「育成就労で外国人を雇いたいが、うちの業種に受入枠はあるのか?」
2026年1月23日、政府は閣議決定により、育成就労と特定技能を合わせた5年間(〜2028年度末)の外国人受入上限を計123万1,900人と正式に決定しました。業種ごとに配分枠が設定されたことで、企業の採用計画に大きな影響が生じています。
- 123万人の分野別内訳と主要分野の受入枠
- 上限到達時に企業が直面するリスクと対応策
- 中小企業が枠を確保するための早期準備のポイント
本記事では、行政書士の視点から2026年3月時点の最新情報をもとに、企業の採用担当者が今すぐ動くべき理由と具体的な準備方法をわかりやすく解説します。
育成就労・特定技能の受入上限123万人とは
2026年1月閣議決定の概要
政府は2026年1月23日の関係閣僚会議において、「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を閣議決定しました。この中で、特定技能1号と2027年4月から開始される育成就労を一体的に運用し、2024〜2028年度末の5年間における外国人受入上限を計123万1,900人とすることが正式に定められました。
育成就労制度は技能実習制度の廃止に伴い新設される在留資格です。最長3年間、国内で技能・日本語・知識を身につけさせ、特定技能1号・2号へとつなぐキャリアパスが制度化されています。今回の閣議決定は、育成就労が正式施行される前に受入上限という「枠」を国として明示した歴史的な決定といえます。
特定技能1号と育成就労の枠の内訳
123万1,900人の内訳は以下のとおりです。
| 制度 | 受入上限(5年間合計) | 対象分野数 |
|---|---|---|
| 特定技能1号 | 80万5,700人 | 19分野 |
| 育成就労 | 42万6,200人 | 17分野 |
| 合計 | 123万1,900人 | — |
特定技能1号は従来の上限(82万人)から約1万4,000人の下方修正となっています。一方、育成就労は今回初めて上限が設定されました。育成就労が対象外となっているのは「航空」と「自動車運送」の2分野で、これらは国内でのOJTによる育成になじまないとして除外されています。
前回(2024年3月)閣議決定との変更点
2024年3月29日の閣議決定では、特定技能19分野の受入上限が設定されていました。今回は育成就労の上限が新たに加わったほか、新設3分野(リネンサプライ・物流倉庫ターミナル・資源循環)が特定技能に追加されています。
- リネンサプライ:7,700人
- 物流倉庫ターミナル:1万8,300人
- 資源循環:4,500人
これら新設3分野は育成就労の対象外とされていますが、企業の採用選択肢が広がった意義は大きいといえます。
分野別配分の具体的な内訳
受入枠が最多の分野:工業製品製造業
分野別で最大の受入枠を有するのが工業製品製造業です。特定技能で20万人、育成就労で12万人、合計32万人の受入を見込んでいます。この分野は金属・機械・電気・電子などの製造業全般を含み、国内の製造ラインを支える外国人材の受け皿として最大規模の枠が設けられました。
建設・飲食料品製造業の枠
工業製品製造業に次いで大きな枠を持つのが建設分野と飲食料品製造業分野です。
- 建設分野:特定技能7万6,000人+育成就労12万3,500人=計19万9,500人
- 飲食料品製造業:育成就労6万人程度を含む、合計約20万人規模
建設分野は育成就労の12万3,500人という枠が特定技能を上回っており、業界の深刻な人手不足を反映した設定となっています。また飲食料品製造業はHACCPや食品衛生管理の知識習得を通じた育成が求められる点も特徴です。
介護・農業・外食業の受入枠
その他の主要分野についても分野別運用方針で数字が明示されています。
| 分野 | 特定技能1号 | 育成就労 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 介護 | 13万5,000人 | 設定あり | 施設内介護のみ(訪問介護除く) |
| 農業 | 3万2,000人 | 設定あり | 耕種農業・畜産農業 |
| 外食業 | 5万3,000人 | 設定あり | 飲食店・料理品小売等 |
| ビルクリーニング | 1万5,000人 | 設定あり | 商業施設・オフィス等 |
