「技能実習2号が修了する前に特定技能へ移行させたいが、何から手をつければいいのかわからない」
「建設業での特定技能移行は他の業種と違うと聞いたが、どこが違うのか具体的に知りたい」
建設業の人手不足は年々深刻化しており、長年かけて育成した技能実習生を特定技能として継続雇用することは、今や多くの建設会社にとって最重要課題となっています。しかし、建設業の特定技能移行には他の分野にはない独自の要件があり、準備不足のまま手続きを進めると在留期限切れというリスクも生じます。
この記事では、建設業の企業担当者に向けて以下のポイントを詳しく解説します。
- 建設業特有の4大必須条件(CCUS・JAC・受入計画認定・建設業許可)
- 技能実習2号修了者が試験免除で移行できる条件と職種対応表
- 修了6ヶ月前から始める移行手続きの完全フロー
2027年4月に育成就労制度が施行される前に、現行ルートで確実に移行を完了させるための実務知識をお伝えします。
なぜ今、技能実習から特定技能への移行が急務なのか
建設業が直面する深刻な人手不足
建設業の就業者数はピーク時(1997年)の685万人から、2022年時点では479万人にまで減少しています。約30%もの減少です。さらに深刻なのは年齢構成の偏りで、60歳以上の技能者が全体の約25.7%を占め、今後10年以内に大半が引退を迎えます。一方、29歳以下の若手は全体のわずか12%にとどまっています。
国土交通省の試算では、2025年時点で建設業界の労働人口が約90万人不足するとされています。こうした背景から、特定技能建設の在留者数は2025年6月末時点で43,599人(全16分野中4位)に達しており、政府が設定した受入目標は2024〜2028年度の5年間で80,000人にのぼります。
技能実習生という「即戦力」を手放すリスク
技能実習2号の修了後に特定技能へ移行せず帰国させてしまうと、3〜5年間かけて育てた即戦力を失うことになります。新たな外国人材を採用する場合、言語習得・現場ルール・安全教育など、一から教育し直す必要があります。
特定技能へ移行すれば、日本語能力・現場スキル・社内ルールを熟知した人材として最長5年間(特定技能1号)、さらに特定技能2号へ移行すれば上限なく継続雇用できます。建設業の2号移行は2023年から本格開始されており、長期的な戦力として活躍できます。
2027年4月の制度転換が迫っている
2024年6月に改正入管法が公布され、技能実習制度を廃止して「育成就労制度」へ移行することが決定しました。施行日は2027年4月1日です。2027年3月31日以前に入国した技能実習生には現行の技能実習制度が適用されますが、施行後の新規受入れは育成就労制度に一本化されます。
つまり、現在技能実習中の外国人を特定技能へ移行させるなら、現行の移行ルートが使えるうちに手続きを進めることが最善策です。
建設業特有の4大必須条件を理解する
建設分野の特定技能は、他の14分野にはない独自の義務的要件が4つあります。これらをすべて満たさなければ特定技能外国人を受け入れることができません。
条件1:建設業許可の保有
受入企業が建設業法第3条に基づく建設業許可を保有していることが必須要件です。許可番号は国土交通省への受入計画認定申請書に記載します。許可を保有していない場合は特定技能建設の受入れができないため、まず自社の許可状況を確認してください。
条件2:CCUSへの事業者・技能者登録
建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録は、事業者登録と技能者登録の両方が義務となっています。
| 登録種別 | 費用(初年度) | 所要期間 |
|---|---|---|
| 事業者登録 | 6,000〜240,000円(資本金規模による)+管理者ID 11,400円/年 | 1〜2ヶ月 |
| 技能者登録(簡略型) | 2,500円 | 1〜2ヶ月 |
