2027年4月開始の育成就労制度とは?技能実習制度からの大転換を解説

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「2027年に技能実習制度がなくなると聞いたのですが、どう対応すればいいですか?」
外国人雇用に取り組む企業の採用担当者から、こうした相談が急増しています。

2024年6月に成立した改正法により、60年以上続いた外国人技能実習制度が廃止され、新たに「育成就労制度」が2027年4月1日から施行されます。これは単なる名称変更ではありません。制度の目的・転籍制限・支援機関の在り方が根本から変わる「大転換」です。

今回は、企業の採用・人事担当者、登録支援機関・監理団体の方々に向けて、以下の点を徹底解説します。

  • なぜ技能実習制度が廃止されるのか(国際批判・失踪問題の背景)
  • 育成就労制度の新しい特徴(転籍自由化・日本語義務化・特定技能との連動)
  • 2026年中に企業・支援機関が取るべき具体的な準備行動

2027年4月まで1年余り。制度移行の全容を理解して、先手を打った準備を始めましょう。

技能実習制度が廃止される理由|国際批判と失踪問題の深刻化

技能実習制度廃止の背景と国際批判

「現代の奴隷制度」と国際社会からの強い批判

技能実習制度は本来「開発途上国への技術移転による国際貢献」を目的とした制度でした。しかし実態は、日本国内の人手不足を補う労働力として実習生が活用されており、国際社会から繰り返し厳しい批判を受けてきました。

2020年・2022年に米国国務省が公表した「人身売買報告書(TIP報告書)」では、日本の技能実習制度について「強制労働を含む」と報告。「最低基準を完全に満たしていない」と評価し、人身売買の疑いがあるとも指摘しています。

また、国連人種差別撤廃委員会は2020年9月に「技能実習生が劣悪な労働条件・虐待的で搾取的な慣行・債務奴隷型の状況のもとにある」と勧告しました。国際労働機関(ILO)の専門家委員会もたびたび日本の技能実習制度を名指しで問題提起しています。

止まらない失踪者問題:2023年に過去最多を更新

国際的な批判だけでなく、国内でも深刻な問題が続いています。出入国在留管理庁の統計によると、実習先から逃げ出した技能実習生の数は以下のとおりです。

  • 2022年:9,006人(過去2番目の多さ)
  • 2023年:9,753人(過去最多を更新)

法務省の調査では、失踪した実習生のうち約7割が最低賃金未満で働かされていたことも判明しています。「転籍禁止」という制度の縛りによって、不当な扱いを受けても職場を変えられない状況が、失踪・不法滞在を生む構造につながっていました。

有識者会議の最終報告書(2023年11月):発展的解消を提言

政府は2022年12月から計16回の「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」を開催。2023年11月30日の最終報告書では、転籍制限の存在が「実習実施者と技能実習生との間に過度な支配従属関係を生じさせ、様々な人権侵害を発生させ、深刻化させる背景・原因」と明記しました。

最終報告書の提言を受け、2024年6月に改正法が成立・公布。「技能実習制度を実態に即して発展的に解消し、人材の確保と人材の育成を目的とする新たな制度を創設する」という方向性が正式に決定しました。

育成就労制度の基本設計:目的が根本から変わる

育成就労制度の基本設計と目的

技能実習から育成就労へ:制度目的の転換

育成就労制度と技能実習制度を比較すると、その違いが明確になります。

項目 技能実習制度 育成就労制度
制度目的 国際協力・技術移転 人材確保・人材育成
在留期間 最大5年(1号〜3号) 原則3年以内
転籍 原則禁止 一定要件下で可能
日本語要件 分野による A1相当以上必須(就労開始前)
修了後 原則帰国 特定技能1号への移行を想定
職種数 91職種168作業 17分野(特定技能と同一)

対象分野:特定技能と同じ17分野に整理

育成就労制度の対象分野は、特定技能の19分野から「航空」と「自動車運送業」を除いた17分野に設定されています。2026年1月23日に閣議決定された分野別運用方針では、「物流倉庫」「リネンサプライ」「資源循環」の3分野が新たに追加されました。

