「外国人社員が永住権の申請を希望しているのですが、2027年に制度が変わると聞いて…今のうちに何かしておくべきですか?」
日本の高度人材向けポイント制(高度専門職ビザ)は、2027年4月に大きな転換点を迎えます。永住申請の「3年ルート」が廃止される見込みであり、現在ポイントが70〜79点の外国人材は、申請できるまでの期間が3年から5年に延びる可能性があります。今すぐ対策を取らなければ、外国人社員の長期定着計画に狂いが生じるかもしれません。
- 高度人材ポイント制の仕組みと現行の永住申請ルート(1年・3年・10年)
- 2027年改定で廃止される「3年ルート」と新たな5年ルートへの移行
- J-Skip(特別高度人材)を活用した最短1年永住申請の活用法
- 企業HR担当者が今すぐ取るべき対応と行政書士への相談タイミング
2027年4月の改定を前に、外国人社員の状況を正確に把握し、最適な申請タイミングを逃さないための実務ガイドです。
高度人材ポイント制とは?制度の目的と基本的な仕組み
高度人材ポイント制とは、外国人の学歴・職歴・年収・研究実績などを点数化し、一定点数(70点)以上の人材に対して在留資格「高度専門職」と特別な優遇措置を与える制度です。2012年5月に導入され、日本企業が優秀な外国人材を確保しやすくする目的で設計されています。
日本が高度外国人材を優遇する背景
少子高齢化が進む日本では、イノベーションや国際競争力の維持に高度な専門知識を持つ外国人材が不可欠とされています。政府は「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」(2026年1月閣議決定)を通じ、高度人材の受入促進と定着支援を国家戦略として推進しています。
高度専門職ビザ(1号・2号)の種類と特典
高度専門職ビザは、以下の2種類に分かれています。
| 区分 | 高度専門職1号 | 高度専門職2号 |
|---|---|---|
| 取得要件 | ポイント70点以上 | 1号で3年以上在留 |
| 在留期間 | 最長5年 | 無期限 |
| 活動制限 | 資格に応じた就労活動 | ほぼすべての活動が可能 |
| 主な優遇 | 複合的活動・親族帯同など | 家事使用人帯同・投資活動も可 |
高度専門職1号を取得すると、複数の在留資格にまたがる活動(例:研究しながら経営も行うなど)が可能となり、配偶者の就労制限も緩和されるなど、通常の就労ビザと比べて大幅に行動の自由度が上がります。
ポイント制の評価活動カテゴリー
高度専門職には3つの活動カテゴリーがあり、それぞれ評価基準が異なります。
- 高度学術研究活動:大学教授、国立研究機関の研究員など
- 高度専門・技術活動:エンジニア、国際弁護士、製品開発担当者など
- 高度経営・管理活動:外資系企業・国際展開企業の経営幹部など
高度人材ポイントの計算方法と年収基準の詳細
ポイント計算は、学歴・職歴・年収・年齢・研究実績・日本語能力・大学加点などの項目ごとに点数が割り振られ、合計70点以上で高度専門職1号の認定要件を満たします。
主要な評価項目と配点
| 評価項目 | 主な内容 | 最大配点(目安) |
|---|---|---|
| 学歴 | 博士・修士・学士の取得段階 | 30点 |
| 職歴 | 業務経歴年数(3〜10年以上) | 20点 |
| 年収 | 直近年収(300万円〜) | 40点(1,000万円以上) |
| 年齢 | 若年者優遇(29歳以下が最高) | 15点 |
| 研究実績 | 特許・学術論文・競争的資金 | 25点 |
| 日本語能力 | JLPT N1またはN2取得 | 15点 |
| 大学加算 | 世界300位以内・SGU対象校等 | 10点 |
絶対に守らなければならない年収の最低基準
ポイントの計算以前に、高度専門・技術活動および高度経営・管理活動では年収300万円が絶対条件です。この金額に達しない場合、他の項目でどれだけ高得点を取っても高度専門職の認定を受けることができません。
注意:年収300万円は「ポイントが加算される最低ライン」ではなく「申請できる最低年収」です。年収300万円台ではポイントの年収加算は0点となりますが、申請資格そのものは失いません。年収加算でポイントを稼ぐには、より高い年収が必要です。
年収以外でポイントを稼ぐ方法
年収が低くても以下の項目でポイントを積み上げることができます。
- JLPT N1取得:15点加算(外国人にとって大きなアドバンテージ)
- 修士・博士号:学術研究活動なら最大30点(理工系博士で優位)
- 学術論文・特許:3本以上の論文掲載で最大25点
- 国家戦略特区の対象自治体での勤務:東京・京都・福岡などで追加ポイント