注意: CCUS登録には1〜2ヶ月かかります。移行を決断したと同時に着手しなければ、受入計画認定申請が間に合わなくなります。技能実習修了の6ヶ月以上前に着手してください。
条件3:JAC(建設技能人材機構)への加入
建設分野では民間の有料職業紹介事業者の介在が禁止されており、JACが無料職業紹介を担っています。加入方法は2通りあります。
| 加入方法 | 内容 | 費用 |
|---|---|---|
| 正規会員団体経由(間接加入) | JACの正会員53団体のいずれかに加入 | 団体会費のみ(例:全中連の場合、年48,000円) |
| 賛助会員(直接加入) | JACへ直接加入 | 年会費240,000円 |
加入方法に関わらず、特定技能外国人1人につき月額12,500円(年額150,000円)の受入負担金が共通してかかります(2024年7月から一律化)。
条件4:国土交通省の建設特定技能受入計画認定
他の特定技能分野にはない、建設業独自の手続きです。国土交通省(各地方整備局)の外国人就労管理システムを通じてオンライン申請を行い、認定証を取得する必要があります。認定の主な基準は以下のとおりです。
- 建設業許可を保有していること
- CCUSへの事業者登録が完了していること
- JAC加入済みであること
- 申請前5年間に建設業法の監督処分を受けていないこと
- 同職種の日本人と同等以上の報酬を設定していること
- 同職種の日本人正社員求人をハローワークで行っていること
- JACによる巡回指導(年1〜2回)を受け入れること
技能試験・日本語試験が免除される条件
技能実習2号良好修了者の特例
技能実習2号(または3号)を「良好に」修了した外国人は、特定技能の技能試験と日本語試験の両方が免除されます。「良好に修了」とは、次の条件を満たすことを指します。
- 2年10ヶ月以上の実習を修了していること
- 技能検定3級もしくは技能実習評価試験専門級の実技試験に合格、または評価調書で勤務状況が良好と認められること
- 従事しようとする業務が技能実習の職種・作業と関連性が認められること
ポイント: 技能実習3号の途中段階では移行申請はできません。3号の実習計画を修了してから在留資格変更申請を行う必要があります。
建設分野3区分と対応する技能実習職種
2022年8月の業務区分再編により、建設分野の特定技能は19職種から「土木」「建築」「ライフライン・設備」の3区分に整理されました。技能実習の職種が以下の区分に対応していれば、同区分の特定技能として移行できます。
| 特定技能区分 | 移行可能な主な技能実習職種 |
|---|---|
| 土木区分 | とび、型枠施工、鉄筋施工、建設機械施工、コンクリート圧送施工、ウェルポイント施工、塗装、溶接、鉄工 |
| 建築区分 | とび、建築大工、型枠施工、鉄筋施工、左官、内装仕上げ施工、タイル張り、防水施工、石材施工、かわらぶき、サッシ施工、表装、塗装、溶接、建築板金 など |
| ライフライン・設備区分 | 配管、建築板金、冷凍空気調和機器施工、熱絶縁施工、溶接 |
「とび」「型枠施工」「鉄筋施工」「塗装」「溶接」は複数区分に対応しており、移行後の就労範囲が広がるメリットがあります。
免除が認められない場合の対応
技能実習の職種と特定技能の区分に関連性が認められない場合は、技能試験の受験が必要です。ただし、技能実習2号を修了している場合は日本語試験は免除されます(技能試験のみ受験)。建設分野特定技能1号評価試験(土木・建築・ライフライン設備の3区分)に合格すれば移行可能です。
移行手続きの完全フロー(修了6ヶ月前から)
建設業での移行手続きは複数の機関への申請が並行して走るため、技能実習修了の6ヶ月前から動き始めることが鉄則です。
ステップ1:準備段階(修了の6ヶ月前〜)
- CCUSへの事業者登録・技能者登録申請(1〜2ヶ月要するため最優先で着手)
- JAC加入手続き(正規会員団体または賛助会員)
