「うちの技能実習生が2号の途中なんだけど、2027年から制度が変わったらどうなるの?」
2024年6月に「育成就労法」が公布され、2027年4月1日から技能実習制度に代わる「育成就労制度」が施行されます。しかし「制度が変わる=技能実習生がすぐに育成就労に切り替わる」というわけではありません。経過措置の内容を正確に理解しておかないと、タイミングを誤って移行機会を逃すリスクがあります。
- 技能実習制度廃止の正式スケジュールと2027〜2030年の経過措置の詳細
- 技能実習1号・2号・3号それぞれの在留資格への影響と重要な注意点
- 企業・監理団体・登録支援機関が2026年中に進めるべき具体的な対応策
本記事では、2027年4月の育成就労制度施行に向けて、企業・登録支援機関が正確に把握すべき移行措置の全体像を行政書士の視点から解説します。
技能実習制度はいつ廃止される?2027年4月施行の正式スケジュール
育成就労法の公布と施行日
技能実習制度の廃止と育成就労制度への移行は、2024年(令和6年)6月21日に公布された「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律(令和6年法律第60号)」に基づくものです。
当初は「施行まで3年以内」とされていましたが、2025年9月26日の閣議決定・同年12月1日の政令公布により、施行日は2027年(令和9年)4月1日と正式に確定しました。
廃止スケジュールの全体像
技能実習制度の廃止から育成就労制度への移行は、以下のスケジュールで進みます。
| 時期 | 主な出来事 |
|---|---|
| 2024年6月21日 | 育成就労法 公布 |
| 2026年4月15日〜 | 監理支援機関の許可申請(施行前申請)受付開始 |
| 2026年9月1日〜 | 育成就労計画認定の事前申請受付開始 |
| 2027年4月1日 | 育成就労制度 施行開始(技能実習制度 新規受入停止) |
| 2027〜2030年 | 技能実習と育成就労の併存期間(経過措置) |
| 2030年頃 | 技能実習制度 完全廃止(経過措置終了) |
2027年4月以降の新規入国について
2027年4月1日以降、技能実習1号での新規入国は原則不可となります。ただし、2027年3月31日までに技能実習計画の認定申請がなされており、かつ施行日から3か月以内(2027年6月30日まで)に技能実習を開始する場合は経過措置の対象となります。実質的に技能実習として新規入国できる最後の時期は2027年6月末までと理解しておくとよいでしょう。
経過措置の全体像|技能実習と育成就労が3年間並走する
「技能実習はそのまま継続」が原則
2027年4月1日に育成就労制度が施行されても、施行前に認定された技能実習計画は期間満了まで有効です。技能実習生は在留資格「技能実習」のまま活動を継続でき、自動的に「育成就労」の在留資格に変わるわけではありません。
また、技能実習から育成就労への途中切り替えは原則できません。2027年4月以降に育成就労制度の対象になるのは、新たに育成就労として入国する外国人です。在日の技能実習生は経過措置期間中もそのまま技能実習を継続するのが基本的な流れです。
経過措置期間(2027〜2030年)の考え方
技能実習制度は、在留中の技能実習生が全員修了する時点(2030年頃)に完全廃止となります。それまでの約3年間は技能実習と育成就労が並走する経過措置期間です。
この期間中、受入企業は技能実習生(経過措置組)と育成就労外国人の両方を抱えるケースも出てきます。それぞれ適用されるルールが異なるため、管理の区別が重要になります。
育成就労の権利(転籍緩和)は既存実習生には適用されない
育成就労制度では、同一受入機関での1年超就労後から本人意向による転籍が可能になります。しかし、この転籍緩和ルールは育成就労として入国した外国人に適用されるものであり、経過措置中の技能実習生には適用されません。技能実習中の転籍は従来通り「やむを得ない事情」に限定されます。
技能実習1号・2号・3号別の経過措置と見落とせない注意点
2027年4月1日時点での各号の扱い
2027年4月1日(施行日)時点で技能実習中の外国人は、以下の扱いとなります。
| 区分 | 経過措置の内容 |
|---|---|
| 技能実習1号 | 技能実習2号への移行が可能(通常通り) |