- 若年者加算:29歳以下で15点、34歳以下で10点(年収の低い若手に有利)
J-Skip(特別高度人材制度)とは?通常の高度専門職との違い
2023年4月に導入された「J-Skip(特別高度人材制度)」は、ポイント制とは別のルートで、特に高収入・高スキルな外国人材を優遇する制度です。年収の高い外国人材にとって、J-Skipを活用することで永住申請の大幅な短縮が可能になります。
J-Skipの対象となる要件
| 活動区分 | 要件① | 要件② | 年収要件 |
|---|---|---|---|
| 学術研究・専門・技術活動 | 修士号以上 | 当該分野10年以上の職歴 | 年収2,000万円以上 |
| 経営・管理活動 | 5年以上の経営・管理職経歴 | — | 年収4,000万円以上 |
J-Skipを取得した場合の優遇措置
J-Skipに認定されると、通常の高度専門職とは比較にならないほど早く永住申請ができます。
- 高度専門職2号への移行:1年で取得可能(通常は3年以上)
- 永住申請:1年で申請可能(通常は10年、高度専門職80点以上でも1年)
- 配偶者の就労制限なし
- 家事使用人の帯同が可能
ポイント:J-Skipは年収が非常に高い外国人材向けです。一般的な外国人社員(年収500万〜800万円程度)にはポイント制の80点以上ルートが現実的です。しかし外資系企業の役員クラスや高度IT人材でJ-Skipを活用できるケースもありますので、行政書士への相談をお勧めします。
2027年4月改定で変わる永住申請ルート
現行制度では、高度専門職ビザを取得してから永住申請できるまでの期間は、ポイントに応じて3段階に分かれています。しかし2027年4月以降、この仕組みが大きく変わります。
現行の永住申請ルート(3段階)
| ポイント | 申請可能時期 | ルート名 |
|---|---|---|
| 80点以上 | 1年後に申請可能 | 1年ルート |
| 70〜79点 | 3年後に申請可能 | 3年ルート(★廃止予定) |
| 70点未満 | 10年後に申請可能 | 一般ルート |
2027年4月以降の新ルート
2026年1月23日の閣議決定「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」において、ポイント加算項目の見直しと制度の適正化が決定されました。その結果、現行の3年ルートは2027年3月末で廃止となり、2027年4月以降は以下のルートに再編される見通しです。
| ポイント | 2027年4月以降の申請可能時期 | 変化 |
|---|---|---|
| 80点以上 | 1年後に申請可能(継続) | 変化なし |
| 70〜79点 | 5年後に申請可能(新ルート) | 3年→5年に延長 |
| 70点未満 | 10年後に申請可能(継続) | 変化なし |
重要:現在ポイントが70〜79点の外国人材が3年ルートを使いたい場合、2027年3月末までに永住申請を完了させる必要があります。つまり、2024年4月以降に高度専門職1号を取得していれば3年ルートで申請できる可能性がありますが、2024年3月以前の取得者は既に3年を経過している場合があります。現在の在留状況を確認することが急務です。
改定の背景と政策的意図
政府が3年ルートを廃止する背景には、「形式的に70点を超えるだけの人材よりも、より高いスキル・貢献度を持つ人材(80点以上)を優遇したい」という政策的意図があります。また、ポイント計算の加算項目そのものも見直され、実態に即した評価へと改めていく方針です。
ポイント帯別・永住申請への影響シミュレーション
2027年改定の影響は、外国人社員の現在のポイントによって大きく異なります。人事担当者として把握しておくべきポイント帯別の影響を整理します。
80点以上の方:影響なし・現状維持
高度専門職1号の取得から1年後に永住申請できる1年ルートは2027年改定後も継続されます。ただし、80点をギリギリ超えているケースでは、転職や年収変動によって点数が変わるリスクがあるため、継続的なポイント管理が重要です。
70〜79点の方:3年→5年に延長・早期対応が重要
最も大きな影響を受けるのがこのポイント帯です。現行では高度専門職1号取得から3年で永住申請できますが、2027年4月以降は5年になります。この差は2年です。
対応策として考えられること:
- 2027年3月末までに申請できるよう逆算する:現在高度専門職1号を持っており、取得から3年以内(または3年経過直前)であれば今すぐ申請準備を開始
- 80点以上を目指してポイントを引き上げる:日本語能力試験の取得、職歴の積み増し、昇給交渉などで80点超えを目指す