旧制度の技能実習(91職種168作業)と比べると、職種が大幅に整理・統合されています。自社が対象分野に含まれるか、今のうちに確認しておきましょう。

根拠法と制度設計の経緯

正式名称は「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」(育成就労法)。2024年6月21日に公布され、2027年4月1日の施行が確定しています。基本方針は2025年3月11日に閣議決定、分野別運用方針は2026年1月23日に閣議決定、運用要領は2026年2月20日に公表されています。

最大の変化:転籍制限の緩和

育成就労制度における転籍制限の緩和と要件

旧制度の問題:3年間転籍禁止が人権侵害を深刻化

技能実習制度では「やむを得ない事情がある場合を除き、原則として同一事業所で3年間就労」という縛りがありました。規定上はパワハラなどを受けた場合は転籍できるとされていましたが、実際は職場に問題があっても移れないケースが多く、支援者らが口をそろえて問題視してきました。

この転籍禁止制限こそが、失踪者を生む最大の原因の一つです。不当な扱いを受けても逃げ出すことしかできない状況が、9,000人を超える年間失踪者数につながっていました。

新制度の転籍ルール:分野によって1年または2年

育成就労制度では、本人の意向による転籍を一定の要件のもとで認めることになりました。転籍制限期間は分野によって異なります。

転籍制限期間 対象分野
2年 介護・建設・工業製品製造業・造船・舶用工業・自動車整備・飲食料品製造業・外食業・資源循環(9分野)
1年 ビルクリーニング・リネンサプライ・宿泊・鉄道・物流倉庫・農業・漁業・林業・木材産業(9分野)

介護・建設など技術習得に時間がかかる分野や、都市への過度な人材流出が懸念される分野は「2年」に設定されています。一方、比較的技術習得が早い分野は「1年」と短く設定されました。

本人意向の転籍に必要な5つの要件

転籍制限期間を超えれば自動的に転籍できるわけではありません。以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 転籍制限期間(1年または2年)を超えて就労していること
  • 分野別に定められた一定水準の技能を修得していること
  • 日本語能力A1相当以上の試験(分野によりA2まで)に合格していること
  • 転籍先が同一業務区分内であること(業界を越えての転籍は不可)
  • 転籍先が優良な育成就労実施者であること

企業へのポイント:転籍先の選定は同一業務区分内に限られるため、異なる分野への転籍はできません。一方で、1〜2年以上定着してもらえれば優秀な人材として特定技能へとつなげられます。待遇改善によって転籍リスクを軽減することが重要です。

育成就労から特定技能への移行パス

育成就労から特定技能1号・2号へのキャリアパス

育成就労は「特定技能への助走期間」として設計

育成就労制度の最大の特徴は、「3年間で特定技能1号相当の水準に育成すること」を目標に設計されている点です。技能実習制度では「修了後は原則帰国」でしたが、育成就労では日本での長期就労・定住へのキャリアパスが明確に確立されます。

目指すキャリアパスは次のとおりです。

育成就労(3年)→ 特定技能1号(通算最大5年)→ 特定技能2号(無期限・家族帯同可)→ 永住許可

これにより、外国人材は「数年で入れ替わる実習生」ではなく「将来のコア人材」として長期的に育成できる環境が整います。

特定技能1号への移行に必要な試験

育成就労を3年修了後、特定技能1号へ移行するためには以下の試験に合格する必要があります。

  • 技能試験:技能検定試験3級等、または特定技能1号評価試験に合格
  • 日本語試験:日本語能力A2相当以上(日本語能力試験N4等)に合格

試験に不合格となった場合でも、最長1年の範囲内で在留継続が認められる可能性があります。企業は修了前から計画的に試験対策を支援することが重要です。

旧制度の技能実習生:試験免除の特例は継続

現在進行中の技能実習で2号または3号を「良好に修了」した場合は、これまでどおり試験免除で特定技能1号へ移行できます。この優遇措置は制度移行後も引き続き適用されます。

