「特定技能での採用を計画していたのに、業種の受入枠が埋まりそうで焦っています…」
2026年1月23日、政府は特定技能と育成就労を合わせた外国人労働者の受入上限を計123万1900人(2028年度末まで)とする方針を閣議決定しました。2027年4月には育成就労制度が本格スタートし、業種ごとに数値目標が設定される受入割当制の枠組みが動き始めます。
- 2026年1月閣議決定:123万人受入上限の全体像と業種別内訳
- 育成就労制度の2027年4月開始と数値目標の仕組み
- 地域偏在対策・都市部集中制限が企業採用に与える影響
- 枠が埋まる前に企業がすべき採用戦略と行政書士の活用ポイント
今後の外国人材採用を計画している企業HR担当者・登録支援機関の方に向けた実務解説です。
外国人労働者受入れ数値目標制度とは?2026年1月閣議決定の全体像
日本政府は2026年1月23日の閣議決定により、特定技能と育成就労制度を通じた外国人労働者の受入れ上限数を業種ごとに設定する「数値目標制度」を正式に打ち出しました。これは実質的な業種別割当制であり、企業の採用計画に直結する制度変更です。
閣議決定の内訳:特定技能と育成就労
今回の閣議決定における2028年度末までの受入上限は以下の通りです。
| 制度 | 受入上限数 | 対象分野数 | 開始時期 |
|---|---|---|---|
| 特定技能1号 | 80万5,700人 | 19分野 | 既施行中(2019年〜) |
| 育成就労 | 42万6,200人 | 17分野 | 2027年4月〜 |
| 合計 | 123万1,900人 | — | 〜2028年度末 |
なぜ数値目標が設定されたのか
数値目標は「業界の人手不足数」から「生産性向上・国内人材確保で対応できる数」を差し引いた値として算出されています。つまり、生産性改善の努力なしに単純に外国人材に頼るのではなく、産業全体の改革と並行して外国人材受入れを進めるという政府の方針が反映されています。
5年サイクルの見直し制度
今回の数値目標は2028年度末までの約2年間の目標ですが、今後は5年サイクルで定期的に見直される見通しです。経済状況や産業別の労働需給の変化に応じて、上限数が増減する可能性があります。企業は常に最新の閣議決定・告示を確認し、計画的に採用枠を確保することが求められます。
主要業種別の受入上限一覧と新規追加3分野
今回の閣議決定により、特定技能の対象分野は19分野に拡大されました(2026年1月に3分野追加)。業種別の受入上限数は企業の採用戦略に直接関わるため、自社の属する業界の枠を正確に把握することが重要です。
主要業種の受入上限数(特定技能1号)
| 業種・分野 | 特定技能1号 | 育成就労 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 工業製品製造業 | 20万人 | 12万人 | 32万人 |
| 建設業 | 約20万人 | 含む | 約20万人 |
| 飲食料品製造業 | 約20万人 | 含む | 約20万人 |
| 介護 | 13万5,000人 | 含む | 約14万人 |
| 農業 | 6万9,000人 | 含む | 約7万人 |
2026年1月に新規追加された3分野
2026年1月の閣議決定で特定技能の対象業種に新たに3分野が加わりました。
- リネンサプライ:ホテル・病院向けのリネン類クリーニング・供給業務
- 物流倉庫:倉庫内での仕分け・ピッキング・荷役業務
- 資源循環:廃棄物処理・リサイクル関連業務
これらの新分野はまだ受入実績が少なく、初期の申請競争が比較的少ない状況にあります。該当業種の企業は、枠が充分ある今のうちに早期に申請体制を整えることが有利です。
業種別上限の意味:枠が埋まると受入停止
注意:業種別の受入上限に近づいた場合、出入国在留管理庁は当該分野への新規在留資格認定証明書の交付を停止することがあります。過去の特定技能制度でも一部分野で交付停止措置が取られた前例があるため、「枠があるうちに動く」ことが企業採用の鉄則です。
2027年4月スタート:育成就労制度と数値目標の組み合わせ
2027年4月、技能実習制度に代わる「育成就労制度」が施行されます。育成就労は原則3年間の就労を通じて特定技能1号取得を目指す制度で、今回の数値目標制度と組み合わせることで、より計画的な人材確保が可能になります。
育成就労制度の概要(2027年4月施行)
- 目的:技能実習制度を廃止し、外国人材の「育成」と「就労」を正面から認める新制度