- 行政書士に現在のポイントを正確に計算してもらう:自己判断での申請には誤りが生じやすいため、専門家による確認が重要
70点未満の方:現行ルートへの変更なし
70点未満の外国人材は現行でも一般の就労ビザと同じ10年ルートのため、2027年の改定による直接的な影響はありません。ただし、高度専門職の取得を目指しているなら、まずポイント70点以上を目標にしながら、80点超えを狙うことで将来的な永住申請の早期化が期待できます。
企業HR担当者が今すぐ取るべき対応
2027年4月の改定は、外国人材を雇用する企業にとって人事戦略に直接影響する問題です。今すぐ確認すべきことと、行動すべき優先度について整理します。
STEP1:外国人社員全員のポイント状況を把握する
まず、自社の外国人社員が高度専門職ビザを持っているか、または取得できる状況にあるかを確認してください。特に以下の点を確認します。
- 現在の在留資格(高度専門職1号であるか、技術・人文知識・国際業務などの就労ビザか)
- 現在のポイント試算結果(高度専門職1号の認定を受けているか否か)
- 高度専門職1号の認定を受けている場合、認定日はいつか(3年ルートが使える残り期間の計算)
STEP2:年収設定・昇給計画の見直し
ポイント制において年収は最も大きな変数の一つです。現在の年収で70点、80点に到達するかを確認し、昇給によってポイントを引き上げられないかを検討してください。特に70〜79点に留まっている社員を80点以上に引き上げることで、2027年改定の影響を回避できます。
STEP3:2026〜2027年度の申請スケジュールを立てる
永住申請は在留期間が実際に経過してからしか行えません。高度専門職1号の取得日を起算点として、3年ルート(2027年3月末まで)や1年ルートの申請が可能な時期を逆算し、書類準備を早めに開始することが重要です。行政書士への相談は書類収集から申請まで3〜6か月程度のリードタイムを想定して早めに動きましょう。
行政書士への相談タイミングとよくある質問
高度人材ポイント制は計算が複雑で、転職・昇給・学歴評価・資格取得など様々な変数が絡み合います。2027年の改定を前に、以下のようなケースに当てはまる方はお早めにご相談ください。
こんな方は今すぐご相談ください
- 外国人社員が「高度専門職1号を取得してから3年近くなっている」と思われる方
- ポイント計算をしたことがなく、現在の在留資格で申請できるか不明な方
- 外国人社員の年収が300〜600万円程度で、70点に届くか不明な方
- 転職後に在留資格の変更申請が必要かどうか迷っている方
- J-Skipを活用できる年収・経歴の外国人材を採用している企業の担当者
よくある質問
Q1:ポイントが68点しかないのですが、2点足りなくて…
A:日本語能力試験(JLPT)N2以上を取得することで15点加算されます。また、職歴年数が増える・昇給するなど時間とともに自然にポイントが上がるケースもあります。行政書士による正確なポイント試算を行い、どの項目で不足を補えるかを戦略的に検討しましょう。
Q2:転職後にポイントが下がるのでは?
A:転職先での年収が下がる場合、年収に関わるポイントが減少する可能性があります。また、職種が変わる場合は「高度専門・技術活動」の認定が取り消されることもあります。転職の際は事前に行政書士に相談し、新しい職場でも高度専門職の認定が維持できるかを確認することを強くお勧めします。
Q3:3年ルートが廃止されても、永住自体はできるのですか?
A:3年ルートが廃止されても、永住申請そのものがなくなるわけではありません。ポイント70〜79点の方は5年の在留期間を経てから申請できるようになります。ただし申請時に「素行善良要件」「納税要件」「生活安定要件」なども満たす必要があります。2027年以降も永住への道は開かれていますが、早期に申請したい方は3年ルートが廃止される前の対応が鍵になります。
Q4:会社が申請費用を負担してもいいですか?
A:永住申請の費用は本人負担が原則ですが、企業が福利厚生として行政書士費用を補助する制度を設けているケースも増えています。特に高度人材の定着・確保を重視する企業では、永住取得支援を人材戦略の一環として位置づけることが有効です。
高度人材ポイント制の2027年改定は、優秀な外国人材の永住定着に直接影響する重要な制度変更です。ビザ更新のたびに場当たり的に対処するのではなく、今から長期的な在留計画を立てることが企業・本人双方のためになります。当事務所ではポイント計算の無料試算から申請書類の作成・提出代理まで一貫してサポートしています。まずはお気軽にお問い合わせください。


