識を活かし、多くのお客様の課題解決に貢献してまいりました。

近年増え続けている外国人採用企業様への支援体制を強化し、中国人スタッフや多言語対応スタッフと共に、各種VISA申請をサポートしております。

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