- 在留期間:原則3年間(特定技能1号取得後は最長5年、2号取得後は無期限)
- 転職の自由化:1年以上在籍後、同分野内での転職が可能(技能実習では原則禁止だった)
- 受入上限:17分野で42万6,200人(2028年度末まで)
- 監理支援機関:従来の監理団体が移行・改組した機関が企業のサポートを担う
育成就労から特定技能へのキャリアパス
育成就労で3年間就労し、技能評価試験と日本語能力試験(N4以上)をクリアすることで、特定技能1号への在留資格変更が可能になります。企業側は「育成就労で採用→特定技能1号で長期定着」という戦略を立てられます。このルートを活用することで、数値目標の枠を効率的に使いながら長期的な人材確保が実現します。
技能実習からの移行措置
2027年4月の育成就労施行後も、既存の技能実習生は一定期間(原則3年間)は技能実習の在留資格のまま就労を継続できます。企業は焦って在留資格変更を行う必要はありませんが、2030年以降に向けた移行計画を早めに策定しておくことが望ましいです。
地域偏在対策と都市部集中制限の実務的影響
数値目標制度の一環として、外国人労働者の大都市圏への集中を防ぐ「地域偏在対策」が同時に導入されています。これは特に育成就労の転職に関して、東京・大阪などの都市部への移動に制限を設ける内容です。
転職制限:都市部在籍者の6分の1ルール
政府方針では、都市部(東京・大阪・名古屋等の大都市圏)に在籍する育成就労外国人のうち、転職者(他社・他地域から移ってきた者)が占める割合を6分の1以下に制限するとされています。
- 地方企業に採用された育成就労者が都市部企業へ転職しようとしても、都市部の受入枠が制限される
- 都市部の企業は「転職者」としての受入れが制限されるため、地方からの人材獲得競争が難しくなる
- 地方・中小企業にとっては、都市部への人材流出を制度的に抑える効果がある
地方企業・中小企業への影響
ポイント:地域偏在対策は地方・中小企業にとって有利な側面もあります。大都市圏の大企業が転職によって人材を引き抜きにくくなるため、地方で採用・育成した外国人材を長期的に確保しやすくなります。ただし、転職制限は労働者の権利との兼ね合いもあり、制度運用の詳細は引き続き注意が必要です。
対象地域と制限の運用
転職制限の対象となる「都市部」の具体的な定義は、告示・運用要領で定められる予定です。現時点では東京圏・大阪圏・名古屋圏等の大都市圏が対象になる見込みです。地方の特定技能・育成就労の求人は引き続き豊富に出ており、地方採用を検討している企業にとってはむしろ好機といえます。
枠が埋まる前に企業がすべき採用準備と申請戦略
業種別の数値目標が設定された今、「まだ枠があるから大丈夫」という受け身の姿勢は危険です。受入上限に近づけば新規申請が止まる可能性があり、早期に採用体制を整えた企業が有利になります。
STEP1:自社業種の現在の利用状況を把握する
出入国在留管理庁は業種別の在留資格認定証明書交付数を定期的に公表しています。自社の業種がどの程度の枠を使用しているかを確認し、残り枠の余裕度を把握してください。
- 出入国在留管理庁の「在留外国人統計」「特定技能受入状況」を四半期ごとにチェックする
- 残り枠が少ない業種では申請を急ぐ必要があり、余裕のある業種は中期的計画を立てる
- 新規追加3分野(リネンサプライ・物流倉庫・資源循環)は現時点では枠に余裕がある
STEP2:採用チャネルを複数確保する
特定技能だけに頼った採用戦略は、枠の逼迫時に大きなリスクになります。複数のチャネルを平行して活用することが重要です。
- 特定技能1号:即戦力の専門人材向け。技能試験・日本語試験の合格が必要
- 育成就労(2027年4月〜):未経験者を3年で育成するルート。技能実習の代替として活用
- 技人国ビザ:大卒以上の専門職向け。特定技能・育成就労の数値目標外で採用できる
- 留学生の卒業後採用:日本語能力が高く、文化的適応が早い傾向あり
STEP3:受入体制の早期整備
特定技能・育成就労での受入れには、社内の支援体制(日本語学習支援・住居確保・生活オリエンテーションなど)の整備が必要です。また、登録支援機関を活用することで、これらの義務的支援を外部委託できます。受入体制が整っていない状態で申請しても、後から書類不備や実地調査でのNGが出るリスクがあります。
特定技能1号・2号・育成就労の選択基準と企業の優先順位
数値目標制度の下で、企業はどの在留資格を優先して活用すべきかを明確にする必要があります。各制度の特徴を比較し、自社の業種・雇用規模・長期計画に合わせた優先順位を設定しましょう。