介護分野は特定技能1号の枠が最大規模のひとつに位置しており、今後の高齢化社会を支える重要な分野として政策的に優先されています。ただし訪問介護は現時点でも対象外となっている点に注意が必要です。
主要分野ごとの需給見通しと課題
介護分野:深刻な人手不足と外国人材への高い期待
厚生労働省の推計によると、2040年には介護人材が69万人不足するとされています。特定技能の介護分野は全分野で最大規模の枠(13万5,000人)が与えられており、政府の重点分野として位置づけられています。
育成就労の介護分野では、まず施設内で技能・日本語力を3年間かけて育成し、その後特定技能1号・2号へ移行するキャリアパスが期待されています。N4レベルの日本語能力が求められることが育成就労特有の要件となっており、送出国側の日本語教育機関との連携が今後ますます重要になります。
建設分野:業界固有の制度対応が必要
建設分野は育成就労の受入枠(12万3,500人)が特定技能(7万6,000人)を大きく上回っており、新制度への移行を想定した設計となっています。建設分野では業界団体JAC(一般財団法人建設技能人材機構)への加入が必須であり、受入企業はCCUS(建設キャリアアップシステム)への登録も求められます。
育成就労においても同様の枠組みが維持される見通しで、監理支援機関(旧監理団体)を通じた受入手続きが中心となります。中小建設会社にとっては登録書類の準備や費用負担が増す可能性があり、早めに行政書士への相談を開始することが得策です。
製造業(工業製品・飲食料品)の動向
工業製品製造業は合計32万人という最大の受入枠を持ちながら、分野内に13業務区分が存在するため、自社の業務がどの区分に該当するかの確認が必要です。製造ラインへの従事が認められる業務と、そうでない周辺業務を正確に把握しておかないと、採用後に在留資格要件違反となるリスクがあります。
飲食料品製造業においては、HACCPに基づく衛生管理知識が求められるため、社内での衛生教育体制の整備も採用計画に組み込む必要があります。
受入上限が企業採用計画に与える影響
上限到達時に何が起きるか
各分野の受入上限はあくまで「5年間の累計見込数」であり、年度ごとの上限ではありません。しかし、特定技能では分野ごとに「毎年の受入数が見込数を大幅に超えた場合、新規受入を一時停止できる」という規定があります。現に2024年度には一部分野でこの審議が行われた経緯があります。
育成就労でも同様の仕組みが導入されることが予想されており、上限に近づいた分野では新規申請の受理そのものが困難になるリスクが現実のものとなります。特に人手不足が深刻な建設・介護・製造業では、枠の消化速度が速く、早期に行動した企業が優位に立つ構造となっています。
分野別競争の激化と採用タイミングの重要性
育成就労は2027年4月1日が制度スタートですが、対象となる分野別運用方針はすでに閣議決定されています。送出国側の準備、監理支援機関の選定、社内体制の整備には最低でも6〜12か月を要することを考えると、2026年中に準備を開始することが必須です。
注意: 育成就労の受入開始は2027年4月ですが、監理支援機関の新規申請受付や認定手続きは2026年内に開始予定です。企業側は監理支援機関を選定し、基本契約を締結しておく必要があります。
また、人気のある送出国(ベトナム・インドネシア・フィリピンなど)からの求職者は優良企業・優良機関を選ぶ傾向が強まっています。処遇改善や職場環境の整備も含めた「選ばれる企業」づくりが採用成功の鍵となります。
中小企業が直面するリスク
中小企業が育成就労・特定技能の採用で直面しやすいリスクを整理します。
- 手続きの煩雑さ:在留資格申請・雇用契約書の整備・各種届出など、担当者不在の中小企業には負担が大きい
- 費用の見通し不足:監理支援機関費用・送出機関手数料・支援費用など、初期コストが想定外になりやすい
- 法令違反リスク:育成就労計画の認定要件を満たさないまま受入を始めると、行政処分の対象となる
- 転籍リスク:育成就労では1年経過後に本人意向による転籍が認められるため、早期離職対策が必要
中小企業が受入枠を確保するための早期準備策
Step1:自社業種の分野・区分を確認する
まず、自社が育成就労・特定技能の対象分野に該当するかを確認します。分野別運用方針は出入国在留管理庁のウェブサイトで公表されており、業務区分ごとの詳細が記載されています。製造業・建設業など業種が広い分野では、具体的な業務内容が要件に合致するかを慎重にチェックする必要があります。
