2028年在留カード偽造防止技術強化|ICチップ情報拡充と生体認証

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「在留カードを確認しているつもりだったのに、あとで偽造だったと発覚した…」 外国人を雇用する企業にとって、在留カードの真正性確認は「当然やっている」と思っていても、実は確認が不十分なケースが後を絶ちません。2021年には年間517件の偽造在留カード関連事件が検挙され、1人の業者が半年間で3,000枚以上の偽造カードを製造・販売していた事例も発覚しています。 企業が対応すべき変化を整理すると、 ・2026年6月14日開始の特定在留カード(マイナンバー一体型)への対応 ・ICチップ読み取りを必須とした確認フローの整備 ・2028年以降に想定される生体認証データ拡充への準備 が喫緊の課題となっています。 本記事では、在留カードのICチップ技術・生体認証強化の最新動向から、偽造カードの見分け方、企業に課される確認義務と罰則まで、行政書士の視点から専門的に解説します。

在留カード偽造の現状と企業が直面するリスク

在留カードのICチップをスマートフォンで読み取り確認する人事担当者

偽造在留カードの急増と手口の高度化

出入国在留管理庁の統計によると、在留カード偽造関連の検挙件数は2013年から2020年の7年間で7倍以上に増加しました。2021年の検挙件数は517件に達しており、不法就労の温床として深刻な社会問題となっています。

特に問題なのが、製造・販売の商業化です。埼玉県内のマンションに拠点を構えた業者が、SNSや口コミを通じて顧客を募り、全国に郵送するビジネスモデルで半年間に3,000枚超の偽造カードを流通させていた事案も摘発されています。価格は1枚1,000円程度と安価であり、需要側の心理的ハードルも低い状況です。

企業が「知らなかった」では済まない法的現実

不法就労助長罪(入管法第73条の2)は、「外国人が不法就労であることを知らなかった場合でも、過失があれば処罰を免れない」という厳格な規定です。つまり、確認が不十分だったという「過失」が問われます。

裁判所が過失の有無を判断する際に見るのは、以下の点です。

  • 在留カードの原本確認を行ったか
  • ホログラムなどのセキュリティ機能を目視確認したか
  • ICチップ読み取りアプリを活用したか
  • 確認記録を書面化・保管していたか

これらを怠った場合、「知らなかった」は法的免責になりません。罰則は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金であり、法人も処罰対象となります。

偽造カード所持・使用者側の罰則との比較

偽造在留カードの所持や使用を行った外国人本人に対しては、5年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。偽造・変造行為そのものには1年以上10年以下の懲役が定められており、組織的な犯罪として重大視されています。

採用企業側も同様のリスクを負っているという認識が必要です。

現行在留カードのセキュリティ機能を知る

在留カードのICチップと偽造防止技術

ICチップの技術仕様

現行の在留カードには、JIS X 6322 B型(ISO/IEC 14443 Type B)準拠の非接触ICチップが内蔵されています。電子署名にはECDSA(楕円曲線デジタル署名アルゴリズム、鍵長NIST P-384)が採用されており、法務大臣によるデジタル署名で改ざん検知が実現されています。

ICチップには以下の情報が格納されています。

  • 氏名・生年月日などの身分情報
  • 顔写真データ(デジタル画像)
  • 在留資格・在留期間
  • 許可の種類・許可年月日・交付年月日

チップ内のデータは電子署名で保護されており、券面の記載を改ざんしてもチップとの不一致が生じるため、読み取りで検出可能です。

券面の5つの偽変造防止機能

券面には目視で確認できるセキュリティ機能が5種類施されています。

機能 確認方法 真正品の反応
在留期間下段MOJ文字 カードを傾ける ピンク→グリーンに変色
カード左端 カードを傾ける グリーン→ピンクに変色
顔写真下部ホログラム 左右に傾ける 3D的に動く
銀色ホログラム帯 90度回転 白黒反転する
カード裏面透かし文字 光に透かす 文字が透けて見える

ただし、近年の偽造技術の進歩により、ホログラムの目視確認だけでは判別が困難なケースが増えています。目視確認はあくまで第一段階であり、ICチップ読み取りによる確認と組み合わせることが不可欠です。

在留カード等読取アプリケーションの活用

出入国在留管理庁が2020年12月から無料提供している「在留カード等読取アプリケーション」を使えば、ICチップのデータを読み取り、券面の記載内容との整合性を確認できます。iOS・Android・Windows/Macに対応しており、2025年11月14日のアップデートでは在留カード番号のリアルタイム有効性確認機能が追加されました。

アプリをダウンロードする際は、開発者が「IMMIGRATION SERVICES AGENCY」であることを必ず確認してください。類似の非公式アプリが存在するため注意が必要です。

特定在留カード(2026年6月14日〜)の新機能とICチップ強化

生体認証スキャナーに指紋を読み取らせる外国人

在留カードとマイナンバーカードの一体化

2026年6月14日から運用が開始された「特定在留カード」は、従来の在留カードとマイナンバーカードを1枚に統合したものです。住民基本台帳に記録されている中長期在留者・特別永住者が対象となります。