- 同等報酬の根拠書類整備(同一職種の日本人社員の賃金台帳、就業規則)
- ハローワーク求人票の作成・掲載(申請から直近1年以内のものが必要)
- 技能実習修了証明書・評価調書の取得(監理団体・実習実施者に依頼)
ステップ2:受入計画認定申請(修了の4〜6ヶ月前)
CCUSおよびJAC加入が完了したら、国土交通省の外国人就労管理システムでオンライン申請を行います。審査期間は1.5〜2ヶ月(補正期間除く)かかります。
主な提出書類は以下のとおりです。
- 建設特定技能受入計画書(オンライン入力)
- 登記事項証明書(3ヶ月以内発行)
- 建設業許可証の写し
- CCUS事業者ID確認書類
- JAC会員証または会員証明書
- ハローワーク求人票(直近1年以内)
- 特定技能雇用契約書・雇用条件書
- 同等技能を有する日本人の賃金台帳
- 就業規則・賃金規程(労基署提出分の写し)・36協定
ステップ3:在留資格変更許可申請(修了の2〜3ヶ月前)
国交省の受入計画認定証が取得できたら、出入国在留管理庁へ在留資格変更許可申請を行います。申請はオンラインまたは就労地管轄の地方出入国在留管理局窓口で可能です。
技能実習2号良好修了者向けの主な提出書類は以下のとおりです。
- 在留資格変更許可申請書
- パスポート・在留カード
- 技能実習修了証明書
- 技能検定3級合格証明書または技能実習評価試験専門級合格証明書(または評価調書)
- 建設特定技能受入計画認定証の写し
- 雇用契約書・雇用条件書
- 健康診断結果証明書
- 支援計画書
ステップ4:就労開始
在留資格変更許可後は、生活オリエンテーション(義務的支援)を受講してから就労を開始します。CCUSカードを携帯して現場入場を行います。なお、特定技能外国人の受入人数には上限があり、自社常勤職員数(社会保険加入の正社員)を超えての受入れは不可です。
給与・待遇の設定で押さえるべきポイント
同等報酬要件と月給制の義務
特定技能建設では、同等の技能を持つ日本人技能者と同等以上の月給を設定することが義務づけられています。また、給与の支払い方法は月給制・口座振込が必須です。技能実習時代に日給制を採用していた場合は、就業規則・賃金規程の改訂が必要になります。
注意: 月給の「固定的な賃金部分」が比較対象となります。残業代・通勤手当などの変動部分は含みません。基本給+固定手当の水準を日本人社員と同等以上に設定してください。
比較対象となる日本人がいない場合の対処
同一職種の日本人社員がいない場合は、以下の資料を根拠として説明します。
- 就業規則・賃金規程に記載された職種・等級別の賃金テーブル
- 国土交通省が公表する「設計労務単価」(職種別・地域別の公示単価)
- 厚生労働省の賃金構造基本統計調査における同職種の平均賃金
受入人数の上限ルール
建設分野では、特定技能(1号・2号)と特定活動(建設業)で就労する外国人の合計が、受入企業の常勤職員数を超えてはなりません。常勤職員とは自社の社会保険加入正社員を指し、技能実習生・下請け社員は含みません。大規模な受入れを計画している場合は、事前に自社の常勤職員数を確認してください。
育成就労制度施行前に移行を完了させる戦略
2026年現在、まだ現行ルートで移行できる
2026年3月現在、技能実習制度はまだ稼働中です。育成就労制度の施行は2027年4月1日であり、それまでの間は現行の技能実習2号修了→特定技能1号への移行ルートが有効です。今まさに技能実習2号に在籍している外国人を抱える企業は、この現行ルートを活用する絶好のタイミングにあります。
現在の技能実習生への経過措置
2027年3月31日以前に入国した技能実習生は、現行の技能実習制度が適用されます。技能実習2号・3号への移行も現行ルールで行われます。現在の技能実習生が育成就労に在留資格変更することは原則できません。したがって、在籍中の技能実習生の移行先は、現行の特定技能1号への在留資格変更が基本ルートとなります。
2027年以降の新規受入れはどうなる?
