「うちの外国人社員が転職したいと言っている。何か手続きが必要ですか?」
「転職の際に在留資格の手続きが必要なのか、それとも特に何もしなくて良いのか、正直わかっていない」という企業担当者の方は多いものです。
外国人社員の転職・配置転換では、次の3つのポイントを押さえる必要があります。
・所属機関変更届出(本人が14日以内に提出する義務がある)
・在留資格変更が必要なケースの見極め
・就労資格証明書の取得で採用リスクを下げる方法
これらを理解しておかないと、知らぬ間に不法就労助長罪のリスクを抱えることになりかねません。本記事では、外国人社員の転職・配置転換に必要な手続きを、ケース別・ステップ別にわかりやすく解説します。
外国人社員の転職で必要な手続きの全体像
外国人社員が転職した場合、必要な手続きは大きく3種類に分かれます。
| 手続き |
義務/任意 |
期限 |
| 所属機関変更届出 |
義務(罰則あり) |
事由発生から14日以内 |
| 在留資格変更許可申請 |
必須(変更が必要な場合) |
転職前に許可取得が必要 |
| 就労資格証明書交付申請 |
任意(強く推奨) |
在留期限まで3か月以上ある場合 |
「外国人が転職するときは何も手続きがいらない」という誤解が非常に多いですが、実際には本人の届出義務があり、怠ると罰則が発生します。また、採用する側の企業にも不法就労チェックの義務があります。
届出の主体は「外国人本人」
重要なのは、所属機関変更届出の義務者は外国人本人であるという点です。企業が代わりに自動的に行う手続きではありません。
転職する本人がきちんと届け出たかどうか、採用側の企業も確認する必要があります。
所属機関変更届出:14日以内の義務を見落とさない

所属機関変更届出とは、就労系の在留資格を持つ外国人が転職・退職した場合に行う法定の届出です。
届出が必要な在留資格
技術・人文知識・国際業務、特定技能、高度専門職1号(イ・ロ)、研究、介護、興行、技能など多くの就労系在留資格が対象です。
届出が必要なタイミング
- 転職(前の会社を退職し、新しい会社と雇用契約を結んだとき)
- 退職(雇用契約が終了したとき)
- 会社の名称・所在地が変更になったとき
- 会社が廃業・消滅したとき
届出期限と罰則
事由発生日から14日以内に届出が必要です。違反した場合は20万円以下の罰金(入管法第71条の3)が科されるほか、次回の在留期間更新申請で審査が厳しくなるなどの不利益が生じます。
届出方法(3種類)
- 電子届出システム(推奨):出入国在留管理庁のオンラインシステムから24時間365日申請可能
- 窓口持参:最寄りの地方出入国在留管理官署で在留カードを提示して届出
- 郵送:在留カードのコピーを同封して東京出入国在留管理局あてに郵送
在留資格変更が必要なケース・不要なケース

転職した際に、在留資格の変更申請が必要かどうかは「転職後の業務内容が現在の在留資格の活動範囲内かどうか」で決まります。
変更申請が「必要」なケース
| 状況 |
具体例 |
| 転職後の業務が在留資格の範囲外 |
技人国(エンジニア)→調理師として就労 |
| 企業内転勤ビザ保持者の他社転職 |
企業内転勤は特定の会社専属のため、別会社では技人国等への変更が必要 |
| 高度専門職1号保持者の他社転職 |
高度専門職1号は特定の会社専属のため、必ず変更申請が必要 |
重要:在留資格変更の許可が下りるまで、新しい会社での就労を開始することはできません。退職前から手続きを開始することが不可欠です。
変更申請が「不要」なケース
- 同じ在留資格の範囲内での転職(例:技人国のエンジニアが別の会社でエンジニアとして就労)
- 技人国の範囲内で職種が変わる転職(例:エンジニア→同じ会社での翻訳・通訳業務)
ただし、いずれの場合も所属機関変更届出は必ず必要です。
就労資格証明書とは?転職採用のリスクを下げる有効な手段

就労資格証明書とは、法務大臣が「この外国人はこの活動を行うことができる」と証明する公的な文書です。転職先の業務が現在の在留資格の活動範囲内であることを事前に確認・証明できます。
就労資格証明書の主なメリット
- 採用企業のリスク軽減:転職者の業務が在留資格の範囲内であることを公式に確認できる
- 次回更新がスムーズ:更新申請時に簡易書類で申請でき、審査期間が短縮される
- 不法就労リスクの低減:「確認を怠った」という過失を防ぐことができる
申請のタイミングと費用
- 在留期限まで3か月以上ある場合が適切(期限が迫っている場合は更新申請を優先)
- 手数料:窓口申請2,000円 / オンライン申請1,600円
- 標準処理期間:1〜3か月程度
配置転換・部署異動で注意すべきポイント