日本語能力の段階的向上が義務化

育成就労制度では、日本語能力の段階的向上が義務化されます。

  • 就労開始前:A1相当以上の試験合格または100時間以上の認定日本語講習受講
  • 就労開始後1年経過時:A1〜A2相当の試験合格(分野ごとに設定)
  • 特定技能1号への移行時:A2相当(N4等)の試験合格

受入機関は、育成就労外国人が日本語能力の目標を達成できるよう、日本語講習を受講できる環境を整備する義務があります。

監理団体から監理支援機関へ:支援機関の大転換

監理支援機関と旧監理団体の違い・許可要件

単なる名称変更ではない:許可要件が大幅厳格化

技能実習制度の監理団体は、育成就労制度では「監理支援機関」として再構築されます。重要なのは、現在の監理団体許可は自動移行されないことです。2026年4月15日から始まる新規許可申請を通じて、改めて許可を取得する必要があります。

主な変更点を整理します。

項目 旧:監理団体 新:監理支援機関
組織形態 非営利のみ(事業協同組合等) 営利・非営利不問
外部監査人 任意 設置が義務化
常勤役職員 制限なし 2名以上必須(担当8者未満・外国人40人未満)
担当実施者数 制限なし 2者以上が必要
独立性 緩い基準 受入機関と密接関係の役員就任を制限

外部監査人の設置が義務化

監理支援機関の大きな変更点の一つが、「外部監査人の設置義務化」です。外部監査人は監理支援機関の職務執行を監査する独立した第三者で、弁護士・社会保険労務士・行政書士の有資格者等が就任します。外部監査人の名前は公表され、養成講習の受講も必須とされています。

業務範囲が大幅に拡大

監理支援機関の業務は、旧監理団体と比べて大幅に拡充されます。

  • 育成就労計画の作成支援・認定申請代行
  • 日本語学習支援(A1→A2相当への到達を支援)
  • 転籍支援(同一業務区分内での転籍コーディネート)※新規業務
  • 特定技能への移行支援(試験対策・在留資格変更申請)※新規業務
  • 外国人の相談・苦情対応(母国語による対応体制が必要)

企業・受入機関が2026年中に準備すべきこと

企業が2026年中に行うべき育成就労制度への準備事項

2026年〜2027年の重要スケジュール

時期 内容 対象
2026年4月1日 技能実習3号希望者:2号開始の期限 企業・技能実習生
2026年4月15日 監理支援機関の許可申請受付開始 旧監理団体
2026年9月1日 育成就労計画の認定申請受付開始 企業・監理支援機関
2027年4月1日 育成就労制度 施行 全関係者

監理団体(旧)が今すぐ取るべき行動

旧制度の監理団体は、2026年4月15日から始まる監理支援機関の許可申請に向けて、今すぐ準備を開始する必要があります。

  • 外部監査人の確保(弁護士・行政書士・社会保険労務士から選任)
  • 組織体制の見直し(常勤役職員2名以上・独立性確保・債務超過解消)
  • 管理支援責任者等の養成講習の受講
  • 担当受入機関数・担当外国人数の把握と上限確認

施行日(2027年4月1日)以降、速やかに業務を開始するためには、少なくとも6か月前からの申請が推奨されています。2026年4月15日の申請開始後は早急に動いてください。

受入機関(企業)が取るべき行動

企業の採用・人事担当者は、以下のアクションを優先的に実施してください。

  • 現在の技能実習生の状況確認:各人の在留資格・在留期限を把握し、3号移行希望者が2026年4月1日までに2号を開始しているか確認する
  • 採用計画の見直し:2027年4月以降の採用を育成就労として計画し、対象分野と人数を策定する
  • 日本語教育体制の整備:A1〜A2相当の日本語学習支援環境(オンライン日本語学習等)を整備する
  • 賃金・待遇の競争力強化:転籍リスクに対応するため、特定技能2号相当の水準を意識した待遇パッケージを検討する