| 技能実習2号(1年以上) | 技能実習3号への移行が可能 |
| 技能実習2号(1年未満) | 技能実習3号への移行は不可(重要注意) |
| 技能実習3号 | 在留期間満了まで継続可能 |
技能実習3号への移行に関する重大な注意点
外国人技能実習機構(OTIT)の公式発表によると、技能実習3号に移行するためには2027年4月1日時点で技能実習2号を「1年以上」行っていることが必要です。
これは極めて重要なデッドラインです。技能実習3号への移行を希望する外国人は、遅くとも2026年4月1日までに技能実習2号の活動を開始している必要があります。
注意:2026年4月2日以降に技能実習2号を開始した場合、2027年4月1日時点で2号の就労期間が1年未満となり、技能実習3号への移行ができなくなります。現在の技能実習生の号数・開始日を今すぐ確認し、必要に応じて移行スケジュールを前倒しにしてください。
一部の職種・作業は3号移行の対象外
技能実習3号への移行は全職種が対象ではなく、一部の職種・作業(牛豚食肉処理加工業等)はそもそも3号移行対象外です。自社の技能実習職種が3号移行可能かどうかを確認しておくことが必要です。
既存技能実習生が「育成就労」の権利を得るための現実的なルート
技能実習修了後に特定技能1号へ移行するルート
経過措置中の技能実習生にとって現実的なキャリアパスの一つは、技能実習を修了後に特定技能1号へ移行することです。このルートは2030年頃まで継続して利用できます。
技能実習2号(または3号)を良好に修了した外国人は、引き続き試験免除で特定技能1号に移行可能です。出入国在留管理庁のQ&Aでも、経過措置中の技能実習修了者への試験免除措置の継続が確認されています。
特定技能1号取得後のキャリアパス
技能実習→特定技能1号→特定技能2号という流れは育成就労制度施行後も有効です。特定技能2号を取得すれば在留期間の上限がなくなり、家族帯同も可能になります。さらに継続在留10年(うち就労5年以上)等の要件を満たせば永住許可申請も視野に入ります。
育成就労として新規入国するルート(将来の採用向け)
2027年4月以降に新たに外国人材を採用する場合は、育成就労制度を利用することになります。育成就労修了後(3年)に特定技能1号へ移行するには、技能評価試験および日本語試験(A2相当以上)への合格が必要です(育成就労では試験免除が廃止)。
既存の技能実習生(経過措置)と新規採用の育成就労外国人では適用されるルールが異なるため、管理体制の区別が求められます。
監理団体から監理支援機関への移行手続きと2026年内のデッドライン
監理支援機関への移行申請が2026年4月15日から開始
育成就労制度の施行に伴い、現在の監理団体は新たに「監理支援機関」として許可申請を行う必要があります。自動移行ではなく、既存の監理団体も新規許可申請が必要です。
外国人技能実習機構(OTIT)は、2026年4月15日から施行前申請の受付を開始しています。審査の集中を避けるため、2026年9月30日を推奨期限としており、2027年4月の施行と同時に事業を開始するにはそれ以前の申請が望ましいとされています。
監理支援機関の主な新要件(厳格化ポイント)
監理支援機関として許可を得るためには、従来の監理団体より厳格な要件を満たす必要があります。
- 外部監査人の設置が義務化:弁護士・公認会計士・税理士・社会保険労務士・行政書士のいずれか。過去3年以内の養成講習受講が必須。独立性要件あり(2親等以内の親族不可・顧問契約中の士業は中立性に問題が生じる可能性)。3か月に1回以上の事業所訪問義務
- 職員配置:常勤役職員2名以上。1名あたり受入企業8社以内または外国人40名以内
- 財務要件:債務超過でないこと、3年間の収支計画の適正性
- 支援体制:日本語教育支援(N4〜N3取得支援)・生活支援体制の整備
移行しない場合のリスク
監理支援機関の許可を取得しない場合、2027年4月以降は育成就労の受入が一切できなくなります。技能実習の新規認定申請も2027年4月以降は受け付けられないため、事実上の事業継続不能に陥ります。全国約3,755団体の監理団体が申請を行う見込みであり、審査が集中することが予想されます。早期申請が強く推奨されます。
技能実習修了後の特定技能1号への移行は2030年頃まで継続できる