最大の変化は、カード裏面にマイナンバー(個人番号)が記載され、ICチップ内のデータにも個人番号が含まれることです。これにより、行政手続きにおける本人確認・番号確認の二重管理が不要になります。

企業・登録支援機関への実務的影響

特定在留カードの導入に伴い、企業側が注意すべき変化があります。

  • 表面記載情報の変化:一部の詳細情報(在留期間・許可日等)がICチップ内のみに格納される場合がある。目視確認だけでは情報が不完全になるリスク
  • マイナンバー記載への対応:特定在留カードには裏面にマイナンバーが記載されており、コピーを取る際は番号部分をマスキングするなど個人情報保護法に基づく適切な管理が必要
  • 任意取得という点:マイナンバーカードの取得は任意のため、特定在留カードを持たない外国人も引き続き旧来の在留カード+マイナンバーカード2枚持ちが認められる。混在した確認フローへの対応が必要

一体化カードの紛失リスクと管理上の注意点

特定在留カードは利便性が向上した一方で、紛失時のリスクが高まります。在留カード機能とマイナンバー機能の両方が1枚に集約されているため、紛失・盗難時は両方の機能停止・再発行手続きが同時に必要になります。

企業としては、外国人社員に対して特定在留カードの保管・管理の重要性を周知することも、採用・就労管理の一環として行うことが推奨されます。

2028年以降の生体認証強化と次世代セキュリティ

在留カードと生体認証の次世代セキュリティイメージ

生体認証データ追加の動向

現時点では、2028年の在留カードへの指紋・顔認証データ追加に関する出入国在留管理庁の公式発表はありません。しかし、以下の動向から、セキュリティ強化の方向性は明確です。

  • 顔認証ゲートの普及:成田空港などで出入国時の顔認証ゲート運用が定着。生体データの行政活用基盤は整いつつある
  • マイナンバーカード新型移行の報道:日本経済新聞の報道によると、マイナンバーカードの新型への移行計画が検討されており、偽造防止技術の高度化が予定されている
  • 国際的な動向:EU・米国など主要国でのパスポート・IDカードへの生体情報搭載が進んでおり、日本の在留管理制度も国際標準への対応を迫られている

企業としては「現時点で義務化されていない」ではなく、数年後の対応を見据えた体制整備が競合他社との差別化にもつながります。

生体認証導入後に想定される確認フローの変化

在留カードに生体認証データ(指紋・顔写真データ)が搭載された場合、企業の確認フローは大きく変わります。

  • ICチップ読み取り時に生体データとの照合が可能になり、本人確認精度が飛躍的に向上
  • 「なりすまし」による偽造カード使用が事実上不可能になる
  • 採用時の本人確認フローが、現行の目視+チップ読み取りから、生体照合込みの3段階確認に移行する可能性

採用管理システム・入退場システムとの連携も視野に入れた設備投資を検討する段階に来ています。

第二世代在留カードへの移行計画

出入国在留管理庁は「第二世代在留カード等仕様書」を公開しており、順次新仕様のカードへの切り替えが進む予定です。企業・登録支援機関は、ICチップ読み取りアプリや確認システムが新仕様カードに対応しているかを継続的に確認する必要があります。

企業が行うべき真正性確認の実務手順

在留カードを丁寧に目視確認する人事担当者

採用時の確認フロー(3ステップ)

採用時の確認は、以下の3段階で実施します。

  • Step 1 原本確認・目視検査:コピーではなく必ず原本を提示させ、5つの偽変造防止機能(ホログラム・色変化・透かし等)を目視で確認する
  • Step 2 ICチップ読み取り:在留カード等読取アプリを使用し、チップ内データと券面記載情報を照合。2025年11月以降は在留カード番号のリアルタイム有効性確認も可能
  • Step 3 就労可否判定:在留資格が予定する業務内容に適合しているか、資格外活動許可の有無、在留期限を確認し、記録書として保管する
確認記録の保管が法的防御の要
確認を実施したことを証明するために、確認日時・確認者氏名・確認方法(アプリ使用の有無)・照合結果をチェックリスト形式で記録し、少なくとも雇用期間中は保管してください。過失の有無が争われる際の最重要証拠になります。

採用後の継続的管理

在留カード確認は採用時の一回限りではありません。在職中も定期的な管理が法的義務の遵守には不可欠です。

  • 在留期限の3ヶ月前に本人に通知し、更新手続きを促す
  • 在留カード更新時に即座にICチップ読み取りで新カードを確認
  • 配置転換・昇進時に、新たな業務内容が在留資格の許可範囲内かを確認
  • 年1回程度の在留カード有効性確認の実施