社内の配置転換(転勤・部署異動・業務内容変更)でも、在留資格との整合性を確認しなければならない場合があります。
配置転換のパターン別リスク
| 状況 |
リスクと対応 |
| 専門職部署→別の専門職部署(同一資格範囲内) |
原則問題なし。次回更新時に確認される |
| 専門職部署→製造ライン・現場作業 |
在留資格の活動範囲外。不法就労リスク大 |
| 国内転勤(勤務地のみ変更) |
業務内容に変更がなければ届出不要 |
| 出向・転籍(他社での就業) |
出向元・出向先双方の関係整理が必要。行政書士に確認推奨 |
現場研修(OJT)が例外的に認められる条件
出入国在留管理庁のガイドラインにより、次の条件をすべて満たす場合は現場研修が許容されます。
- 日本人新入社員と同様の研修であること
- 在留期間全体の大半を占めない合理的な研修期間であること
- 研修期間を超えて現場業務に継続して従事させないこと
技術・人文知識・国際業務ビザの活動範囲と「NG業務」

在留資格「技術・人文知識・国際業務」(技人国)は、多くの外国人社員が持つ代表的な就労ビザです。
技人国ビザで就労できる業務(例)
- 技術分野:システムエンジニア、プログラマー、研究開発、製品設計、品質管理(専門的)
- 人文知識分野:経理、人事、企画、営業(専門的交渉)、マーケティング
- 国際業務分野:翻訳・通訳、語学指導、海外営業、貿易業務
技人国ビザでNG(資格外活動)となる業務例
- 工場の製造ライン作業・組立作業
- 飲食店での接客・配膳・調理補助
- 建設現場での技能作業
- 専門知識を要しないデータ入力などの定型・マニュアル作業
特に「人手が足りないから工場ラインに入らせた」「飲食の仕事を手伝わせた」などは、典型的な違反事例です。本人に悪意がなくても、在留資格違反となります。
不法就労助長罪:採用企業に問われるリスク

外国人を雇用する企業は、在留資格の確認を怠ると不法就労助長罪に問われるリスクがあります。
2025年6月改正による罰則強化
| 対象 |
改正前 |
改正後(2025年6月〜) |
| 個人(経営者等) |
懲役3年以下または罰金300万円以下 |
拘禁刑5年以下または罰金500万円以下 |
| 法人(企業) |
罰金300万円以下 |
罰金1億円以下 |
「知らなかった」は免責になりません。在留カードの確認を怠った過失があれば処罰の対象となります。
企業が行うべき在留資格チェックの4ステップ
- 採用時:在留カードの原本確認(コピー不可)、就労制限の有無・在留期限の確認
- 在留期限管理:社内で在留期限を一覧管理し、更新前にリマインダーを設定
- 配置転換時:異動後の業務が在留資格の活動範囲内かどうか事前確認
- 転職者採用時:就労資格証明書の提示を求め、業務適合性をダブルチェック
行政書士に依頼するメリットと相談のタイミング

外国人社員の転職・配置転換に関する在留資格手続きは、ケースによって対応が異なるため、判断に迷う場面が多くあります。行政書士(入管業務専門)への相談が特に有効な場面を紹介します。
行政書士への相談が推奨されるタイミング
- 転職予定の外国人社員を採用しようとするとき(業務適合性の事前確認)
- 配置転換・出向が在留資格の範囲内かどうか判断に迷うとき
- 就労資格証明書の申請書類を準備するとき
- 在留資格変更申請が必要かどうか確認したいとき
- 在留期限が近い外国人社員の更新申請をまとめて依頼したいとき
特に「技人国のエンジニアを総務部門に異動させたい」「製造ラインで応援させたい」など、グレーゾーンの判断は行政書士に事前確認することで、法的リスクを事前に排除できます。
行政書士に依頼するメリット
- 在留資格の活動範囲を正確に把握した上での判断が得られる
- 就労資格証明書・変更申請の書類作成から申請まで代行してもらえる
- 在留期限の一括管理サービスを活用できる
- 万が一のトラブル時に専門家として対応してもらえる
外国人社員の転職・配置転換に関する手続きは、適切に対応することで企業も外国人社員も安心して働ける環境を整えることができます。手続きの判断に迷った際は、早めに専門の行政書士に相談することをおすすめします。