経過措置中も試験免除は継続
出入国在留管理庁のQ&Aによると、2027年以降も技能実習(経過措置適用)を良好に修了した外国人は、引き続き試験免除で特定技能1号への移行が可能です。
具体的には、技能実習2号(または3号)を良好に修了した外国人は、技能評価試験と日本語試験の両方が免除され、在留資格変更許可申請により特定技能1号を取得できます。この措置は技能実習制度の経過措置期間(2030年頃まで)継続する見通しです。
育成就労修了後の特定技能移行との違い
一方、2027年以降に育成就労として新規入国した外国人が特定技能1号に移行するには、技能評価試験および日本語試験(A2相当以上)への合格が必要です(育成就労制度では試験免除は廃止)。
この点は企業にとって重要な違いです。試験免除ルートを活用できる技能実習修了者は、2030年頃までは現行制度での優位性を持ちます。
特定技能移行のメリットをしっかり伝える
技能実習修了後の特定技能1号移行は、外国人材の長期雇用継続の重要な手段です。企業としては、実習修了の2〜3か月前から準備を開始し、移行申請をスムーズに進める体制を整えることが大切です。行政書士と連携することで、書類準備から申請まで一貫したサポートを受けられます。
企業・登録支援機関が2026年内に進めるべき移行準備チェックリスト
企業(受入機関)のアクションプラン
2026年内に企業が取り組むべき主なアクションは以下の通りです。
- 【今すぐ】全技能実習生の号数・2号開始日・修了予定日を一覧化する:2026年4月1日のデッドライン(3号移行可否)を確認
- 【2026年6月頃まで】育成就労計画の策定準備:自社が該当する産業分野・業務区分の確認、日本語教育支援体制・宿舎環境の整備計画
- 【2026年9月1日〜】育成就労計画認定の事前申請:外国人技能実習機構への申請受付開始(2027年4月からの受入に備えた早期申請を推奨)
- 【2026年内】賃金水準の見直し:育成就労では報酬は同種業務の日本人と同等以上が必須。現行の技能実習時の賃金水準を確認・引き上げ
監理団体・監理支援機関のアクションプラン
- 【2026年4月15日〜、推奨期限9月末】監理支援機関の許可申請:外部監査人の確保・契約が最初の課題。弁護士・行政書士等との連絡を今すぐ開始
- 【申請前】体制整備:常勤役職員2名以上の確保、職員1名あたりの担当企業数・外国人数の確認
- 【2026年内】日本語教育支援体制の構築:N4〜N3取得支援プログラムの整備
- 【2027年4月以降を見据えて】受入企業への説明・移行計画の共有:育成就労制度のルール(転籍・日本語要件・計画認定)について受入企業に丁寧に説明
行政書士との連携が移行成功の鍵
育成就労制度への移行は、監理支援機関の許可申請・育成就労計画の認定申請・特定技能移行申請など、複数の複雑な手続きが絡み合います。
入管業務に精通した行政書士と連携することで、以下のサポートを受けられます。
- 監理支援機関の許可申請書類の作成・提出代行
- 育成就労計画認定申請に向けた書類準備のサポート
- 既存技能実習生の特定技能1号移行申請の代行
- 外部監査人としての就任(行政書士が監理支援機関の外部監査人として参加可能)
- 制度変更に関する最新情報の提供と随時アドバイス
2027年4月まで約1年を切った現在、早めの相談と準備開始が成功の鍵です。まずはお気軽に行政書士事務所にご連絡ください。
まとめ|技能実習廃止に向けた移行措置の要点
技能実習制度廃止と育成就労制度施行に向けた重要ポイントを整理します。
- 育成就労制度は2027年4月1日施行(正式確定)。技能実習の新規受入は2027年4月以降不可
- 既存技能実習生は自動的に育成就労へ切り替わらない。経過措置期間(〜2030年)はそのまま技能実習を継続
- 技能実習3号に移行するには2026年4月1日までに2号を開始している必要がある(重要デッドライン)
- 技能実習修了後の特定技能1号への試験免除移行は2030年頃まで継続可能
- 監理団体は2026年4月15日〜(推奨9月末まで)に監理支援機関の許可申請が必要
- 育成就労計画認定の事前申請は2026年9月1日から受付開始
移行措置の内容は複雑で、対応を誤ると実習継続ができなくなるリスクがあります。早めに行政書士にご相談いただき、計画的な移行準備を進めることを強くおすすめします。