民間e-KYCサービス・管理システムの活用

TRUSTDOCK等の民間事業者が提供するe-KYCサービスでは、在留カード番号の有効性確認をAPI連携で自動化できます。外国人社員数が多い企業や、登録支援機関として複数の外国人を管理する機関にとっては、システム化による確認精度向上と業務効率化を同時に実現できます。

  • TRUSTDOCK「在留カードの有効性確認オプション」:在留カード番号のリアルタイム照会
  • nicras・GPASS等の特定技能管理システム:マイナポータルAPI連携による在留情報自動管理

企業に課される確認義務と罰則

企業の在留カード確認義務とオンライン照会システム

不法就労助長罪の法的構造

入管法第73条の2は「不法就労助長罪」を規定しており、企業が外国人に不法就労をさせた場合に適用されます。「知らなかった」場合でも、確認義務を怠った過失があれば処罰されます。

罰則は以下のとおりです。

対象行為 罰則
不法就労助長罪(雇用企業) 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(両方の場合あり)
偽造在留カードの所持・使用 5年以下の懲役または50万円以下の罰金
在留カードの偽造・変造行為 1年以上10年以下の懲役

2025年6月の法改正でさらに罰則が強化されており、従来より厳格な対応が求められています。

過失の判断基準と実務的な免責要件

裁判所が企業の過失を判断する際の基準は「尽くすべき手段をすべて行ったか否か」です。下記のすべてを実施・記録していれば、過失なしと認められる可能性が高くなります。

  • 在留カード原本の提示を求め、原本で確認した記録
  • 5つのセキュリティ機能を目視確認した記録
  • ICチップ読み取りアプリで照合し、不一致がなかったことの記録
  • 在留資格と業務内容の適合性を確認した記録
  • 在留期限を確認した記録
注意
「以前確認した」「更新前と変わっていない」という判断での再確認省略はリスクがあります。在留カードを更新した場合、新しいカードの確認が別途必要です。

登録支援機関・派遣会社への適用

登録支援機関や人材派遣会社が特定技能外国人の支援・斡旋を行う場合も、不法就労助長罪の適用対象となります。支援委託契約を締結している受入機関側の確認義務と、登録支援機関側の確認義務はそれぞれ独立して存在します。

行政書士へ相談すべき場面と実務サポート

行政書士と企業担当者が在留カード対応について法的相談する様子

偽造カード発見時の緊急対応

採用後に在留カードが偽造品だったと判明した場合、まず行政書士や弁護士に即時連絡することが重要です。対応の手順を誤ると、企業の刑事責任が重くなる可能性があります。

  • 当該外国人との雇用契約の扱い(直ちに解雇するか、手続き中の扱いをどうするか)
  • 警察・入管庁への通報義務の有無・タイミング
  • 当初の確認が適切だったかの法的評価と記録整理
  • 過去の給与支払いや雇用保険等の扱い

在留カード確認体制の構築支援

行政書士は、企業の在留カード確認フローの整備を支援できます。単発の書類作成だけでなく、以下のような継続的な関与が企業の法的リスクを最小化します。

  • 確認フロー・チェックリストのカスタマイズ作成
  • 人事・採用担当者向けの在留資格確認研修
  • 在留期限管理表の整備と期限前アラート体制の構築
  • 外国人社員の在留資格変更・更新申請の代行

特定在留カード・新制度への移行対応

2026年6月14日以降の特定在留カード導入に伴い、確認フローの見直しが必要な企業も多いはずです。行政書士に相談することで、法令の最新動向を踏まえた適切な対応手順を整備できます。

当事務所では、外国人雇用に関するコンプライアンス体制の整備から個別の在留資格申請まで、ワンストップでサポートしております。在留カード確認体制について不安がある企業様は、まずはお気軽にご相談ください。

まとめ:2028年に向けて今すぐ整備すべき3つの体制

在留カードセキュリティの未来イメージ:ICチップと生体認証の統合

在留カードの偽造防止技術は、2026年の特定在留カード導入を経て、2028年以降もさらなる強化が見込まれます。技術が進化しても、企業側の確認体制が追いつかなければ法的リスクは解消されません。

今から整備すべき3つの体制を以下にまとめます。

体制 具体的な内容 優先度
ICチップ確認の標準化 読取アプリの全採用担当者へのインストールと使用ルール化 緊急
確認記録の書面化 確認日時・方法・結果を記録する統一フォーマットの整備 緊急
特定在留カード対応 2026年6月以降の新カードへの確認フロー更新とマイナンバー管理ルール整備

在留カードの真正性確認は、外国人雇用における法令遵守の最初の砦です。「まだ大丈夫」ではなく、今日から確認体制を見直すことが、企業を守る最善策です。

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この記事の監修者

西脇 清訓

MIRAI行政書士事務所

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代表行政書士

西脇 清訓

プロフィール

2020年行政書士事務所開業以来、国際業務、相続業務、補助金申請・法人設立など、人生と事業の節目に寄り添う専門家として、実務経験と豊富な知識を活かし、多くのお客様の課題解決に貢献してまいりました。

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