コスト構造の変化に備える

育成就労制度では、技能実習と比べてコスト構造が変わります。主な変化点は以下のとおりです。

  • 渡航費:受入機関(企業)が負担(旧制度では実習生負担が多かった)
  • 送り出し費用の上限規制:外国人が負担できるのは「日本での月給の2か月分まで」。超過分は受入機関または監理支援機関が負担
  • 転籍時の初期費用:転籍先が転籍元の初期投資コストの一定割合を按分負担する仕組みが導入
  • 日本語教育支援費:A1→A2への到達支援にかかる教育費用が増加する可能性あり

注意:採用の諸経費は技能実習制度よりも全体的に増加する見込みです。一方で、特定技能への移行を前提とした長期雇用が実現すれば、採用・教育コストの分散が可能になります。

現在の技能実習生への影響:経過措置の詳細

現在の技能実習生への経過措置と2027年以降の影響

2027年4月1日時点で技能実習中の場合

育成就労制度の施行後も、すでに技能実習中の外国人は原則として旧制度のまま継続できます。

  • 施行日前に認定された技能実習計画は、期間満了まで有効
  • 在留資格「技能実習」のままで活動継続が可能(強制的な切り替えなし)
  • 2027年3月31日までに技能実習計画の認定申請が行われ、2027年6月30日までに技能実習を開始する場合も継続可能

技能実習3号への移行:要注意の期限

2027年4月1日以降、技能実習3号に移行するためには「2027年4月1日時点で技能実習2号の活動を1年以上行っていること」が必須要件となります。

重要:技能実習3号への移行を希望する場合、遅くとも2026年4月1日までに技能実習2号を開始していることが必要です。この期限を過ぎると3号への移行ができなくなる可能性があります。現在の技能実習生の状況を今すぐ確認してください。

技能実習2号・3号修了者の特定技能移行:試験免除は継続

技能実習2号または3号を良好に修了した場合、これまでどおり試験免除で特定技能1号に移行できます。この優遇措置は制度移行後も継続して適用されます。特定技能への移行を予定している技能実習生については、引き続き計画的なキャリア支援を行ってください。

新旧制度の併存期間:2030年頃まで

育成就労制度の施行後、2027年〜2030年頃にかけては新旧両制度が併存します。技能実習制度が完全に廃止されるのは2030年頃の見込みです。激変緩和措置として段階的な移行期間が設けられているため、既存の技能実習生を急いで育成就労に切り替える必要はありません。

まとめ:2027年4月に向けた準備チェックリスト

育成就労制度への移行は、2026年中からいよいよ本格始動します。制度設計はすでに確定し、監理支援機関の許可申請受付(2026年4月15日)・育成就労計画の認定申請受付(2026年9月1日)という2つの重大な期限が迫っています。

以下のチェックリストで、自社の準備状況を確認してください。

  • □ 現在の技能実習生の在留資格・在留期限を一覧化した
  • □ 技能実習3号移行希望者が2026年4月1日までに2号を開始しているか確認した
  • □ 連携する監理団体が監理支援機関として許可申請する予定か確認した
  • □ 外部監査人を確保しているか確認した
  • □ 2027年4月以降の外国人採用計画(育成就労・特定技能)を策定した
  • □ 日本語教育支援環境(A1→A2相当)を整備した
  • □ 競争力ある賃金・待遇パッケージを検討した
  • □ 育成就労から特定技能への移行を見据えた長期育成計画を策定した

2027年4月以降、技能実習制度で採用してきた人材を育成就労・特定技能へとシームレスに繋ぐためには、今からの準備が不可欠です。制度移行の対応でお困りの点があれば、ぜひMIRAI行政書士事務所にご相談ください。

この記事の監修者

西脇 清訓

MIRAI行政書士事務所

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代表行政書士

西脇 清訓

プロフィール

2020年行政書士事務所開業以来、国際業務、相続業務、補助金申請・法人設立など、人生と事業の節目に寄り添う専門家として、実務経験と豊富な知識を活かし、多くのお客様の課題解決に貢献してまいりました。

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