特定技能1号・2号・育成就労の3制度比較
| 比較項目 | 育成就労 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
|---|---|---|---|
| 在留期間 | 3年(上限) | 最長5年 | 無制限(更新継続) |
| 家族帯同 | 不可 | 不可 | 可 |
| 転職の自由度 | 1年後に同分野内可 | 同分野内は自由 | 同分野内は自由 |
| 必要な試験 | 入国前の日本語・職業適性確認 | 技能試験+日本語N4以上 | 上位技能試験(分野別) |
| 数値目標枠 | 42万6,200人以内 | 80万5,700人以内 | 上限なし |
業種・規模別の選択基準
- 即戦力が必要な場合:特定技能1号が最適。技能試験合格者はすぐに業務貢献できる
- 未経験者を長期育成したい場合:育成就労を活用し、3年後に特定技能1号に移行させる計画を立てる
- 幹部候補・長期定着を目指す場合:特定技能2号で家族帯同も可能にし、永住への道も開く
- 大企業・製造業:数値目標の業種枠が大きいため、複数ルートの並行活用が可能
- 中小・地方企業:育成就労+地域偏在対策の有利な側面を活かし、長期雇用計画を立てる
数値目標が埋まった場合の代替戦略
特定技能や育成就労の業種枠が満杯になった場合でも、技術・人文知識・国際業務ビザ(技人国)や特定活動46号(本邦大学卒業者)など、数値目標の枠外で採用できる在留資格があります。業種・職種によっては技人国ビザが最適な選択肢となるケースも少なくありません。行政書士に相談し、複数の選択肢を比較検討することをお勧めします。
行政書士のサポートとよくある質問
数値目標制度の導入により、外国人材の採用計画はより戦略的・計画的なアプローチが求められます。以下のような状況に当てはまる企業は、早めに行政書士への相談をお勧めします。
こんな企業は特にご相談を
- 特定技能・育成就労での採用を初めて検討しており、どの制度が自社に合うかわからない
- 現在の技能実習生を2027年以降に育成就労または特定技能へ移行させたい
- 自社業種の受入枠がどの程度残っているか把握したい
- 地方で採用した外国人材が都市部に転職しないよう対策を立てたい
- 複数の在留資格を組み合わせた採用計画を作りたい
- 過去に申請書類で不備が指摘され、今後の申請に不安がある
よくある質問
Q1:育成就労の受入上限42万人は、技能実習と比べて多いですか?少ないですか?
A:2023年度の技能実習の在留者数は約36万人でした。育成就労の2年間(2027〜2028年度)の上限42万6,200人はこれを上回る水準です。ただし、育成就労は転職が認められるため、同一企業で雇用継続できる人数は技能実習より流動的になる可能性があります。長期定着を前提とした採用計画は慎重に立てる必要があります。
Q2:特定技能の「枠が埋まる」という状況は実際に起きていますか?
A:はい、過去に建設分野で一時的に在留資格認定証明書の交付が停止される事例が発生しています。現時点では多くの分野で枠に余裕がありますが、2027年以降に育成就労が本格化すると、人気の高い分野では枠の競争が激化する可能性があります。早期申請と中長期の採用計画が重要です。
Q3:物流倉庫分野で特定技能を採用したいのですが、まだ申請できますか?
A:2026年1月の閣議決定で物流倉庫分野が特定技能の対象に追加されましたが、技能評価試験の実施体制や詳細な運用要領が整備されている段階です。申請受付開始のタイミングは業所管省庁のガイドラインに従う必要があります。現時点での申請可否・必要書類等は行政書士にご確認ください。
Q4:育成就労の監理支援機関はどこに依頼すればよいですか?
A:監理支援機関は2027年4月の育成就労制度施行に向けて、既存の監理団体が改組・新規設立しています。許可を受けた監理支援機関のリストは出入国在留管理庁・厚生労働省から公表される予定です。信頼できる機関の選定には行政書士のネットワークを活用することも一つの方法です。当事務所でも連携先のご紹介が可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
外国人労働者の受入れ数値目標制度は、企業にとって「枠が決まっているからこそ早期行動が有利」という新しい競争環境を生み出しています。採用計画の策定から申請書類の準備・監理支援機関の選定まで、一貫したサポートをご提供しています。まずはお気軽にご相談ください。