この確認作業は行政書士に依頼することで、見落としを防ぐことができます。特に複数の業務を担わせる予定がある場合は、在留資格の範囲内かどうかを事前に精査しておくことが重要です。
Step2:監理支援機関・登録支援機関の選定
育成就労の受入は監理支援機関(旧・監理団体)を通じた受入が基本です。監理支援機関の新規申請は2026年内に始まる見通しであり、従来の監理団体が移行申請を行う形となります。企業は事前に候補となる監理支援機関を複数リストアップし、費用・サポート体制・実績を比較検討してください。
ポイント: 監理支援機関は「一般監理支援型」と「特定監理支援型」に区分される予定です。受け入れる分野・人数によって適切な機関が異なるため、行政書士に相談しながら選定することをお勧めします。
Step3:社内受入体制の整備
育成就労計画の認定を受けるためには、以下の社内体制が必要です。
- 育成就労責任者・育成就労指導員の選任
- 適切な賃金水準の確保(同等業務の日本人と同等以上)
- 住居・生活支援体制の整備
- 技能習得計画の策定
- 労働関係法令・社会保険の適正適用
これらの要件を満たすには、社内規程の見直しや就業規則の改定が伴うケースもあります。早めに労務専門家や行政書士と連携し、整備を進めておくことが重要です。
育成就労受入に向けた企業の手続きフロー
2027年4月施行までのスケジュール(2026年版)
育成就労制度の施行に向けたスケジュールを整理します。
| 時期 | 主なイベント |
|---|---|
| 2026年1月 | 123万人受入上限・分野別運用方針を閣議決定 |
| 2026年前半 | 監理支援機関の申請受付開始(見込み) |
| 2026年後半 | 育成就労計画認定機関の業務開始(見込み) |
| 2027年4月1日 | 育成就労制度 正式施行 |
| 2027年4月以降 | 技能実習制度の新規受入停止(移行期間中) |
2026年内に監理支援機関・受入企業の申請が相次ぐことが予想されます。準備の早い企業ほど優先的にポジションを確保できるため、今から動くことに意味があります。
受入企業として必要な認定・届出の流れ
育成就労の受入企業が行う手続きの主な流れは以下のとおりです。
- 監理支援機関との業務委託契約締結
- 育成就労計画の作成・認定申請(育成就労計画認定機関へ)
- 在留資格「育成就労」の認定証明書交付申請(または在留資格変更許可申請)
- 入国・就労開始後の届出(育成就労実施報告など)
- 各種定期届出の提出
これらの手続きには専門的な書類作成が必要であり、不備があると計画認定が下りないケースもあります。特に初めて外国人材を受け入れる企業は、行政書士にサポートを依頼することを強くお勧めします。
行政書士への相談は早いほど有利
育成就労の受入準備は、書類作成だけでなく、自社の業務内容・賃金水準・住居確保・送出国の選定など、多岐にわたる要素を総合的に判断する必要があります。行政書士は在留資格申請の専門家として、企業ごとの状況に合わせた最適な受入プランを提案できます。
早期に相談することで、制度施行前に万全の準備を整えることができます。2026年内のご相談が、2027年のスムーズな受入につながります。
まとめ:123万人上限が示す外国人材政策の方向性と企業がすべきこと
123万人上限が示す政府の強いコミットメント
今回の閣議決定は、日本政府が外国人材の受入を本格的な労働力政策として位置づけたことを示す重要なシグナルです。単なる「一時的な人手不足対策」ではなく、社会基盤を維持するための長期的な政策として育成就労・特定技能制度を活用する方針が明確になりました。
分野別の受入枠が設定されたことで、各業界における外国人材の「競争」が始まっています。早期に制度を理解し動き出した企業が、優秀な外国人材を確保できる時代となっています。
今すぐ取り組むべき3つのアクション
- 自社の対象分野・業務区分を確認する:育成就労・特定技能に該当するかを確認し、不明な点は行政書士に相談
- 監理支援機関の候補をリストアップする:複数の監理支援機関を比較検討し、信頼できる機関を早期に選定
- 社内受入体制の整備を開始する:育成就労責任者の選任、就業規則の見直し、住居確保計画などを今から着手
育成就労制度の施行まで1年を切っています。2026年は「準備の年」と位置づけ、計画的に進めることが外国人材採用の成否を左右します。当事務所では、育成就労・特定技能に関する企業向けの受入準備サポートを行っています。お気軽にご相談ください。