2027年4月以降に新規で外国人を受け入れる場合は、育成就労制度での受入れとなります。育成就労は原則3年間で、特定技能1号への移行を前提とした制度です。建設分野は転籍制限期間が2年(他の10分野は1年)と長めに設定されています。
企業が今取るべき対応:
- 現在技能実習2号在籍中 → 修了6ヶ月前から特定技能移行手続きを開始
- 2026年以降に技能実習開始 → 2029年以降に技能実習2号修了予定。経過措置の範囲内で特定技能へ移行可能
- 2027年4月以降の新規受入れ → 育成就労制度での受入れ開始(手続きの準備を今から進める)
よくある失敗パターンと費用の実態
7つの落とし穴と対策
| 失敗パターン | 対策 |
|---|---|
| CCUSの登録が遅れて受入計画認定に間に合わない | 移行決断と同時にCCUS申請着手(6ヶ月以上前) |
| 在留期限切れ後に申請してしまう | 在留期限切れ前に申請。間に合わない場合は特定活動(6ヶ月・就労可)へ変更で救済 |
| 職種の関連性を確認せず試験免除を想定していた | 業務区分対応表で事前確認。関連性がない場合は技能試験受験が必要 |
| 給与体系が日給制のまま申請 | 就業規則・賃金規程を月給制に改訂してから申請 |
| ハローワーク求人票の有効期限切れ | 申請日から1年以内のものを維持・更新する |
| 技能実習3号途中段階で移行申請しようとした | 3号の実習計画を修了してから申請 |
| 受入人数が常勤職員数を超えていた | 事前に自社の社会保険加入正社員数を確認 |
移行時の費用目安(1人あたり)
| 費用項目 | 目安金額 |
|---|---|
| 国交省受入計画認定申請(行政書士委託) | 5〜10万円 |
| 在留資格変更申請(行政書士委託) | 9〜20万円 |
| CCUS技能者登録(簡略型) | 2,500円 |
| 健康診断費用 | 1〜3万円 |
| 合計目安 | 15〜33万円程度 |
技能実習継続vs特定技能移行のコスト比較
| 比較項目 | 技能実習3号継続 | 特定技能1号移行 |
|---|---|---|
| 監理費 | 月額25,000〜50,000円/人 | なし |
| JAC受入負担金 | なし | 月額12,500円/人 |
| 給与水準 | 最低賃金以上 | 日本人同等以上(高め) |
| 転職自由度 | 原則不可 | 同一分野内は可 |
| 5年間の管理費用(概算) | 150〜300万円/人 | 75〜113万円/人(JAC負担金のみ) |
監理費がなくなる分、管理コストは特定技能の方が大幅に削減できます。給与水準は上がりますが、長期的に定着する即戦力として活躍してもらえることを考えれば、総合的なコストパフォーマンスは特定技能移行の方が優れているケースが多いでしょう。
まとめ:移行成功のカギは「6ヶ月前からの逆算」
建設業における技能実習から特定技能への移行は、他の分野にはないCCUS登録・JAC加入・受入計画認定という3重の事前準備が必要です。これらの手続きが重なるため、技能実習修了の6ヶ月前から逆算して動き始めることが最大のポイントです。
特に重要なポイントをまとめます。
- CCUSの登録は1〜2ヶ月かかるため、移行決断と同時に着手する
- 技能実習2号良好修了者は技能試験・日本語試験が免除(職種の関連性は事前確認必須)
- 給与は月給制・口座振込に変更し、日本人同等以上に設定する
- 2027年4月の育成就労制度施行前に、現行ルートで移行を完了させる
- 移行コストは行政書士費用込みで1人あたり15〜33万円が目安
手続きの複雑さから自社対応が難しいと感じる場合は、建設業の特定技能に精通した行政書士や登録支援機関に依頼することも選択肢の一つです。MIRAI行政書士事務所では、建設分野の特定技能移行手続きをワンストップでサポートしています。まずはお気軽にご相談ください。



